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新居にて

20210529_1

!SYSTEM
ルトヴィークが入室しました
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アウラが入室しました
ルトヴィーク
じゃあ、ゆっくり書いて行くね
アウラ
はい。よろしくお願いします
 
 
 
――おかえりなさい
――ただいま戻りました
 
 
オルトラント地方、ヴェイルーン王国にて起きた一連の騒動――
デーニッツ家の次女、アウローラ・フォン・デーニッツの誘拐から端を発したそれは、
〈星の標〉の冒険者達の活躍――それを知っているのは、一部の者のみではあるが――によって、無事に終息へと向かった。 
 
その引金となった暗部は取り払われ、“魔剣屋”と名乗る怪しい男の介入こそあったものの
――その元凶の手によって、冒険者一行は“世界の敵”を打ち倒し。
ルトヴィーク
元凶の手による“剣”によって――
誘拐されたアウローラ・フォン・デーニッツを助け出し、
また家の名のもとではなく、彼女自身の名のもとに生きる事を決めた彼女を伴って 冒険者一行は王都イルスファールへと帰還した。
 
それから、数日が経って――
 
 
真上に昇った太陽の暖かな日差しの下で、毛先の色が抜けている黒髪の少年は、小さく汗を拭った。
ルトヴィーク
青年!
アウラ
ふふ
落ち着いて
眼前にあるのは、彼が今まで暮らしていた〈星の標〉ではなく、立派な様式の一軒家だ。
それが建っているのは、王都の魔術師ギルドの南方――高級住宅街とされる場所だ。
青年の服装や立ち振る舞いを見ても、誰も彼がこの家の主だとは思わないだろう。それだけ、彼は間違いなくこの場において場違いな存在だった。
 
――では、これですべて配置が済みましたので」 青年と共に荷運びを終えた男は、よくよく通る声でそう彼に告げた。
リストアップされていた荷物は全て、確認が取れている。
間違いないかを確認する様に、青年の傍らに立つ少女――少女とは言ったが、青年とは対照的に、彼女は随分とらしい振る舞いをするのだが――へと視線を向けた。
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BGMを変更 by ルトヴィーク
OYM-PF100%
アウラ
「……、」 リストを改めて確認して 「…はい、結構です」
「お疲れ様でした」 と銀貨の入った袋を報酬とは別に男に渡す 所謂チップというものだ
「はい、では――この度はご利用いただき、ありがとうございました!」 帽子を外し、やはりよく通る声で青年と少女へと挨拶をすると、
それを理解しているのか、礼儀を徹しておきながらそれを受け取った。
「……では、旦那様、奥様、失礼致します」 もう一言付けて、荷運び人達は家の前から去って行った。
アウラ
「ええ。折を見て模様替えのときにまた利用させて頂きます…御機嫌よう」
ルトヴィーク
「ありがとう。……一人でやってたら、全然終わらなかった。……じゃあね」 去って行く背中に投げかけながら、見られてもいないのに手を振って。
アウラが家に視線を向けてみれば、そこにあるのは君にとっては特別“立派”というほどのそれがある訳ではない。
この場は確かに高級住宅街ではあれど、その中にも良し悪しはあるもので――
アウラ
「………、」 見上げて
青年、ルトヴィークが、アウラの提示した条件に合致するものを見つけてきたそれは、彼の眼には“立派”な家ではあったが
デーニッツのそれと比べてしまえば、なんてことの無い一軒家だ。
ルトヴィーク
「……あとは、えっと。ローラを迎えに行くのと、手伝いの人を連れて来るのと」 見上げるアウラの隣で、メモを捲りながら今日中に行うべき事を確認している。
アウラ
「……」 素敵な家だ、と 口には出さず微笑むことで表現して 「……、」 青年の方に視線を向ける
ルトヴィーク
「食べるものと……寝る奴は持ってきたし、……」 悶々と繰り返しながら、視線に気付けば、明るい鉄色の瞳がアウラに向いた。
「アウローラ?」 
アウラ
「少し、休憩しませんか?」
ルトヴィーク
「ん……」 一度空を見上げて、アウラから教えられた“やることリスト”をやり切る時間の余裕はあるだろう、と頷いた。
「うん。……家に行く?」
アウラ
「……」 くすっと笑って 「いいえ、」
「帰る、でしょう?」
ルトヴィーク
「……」 ぱち、と瞬きして
「慣れるね」 困った様に、薄く微笑むと
アウラ
「はい……では、」 先んじて扉に向かっていって
扉を開くと 招くように 「おかえりなさい。ルトヴィーク」
ルトヴィーク
「……、」 聞けば、はっと表情が緊張して
それが徐々に解れて 下手な笑みに変わって行く。
「ただいま、アウローラ。……ただいま、」 目尻を下げて、小さく口角をあげながら 何度もそう繰り返しつつ、アウラの手を取る。
触れた手は、いつかの様に冷たくも、傷だらけでもなく
確かに暖かな、人の温もりを持っている。
アウラ
「おかえりなさい…」 指を絡めて 小さく頷いた
 
