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藤の花の下で

20230428_0

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ウィスタリアが入室しました
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エスメラルダが入室しました
ウィスタリア
では始めましょう
よろしくお願いします
エスメラルダ
よろしくお願いします。
 
 
 
 
 
 
リアン地方 イルスファール王国王都イルスファール
多数の人口を備えたこの都市は、様々なインフラが整っている
上下水道、魔動灯、道路に商店、公園なども揃っている
公園と一口に言っても大小様々だが、その中でも最たるものは
アステリア神殿の自然公園だろう
数々の草花を取り揃え、整えられた公園は、人々の憩いの場になっている
フリスビーで遊ぶ親子、犬と一緒に走り回る子供 ベンチで談笑する母親たち
そうした明るい空気も、夕方頃になると収まってくる
夕日が穏やかに涼やかな空気を運んでくる頃、1人の少女が公園に足を踏み入れる
どこか逃げるような、どこか隠れるような 自らの行いに悔いや怯えのあるものが取る行動を、少女は歩く様子に見せていた
 
少女に気がつくものは少なかったが、一人の青年がそれを見つけて呼びかける
少女は、顔見知りと言うにはお互いに知りすぎている青年を見ると 少し怯えた反応を見せた後に挨拶をして
気にかけてくれた彼の同道を許可して、目的の場所へと進む
そこは、藤の花で彩られた東屋で、ベンチと椅子が休憩スペースとして用意されていた
少女は青年に席を勧めると 顔を見ないようにして対面の席について 1つ息をついた
ウィスタリア
こんな感じでどうでしょうか
エスメラルダ
ありがとう。
エスメラルダ
青年は首肯を返しながら、ゆっくりと椅子へと腰を下ろした。
黒の髪や穏やかな翡翠の瞳、痩身に見えるものの確りと必要なだけ鍛えられた長身も、少女のよく知る彼だ。
ウィスタリア
「………、」 少し気まずそうに、視線を下げて ブラウスに若草色のスカートと言った出で立ちの少女は沈黙した
エスメラルダ
しかし、彼女が知らない、見慣れない傷痕ものが一つだけ存在する。額に交差する様に深く付けられたそれは、隠される事も無く晒されていた。
気にする素振りも、治療中である様子もない。既に痛みもなさそうで、気にしてもいないのだろう。
「……良い場所だな。藤の花も、良く見える」 気まずそうにする少女を見ながら、ゆっくりと口を開いて言葉にした。
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Those Words You Spoke to Me100%
ウィスタリア
「……以前から、たまに来ている場所なんです。エリカさんとお話したり……」
「藤の花は……見ていると、とても落ち着くので」
ゆっくりと返す言葉。淡々とした様子で会話をこなすいつもの彼女からすれば、やはりどこか言い募ると言うか、言い訳するような形での言葉選びをしているように感じる
エスメラルダ
「そうか。気分転換には、丁度良いな」 藤の花が彼女にとってどういうものかは、考えるまでもなかった。
どこか暗い少女の言葉とは対照的に、青年の言葉は普段通りだった。返答の際、僅かばかり目を細めたのは彼女の機微を察してからだったろう。
ウィスタリア
「……、」 膝の上で拳を作って、解いてを繰り返して
「……、」 切り出す言葉を持たない少女は、顔を上げられない
エスメラルダ
柔らかく頬と髪を撫ぜる風に身を委ねながら、翡翠が少女を見遣る。
「ウィスタリア」 
ウィスタリア
「………、」 びくっと、肩が震える
「……はい」
エスメラルダ
「そのままでいい。聴いてくれ」
ウィスタリア
「………」 上目がちにエスメラルダを見つめて 小さく頷いた
エスメラルダ
視線を上げれば、見知った瞳がそこに在った。穏やかなそれは、視線が合えば柔らかく笑む。
ウィスタリア
少し瞳が震える。感情が希薄な彼女が恐れを感じている様子で青年を見つめている
エスメラルダ
「あの日に……、ロキを斬る事ばかりに囚われていた俺に言った言葉を、覚えているか」
「食事をしていた時だった。皆に声をかけて貰っていたのに、俺は全く聞く耳を持っていなくて」
ウィスタリア
「………手紙の返事を、したときのことでしょうか」
エスメラルダ
「ああ。皆をウィスタリアに殺させたロキを憎み、彼を斬る事しか考えず、誰の目を見る事も出来なかった俺に、贈ってくれただろう」
ウィスタリア
「………はい」 弱々しい返事とともに 視線は下に下げられる
エスメラルダ
下げられた視線を追わず、そんな彼女の様子を見守る。
「“あなたも、生きてください”。……そう言ってくれたろう」 
ウィスタリア
「………………はい」 声は、返事は小さくなる
エスメラルダ
「あの時は、受け取ったと言ったけれど。改めて、返事をさせて欲しいんだ」
ウィスタリア
「………お返事、ですか?」 少しだけ声に不思議がるものが混ざる
エスメラルダ
首肯を返すと、一度言葉を切って 瞳を伏せると、思い返す様に言葉を連ねていく。
「あれから暫く、ウィスタリアと連絡員として過ごしていたな。往復は決して楽なものではなかったし、届ける手紙も、決して良い連絡ばかりでもなかった」
「受け取って、届けて。また受け取って届けて――その長い間、一緒にいた」
ウィスタリア
思い出す日々。アナスタシスとイルスファールを結ぶための仕事の数数
エスメラルダ
「色んな配達をした。道中で兵士を助ける事も、助けられる事もあったな。……気の抜ける話も、肝が冷える話も、いくつもある」
ウィスタリア
