追憶のリテラチュア 幕間 アーネスト、ティアエレス
20220904_0
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- ティアエレスが入室しました
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- アーネストが入室しました
- ――結界を打ち破り、アングルシの都に入った後。
- 突如一行の前に姿を現したのは、カスパールとアリスだった。
- 彼らによって持ち掛けられた――とはいえ、拒否権はない様なものだったが――都の人々の命を賭けた“遊戯”に備え、
- 一行は、結界を破る為に消耗したその身体を、精神を癒すべく、それぞれ一先ずの休息を取る。
- それぞれの家族や友人の無事を確かめ合うものも居れば、
- 翌日の準備に余念のない者も、すいーつを求めて都を歩く者も居て、
- ――その消耗が、まだまだ回復していない者も居た。
-
- 侯爵が手配をした宿。その一室の中で、
- 身体を少しばかり動かし、翌日用いるだろう買い出しを終えて ティアエレスとアーネストはその荷物を置いた。
- アーネストはと言えば、集合してからの様子からそうは変わっておらず その消耗は激しいのか、どこか普段よりも元気はなかった。
- アーネスト
- 部屋に戻り、買い込んで来たものを自分のものとティアエレスのものとで分け、それぞれの荷の近くに置くと
- 「――、……」 そのまま、すとん、と椅子に腰を落とし、息を抜いた。
- ティアエレス
- 「……、」 その様子を横目にしつつ 特段コメントは入れずに 窓の外を見やる
- アーネスト
- 「……ありがとう、ティア。付き合ってくれて」 疲労が色濃い中、努めて笑みを浮かべてティアエレスを見遣った。
- ティアエレス
- 「……、本調子ではないのなら、買い出しは他の人に任せても良かったのですよ」 腕を組み 困ったような表情を僅かに浮かべて
- アーネスト
- 自然と、ティアエレスが見つめる先 窓の外を見遣る
- ティアエレス
- ゆっくりとアーネストを見やる
- アーネスト
- 視線が此方に向けば、同様に返す。普段、真直ぐ見つめて来る瞳よりも眠たげに映った。
- 「うん。でも、一緒に歩きたかったから」
- ティアエレス
- 「……、そうですか」
- アーネスト
- 「うん」 浮かべられたのは、普段通りの 嬉しそうな笑みだった。
- 「ねえ、ティア」 笑みを浮かべたまま、少年は続ける。
- ティアエレス
- 「………、」 あまり認めたくない、でも
- 死相が浮かんでいるようにも、見える
- 「……なんですか、アーニー」
- アーネスト
- 「……」 少し間が空いて、
- 「……夢中だったから、曖昧、なんだけど」 躊躇う様に口を開くと、訥々と続けた。
- 「僕、ちゃんと出来てたかな。師匠に、負担をかけて、なかったかな」
- ティアエレス
- 「……、荒削りでしたが、お役目は果たせていましたよ」
- 「でなければ、此処まで入れなかったでしょう」
- アーネスト
- 「師匠が、ちゃんと正してくれたのかも、って。……でも、そっか」
- ティアエレス
- 「それはあると見て良いでしょう」
- 「ただ貴方がやらなければこうはなってない。それで十分でしょう?」
- アーネスト
- 「……うん。あのね」
- 「これでやっと、ちゃんと“灰色”だ、って胸を張って名乗れるよ」
- 「……今まではさ、自分に言い聞かせてたから」 左胸に手を当てると、嬉しそうに小さく呟いた。
- 「“自信なんてなくたって、やらなきゃいけないんだから”、ってさ。自分に貼り付けてた、じゃないけど……」
- ティアエレス
- 「……それで出来てしまうのだから、大したものですね」
- アーネスト
- 「師匠が天才だから、ね」 以前よりも確りと伸びた背筋と、自信の付いた瞳を見せながらはにかんで笑った。
- ティアエレス
- 「……、」 息をついて