家の中に入れば、そこはまだ新たな家の独特の匂いがまだ残っている。建ってから少しばかり日は経っているものの、
君達を出迎えたのは、そんな匂いからだった。まだ慣れない場所の匂い。
リビングにやってくると、そこにはアウラが決めた通りの家具が飾られていた。
ルトヴィーク
「……」 そんな家の中を、やはり落ち着かない様子で見まわしている。椅子に腰を下ろせばいいものを、何処に行けばいいかわからないでいた。
その様子は、ローラだってこうまで緊張はしないだろうと思わせるほどだ。
アウラ
「ルトヴィーク」 落ち着いた様子で腰を椅子に腰を降ろして 「お茶にしましょう」
あくまでも青年を座らせるために少女は一度座ってみせた
ルトヴィーク
「……うん」 見た事もなかったインテリアに手を伸ばして、触れようとしつつ 声をかけられれば、彼女に倣って正面の椅子につく。
「なんだか、……気になっちゃうな」 色々、と周囲を見回して。
アウラ
「……、慣れて行きましょう」
「初めてですもの。それは気になってしまいます。貴方は香りにも敏感ですし」
ルトヴィーク
こくこくと頷きつつ、
「落ち着くから、アウローラの匂いならいいんだけど」 今はまだ、知らない匂いばっかりだ、と続けて。
アウラ
「……」 少し恥ずかしそうに頬を染めて 「次第に、そうなっていきますわ」
「貴方や私が過ごすんですから。家に染み付いていくはずです」
立ち上がって キッチンへと向かう
ルトヴィーク
「……じゃあ、混ざっちゃうな。俺のと、アウローラのと」
アウラ
「…お嫌ですか?」
ルトヴィーク
立ち上がったのを見れば、自分も続いて腰を上げて キッチンへと歩を進めて行く。
「ううん。どんなのになるんだろう、って」
アウラ
水を暫く出しっぱなしにして 会話を続ける
「きっと、落ち着くものになります」
ルトヴィーク
「うん。……」 ぼんやりとした返事をして 何かを考える様にぼうっとしている。
アウラ
「……ルトヴィーク?」
ルトヴィーク
「あ、と……アウローラとはじめて会った時の事、思い出してた」
「ほら、ピアノの」
アウラ
「ああ……」 思い至ったのか少女も頷いて
ルトヴィーク
「……最初の時はさ」
「うるさいなって、ずっと思ってた」
「……アウローラは、どうだった?」
アウラ
「そうですわね」
「いつか言ったことがあったと思いますが、何にも興味を持っていらっしゃらない方でしたから」
「此方を振り向かせてみようか、と思っていました」
ルトヴィーク
「何、それ」 返しながら、小さく笑みを浮かべる。その時には、決して浮かべなかったものだ。
アウラ
「以前言ったときとは違う顔が見られましたわね」
ふふ、と笑って ポットに水を入れる
ルトヴィーク
「え。……どんな顔だったの」 アウラの手を見ながら、その手順を覚えていく。
アウラ
「言葉は同じだったと思いますが、何処か不機嫌そうでした」
ルトヴィーク
「昔は、“好き”がなかったから。“嫌い”ばっかりだったんだろうな」
「……」 思い返せば思い返すだけ、アウラには辛く当たった事ばかりが思い返される。
そんな相手を振り向かせてみよう、と思えるのは、何故だったのだろう。視線を落として、金の髪と、空色の瞳をじっと見つめる。
アウラ
コンロで火にかけて ティーポットと茶葉を準備する
「……次はなんですか?」 ふふ、と笑って
ルトヴィーク
「……沢山あったな、って」
「襲われてるのに、俺の事を呼んでくれなかった事、とか」
アウラ
「沢山あった…?」 小首をかしげて
ルトヴィーク
「色々。……アウローラと一緒に色んな事をしたし、色んな物を見たよ」
アウラ
「……ええ、一緒に。沢山の時間を過ごしましたわね」
ルトヴィーク
「ハツヒノデも、ローラのことも、ぬくもり、のことも」
「プリンのことも。……それで怒らせたことも」
アウラ
「あれは……今だから言いますが、」
「ルトヴィークが悪いと思います」
ルトヴィーク
「俺?」 
アウラ
「プリンの話にしても、」
「女性を自分の部屋に招くときだと言うのに、他の女性のアクセサリを机の上においていたり」
「他の女性の話をしたり、」
