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亡国のアナスタシス 幕間

20210501_0

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ウィスタリアが入室しました
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エスメラルダが入室しました
 
 
 
 
 
 
 
カグラの目的のために、レオンと共にポルダから北西に行った遺跡へと足を踏み入れる一行
遺跡──街の中心部にある研究所の跡地を降下していくうちに、一つの部屋 倉庫で休息を挟むことになった
交代で見張りを立てながら 休息をとる一行 倉庫の隅で壁により掛かる青年に一つの影が近づいた
エスメラルダ
――、……」 額から稲妻の様に歪な形を描きながら伸びる角をそのままに、右目を覆う痣を持つ青年は、視界の隅に伸びた影を見て――
反射的に。ただ反射的に腰の刀を引き抜き、その切先を影へと向けながら腰を上げた。
ウィスタリア
「──‥‥」 影は、毛布を持ってゆっくりと近づこうとした少女で 剣先を向けられれば固まるようにして止まる
エスメラルダ
息を詰めたまま、表情に余裕は無く 仲間達から少し離れた位置で休息を取っていた青年の様子は、少女の知るそれとは全く異なっている。
ウィスタリア
「………、エスメラルダさん」 毛布を落とし、両手を上げて声をかける
エスメラルダ
声をかけられてから数瞬置いて、はたと気付いたように刀を持つ手が降り、そのまま床に刀を置いた。
――すまない。警戒をしていたんだが、」 努めて声を繕って、頭を下げる。 「これでは、いけないな。……力が入り過ぎていたみたいだ」
ウィスタリア
「………、少し、休まれて下さい」
声音にはエスメラルダやシュナであれば分かる心配の色が乗っていて
落とした毛布を持ち上げると ゆっくりと青年に近づいて差し出した
エスメラルダ
「……俺は大丈夫だ、自分の心配をしていなさい」 緩く頭を振って、差し出された毛布をやんわりと手で制した。
ウィスタリア
「……ですが、」
「……、私も通常ではありませんが、エスメラルダさんも通常の状態ではありません」
エスメラルダ
「……体調は、どうなんだ」 ぐったりと壁に背を預け直し、ウィスタリアに困ったような表情で問う。
ウィスタリア
「この仕事が始まってから、ずっと何処かを患っているかのような状態にあると思います」
「私ではありません」
「エスメラルダさんが、です」 補足するように言って 「…私は現在は良好です」
エスメラルダ
「ウィスタリアの話を、している」 きっぱりと答えて、続いた返答にはそうか、とだけ返し
「問題ない。こうしておく方が、いざという時に踏み出し易いだろう……幸い、これを気に掛ける様な部外者も周りにはいない」 とん、と角を示し。
ウィスタリア
「………、」 小さく肩をおとしかけて 「…いえ、でも」
「……戻せない状態というのは、極度の緊張状態にあると思います」
「……、問題は、あると思います」
エスメラルダ
詩的に小さく肩を震わせると、それを繕う様に、わざとらしい笑みを浮かべて肩を揺らした。
(指摘に
「大丈夫だと、」 ついには視線を逸らし、頭を振った。 
ウィスタリア
「──……、」
エスメラルダ
吐き出せる訳がないだろうに。圧し潰されそうな情報(もの)を一身に受け止めている、この小さな少女の前で。
ウィスタリア
「レオンさんとエスメラルダさんは、似ていると思います」
やや視線を下げながら、それでもはっきりと口にして
エスメラルダ
心中で吐いて、拳を握ったつもりが、身体は言う事を聞いてはくれない。極度の緊張状態という指摘はそのまま合っている様だな――なんて、そんな事を他人事の様に考える。
「俺が、レオンと?」 意外そうに首を傾げた。
ウィスタリア
「……、朴念仁です」 
エスメラルダ
「……わからずや、だと?」 少し不服そうに。
ウィスタリア
「……はい」 少し間を置いて少女は頷いた
エスメラルダ
「何がだ、本当に大丈夫だと言っているのに」 
ウィスタリア
「シオンさんとも似ています」
エスメラルダ
「……」 「一応聞くが、何がだ」
ウィスタリア
「……、口に出している事と、状況が真逆です」
エスメラルダ
「……」 珍しく食い下がるウィスタリアに、困った様に微笑み。
「そう、見えるか」
ウィスタリア
「……、はい」 また頷いて
エスメラルダ
「大丈夫だ、少し休めばまた動ける。……そんな顔をするな」 
ウィスタリア
「──、」自分の頬に触れて
