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- エスメラルダが入室しました
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- ウィスタリアが入室しました
- ウィスタリア
- 失礼します
- エスメラルダ
- いらっしゃい。
- シュナとの会話の翌日、昼頃でも構わないかな
- ウィスタリア
- はい。構いません
- エスメラルダ
- わかった。では描写しよう
-
- ――たどたどしく、けれどしっかりと記された手紙には
- 短く、いつかの頼み事が綴られていた。
- 王都イルスファール、〈星の標〉。
毎朝行われている、依頼争奪戦と揶揄されるそれも過ぎて
- 昼食を摂りに来た者達がやってきて また去っていった頃
- その宿の中庭で、一人の青年が店内から借りてきた椅子に腰かけて座っている。
- その傍には、屋外用の簡素な丸テーブルと 青年が座っている椅子と同じものが、もう一つ。
-
- まだ肌寒く感じられる春風が緩く吹いている 雲一つない、快晴の空の下で
- ぼんやりと、それでいて落ち着きがない様子で
- エスメラルダ
- 「――……」 青年は一人、空を見上げていた。
- エスメラルダ
- どうぞ。手紙の中には中庭で待っている、という文面が合った形だな
-
- 暫くしてから きぃ、という音を立てて、店に続く扉が開く
- 白いブラウスに黄緑色のスカート 金色の髪に深い青の瞳の少女は、反射的に春にしては強い日差しに手をかざすようにして出てきた
- エスメラルダ
- 小さく息を呑んで、小さく身体を震わせると 背後から響いた音に、ゆっくりと振り向いていく。
- ウィスタリア
- ざっざっ、と芝生の上を歩いてい テーブルの近くまで来ると、青年に軽く頭を下げてから 「──、定刻通りとなります」と呟いた
- エスメラルダ
- 「……」 正面に少女を認めると、安堵したような それでいて緊張したような いくつかの感情が混ざった表情を見せる。
- 「ああ。……来てくれたんだな、ウィスタリア」
- ウィスタリア
- 「──、文面にはそう書いてありました」
- エスメラルダ
- 「そうだな。……」 頷いて テーブルの傍の椅子を示す。 「座ってくれ」
- ウィスタリア
- 「この時間、中庭で待つ、と。会うということを想定された文言のはずです」
- 「了解しました」 姿勢の良い立ち姿から僅かな距離を歩行して 席につく
- エスメラルダ
- 「うん。……その認識で合っている」 もう一度頷いて、歯切れが悪く返答をすると
- 席に着いたウィスタリアを一度、二度と視線を送り 小さく咳払いをする。
- ウィスタリア
- 「──、大丈夫ですか?」
- 少女は青年をじ、と見つめて
- 「基準よりも挙動が不審です。体調が悪ければ、次の機会を用意して頂くほうが良いと思います」
- エスメラルダ
- 「外傷がある訳じゃない。気にしないでくれ」 軽く手を示して
- ウィスタリア
- 「了解しました」 頷いて
- エスメラルダ
- 「少し、緊張を……そう、緊張しているだけだ」
- ウィスタリア
- 「危機感、不安感、焦燥感、その他負の感情というものを認知すると起きる現象ですね」
- 「なにか、脅威が近くにありますでしょうか」
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- BGMを変更 by エスメラルダ
- Innocence100%
- エスメラルダ
- 「……そうだな、この緊張は」
- 「ウィスタリアが起因している事は、その通りだ」 苦笑してみせて
- 「なあ、ウィスタリア。俺が前に伝えた事を、覚えているか」
- ウィスタリア
- 「自由に、身を処して欲しい。と」
- 「思うように、行動して欲しいと、お願いされました」
- エスメラルダ
- 「そうだな、……そう言った。他には、どうだ?」
- ウィスタリア
- 「もしもが起きる前に、身を退いて欲しい。冒険者稼業から引退して欲しいともお願いされました」
- エスメラルダ
- 目を細めて、小さく頷いた。
「そうだ。……それに対するウィスタリアの返答も、覚えているか」
- ウィスタリア
- 「──私の、好きにする、とお答えしました」
- エスメラルダ
- 「……うん」
- ウィスタリア
- 青年の目を見つめて
- 「その後の返答を、頂けていません」
- エスメラルダ
- 視線には、少しだけ弱った視線を返したが
- それは、すぐに普段のそれに戻る。
- 「その意思は、今も変わっていないか」
- ウィスタリア
- 「肯定します」
- エスメラルダ
- 「……未だ知らないものを、知りに行きたいか」