「色々と、問題がありましたわ」 何処か先生じみた口調で少女は少し睨んできた
ルトヴィーク
「……」 一つ一つ聞きながら頷く様は、それこそ先生に叱られる生徒のようで。
「……それ、何でいけないの?」 
アウラ
「先ず招いてる時点で、」
「普通はより親密な関係であるということですわ」
ルトヴィーク
「うん。……他の奴は、呼ばないし」
アウラ
「それなのに、その女性を一番に見ていない様な振る舞い。例えば以前の恋人のアクセサリだとか、そういった物が大事にとってあったら」
「私はその時点で帰ります」
「他の女性の話をするのも減点です」
ルトヴィーク
「……」 それぞれにやはり頷きを返しつつ
アウラ
「その女性の方が興味があるのではないかと思わせる行為だからです」
ルトヴィーク
「じゃあ、アウローラは」
「自分を一番に見られてない、って思ったから帰ったってこと?」
アウラ
「はい。少なくとも視線があっちこっちに向いていると思いました」
お湯が湧き、ティーカップの方に先ずお湯を注いでいく
ルトヴィーク
「……」 それを聞けば、小さく苦笑して
「俺にはずっと、アウローラが一番だったのに。……そう思わせてたのは、ごめん」
アウラ
「…‥、困った方です」 微笑み カップを温めるとお湯を流しに捨てて
ルトヴィーク
「……覚えてる? 宿題、って言われてたの」
「アウローラが怒ると、ここが気持ち悪くなって。笑うと、楽になるのが何でか知ってたら教えて、って言ったら」 言いながら、自分の左胸に触れて 
「嫌いと、嫌いじゃない。その他の気持ち(こと)も解ったら、教えてあげる――って、言われてたの」
アウラ
「ええ……、それは、ですわね」 ティーポットにお湯を注いで 蓋をする 砂時計をひっくり返してから ルトヴィークを見つめて
「もう教えて差し上げたのですよ?」
ルトヴィーク
「……ん、と」 小さく頭を掻いて ぎぎ、と音がしそうな程にゆっくりと、首を傾げた。
アウラ
「でも改めて言葉にしましょう」
「答え合わせです、ルトヴィーク」
ルトヴィーク
「うん。……教えて、アウローラ」
アウラ
「好き、愛してる、言葉で言えばそういうものですが、好意と呼ばれるものです」
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BGMを変更 by アウラ
Rubrifolia100%
アウラ
ジルベルト様がわざわざ見つけてきて下さったBGMです
本編で使う予定はあったのですが、挟む暇がなくて
ルトヴィーク
ほうほう……
アウラ
曲名はRubrifolia アカカタバミ ですわ
ルトヴィーク
盤外でもいい仕事をしていく憎たらしい男め……!
アウラ
「相手のことが好きだから……、気にかかるから」
「相手に嫌われたり怒られたりすると、胸が痛むのです」
「笑うと、自分のこと以上に、嬉しいんです」
「私が、ルトヴィークに感じていることと、一緒なのです」
ルトヴィーク
「……、じゃあ、俺、ずっと前から」
「アウローラの事、好きで、あいしてたんだな」 確かめる様に言って、安堵した様に息を吐き。一緒、と聞けばはっとした様に困った顔をした。
「……どうしよう、アウローラ。俺、あんまり笑ったりしてない」
アウラ
「だから、」
ルトヴィーク
――、うん」
アウラ
「ええ、でも分かります」
ふふっと笑って両頬に触れる
「貴方が嬉しい時、楽しい時、悲しい時、不機嫌な時」
「全部、分かっています」
ルトヴィーク
触れた手に安堵した様に目を細めつつ、自分からもアウラの背に手を回す。
「……ほん、とに?」
アウラ
「はい」
ルトヴィーク
「……いまは?」 
アウラ
「だから大丈夫なのです。無理に笑わなくても」
「……そうですわね、こうして居たい、でしょうか」 頬から背中に手を回して抱きしめて
ルトヴィーク
「うん、……うん」 頷きながら身体を寄せて、安堵した様に身体の力が抜けていく。
「お見通し、みたいだ。……全部」
アウラ
「……ただ、二人きりのときだけです」
「…家なら、いつでも…」
ルトヴィーク
「……ん、解った」 頷いて、そのままじっとして――