「……」 離すと 「では、休んで下さい」
エスメラルダ
「ああ。……気を遣わせて、すまない」
ぐったりと身体を預けながら、立てた膝を抱く。
ウィスタリア
「……、」 受け取ってもらえなかった毛布を一度握ると 少女は青年の隣に座り込んで ピッタリと肩をくっつけた
エスメラルダ
「な、――にを、している?」 ぽかん、と口を開いて 予想だにしていなかった行動に目を丸める。
ウィスタリア
「──シュナさんが落ち着かれてない時は、こうして身体を近づけることがあって、」
「状況が近似していて、それで力になれるなら……なりたいと思いました」
「エスメラルダさんが、お嫌でなければ………」
エスメラルダ
「……平気だと、言っているのに」 苦笑しながら、ウィスタリアの肩に手が乗せられる。
ウィスタリア
段々と語尾は弱まっていって 少女は最後は視線を下にする
エスメラルダ
まるで力の入っていない手が彼女の肩を退かす様に押し込まれはするものの、撫でる様にその肩を滑り落ちる。
ウィスタリア
「……、」 肩が乗せられると 乗せられた時に小さく震えて そしてホッとしたように息を漏らした
エスメラルダ
力が入らない事に、そして小さく息を漏らしたウィスタリアにそれぞれ首を傾げた。
「……どうした」
ウィスタリア
「……、いえ、強く拒絶されるかもしれない、と思って」
少女はきもち、更に身体を寄せて
毛布を広げると エスメラルダの方にかけるようにした
「緊張が解ければ……眠れると思うのです」
エスメラルダ
「そうだな。……今、最も助けを受けるべきなのは、ウィスタリアだと思う。それを考えれば、こうしているよりも他にすべきことがある、と思うよ」
――、」 言って、ウィスタリアの様子を見遣る。
ウィスタリア
「……、…………、」 小さく肩が落ちると
「私がシオンさん……なら、そうは言われないのでしょうか…」 小さな声でそう呟いた
エスメラルダ
「……」 自分にかけられた布団を柔く掴むと、動きを止めて
「何故、そこでシオンの名が出る……」 困惑しながら、首を横に振る。
ウィスタリア
「………、」
青年の方を見ると 視線を一度下げて そしてもう一度上げると
意を決したように 右のこめかみを抑えて 「《デモン・ギア》の設計思想は──、」 と 何かを思い出そうと瞑目しながら口を開く
エスメラルダ
――、おい、何を……!」 身体を壁から離し、少女の肩を掴む。
ウィスタリア
「……っ、」 すぐに思い出すのを中断して 目を開くと青年を見つめる
エスメラルダ
「……何を、してる」 
ウィスタリア
「……、信頼を」
エスメラルダ
「やめてくれと、言った筈だ。……これ以上、明確なものを発見するまでは掘り返さない様にしてくれと――、?」
ウィスタリア
「信頼をして頂けてないのではないかと……、思って」
「………、私の過去に纏わる事を、話そうにも‥‥他に、覚えのあることが、なくて」
「私の素性を語ろうとしても、他に……言えることがなくて」
エスメラルダ
――、……素性を語る事だけが、信頼ではないだろう」 ――自分が彼女を信頼しているかは、別として。
ウィスタリア
「………、では、どうしたら良いでしょうか」
エスメラルダ
「信頼は、積み重ねから生じるものだ。……すぐにそう、とは、ならないだろう」 月並みな言葉を重ねながら、肩からゆっくりと手を離す。
ウィスタリア
「……了解しました」
エスメラルダ
「……、何か、気にかかっているのか」
「シオンの名前を出した事といい、信頼について、といい……」
ウィスタリア
「……、分かりません」
「ただ、……、エスメラルダさんの緊張を解したいと言うのは、事実です」
エスメラルダ
「解った。……、」 壁にもう一度身体を預けると、自分へとかけられた毛布を柔く掴み、それをウィスタリアにもかかる様に広げる。
「だが、俺としてはウィスタリアにも休息は取らせたい。……これなら、構わないか」
ウィスタリア
「はい、構いません」
エスメラルダ
「……ウィスタリア」 ぼう、と遠くを見ながら口を開く。
「あの日の手紙は、届いたろうかな」 
ウィスタリア
「………、」 少し視線を落として 「……届いたとは思います。ただ、」
「返事を、預かって居ないのです……だから、」
「……、……」
「………いえ」 視線を下げ、小さく肩を落として 「誤った報告をしました」
「色々学んでいるとは思うのです…ただ、まだはっきりとは、分かりません…」
エスメラルダ
「……、うん?」 肩を並べた横から、視線を向けて
「いいさ。急ぐものでもないと、出した時にも伝えたろう」
ウィスタリア
「……‥、やはり、もう少し…分かるようになりたいのです」
