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- ヘーレムが入室しました
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- ヘーレムが退室しました
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- シュナが入室しました
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- エスメラルダが入室しました
- シュナ
- さて、どこに呼び出すか
- エスメラルダ
- 王都に戻っているだろうから、それまでの道中ならどこでもいいぞ
- シュナ
- はい
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- アナスタシスとの戦が勃発。無足の荒野において行われた戦線押上のための作戦は、イルスファール側の魔動騎士が投入された事により成功を収めた。
- 当該魔動騎士の操縦者である5人は、その作戦の後にイルスファールへの帰路へついていた。
- その途中、イルスファールの駅=マギテック協会において、シュナはエスメラルダを人気の無い倉庫へと呼び出していた。
- シュナ
- 「─────」 任務につく格好のまま、身じろぎもせずに倉庫に立っている。普段は感情によって豊かに動く耳や尻尾は、まったくといっていいほど動いていない。
- エスメラルダ
- 「――それで、話とは」 呼び出された以上、他に聞かれる事を嫌ったのだろう。
- そう踏みながら指定された地点にやってくると、シュナに視線を向けずに口を開いた。
- シュナ
- 「貴方は察しが悪い方じゃないでしょう──いつまでそういう態度を続けるのか、という話です」
- 「あの戦いの後、貴方が憎しみに捕われているのは明らかです。そしてそれを隠そうともしない」
- エスメラルダ
- 「それを理解しているのなら、いつまで経てば、どこまで行けば止まるのかも解っているだろう」
- シュナ
- 「あくまでそれに拘ると?周りに危険を及ぼしても」
- エスメラルダ
- 「お前達を危険に晒した覚えはない。ただの力不足はあっても、それは憎しみのせいとは無関係だ」
- シュナ
- 「──気付いていないというなら言いましょう」
- 「貴方がそんなになってから、ウィスタリアは酷く沈んでいる。戦闘中であっても、貴方が憎しみを表にすればそれに気を取られている」
- 「それは、ヘーレムも、ヴィクトールさんも同じです。貴方を気にかける事によって注意が逸らされている」
- エスメラルダ
- 「……」 その言葉に僅かに眉を顰めたが、すぐにそれを消して。
- シュナ
- 「───まあ、本心で言えばそっちは二の次です。私は、貴方がウィスタリアの心をかき乱すことが気に入らない」
- 「どうしてそこまで憎いのですか。それを口にして下さい」
- エスメラルダ
- 「それを伝えた所でどうなる。……自分が起因しているものだと知らせて何になる」
- 「何かが解決するのならそうしよう。それで俺の刃がロキに届くのなら。だが、そうじゃないだろう」
- 「今必要なものは、理解じゃない。……まして、これ以上ウィスタリアに背負わせられるものか」
- シュナ
- 「そんなにも自分の復讐心が大切ですか」
- 「ウィスタリアをないがしろにしている男がよく言う」
- エスメラルダ
- シュナを一瞥して、静かに息を吐く。
- 「そうだな。……今は何より、シオンを騙し、皆をウィスタリアに殺させたロキが憎くて堪らない」
- 「復讐が、今は一番大事なものだ。……誰の為でもない、俺の為に」
- シュナ
- 「死にたがっていて、実際ウィスタリアにそれをさせてしまった自分が言えた義理じゃないですけどね」
- 「実際、私達は死んだんですよ。今ここにいるのは、カグラがその身を賭して私達をすくい上げてくれたからに過ぎません」
