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とある日の一幕

20210617_0

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アイリスが入室しました
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銀猫が入室しました
銀猫
おまたせしましたー
アイリス
ああ、此方こそ
良ければ始めよう
銀猫
はあい
よろしくお願いします。
アイリス
よろしくお願いします
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
リアン地方、イルスファール王国 "星の標"
此処は国内でも有数の冒険者ギルド支店として知られており
数多くの依頼が国の内外から舞い込んでくる。
アイリス
平時のと書きかけて
今は有事で在るということに気がつく
銀猫
しっかり有事ですねえ……
 
現在は南方の戦線が燃え上がっていることもあり、冒険者たちは出払っている事が多い
すっかり疎らになった昼の時間帯
からん、と店の扉を潜るのは、黒い服に紫水晶の首飾りが目立つ、紫がかった銀髪の少女だ
 
少女の視線の先には、カウンター席の椅子に座りながらゆらゆらとその足を揺らしている少女の姿があった。
アイリス
「──、」 そのままパンプスの軽い足音と共に店の中を歩いていって 
「……おや」
少女は銀髪を揺らしながら カウンターまで歩いてくると 知己に声をかける 「やあ、猫殿。今日も地図を売りに来たのか?」
 
長く伸びた銀の髪はよくよく手入れをされており、頭頂部には二つ生えた猫耳が主張する様にぴんと伸びていて
名を呼ばれればそれが小さくふるりと揺れて、金と蒼の視線が少女へと向けられる。
銀猫
「あら、……アイリスさん。こんにちは」 ひょいと椅子から降りて、胸元に手を当てて小さく頭を下げる。
アイリス
「こんにちは」 挨拶を返して
「店主殿は居るかな」
銀猫
「いえ、そのう……」 後ろめたい事でもあるのか、言い辛そうに視線を逸らしながら 先程とは違う様子で耳が揺れ、尻尾が丸められる。
アイリス
「?」 小首をかしげて
銀猫
「寝坊、しちゃって……」 この時間に、と続けると、逃げる様にカウンターの奥に引っ込んでいたガルバに声をかける。
「ガルバさーん、お客さんですよー!」 いそいで。この空気に私が負ける前に。
アイリス
「……ああ、そうか」 苦笑して 「間に合わなかった、ということだな」
銀猫
「う」 「ええ、まあ、」 「……はい」 言い訳を考えようとして尻尾が持ち上げられたが、へたりと垂れながらそれを認めた。
ガルバ
「おう、どうした。……」 のそのそ遠くから歩いて来ると、
アイリスの姿を見ると、カウンターへ戻ってきた。
アイリス
「こんにちは。いや、剣無しの私が言うのも何だが……時期が時期故な」
「数日、所用で空けることになる。だから店の依頼には参加できないと言いに来た」
「鎧も置いてきたのはそのためだ」 苦笑して
ガルバ
「おう、わかった。……こんな状況だ、冒険者(こっち)にかかりきりにはなれないだろうさ」 神殿やらの仕事もあるだろう、と暗に。
銀猫
「……」 語るアイリスを見上げつつ、ああ、と納得した様に頷いた。
アイリス
「済まないな」 頷いて 「戻ったらまた、参加させてもらう」
銀猫
「そういえば、今日は鎧姿ではありませんでしたね」 
ガルバ
「ああ。こんな状況だ、無事で戻って来い」
アイリス
「いつも鎧を着ているわけではないさ……もっとも、華美な服は苦手なんだ」 黒い衣服を軽くつまんで
「神殿でも通せるような服装にはしている」
「ああ、ありがとう店主殿」
ガルバ
頷きを返しつつ、銀猫の軽食の皿が空いているのを見れば、その皿を取りつつカウンターの裏に下がっていく。
銀猫
「アイリスさんなら、色んなお洋服が似合うと思いますが」 口には出さないが、年頃の女性――と自分が言うと何か悲しいのは何故だろう――が着るには、やや地味な気もする。
アイリス
「そして済まない、ついでなのだが……食事を頼めるだろうか」
「明日からは、少し食事事情が貧弱になるから、出発前は良いものを食べたくてな」
ガルバ
その言葉を受けてから間もなく、下げた銀猫の皿ともう一人分の皿を持って戻って来る。
アイリス
困ったように笑って
「お隣、良いだろうか」 と銀猫を見て
ガルバ
「ああ、だろうと思ってな。明日発つんだろう、食っていけ」 ほら。
銀猫
「!」 ぴこん、と両耳と尻尾を持ち上げて、表情がぱっと明るくなる。
「勿論です!」
アイリス
「ありがとう。折角知己が居るのだから、こういう機会を逃さないようにしないとな」 ふふ、と笑って