ある時は不幸の知らせを、ある時は将来を繋げるための書類を、それぞれ配ってあるいた
バイクの補剤を分けてもらったり、速達を依頼されたり、野営中に蛮族かと思ったら流れ者だったり、その逆だったり
エスメラルダ
「後は、カストレの者達の顔を覚えたり、覚えられたり。……色んな事があったろう」
ウィスタリア
それぞれの組合の長の顔、睨みつけてくる子どもたち、苦笑交じりの青年たち それぞれを思い出す
「………はい」
エスメラルダ
「気が付いたら、俺はすっかりウィスタリアといる事が当たり前になっていたんだ」
「……それに気づいたのは、B-4に襲撃され、ウィスタリアが連れ去られた後だったけれど」
気付くのがいつも遅いな、と小さく苦笑する。机の下で静かに握った拳には、僅かに後悔があった。
ウィスタリア
「……」 怯えた様子は少しずつ引いていって 顔はわずかにだが上がる
エスメラルダ
「なあ、ウィスタリア。……俺にとって、」 
ウィスタリア
B-4、そのフレーズが出ると、その僅かに上がった顔も上がった分を差し引いても下がったが
エスメラルダ
「“生きる”事、というのはきっと、……もう、ただひとりで生きるだけでは、足りていないんだと思う」 
「……」 続く言葉が上手く吐き出せないのか、少し時間を置いて。
ウィスタリア
「………、」 その1人では足りないものを、いくつ奪ったのだろう
エスメラルダ
少女が葛藤する中、改めて言葉が紡がれる。数えきれない程奪い去ったものが、向けられていく。
「俺にとって生きる事は、皆と……、いや。ウィスタリアと生きる事、なんだと思う」 
「後ろ向きにはならずに前を向いて進む事が出来るのは、1人ではないからだ、と思うんだ」
言葉にしてから、少し間を置いて。
それまでの柔らかさとは違う、慈しむ様な声が聞こえて来る。
「……今、ウィスタリアが後ろを向いている事は、わかっているつもりだ」
「だから、……あの時の返事をしたい。前を向いて、進んで、そして生きてくれと、俺に願ってくれたウィスタリアに」
ウィスタリア
「………願っていいものだったのでしょうか」
「………私が誰かに……それを願っても良かったのでしょうか」
エスメラルダ
「願う事すら許されない者なんていないさ。それを許さない者がいるのなら、」
「それは他の誰でもない、ウィスタリア自身だ、と思う」
「……自分は、そんなものを願う事は許されない。そう思っているのか?」
ウィスタリア
「………、」 沈黙を少女は返した
エスメラルダ
その沈黙に小さく息を零すと、椅子から立ち上がる。
一歩、二歩と進んでウィスタリアの傍へと歩いて行くと、膝の上で握ったままの彼女の手を柔く取った。
ウィスタリア
「………」 その手は小刻みに震えていて とても冷たかった
エスメラルダ
彼女の手と比べて大きな、それでいて暖かな手がそれを包む。
「誰が許さなくとも、……例えウィスタリア自身が、それを許さなかったとしても」
「俺は、あの願いに救われた」
「前を向いて、また進み出す事が出来た。背を向けて、生きる事を、生きようとする事を棄てようとしていた所から、抜け出す事が出来た」
「もう一度、生きる事と向き合えた」 握る手に込める力を僅かに強めながら、ウィスタリアの瞳を覗き込む。
ウィスタリア
「…………」 暗く沈んだ青い瞳が翡翠色を映す
エスメラルダ
「だから俺は、誰が何を言おうと、何度でも言い続ける。……願って良い。祈って良い」
「生きて、幸せになって良いんだ、ウィスタリア」
ウィスタリア
「………、」 肩が震えて 瞳が滲む 雫が頬を伝って 握られている手の上に落ちる
雫はその密度をまして スカートとブラウス、そして手と頬を汚していく
静かに静かに嗚咽を漏らして 肩を震わせる
エスメラルダ
取った手を引いて、もう片方の手を背に回して腕の中に抱き留めると、
落ち着かせる様に、背を柔く叩く。
「ウィスタリア。……俺と、生きて欲しい」
ウィスタリア
「………、………、良いのでしょうか」
「貴方と、姉さんと、カグラと、ヘーレムやヴィクトールさんと……これまで通りで……いきていて、良いのでしょうか」
「母からの手紙を読んだ時、父にこうしてもらった時、博士に笑ってもらえた時、マグノリア達といた時……、私は確かにいきていました」
「でもそれ以上に…………私は………どうすればいいのか、分からなくて……」
エスメラルダ
ゆっくりと身体を放すと、肩に触れながら視線を合わせる。
「……どうすればいいか、じゃなくていい」
「ウィスタリアが、どうしたいか、だ。……それを許さない者がいたとしても、気にするな」
ウィスタリア
「……まだ……分からなくて……」
「………ごめんなさい」
エスメラルダ
「いいや、謝る事じゃない」 ゆっくりと頭を振って。
「その答えが見つかった時に、教えてくれたらいいんだ」 ゆっくりと手を放すと、彼女の涙を拭う。
「……すまない。混乱させてしまったな」 
ウィスタリア
「………、いえ……ありがとう、ございます」
 
ウィスタリアが落ち着いてから、エスメラルダが対面の席に戻って
2人で暫く過ごすと、星の標に帰ることになる
怯えたような様子はなく、目は涙のせいで腫れていたが、普段とあまり変わらない様子でウィスタリアは歩く
きっと、水瓶から溢れる水のように感情が高まると、そうなってしまうのは避けられないとしても
少女は青年と一緒に進んでいく
ウィスタリア
ではお疲れ様でした
エスメラルダ
はーい、お疲れ様でした。
ウィスタリア
20230428_0 本日のログです
エスメラルダ
ありがとう。それでは撤退しまーす
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エスメラルダが退室しました

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