- 「それは私達が弱かったからです。ウィスタリアに、カグラにそうさせてしまったのは、結局は私達の責任だ」
- エスメラルダ
- 「そうだな。……《魔動騎士》を呼ばれる前に、断ち切れなかった」
- シュナ
- 「それを棚上げして、あいつのせいだと自分の復讐に捕らわれるのは、お門違いじゃないんですか」
- エスメラルダ
- 「弱ければ、守れなかったのならば、害した相手を憎む事すらお門違いだ、と?」
- シュナ
- 「ウィスは、自分の手で殺めてしまった自責を持ちながら、立ち上がってくれた。事態を打開するために、より良い結果を求めるために動こうとしています」
- 「──それは貴方にも十分分かっている筈です。そのウィスタリアの想いに背を向けることが、お門違いではないかと言っています」
- エスメラルダ
- 「――、……」 目を細めながら、頭を振る。
- シュナ
- 「貴方は──ウィスタリアにとって大事な人なんですよ」
- エスメラルダ
- 「それはシュナも皆も変わりはしないだろう。ウィスタリアにとって、大事だというのは」
- 「想いに背を向ける、か。……状況を打開する、という一点は、俺達が見ている方向は変わらないだろう」
- シュナ
- 「ええ、だから分かります」
- 「ウィスタリアが、本当に大丈夫だと思いますか?」
- エスメラルダ
- 「……、では、ないとしても。皆がいるだろう、シュナも」
- シュナ
- 「そこに貴方がいなきゃ、ダメなんですよ」
- 「正直──昔、貴方がウィスタリアにちょっかいをかけている時、私は非常に気に入りませんでした」
- エスメラルダ
- 「……見てきた様に言うんだな」
- 「ちょっかい……?」
- シュナ
- 「随分と干渉したでしょうが」
- エスメラルダ
- 「何を言ってる。……いくらか会話をした程度だろう」
- シュナ
- 「──自覚が無いというか、自己評価が低いのは貴方の悪い癖ですね」
- エスメラルダ
- 「請ける依頼が被る事はあったが、ちょっかい、と言われる様なものを出した覚えはない」
- 「ただの同僚だ。ただ、放っておけなかっただけで」
- 「……ヘーレムと同じだ、と言えば伝わるだろう。放っておくには危ういんだ」
- シュナ
- 「──よく言いますよ」
- エスメラルダ
- 「何を勘違いされているかは知らないが――ウィスタリアは大丈夫だ。彼女は前に進み出せているし、支える仲間もいる」
- 「心配になるのは、解るけれどな」 言って、視線を外す。
- シュナ
- 「そう思うなら節穴です」
- 「ウィスは明らかに貴方を気にかけている。あなたがそうなってしまった事で、どれだけ暗い顔をしているのか知っていますか?」
- エスメラルダ
- 問われて、記憶を探って――すぐに答えが出る。
- シュナ
- 「貴方がその心のままに突っ走ったとして、また、それで倒れたりしたら」
- エスメラルダ
- わからない。カグラの力で起き上がって以来、誰の顔も確りと見た覚えはなかった。
- シュナ
- 「彼女はきっと立ち直れません」
- エスメラルダ
- 「俺は死なない。……ロキを殺すまでは、何があっても」
- シュナ
- 「それで、その後はどうするんですか──元に戻れるとでも」
- エスメラルダ
- 「今は、アンドラスもある。何も無かった頃とは違う――……、解っているなら、聞くな」
- シュナ
- 「お前が守ろうと思ったものは、そんな事をお前に望むのか」
- 「貴方の言葉ですよ」
- エスメラルダ
- 「――、……」 歯噛みして、シュナに視線を戻す。
- シュナ
- 「彼女が歩く道を護りたいと私に言ったのも、貴方ですよ。忘れたとは言わせません」
- エスメラルダ
- 「……その役目は、俺が果たせなくとも構わない。あの頃よりも、彼女の周りには人が増えた」
- 苦し紛れに吐き出して、合わせた視線がもう一度外れていく。
- シュナ
- 「……無責任です」
- エスメラルダ