銀猫
自分の隣の椅子を引いてみせて、どうぞ、と手を引く。
アイリス
ガルバにも頷いて 皿を受け取ると 食前の習慣なのか手を組み合わせて黙祷する
(席についてから
銀猫
「……少し意外でした。アイリスさんは、お仕事第一……って印象が強かったので」 知己と呼ばれれば、解り易く尻尾が喜色を浮かべて揺れて行く。
アイリス
「──」 祈りを捧げ終えると 「それはそうだな」
銀猫
「……」 かく、と肩と尻尾が落ちる。そうですよねえ……
アイリス
「ただ、私だって人と語らう時くらいはある。使命と休暇とは、切り分けなければ壊れてしまう」
「其方もそうだろう?」
銀猫
「私には、使命というほどの使命はありませんけど……」 苦笑しつつ、
「でも、そうですね。ゆっくりする時間は、やっぱり欲しいです」 運ばれて来ていた食事に手を付けながら、アイリスに微笑みかける。
アイリス
笑みを返すと スプーンを動かしはじめて
一口食べると 「──、うん。やはり此処の食事は良いな」
銀猫
「アイリスさんは、」 また一口運んで、ん、と頬を緩めつつ
アイリス
「うん」 銀猫の言葉に顔を向けて
銀猫
「どうして、冒険者(このしごと)を始められたのです?」
もう一口運んで、尻尾がふるりと揺れる。おいしい……
アイリス
「ああ。ウール殿には話した事があったのだけれど」
「其方には話したことが無かったな」
銀猫
「うーるどの?」 
アイリス
「ドワーフの戦士だ。此処の所属冒険者の一人だな」
「確か、宝剣のランクを保有していたはずだ」
銀猫
ぽて、と椅子に尻尾が垂れて、人懐こい瞳が細められる。
アイリス
「登録の際に、言葉を交わし、知り合ったのだ」
銀猫
「……ああ、“大盾”のウールヴルーンさんですね」 
「ドワーフらしい武人だとか」
アイリス
「ああ、好ましい人物だった」
頷いて
「話を戻そうか」
銀猫
もう一口運んで―― 「あっ、はい。ふみません」 
アイリス
「私と同郷のものが、この店に登録していてな。それでやってきた」
銀猫
「……同郷、ですか」 流れて来た自分には縁遠いものだ。瞳に僅かばかりの郷愁を浮かべつつ頷いた。
アイリス
「ああ」 頷いて 「アッシャー=ダストという人物でな」
何処の出身、ということを語らない辺り、言葉通りの意味では無さそうだ
銀猫
「アッシャー……」 もう一度、先程と同じように 自分の頭の中を探る様に目を細め
――ええと、名剣の方ですね。イーヴの神官さまだった、かしら」
その言葉の意味を理解しているかはさておき、人差し指を立てながら口にした。
アイリス
「うん。イーヴの神官戦士だ」
銀猫
「……神殿のお仕事も沢山あるのかな、とは思うのですが」 この辺り、奈落の魔域の発生件数も洒落にならないし。
アイリス
「そうだな。明日からの用事もそれだ」
スプーンをゆっくりとしたペースで進めながら
銀猫
「何方まで行かれるのですか?」 覗き込みながら首を傾げる。かく言う自分はハルーラ神殿の仕事にそこまで熱心な訳でもないのだが。
アイリス
「それは言えない」
「済まないな」 困ったように笑って
銀猫
「と、」 「それもそうですよね、機密でした」 ふるふると頭を振ってみせて
「……」 沈黙しつつ、何か楽しい話題を――と考えた所で、戦士としての彼女は知っていても、人としての彼女の事は何も知らない事に辿り着く。
何か話題を見つけねば。そう考えれば考えるだけ、ぐるぐると目が回っていく。
アイリス
「──、」 味を楽しむように食事を進めて 「猫殿は、」
「……どうかしたか?」
銀猫
「は、はいっ! なんでしょう!」 
ぶんぶんと首を横に振った。>どうかしたか?
アイリス
「猫殿は普段探し屋を営んでいると聞くが、」
「それ以外のときは何をして過ごしているのだ?」
銀猫
「んー、こうして冒険者の仕事をしているか……」
「今までは、里帰りなんかもしていたんですけれど……最近は、こんな状況なので迂闊には行けなくて」
「お休みの日は、ゆっくりしていますよ。お散歩したりして」
アイリス
「里帰り。この辺りの出身なのか?」
銀猫
ふるふると頭を振って、
「私、流れて来ているんです。元々は、……別の大陸にいて」
「流れて来た時に、私を拾ってくれたお婆さんの――……拠点……っていうべきでしょうか。そこに、ですね」
アイリス
「……そうか、」 ふ、と笑って 「私と一緒だな」
銀猫
「一緒……、アイリスさんも、この大陸の方ではないんですか?」
アイリス
「私も幼少期に流されてしまったらしくてな。気がついたら…といった感じだ」
「朧気ながら覚えているが、少なくともこの辺りの出身ではなかったな」
銀猫
聞けば、心配そうに頷きを返し。 「……不安でしたよね。私の場合は、死ぬ前に拾って頂けましたけど」
アイリス
