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冬国のリテラチュア 幕間 ノーラ、ロニ

20211024_1

!SYSTEM
ロニが入室しました
ロニ
うむ
気の利いた前置きなどは出来ないので適当に
 
アングルシ妃国、魔女の隠れ里――
万年雪に覆われたその国の中にありながら雪は少なく、気温も比して低くはない。魔女の力が成せる業と言う事か。
つまる所、里の中であれば外で活動するにも特に問題は無く。客人達は出立までの時間を思い思いに過ごしていた。
そして銀の総髪に緋の目を持つ男もその例外では無く――
銀の魔女の家 庭先
ロニ
「わっしょい!!!」
場所が変わっても彼はクソデカボイスだった。掛け声と共に振り下ろされた斧が丸木を両断し、気持ちの良い音が冷たい空気の中響き渡る
「うむ!良い手ごたえだ! これは良い薪になる!」 傍らに積まれた薪の山に今しがた割ったばかりのそれを加えると、次の丸木を薪割りの台に乗せ斧を振り上げる。
そして――
「どっせい!!!!」ぱこーん
静かな隠れ里に響き渡る豪快な掛け声。相対的に巻き割りの音が小さく聞こえてしまう。
何故巻き割りを?と聞かれれば彼はこう答えるだろう。
「うむ!一宿一飯の恩義には働きで返さねばなるまい!」
「ドワーフたるもの!」
ともつけるかもしれない。
 
ここで重大な事実をお伝えするが。彼は種族としてはナイトメアであり、ドワーフではない。実は
が、彼は自らを自信をもってドワーフと(物理的にも)大きな声で称し、一見種族詐称としか見えないそれをどこまでも押し通す。
とは言え、彼は別に「自分をドワーフと思い込んでいる精神異常者」ではなく、種族としてはナイトメアであると十分に認識しており、承知している。実際鍛冶場で働く時の彼は人間のそれと同様に十分な防火耐熱装備をして挑んでいる。
そのことについて問い質すのであれば彼はこう答えるだろう。
ロニ
『うむ! この身は確かに穢れを持って生まれてきた! だが父も母も俺をドワーフとして他の子と同様に、いや火の扱いに関しては慎重だったか! ともあれドワーフの子と呼び、ドワーフとして扱った! 故郷の友も大人も同様にそうしてくれた!』
『そして俺もまたドワーフであると確信している!姿形が異なろうと穢れがあろうとも! 俺の魂は間違いなくドワーフであると! そう!魂が!言っている!』
『奇異に見えるのは重々承知!だが俺は俺の魂が叫ぶままに叫ぶのだ! 俺はドワーフであると!』
 
――そう彼は変わらず大音量で語り、笑うに違いないのである。
ロニ
「WASSSHOI!!!!!」
アングルシ妃国は魔女の隠れ里において、これほどまでにビッグボリュームの薪割りがかつてあっただろうか。いやない。
前代未聞の薪割りは、食事の呼び声かクレームがつくまで続くのであった――
ロニ
うむ
!SYSTEM
ロニが退室しました
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ノーラが入室しました
ノーラ
コソコソ
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ロニが入室しました
ロニ
うむ!!!!!
ノーラ
Σ
ロニ
好きなようにキーボードを打ち始めるといい!
ノーラ
そんな、あまりにも騒々しい薪割りの現場をそっと覗き込む小柄な少女がいた。
(バケツ)は被っていない。館の中ではないからと言ってあれに頼るのはきっとずるになる。
手には箒(ただし独りでに動き出さないものを指す)と水差し、手ぬぐいを持っている。後者は差し入れ用であろう。
ロニ
「よいしょおっ!!!!!!」パカーン
ノーラ
生来の気質は内気で引っ込み思案だが、決して声をかけなかったわけではない。
「あ、あの……」 