- 続いた言葉には、ぐっと唇が結ばれた。
- シュナ
- 「さっきも言いましたが、貴方がどう思うか関わらず、貴方の存在はウィスタリアの中でもう大きなものなんですよ」
- 「見てきたように言う、とさっき言いましたが、ええ、見ていますよ。私はウィスタリアの姉の様なものですからね」
- エスメラルダ
- 「……なら」
- 口元を歪ませつつ、二、三言葉を濁し
- 「……」 呑み込む様に沈黙し、変わらずシュナへ視線は合わせない。
- シュナ
- 「──私と貴方は似たようなものです」
- 「私は過去の責から死を望む様になりました。ウィスタリアのことは気がかりでしたが──他の皆や、貴方がいるから大丈夫だと、履き違えていた」
- エスメラルダ
- 「……」 聞きながら、心中でのみ頷きを返す。
- シュナ
- 「結果はあの通りで──ウィスタリアは、全然大丈夫じゃありませんでした」
- 「それで私は気付きました。ウィスタリアの笑顔の方が、私の望みなんかよりずっと大事です」
- 「過去が自分に刃を向けてきても、ウィスやカグラに、生きていて欲しいと思って貰えるなら、私は胸を張って前を向いていられます」
- 「──復讐心は否定はしません。けど、貴方には失うものが無い訳じゃないでしょう。失いたくないものの為に、歩けないのですか」
- エスメラルダ
- 「笑顔、……」 小さく反芻しつつ、先程向けられた――返された言葉に僅かに視線が揺れる。
- シュナ
- 「ウィスやヘーレムが傷つくと、今だってエスメラルダさん、心配そうに振り返るじゃないですか」
- エスメラルダ
- 「……当然だろう。部隊の人間なんだ、欠けては行動に支障が出る」
- もう一度、苦し紛れの言い訳を重ねながら、言葉から逃れる様に視線が僅かに下を向く。
- シュナ
- 「ここで部隊を持ち出しますか」 苦笑し 「かなり苦しいですよ」
- エスメラルダ
- 無自覚に、言われなくとも解っている、とばかりに眉を顰めてみせて。
- 「……俺は、ロキが憎い。この手で殺したいと思う」
- シュナ
- 「──ええ、そこは否定はしません」
- エスメラルダ
- 「そんな人殺しを、ウィスタリアの傍に置く訳にはいかないだろう。それを、彼女が望まなくとも」
- シュナ
- 「────ああ」
- 「エスメラルダさん。傲慢なんですね」
- エスメラルダ
- 「……ああ、そうだな」
- シュナ
- 「でも、それを許す許さないは彼女ですよ。彼女はもう、自分でものごとを決められる、一人前の人間です」
- エスメラルダ
- 「俺が、俺を許さないだけだ。傲慢だろうが、何だろうが」
- シュナ
- 「そういう傲慢、かっこ悪いですよ」
- 「まあ、女は、男なんてみんなかっこ悪いなんて知ってるものです」
- エスメラルダ
- 「……ヴィクトールほど、出来た男じゃないからな」
- シュナ
- 「──分かっているなら、その内心を吐露してしまえばいい。別に情けなくたっていいでしょう」
- エスメラルダ
- 「先程も言ったろう。ウィスタリアに、これ以上背負わせるつもりはない。……それに」
- 「ウィスタリアの笑顔は、シュナや皆が叶えてくれるのだろう。立ち止まっても、また歩き出せるのなら、……」
- シュナ
- 「───ほんと、貴方がそういう態度を続ける事の方が、背負わせ続けてるって気付かないんですね」
- エスメラルダ
- それで良いだろう、と続けようとして、無意識に言葉を詰まらせて眉を顰めた。
- シュナ
- 「それとも気付かないふりをしていますか」
- 「自分がウィスタリアにとって大切な存在だと、認めるのが怖いのですか?」
- 「それとも、ウィスタリアが貴方にとって大切だと認める方が?」
- エスメラルダ
- 「……どちらにしても」
- 「復讐なんて体のいい言葉で飾って、人を殺す事を望む者がウィスタリアの大切なそれである事も、ウィスタリアを大切にする事も、俺は受け入れられない」
- 「カグラの意志を受け止めておきながら、その力で生き永らえていながら」