「……不安、か。そうだな」
「気がつけば、辺りは暗く、自分の翼の輝きだけが光源だった」
「何かを抱いていた気がするが、それもなく……私の目の前に現れたのは魔神だ」
銀猫
「……」 自分の記憶とも同じだ。気付けば真っ暗な森の中で、冷えた風が吹きつけていた。
「魔神、……ですか」
アイリス
「──、」 瞳に、殺気に近い何かが宿って
「……、後少しで死んでしまう、というその時だな。拾ってもらったのは」
それもすぐに和らいで
銀猫
瞳に宿ったそれに、その毛を逆立てながら、ぴ、と尻尾が持ち上がり
アイリス
「以来、魔神討滅のために我が身を捧げている。そんな所だ」
銀猫
「……私は、魔神ではありませんでしたけど」
「アイリスさんと、同じです。……私、小さい頃はずっと猫の姿だったんですけれど」
「気付いたら、飼い主の方も、お屋敷の方も誰もいなくて――探しに出たら、そのまま流れて来ていて」
「丁度、逢魔の森にいたみたいで……我ながら、よく生きられたなって思うんですが。お婆さんに助けて頂いたんです」
アイリス
「……、」 食事を終えて 銀猫の言葉に耳を傾けるように顔を向ける
「そうか。……大変だったな、お互いに」
銀猫
「その時の事、あんまり覚えていないんですけど……、捨てられて、流れてきて、随分パニックになっていたみたいで」
「ハルーラ様のお声も、その時に。ええ、子どもの頃に流されて来るなんて、九死に一生どころじゃないですもの」 
アイリス
「まあ、過去に何があれど」
話題を変えるように笑ってみせて
「こうして一緒に食事ができるというのも、何かのお導きなのかもしれないな。其方が無事で良かった」
銀猫
落ちかけていた視線を持ち上げて、アイリスを見上げ
「そうですね。アイリスさんも、ご無事でよかったです」 両手を胸元で組みながら、笑みを浮かべた。
「次のお仕事も、どうか無事で」
アイリス
「ああ。ありがとう」
銀猫
アイリスを見上げながら、ぼうっとその様子を観察する。
アイリス
「其方と話せてよかった」 席を立ち
銀猫
「あ、……」 立ち上がる姿に、追い縋る様に自分も立ち上がって
立ち上がってから、自分の行動に首を傾げる。
アイリス
「……どうかしたか?」
銀猫
「いえ、……う、えっと」 
そわそわしながら、自分の身体を確認する様に見降ろして 首を傾げながら唸ってみせて
やがてゆっくりと顔を上げると、どことなく不安そうに口を開いた。
「……御無事で、お戻りください」 
アイリス
「……ありがとう」 穏やかに笑うと銀猫の頭を撫でて
「其方とハルーラの導きがあると信じて、戦うとしよう」
銀猫
撫でられると、瞳を薄く細めてその手に甘える様に頭を摺り寄せながら、両手で取ると右頬に当てる。
「……はい。ハルーラ様も、必ず導いてくださいます」
アイリス
「…今生の別れというわけではないんだ」 苦笑しながら 「其方は優しいな」
銀猫
――……普段は、そんなに気にならないん、ですけど」 取る力を緩めつつ、自分からは離さずに。
「……なんだか、そんな気分で」
アイリス
「……、」 手を引いて離れて 「大丈夫だ。其方は1人と言うわけではないのだから」
もう一度頭を撫でると
銀貨をカウンターに置く
銀猫
「わ、私の心配をしているんじゃ――、」 食い下がろうとした声は、その手に呑み込んで
アイリス
「それではな、店主殿。また来る」
銀猫
小さく肩を落としながら、尻尾がだらん、と垂れる。
アイリス
「……また話そう猫殿」
「そう残念そうな顔をしないでくれ」
銀猫
「……う、」 ぶんぶんっ、と頭を振って 長い髪と尻尾も伴って振り乱し
ふう、と深呼吸をすると、ぱっと笑みを浮かべる。
「また、お待ちしてますね!」
アイリス
「ああ」 頷いて
銀髪を揺らしてから そのまま出口に向かって歩き出す
銀猫
去って行く背中に、理由の解らない既視感を覚え――気付けば、右手を伸ばしていたことに気付く。
「……何、で?」 伸ばした右手を見つめながら、記憶を思い返しても理由の分らないそれに小さく息を吐く。
アイリス
こんな所だな
銀猫
去って行くアイリスを見送ると、もう一度席に着き
胸元に結んでいる、かつて飼い主から贈られたリボンに鼻を寄せ、その匂いを嗅ぐ。
すっかり自分の匂いしか宿していないそのリボンに、寂しそうに表情を陰らせながら
カウンターに突っ伏すと、リボンを抱いたまま瞳を伏せる。
 
その後は――やがてガルバに呼ばれるまで、そのカウンターで眠りこけていた。
銀猫
おまたせしました。私もこれで
アイリス
ああ、お付き合いありがとう
銀猫
ありがとうございました。お疲れ様でしたー
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銀猫が退室しました
アイリス
お疲れ様だ
背景
BGM