- ウィスタリア
- 「肯定します」
- エスメラルダ
- 「その途中で、自分が斃れる事があろうとも」
- ウィスタリア
- 「──前提として、」
- 「どの職業に置いても、命の危険というものはあります」
- 「代筆後の配送作業中に事故に見舞われる可能性もあります」
- 「生きている以上、死亡する可能性を0にすることは限りなく困難であると考えます」
- エスメラルダ
- 「ああ。……それと比しても、この仕事は危険だ、という事も承知だろう?」
- ウィスタリア
- 「肯定します」
- エスメラルダ
- 「……そうか」 視線を外して、少しだけ目元を緩め
- 言葉を切ると、ぼんやりと空を見上げ エメラルドの瞳が空を映し出す。
- 空を見上げながら、もう一度息を吐いて ウィスタリアに視線を戻す。
- 「ウィスタリア。遅れてすまないが、その時の返答をさせてくれ」
- ウィスタリア
- 「──、」 青年の挙動を見つめて
- 「はい」
- エスメラルダ
- 「自由にしろ、と言った割には 随分と、邪魔をしてしまったな」
- 「すまなかった。……ウィスタリアが望む様にしてくれ。好きに、ね」 声色は、普段のそれよりも柔らかく 暖かな熱を持っている。
- ウィスタリア
- 「──、了解しました」 少女は淡々とした様子で言葉を返して
- どこか、ほっとした印象が薄くではあるが見てた取れた
- ウィスタリア
- 見て取れた
- エスメラルダ
- 「……」 そんな様子に、嬉しそうに笑みを深めて
- 「けれど、……一つだけ、いいか?」
- ウィスタリア
- 「はい」
- エスメラルダ
- 「……何があっても、生きる事」
- 「生きようとする事をやめない事。……これじゃあ、二つだが」
- 「それを、忘れないでくれないか。どこにいても、何をしていても」
- ウィスタリア
- 「それは、お願いですか」
- エスメラルダ
- 「ああ、お願いだ」
- 「他には、きっと要らなかったんだ。……あの時、ウィスタリアが気を失った時にね」
- 「それだけでよかった筈の事を、忘れてしまったんだ。……だから、あんな事を」
- ウィスタリア
- 「留意します」 頷いて
- 「発言は訂正することが出来ます。過去を反芻する必要はないと考えます」
- エスメラルダ
- 苦笑してみせて 「そうだな。……もう、次はないよ」
- ウィスタリア
- 「戦闘状況下で意識を失うということは、死亡とほぼ同義です。戦力的な価値を失わせたという点で、」
- 「戦列に並んでいた者としては、理に適った感想であると思います」
- エスメラルダ
- 「違うな、ウィスタリア」
- ウィスタリア
- 「誤りがあれば、訂正を」
- エスメラルダ
- 「戦力として、ウィスタリアが気を失った事を案じているんじゃないんだ」
- ウィスタリア
- 「──、」
- エスメラルダ
- 「君自身が死んでしまう事が、……」 言葉が出てこない事に気付いて 目を瞬かせ
- 「嫌、……、違うな」 顎に手を当てて思案していたが、小さく頷いて
- 「怖かったんだ。ウィスタリアが死んでしまう事が、俺は怖かったんだよ。……心から」
- ウィスタリア
- 「他者の死亡に、恐怖感を覚えるのですか?」
- 「──、」 少し考え込む素振りを見せて
- エスメラルダ
- 「……だと、思うんだ」
- ウィスタリア
- 「──であれば、より生死に近いこの職業は、向かないと考えます」
- エスメラルダ
- 「はは、参ったな。向いていないのは、ウィスタリアよりも俺だったか」 笑みながら、ウィスタリアの返答に頷いて
- ウィスタリア
- 「?。なにか、面白い事を口にしたでしょうか」
- エスメラルダ
- 「いや、まあ、……案外否定しがたいと思ったくらいだよ」
- 「ウィスタリアは、近しい人……シュナと、もう会えないと思ったら、怖くはないか?」
- ウィスタリア
- 「…‥、よく、わかりません」
- 「ただ、昨日、」言葉を切って 「シュナさんが元から所属していた場所に戻りたいと仰った時、」
- 「必ず手紙を届けに行きます、と口に出ました」
- 「その時の感覚が、近いのでしょうか」
- エスメラルダ
- 「その時は、どう感じたんだ?」
- 小首を傾げて、ウィスタリアを覗き込む。
- ウィスタリア
- 「──、必ず会いに行きます、と」
- 「そう思いました」
- エスメラルダ
- 「……それは、会いたいから、だろう?」
- 「離れてしまっても、いつかは、って」
- ウィスタリア
- 「…‥はい」
- 間をおいて少女は頷いて
- エスメラルダ
- 「……死んでしまったら、どこに行っても会えなくなるんだ」
- 「そいつが居た場所を何度歩いても」
- 「話した場所に、何度戻っても」