- 「憎しみを捨てられない俺自身も、そんな奴が誰かの大切な存在になるなんて事も、許せないんだよ」
- 「火が付いたものを捨てられないのなら、進む他にないだろう」
- シュナ
- 「───ほんと、よく似ていますよ」
- 「言わんとすることは分かりました」
- エスメラルダ
- 「……話は終わりでいいか」 頷きを返して
- 「仲間達に影響が出ているのなら、可能な限りそうさせない様に勤めよう」
- シュナ
- 「ええ、これ以上は罵倒になるので、私からは以上です」
- 「そうして下さい。ヘーレムも泣きそうですからね」
- エスメラルダ
- 頷きを返すと、踵を返して歩を進めて行く。
- シュナ
- 「お付き合いありがとうございました」
- エスメラルダ
- 復讐心よりも、ウィスタリアの笑顔の為に、失いたくないものの為に。
- 投げ掛けられた言葉に、カグラに灯されたそれが確かに強くなるのを感じつつ、やってきた時よりも重い足取りでその場を後にした。
- シュナ
- 「───」 ふう と一人になった倉庫の中で溜息を吐き出す
- 「まあ、これを解決できるのは私じゃないかな」 呟きの内容は後ろ向きであるが、尻尾は静かに揺れるのであった
-
-
- シュナ
- こんなところで宜しいでしょうか
- エスメラルダ
- ありがとうございました。せっかくなので独白をこの後に突っ込んでもいいでしょうか
- (ログ的な意味で
- シュナ
- 了解ですよ
- エスメラルダ
- ありがとうございます。では一先ずお疲れ様でした!
お付き合いありがとうございました……
- シュナ
- 格納に関しては、みたい人もいそうなのでちょっとの間残しておきましょうか
- エスメラルダ
- はーい。では終わり次第時間を見てGMに連絡しておきます
- シュナ
- はーい
-
- 逃げる様にその場を後にした後、人気のない所へと歩き続けて――
- 人通りの無い静かな空き地を見つけると、その壁に寄りかかる様に座り込む。
- 〈星の標〉の自室に戻りたくはなかった。今は誰と顔を合わせる気分ではなかったし、
- 何かを取り繕うだけの余裕も持ち合わせてはいなかったからだ。
-
- シュナの言葉が、頭の中で何度も反芻される。
- ――貴方には失うものが無い訳じゃないでしょう。失いたくないものの為に、歩けないのですか。
- ――それで私は気付きました。ウィスタリアの笑顔の方が、私の望みなんかよりずっと大事です。
- 胸を埋める様に雪崩れ込み、あっという間に埋め尽くした泥の様な殺意と、今ある失いたくないもの。
- どちらを大事にするかなど明白だ。
- 殺められた仲間達や、殺めさせられたウィスタリア、呼び醒ましたカグラ――その誰の一人も望んでいない復讐となど、比べるまでもない。
- そんな事を解っていながら、心の中で火が付いたそれを捨てる事も、眼を逸らす事も出来ずにいる。
-
- ――ただ、ただ憎い。仲間が殺された事が、何より、それを人形だと罵られたウィスタリアに行わされた事が。
- その泥が、消えてはくれない。誰にも望まれていないものだと解っていても、
- カグラが望み、祈った未来と異なっていると解っていても。
-
- もう一度、シュナの言葉が巡って来る。
- それが過ぎれば、もう一度。何度も、何度も。
-
- 気付けば、どれだけそうしていたのか。既に長くなった陽も傾いていて、
- 俯いていた顔を上げ、淀んだ瞳で空を見上げれば、その空はもう赤く染まっていた。
- 胸を埋める泥と、その奥で瞬く灯火が、シュナやシオンの言葉で確かに揺れているのを感じながら、
- ゆっくりと腰を上げ、人通りの少ない道を選びながら空き地を後にした。
-
- どうすべきかは、きっともうわかっている。
- 俺だって、ウィスタリアの笑顔の方が大事だと、そう思う。
- けれど、それでも消えず、そんな思いも塗潰していく殺意の泥を拭えないまま、
- 部屋に戻ればすぐに寝台へ身体を放り、意識を寸断する様に休息を取った。