完全に声量負けしていた。
ロニ
覇気増し増しの声の元、斧が丸木を両断する。その勢い、薪と化した木材が宙を舞い、小柄な少女の足元にまで飛んで行ってしまうほどである
「おっと、勢いをつけすぎたか!」わははと笑いながらそれを拾う為歩み寄れば、自然少女と鉢合わせるわけで
ノーラ
「わ、」足元にザクッよ薪が刺さった。よく見れば庭のあちこちに散乱している。これは怒られるのではないか
ロニ
「おお!ノーラ殿! いかがされた!」一応割った薪は集めていたが、それでも拾い損ねたものはあちこちに落ちているのは間違いない
ノーラ
「あ」 鉢合わせると目を見開いて、みるみる顔面に朱が差し、目を泳がせ始めた。しかし、何とか持ち直して水差しを持った手を突き出し
「あの、私、お、お手伝いと、み、水を……」
その声はやはり男の大声の残響にも満たないか細いものだ。特に屋外では聞き取りにくいことこの上ない。
ロニ
「おお、差し入れと手伝いの申し出か!ありがとう!」人数が多い状態で複数人が話すような状況であれば、その声は聞き損ねていたかもしれないが今は違う。少女のか細い声に確りと返事を返すと、水と手拭いを受け取って
「うむ、美味い! 労働の後の水の清涼さたるやなんたる美味さ!」ごくごくぷはー
ノーラ
「……」何とか伝わってくれたことに安堵しつつも、これでは駄目だと思い直して
「あ、あの……
じ、自分も、薪割り、良いでありますか……?」
箒は片付けの為に持ってきたものだったが、大音声と共に薪割りをする彼を見て、自分もあんな風に、と思っていたのだ。
ロニ
「うむ! 良い声だ! その申し出、喜んでお受けしよう!」
「丸木は5本あったが3本は薪にし終えた! 後は2本と片付けとなるが構わないだろうか!」背後の薪の山を見上げつつ
ノーラ
「は、はい……はいっ」
ロニ
「銀の魔女殿は出来る分だけ適当にと申されていたが、このように寒い国では薪の備蓄は多いに越したことは無い!うむ、丁度ノーラ殿は箒を持っておられる! 飛んでしまった木の皮や薪の端を集めてもらえるだろうか! その間に俺は今の残りを終わらせてしまおう!」
ノーラ
手つかずの丸木の元へと、トテトテと向かう。薪材として乾燥させてあるとはいえそれなりの重量があるそれを
「よい、しょ」
「え……?」 危なげなく丸木を持ち上げて振り向く。見た目以上に力があるのだ。あの甲冑に大鎚を扱うのだから当然なのだが
ロニ
「おお! 素晴らしい膂力だ! 考えてみればあの重装で雪国を踏破したのだからな! 道理だったか!」わはは
ノーラ
「の、残りを薪にしてからの方が、か、片付けの手間が減るかなって、その……」
ロニ
「あいすまなかった! そのつもりは無かったが女人と侮ってしまっていたようだ、すまん!」
「うむ! 確かにその方が手間が減るな! なれば一本づつ片づけてしまおうか!」と乾燥小屋から斧をもう一つ持ってきて
ノーラ
「い、いいえ、いえ、あの、わ、私がちゃんと聞いてなかった、だけ、ですから」
慌てて弁明する間も丸木は抱えたままだ。よろめく様子もない
ロニ
「これをつかうといい! 割り台はそこの丸太を使うとよいだろう!」斧を差し出しつつ視線を自分が使っていたのとは別の丸太に送り!
ロニ
地の文までクソデカボイスになってしまった!
ノーラ
「あ、ありがとう、であります」意識して声を出しつつ、斧を受け取って
ノーラ
きっと大きな丸太なんであります!!
ロニ
そういうことにしよう!
ロニ
「うむ! 薪割りは体幹の鍛錬にもなるし体も暖まる! 声を出して斧を振り下ろせば気持ちも上がる! 良いことづくめと言う奴だ!」いいながら台に丸木を乗せて
ノーラ
薪材を抱えて、丸太をそのまま利用した薪割り台へと運んで斧を手に、先ほど、ロニが斧を振るっていた様子を頭に思い描き
「声を……」
すぅ、と息を吸い込んで斧を振り上げ――
「ゃ、やあ」 と、あまり気勢の乗っていない掛け声とは裏腹に、バカン、と丸木が裂け、斧が薪割り台に食い込んだ。
ロニ
「わっしょい!!」ぱかーん!
少し遅れてクソデカボイスが轟いた
「うむ! 見事な一撃!」声が出ている出ていないはさておき、見事一撃で薪を割ったノーラに感嘆の声を上げる
ノーラ
「え、えい」 薪割り台に刺さった刃を難なく引き抜いて、丸木をずらし、再び斧を振ろ下ろす。ガコン! 