エスメラルダ
「……一度は、俺がウィスタリアの邪魔をしてしまったけれどな」 望む様に、と手紙を綴ったというのに、あのザマだったのだから。
「何を、だ?」
ウィスタリア
「……自分のことを、です」
「欠けてるから……‥分からないのだと。そう思うのです」
エスメラルダ
毛布が揺れ、青年の身体が強張った事が少女にも解り易く伝わる。
「……知りたい、のだよな。今も、これからも」
ウィスタリア
「……‥、エスメラルダさんは、知ってほしくは、無いのでしょうか」
エスメラルダ
ぴたりと、身体の動きが止まる。指一つも、視線ひとつも動かさずに、何とか口を動かし、喉を震わせる。
「ウィスタリアがしたい様にすべきだと思っているよ」
ウィスタリア
「……それは、エスメラルダさんの回答なのでしょうか」
エスメラルダ
「言葉に、しているじゃないか」 ぎこちなく視線を外し
ウィスタリア
「……私には、」視線を下げて 「私には、本当のことを教えては頂けないのでしょうか」
エスメラルダ
――、他には言っている、と?」 参ったな、と和やかに続けるものの 表情も取り繕えずに
ウィスタリア
「……いえ」
「…そういう意図では無いです」
エスメラルダ
そうして、話題を強引に挿げ替えて 
「……そうか」 否定も肯定もせず、届いた手紙(ことば)を放った。
「……ウィスタリアが、望む様にするんだ。俺は、それを支えると、信じると言ったろう」
「あの時の言葉に、嘘はない。あの時の言葉を、嘘にもしたくない」
ウィスタリア
「……、」 無表情の中に沈んだ色を載せて 少女は俯くようにして前方を見ることで青年から視線を外す
エスメラルダ
「だから、……」 それ以上は言葉を紡げずに、布団の中で下ろした手が、ウィスタリアの手に触れる。
ウィスタリア
俯いた顔が少し上げられて 青年に再び向けられる
ウィスタリア
っと、ちょっと受け取り
エスメラルダ
ああ、いってらっしゃい
ウィスタリア
戻ったよー
エスメラルダ
おかえりー
ウィスタリア
(だからの続きを待って少女待機中)
エスメラルダ
おっと、すまない切ったつもりだった
続けよう
エスメラルダ
「……だから、ウィスタリアが望む様にしてくれ。それでいいし、……それが、いいさ」 いつかと同じ言葉を、いつかとは違う気持ちで。触れた手を柔く握りながら繰り返した。
ウィスタリア
「………、」小さく頷いて 「……了解です」 と答えた それが本心ではないという気持ちを、はっきりと自覚しながら 
言葉の裏を、人の想いを、ただ正直に書き出す手紙ではなくて、言葉というものが、どういうものなのか、少女は学んだ
「──…」 小さく絡めるようにエスメラルダの指に触れて 少女は正面を向いて目を瞑る
ウィスタリア
私はこれでいいです。それからまたちょっと離席です…
エスメラルダ
「……」 ――嘘だ。そんな事、俺は思ってはいない。そんなものは、この手が全て示している。
これ以上、揺らいで欲しくもない。遺跡に踏み込む度に揺れる身体を見る度に、何度も何度も息が詰まる。
この先に進めば、きっとウィスタリアは苦しむのだろう。全てを知るまでに苦しんで、全てを知ってまた苦しむのだと、そんな確信がある。
その先で、幸せに過ごせるのだとしても。その先で、静かに眠れるのだとしても。それが、彼女の幸せであろうとも。
ウィスタリア
戻りました
エスメラルダ
この場に繋ぎ留めて、眼を塞いでしまいたい。――そんな、鬱屈とした感情の出所がどこかは、今も解らないけれど。
「ウィスタリア」 呼びながら、少女にゆっくりと肩を寄せて 力なく、頭を預ける。
エスメラルダ
おかえり
ウィスタリア
「……、此処に居ます」 小さく声だけで返して
エスメラルダ
「ああ、ウィスタリアも、休ん、で……」 小さく頷きを返しながら、気絶する様にふらりとウィスタリアに身体を預けた。
ウィスタリア
「……、」 そのまま青年の方に頭を傾けて どうか、この人の緊張が解れますようにと、なにかに祈った
エスメラルダ
――気付けば、少女を繋ぎ留める様に身体を預けた青年の表情は安らぎ その角は姿を隠していた。
エスメラルダ
俺もこれで大丈夫だ。
ウィスタリア
ではお疲れ様でした
お付き合いありがとうございました
エスメラルダ
お疲れ様。こちらこそありがとうございました。
ウィスタリア
撤退します。また
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ウィスタリアが退室しました
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エスメラルダが退室しました
背景
BGM