- アーネスト
- そんな様子を見れば、また嬉しそうに笑みが深められた。ティアエレスの小さな変化一つ一つに、様々な色の表情を浮かべてみせる。
- ティアエレス
- それについて来れるだけ、才能があるということは言わないほうが良いだろう
- 「……、あまり自信過剰にならないように」
- アーネスト
- 「ならないよ、大丈夫。まだ、僕は僕が欲しいものを、知ってないから」
- ティアエレス
- 「……、であれば良いのですが、身体を休めることを優先して下さい」
- アーネスト
- 「今はもうちょっと、話していたいな」 椅子の背凭れに身体を寄りかからせながら、甘える様にじっと見つめた。
- ティアエレス
- 「……少しだけですよ」
- 対面の席について
- アーネスト
- やった、と嬉しそうに微笑むと、
- そこにはそれまではあまり影を見せていなかった 少し悪だくみをしている様な、そんな色があった。
- ――それが誰から灯されたものかは、語るに落ちるが。
- ティアエレス
- 「………、」 まったく、ともう1つ息をついて
- 「……それで、」
- 「話題はどうしますか」
- アーネスト
- 「ティアの事、聞きたいな」
- ティアエレス
- 「私のこと?」
- アーネスト
- 「うん。皆の事、どう思ってるのか、とか」
- ティアエレス
- 「……、あまり、そういう評価はこの状況で口にしたくはありませんね」
- 「癒し手と呼ばれる役回りは、」
- 「誰を助け、誰を支え、誰を癒やすかを選択する役割であり、」
- 「誰を助けられない、誰を切り捨てるかを選択する役割でもあります」
- 「勿論それぞれに思うところはありますが、」
- 「そうした評価を口に出した後、誰かを切らねばならない時、」
- 「公平性が保てなくなりますから」
- アーネスト
- 「…………」 語るティアエレスの言葉に、ひとつふたつと瞬きをした。
- ティアエレス
- 「私がただの攻撃手であれば、その辺りどうとでもなるのですが、」
- 「この状況下で、私が受け持つ責任は軽いものではありませんから」
- アーネスト
- 問いたかったのは、そういった部分ではなかったのだ。……けれど、公平性なんて言葉を使っているのは、きっと。
- 「じゃあ、全部終わったら、おしえて?」
- ティアエレス
- 「そうですね。終わったあとならば、その時は」
- 頷いて
- アーネスト
- それはきっと、自衛の為でもあるのかもしれない、なんて思ったのだ。
- 「じゃあ……ううんと。ティアの好きなものって何かな」
- ティアエレス
- 「……好きなものですか」
- 問われて、少し苦笑をこぼす
- アーネスト
- こくりと頷くと興味津々、と瞳が語る。
- ティアエレス
- 「そういえば、そんなことも伝えてなかったんですね」
- アーネスト
- 「ずっと一生懸命だったじゃない。……ティアも、僕も」
- ティアエレス
- 「………、人参のパンケーキ、それから、猫です」
- アーネスト
- 「……」 ばっ。
- 使い魔
- 掲げられ、ぷらんと垂れた。
- ティアエレス
- 「一番の友達だったんです。私に真語魔法の才能は欠けていたので、使い魔を作り出せはしなかったのですが」
- 「代わりに一緒に居てくれる友達が居ました」
- アーネスト
- 「……えっと、大陸と一緒に、だったよね」 顔の近くまで戻すと、ひょこひょこと頭の上に乗った。
- ティアエレス
- 「まあ彼も厳密には猫ではないんですが」
- 「彼女だったかもしれませんが、その辺り少しぼやけてますね」
- アーネスト
- 「グレイマルキンの……、そっか。どんな子だったかは、思い出せる?」
- ティアエレス
- 「人懐っこい所があって、やきもちをよく焼く子でしたね」
- アーネスト
- 「犬みたいだね……?」
- ティアエレス
- 「私にだけでした。他の人にはあまり懐かない感じで」
- アーネスト
- 「……猫ってなんか、我関せずー、みたいなイメージがあるからさ」