ロニ
「むむ!これは負けていられんな!」 そう言うとこちらも再度斧を振り上げ
「よいしょぉっ!!!」※以後彼の掛け声時のみボリュームを抑えてお送り致します。
ノーラ
「……」手の中の斧と、丸木の断面を見比べる。以前はもっと不器用で、刃物を扱うのは苦手だった。
ロニ
「そおいっ! ふむ、如何されたノーラ殿!」手を止めた少女へ、薪を割る手は止めずに声をかける
ノーラ
「や、やあっ」 ギュッと柄を握り込んで、木目に刃筋を通すことを意識して、振り下ろす。 カコーン!
ロニ
「うむ! 今のは良かった!」発声も狙いも
ノーラ
「あ、え、えっと、その……に、苦手だったんです。刃物の扱い……」声をかけられたことに後れて気付いて慌てたように
ロニ
「しかし今は見事な太刀、おっとこの場合は斧筋か! 実に狙いすました斧筋だった! そいっ!」ぱかーん
ノーラ
ここに来てから、たくさんのすごい人達を見たから……かも、しれません」
「あ、え、えっと、あと、ろ、ロニさんの、さっきまでの使い方を、み、見て」
ロニ
「ふむ! 特別な動きは何もしていないと思うのだが!加えてここと言うと」
ノーラ
「わた、自分、外の大陸から来たんです……気付いたら、こっちに居て」
ロニ
「成程!漂流者(ドリフター)と言う奴だな!」
ノーラ
「……」耳慣れない言葉だったが意味は何となく分かる。コクリと頷き
「そういう人はたくさん居て、でも、帰れた人はいないって聞きました……
ロニ
「うむ! 俺も聞いたことはないな!」ぱかーんと薪を割りつつずばりと言った
「だが! 聞いたことがないだけだ!」ずん、と斧を台に突き刺し
ノーラ
「……」もやもやした気持ちを振り払うように、斧を振りかぶり、振り下ろす。斧は丸木の表面を滑り、薪割り台に深く突き刺さった
ロニ
「帰った者がいたとして! その事実をこちらに伝えることが出来ねばそれはやはり『帰った者はいない』としか俺達には言えぬだろう!」
腕を組み、いつもの仁王立ちでノーラに相対し
ノーラ
「そう……かもしれません……」 視線は扱い損ねた斧へ
ロニ
「ふむ! ノーラ殿は帰還を望まれているのだな!」
ノーラ
「故郷には両親が……それに、神殿や軍にも迷惑がかかってる筈、ですから……」
ロニ
「なればやることは一つであろうな!」ぐいっと斧を抜くと薪割りを再開する
「人脈を集め、知識を集め、帰還の方法を求める! つまる所は今ノーラ殿がやっているであろうことを続けることだ!」ぱこーん
ノーラ
「……ひと、つ……?」ぽかんとした顔を上げて
ロニ
「おっと3つになってしまった!!」わはは わはは
「なに! 人脈については問題あるまい! 今やノーラ殿は大魔女アスミ殿と銀の超魔女殿と言う知己を得た! 縁と言う物は集うべき場所に集うものだ!」
ノーラ
「……この仕事が上手く行ったら、しろがね様に、き、聞いてみようと思っていました」
ロニ
「うむ! そうすると良い! そして分らぬとなっても気を落とすことのないようにな!」
「分からぬとはつまり、今はわからぬということ故に!」
ノーラ
「今は……」
ロニ
「何かのきっかけでわかるかもしれない! 急にひらめくかもしれない! 俺たちが行く未来と言う物は何も決まっていない、ならばそう言うことも十分にある!」
「それに俺は今気づいたが、ケルディオンを覆う混沌がなんでもかんでも呼び込み外に出さないのであれば――
「今頃ケルディオンは人や物で埋め尽くされているのではないか、とな!!!」わっはっは
ノーラ
「……」その前向きさに劣等感を抱くよりも、気圧されていたが、続く話に目を丸くしてから
「……ふ、ふふ」 釣られて笑ってしまった
ロニ
「うむ! 良い顔をされている!さあ薪割と片づけを済ませて飯としよう! 腹が減ってはなんとやらだ!」
ノーラ
「は、はい……っ」
ロニ
「うむ! よいしょおっ!!!!!!」ぱこーん!
ノーラ
再び斧を振りかぶって、すぅ、と大きく息を吸い込み。刃筋を意識しつつ――
「やあっ!」 ぱっかーーん!
ロニ
と言う具合で、いかがか!
ノーラ
ヨシ!であります
ロニ
うむ!
お付き合い感謝!!!
ノーラ
こちらこそ、ありがとうございました!
ロニ
では撤退!!!!
ノーラ
撤収!
!SYSTEM
ロニが退室しました
!SYSTEM
ノーラが退室しました
背景
BGM