――動かない。言葉も発さずに、べったりとくっついている。
アウラ
「……さて、渋くなってしまう前に淹れましょうか」 離れるように促す
ルトヴィーク
「あ、……うん」 完全に意識の外に行ってしまっていたティーカップに視線を向けつつ、ゆっくりと離した。
アウラ
「……」 頬が赤いのを隠すように お茶を注いでいく
ルトヴィーク
その背中に、ぼんやりと安堵する。仕事に出ている時とも、初日の出を見に行っている時とも違う。
ただ一緒に居られる、というそれだけで、とても安心している――という事を自覚しないまま、彼女のそばを離れようとしない。
アウラ
「さ、戻りましょう」 
ティーカップをソーサーに載せると一つをルトヴィークに差し出して
ルトヴィーク
「解った」 受け取って、キッチンを出てリビングに戻り 机の上に置くと、椅子に腰かけた。
「……アウローラは、連れていかれてる間……一人で、怖くなかったの」 
アウラ
「ほとんど眠らされていましたから」
「ずっと夢を見ていた気がします」
ルトヴィーク
「……どんなの?」 いただきます、とカップを傾けて
アウラ
「……内容をはっきりとは覚えていないのですが…」 問われてみれば、どうだろう、という表情で
「鏡写しの自分を見ていた気がします」
「……、それで何をしていたか、というのは思い出せないのですが…」
ルトヴィーク
「鏡? ……」 言われて、剣の少女を思い浮かべ――傍らに視線を向ける。
アウラ
「……、ルトヴィーク?」
ルトヴィーク
「ううん。……あの、剣の娘の事、思い出してた」
アウラ
「剣の娘…ですか?」
ルトヴィーク
「あれ、……言わなかった、っけ」
「女の子が見えるんだ。アウローラによく似た」
アウラ
「ああ、いえ……改めて言われると、いまいちピンと来ないというか…」
「……、よく似た、ですか」
ルトヴィーク
「うん。鏡、っていうから、思い出して」
「……あの時はまだ、アウローラが剣を持ってたから」
「だから、関係あるのかな、って……」
アウラ
「……ある、かもしれませんが、」
「まだまだ分からないことだらけですから‥」
ルトヴィーク
「……そう、だね。アウローラの事もあるから、無理はさせないよ」
「……」 魔剣屋の言葉を思い出し、ぐ、と拳が机の下で作られる。
アウラ
「ただ……そうですわね、誰にも言わないって約束してくださいますか?」
ルトヴィーク
「……、……うん」 このタイミングでのその前置きに、緊張を隠せない。
アウラ
「もしその子が、貴方に見える形で私の姿をとっているなら、」
「私が居なくなってもその子は残るということですわよね」
「貴方の手元に」
ルトヴィーク
――アウローラ」 短く名前を呼ぶ。声色には、怒りが乗せられている。
アウラ
「……、ごめんなさい。ルトヴィーク」
ルトヴィーク
「……あの子はあの子だよ」
「アウローラは、アウローラだよ……」 カップを置き、視線が逸れて行く。
「だから、……もう、言わないで」
アウラ
「……ええ、そうですわね」
「もう言いません。忘れてくださいますか?」
ルトヴィーク
「うん。……うん」 頷きながら、カップを傾ける。
「……ずっと一緒だよ。もう、離れないから」
アウラ
「ただ、変わったことがあればそれは都度教えて下さい」
ルトヴィーク
「アウローラも。……ちゃんと全部、伝える」
アウラ
「ええ。分かりました」
ルトヴィーク
「……」 席を立つと、ゆっくりとアウラの後ろに立って そのまま、背中越しに緩く抱き着いた。
回された手は、どこか緊張する様に力が込められている。
アウラ
「……。」 そのまま手を重ねるようにして 撫でる
ルトヴィーク
温度に目を伏せながら、そのまま体を預けて
「……アウローラ」
アウラ
「……はい、ルトヴィーク」
青年の体温を感じながら名前を囁き返して
ルトヴィーク
「……怖いなら、言ってね」
「剣の事も、他の事も、全部だよ」
アウラ
「剣の事は、ピンと来てないというのが正直な話ですわね」 「……だって身体になにかあるわけでもありませんし、」
「他のことと言っても、貴方が居て、怖いことなんてありませんわ」