- ティアエレス
- 「いつもそばに居てくれる頼りになる子でした」
- アーネスト
- 「好かれてたんだねえ……優しいもんね、ティアは」
- ティアエレス
- 「………どうでしょうね」
- アーネスト
- 「優しいよ。今だって、僕の我儘を聞いてくれてる」
- ティアエレス
- 「誰にでもそう、というわけではありませんから」
- アーネスト
- 「……いつもそばに居てくれる、頼りになるひとだよ」
- ティアエレス
- 「………、」 少し目をそらして
- アーネスト
- 「ノーラさんや師匠にも、同じ様に優しいよ?」
- ティアエレス
- 「引っかかれないように気をつけて下さい」
- 「どうでしょうね。それを相手がそう思っているかは別ですよ」
- アーネスト
- 「いいんだよ。全部して」
- 「引っ掻いても、噛んでも。そうやって色んな顔を見せてくれる方が、僕は幸せ」
- ティアエレス
- 「………、」 息をついて
- アーネスト
- 「それにさ」
- 「確かに相手がどう思っているかは別、だけれど。……僕と同じ様に思っていなければ、お母さんみたい、なんて言われないよ」
- ティアエレス
- 「……次はありませんよ」
- 青の瞳が零度の温度を帯びて冷ややかに呟かれた
- アーネスト
- 「あう」 「言い過ぎました……」
- ティアエレス
- 「………、」 まったく
- アーネスト
- 「……」 息を吐いたのを見れば、ちら、と見つめて
- 嬉しそうに、幸せそうに微笑んだ。
- ティアエレス
- 「………何を笑っているんですか?」
- アーネスト
- 「こうやって、話せるのが嬉しいからだよ」 本当に嬉しそうに言うと、頷いてみせて。
- ティアエレス
- 「……、そろそろ切り上げても良いんですよ」
- アーネスト
- 「僕は、――……」
- 「……ずっとこんな時間が続いたらいいなって、思ってるよ」
- ティアエレス
- 「……」 ずっとは続かない ずっとはない 流れている時間が違うから
- 「……、そうですね」 でもその言葉を突きつける場面では、ないと思う
- アーネスト
- 「だからね。……絶対、見つけてみせるんだ」
- 「ティアと師匠と皆と、ずっと笑っていられる様な、……」 ゆっくりと瞼が降りて、美しい翡翠が伏せられていく。
- 同時に首も傾いて、船を漕ぐようにかくん、と沈み始める。
- ティアエレス
- 「………、」 その様子を見つめて
- アーネスト
- 「だれも、……泣かなくていい、みら、いを……」 ぼんやりと言葉を続けながら、
- 「せんせ、と……っしょに、……ティア、に……」 次第に背凭れに身体を預けていって、ぐったりと脱力する
- ティアエレス
- 「………、」 私に、なんだったのだろうか
- 言葉の続きは気になるが、今は起こすべきときじゃない
- この姿勢では可哀想だが、運べる気はしない……ゴーレムを作るのもなんだろう
- 「4thワードのティアエレスが希う。イーヴよ、快眠の奇蹟を此処に」
- 【ホーリー・クレイドル】をかけると
- 起こさない様に少年の頭を軽く胸に抱いて
- 「………、よく頑張りましたね」
- 普段見せない笑顔を浮かべて撫でると 毛布をかけて
- 自分は席を外すように外に出るのだった
- ティアエレス
- こんな感じでどうでしょう
- アーネスト
- はーい。ありがとうございました!
- 寝てる時にだけ……貴様……
- ティアエレス
- しりません
- では撤退します
- お疲れ様でした
- アーネスト
- お疲れ様でしたー
- ティアエレス
- また会いましょう
- アーネスト
- 本編でまたー
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- ティアエレスが退室しました
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- アーネストが退室しました