- 「何処にもいないんだ。……手紙を出そうにも、宛先が解らない」
- 「それだけ遠くに、行ってしまうんだ」
- ウィスタリア
- 「──、死者と生者には、大きな隔たりがあります」 頷いて
- 「ただ、報いる方法が無いわけではないのです」
- エスメラルダ
- 「……報いる、方法?」 呆気にとられた様に、ウィスタリアを見つめて
- ウィスタリア
- 「届かない言葉や思いを語る事ではなく……、ただその無念を晴らす事であると、教わりました」
- エスメラルダ
- 「無念を、……」 言葉を切って 深く息を吐く。
- 「……」 「無念を晴らしてきた、のか?」
- ウィスタリア
- 「いいえ。その方法を伺っただけです」
- エスメラルダ
- 「……」 小さく安堵して
- 「そうだな。……そういう報い方も、きっとある」
- 「……けれど、もう会えない事には変わらないんだよ、ウィスタリア」
- ウィスタリア
- 「──、届かない手紙は、どうすれば良いのでしょうか」
- エスメラルダ
- 「……そうだな、大事に持っているか――」
- 「――……届くように祈って、送るしかないんだろうな」
- ウィスタリア
- 「…了解しました」
- エスメラルダ
- 「だからな、ウィスタリア」
- 「死なないでくれ。……何があっても、どこにいても」
- ウィスタリア
- 「──、一つ、ご質問をしてもよろしいですか」
- エスメラルダ
- 「ん、」 「何だろう」
- ウィスタリア
- 「どうして、そう思われるのかを、伺っても良いですか」
- エスメラルダ
- 「……」 「そうだな」
- 「ウィスタリアが、他の誰よりも大事だから、……だと、思う」
- ウィスタリア
- 「大事」
- エスメラルダ
- 視線を合わせて、言葉にして
- 「ああ。……そうだよ」
- 「な、何か……変か?」
- ウィスタリア
- 「価値あるものとして、大切に扱うという意味ですね……何故ですか?」
- エスメラルダ
- 「……ウィスタリアの事が、気になるからそう形容したんだ。怪我をしていたら気にかかるし、気絶した時は本当に怖かった」
- 「手紙を書いている時も、ただ歩いている時も、目で追ってしまうし」
- 「他人の生き方に口を出した事も、あれがはじめてだった。……大切だから、そう思ったり、してしまうのだろう、とな」
- ウィスタリア
- 「──、よく、わかりません」 困ったように
- エスメラルダ
- 「すまない。俺も、これが正しいとは思うんだが……」
- 説明が難しい、と続けて 小さく唸る
- 「……」 暫く沈黙して ウィスタリアを一瞥する。
- ウィスタリア
- 「──……」 青年の視線を受け止めて
- エスメラルダ
- 「そんな答えで、納得してくれるだろうか」
- ウィスタリア
- 「シュナさんや他の方にも伺ってみます」
- エスメラルダ
- 「む」 「俺がウィスタリアに感じている事を、か?」
- ウィスタリア
- 「はい」
- エスメラルダ
- 「そうか。……解ったら教えてくれ」
- ウィスタリア
- 「了解しました」 頷いて
- エスメラルダ
- 「……そんな所だ。一度会って、伝えたかった事は」
- ウィスタリア
- 「エスメラルダさん」
- エスメラルダ
- 「生き方の事と、生きていて欲しい事と、……うん?」
- ウィスタリア
- 「ご返答、ありがとうございました」
- エスメラルダ
- 「いいや。遅れてすまなかった、ウィスタリア」
- ウィスタリア
- 「お願いごとは、留意します」 小さく頭を下げて
- エスメラルダ
- 「……また、同じ依頼に向かう時はよろしく頼むよ」
- ウィスタリア
- 「はい」
- 席を立つと もう一度頭を下げて 「失礼します」 と挨拶すると 扉に向かって歩き出す
- エスメラルダ
- 「……ウィスタリア」 自分も立ち上がると、その背中に声を投げかけて
- 「また、手紙を書くよ」 それだけ言って微笑むと、小さく手を振った。
- ウィスタリア
- 振り返って 「お客様がお望みなら、何処へでもお届けします」 もう一度、お辞儀をして
- そのまま扉をくぐっていった
- エスメラルダ
- その背を見送って、小さく息を吐き
- 快晴の空から吹いた風に、ゆっくりと目を伏せ 暫く、中庭で休んでいった。
- エスメラルダ
- こんなところか。お付き合いありがとう。
- ウィスタリア
- はい。此方こそ
- それでは失礼致します。また
- エスメラルダ
- 描写があればどうぞだ。無ければ格納しよう
- お疲れ様。
- ウィスタリア
- 問題ありません。それでは
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- ウィスタリアが退室しました