ルトヴィーク
抱き着きながら、小さく頷く気配がして
「……うん。怖い事も、嫌な事も、全部俺が守るよ」 改めて決めた様に、そう言葉にして
「……英雄に、なるから」 
アウラ
「夢を持つ、というのは、大事なことです」
「……応援していますし、支えます」
「だから、大丈夫です」
ルトヴィーク
応える様に、ぎゅっともう一度身体を寄せる。
「……頑張る」 言って、ゆっくりと身体を離して 
アウラ
「……、さて」
ルトヴィーク
とん、とアウラの肩を叩く。
アウラ
「今日のスケジュールをこなしましょうか。休憩は終わりで──、?」
ルトヴィーク
「もうちょっとだけ。……地下(した)、行こう」
地下には、防音の処理を施された部屋があり、先程搬入したピアノが置かれている。
「……まだ、聞いて貰ってなかったと思うから」
アウラ
「ああ、……では行きましょうか」 ふふ、と笑って 「楽しみだったんです」
ルトヴィーク
「うん。……おれ、弾ける様になったよ」 その笑顔に釣られて微笑み、手を差し出した。
アウラ
手を握り返して 案内される
階下へと続く階段を下って、小さな扉の向こうに
ひとつのピアノが置かれている。大きくはないものの、十全な音が奏でられる――そう、アウラが判断出来た一品だ。
ピアノチェアは一人用のものではなく、やや大きなものが置かれている。
ルトヴィーク
ピアノに近付いて行くと、鍵盤蓋を開いて
部屋の中にあるテーブルと、その横のソファをアウラに示し。
「……聞いてね」 微笑みながら、その指を鍵盤に触れさせる。
アウラ
「はい」 ソファに座って
ルトヴィーク
それを見ると、ゆっくりと けれど、確かに演奏が始まって――
――音を嫌い、発する人も楽器(もの)も疎ましい、と語っていた青年のその指から
アウラへ向かって、旋律が奏でられていく。
その演奏の技術は、確かに目を見張るものではなかったが、
ただひとりに聞いてもらう為に、青年はその指を躍らせた。
――やがて、演奏が終わって 最後の一音を奏でて
「……どう、」 鍵盤から手を放すと、アウラへとそっと視線を向けた。
アウラ
「……ええ」 ふふ、と笑って
「素晴らしい演奏でした。ルトヴィーク」
青年のために、拍手を贈る
「ただ、そこまで弾けるのなら」
「一緒に、弾いてみましょうか」
立ち上がると、青年の隣に座って
鍵盤に指を載せる
ルトヴィーク
――、一緒?」
首を傾げながら、隣に座った少女に視線を向けた。
アウラ
「連弾、というものがあるんです」
「貴方の曲に、私が音を足しましょう」
ルトヴィーク
「連弾、……」 瞬きをして、笑みを浮かべて
「うん。したい」 応えながら、自分の指も鍵盤に載せて
肩を軽く少女へと寄せた。
アウラ
「では弾きはじめてください。私が後から音を載せていきますわ」
ルトヴィーク
「じゃあ、……行くよ」 頷きを返して、もう一度演奏を始めて行く。
一度目と同じように しっかりと同じリズムで、同じ音を響かせる。
アウラ
それに合わせて音を足してメロディをより深いものにしていく
最初からこうだったかのように、音が響き合わさって一つの曲になっていく
ルトヴィーク
それを聞くたび、青年の表情は穏やかに、指先は軽やかになっていき
二人の演奏は、より朗らかに 明るく奏でられていく。
 
二人だけの演奏会は暫く続いて
ローラを引き取りに行くのが遅れたのは、ご愛嬌
次の日二人で謝りに行って、 二人の引っ越しは一先ず完了することになる
今暫くは、この穏やかな時間が続きますようにと
青年と少女は意識的にか無意識的にか
祈るのだった
 
!SYSTEM
BGMを削除 by アウラ
アウラ
ではお疲れさまでした
1セッション分くらい話し込んでいましたわね
ルトヴィーク
お疲れ様でした。
そうだね、がっつり話してた……ありがとう。
アウラ
ゆっくり時間が取れてよかったですわ
またお話しましょう
お付き合いありがとうございました
ルトヴィーク
うん。次はまた冒険しよう
お疲れ様でした。
アウラ
はい
では失礼します
!SYSTEM
アウラが退室しました

BGMリスト

背景
BGM