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- ニオが入室しました
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- ジャンヌが入室しました
- ジャンヌ
- おまたせしました。
- ニオ
- ううん。こっちこそ、ね
- 今日はニオは出てこないけど、よろしくね
- ジャンヌ
- はい。よろしくおネギアします
- こほん、お願いします。
- ニオ
- ジャンヌの部屋にいくわ
- ジャンヌ
- 分かりました。
- ニオ
- よろしくお願いします
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- リアン地方、イルスファール王国
- 王都イルスファールには、他の国々と比較しても、遜色ない規模の各種神殿が立ち並んでいる
- 自然公園となっているアステリア神殿、王城からほど近いライフォス神殿等はその筆頭で
- ライフォス神殿では、神殿のない、第一の剣の神々も祀っている
- “騎士神”ザイアもまた、ケルディオンではあまり知られていない神であり
- ライフォス神殿で神像が作られていて、その神官たちはそこに暮らしている者たちが多い
- "宝剣級"冒険者である、ジャンヌ・ダルクという少女もまた、ライフォス神殿の宿舎に一室を構えている
- 君は、一日を終えて部屋に戻ってくるところだ
- 部屋の鍵を取り出し、開けようとする……が、鍵は施錠されてない反応を手元に返す
- ジャンヌ
- ドアノブに手を掛けてその違和感に気付くと、勢いよく扉を開く。 「まさか――」
- 神殿の中に泥棒など早々入って来られるものではない。そうなると、思い浮かぶ相手はごくごく限られていて……
-
- 窓が開けられていて、ベッドに腰をかけているのは、黒いフリルのドレスに 黒髪、そして付けられていない灯りのもとに、赤く光る双眸が2つ
- 「──、お邪魔しています」 静かに、声が響く
- ジャンヌ
- 「ニオ……!」 薄暗い部屋の中に浮かび上がる赤色を見て、思わず声をあげた。
- 扉を勢いよく閉めて彼女の元まで駆け寄る。 「……良かった。ご無事でしたか……」
- ニオ?
- 「──、お元気そうで何よりです。ジャンヌ・ダルク」
- 「……まあ、無事といえば無事です。五体はありますし、機能的には問題はありません」
- ジャンヌ
- 「それはこちらの台詞です。ずっと探していたんですよ……」
- ニオ?
- 「ただ、」 小さく息をついて 「制限時間はありまして。元気と言われると、そうでもありません」
- 「わたしの時は、イオンで通そうと思います」
- ジャンヌ
- 「そう、ですか」 胸に手を当てて少し顔を俯けた。 「……イオン。確かに、名前がちゃんとあった方がいいかもしれません。いい名前だと思います」
- イオン
- 「──、」 探していた、と言われると 小さく息をついて 「脱出するので精一杯でしたので、わたしの足取りを掴めたら、大したものです」
- ジャンヌ
- 「色々当たってみたのですが、多少の手掛かりをどうにか掴めたくらいで……助けに行くことは出来ませんでした。すみません」
- イオン
- 「……謝ることではないでしょう」僅かに表情を動かして 「乗っ取られたのはわたし達の不覚。あなた方の落ち度ではありません」
- ジャンヌ
- 「……いえ、それでも防げなかった、ここまで何も出来なかったのは私の力不足です」
- イオン
- 「傲慢ですね、ジャンヌ・ダルク。あなたは変わらない」
- 「……ただ、そんなあなただから、あなた達だから、頼りたい」
- ジャンヌ
- 「傲慢、ですか。……そうかもしれませんね。大した力がないと分かっていても、目の前のものを手放したくないと思うのは、傲慢で強欲だと思います」
- 「……はい」 頼るという言葉を聞いて、顔をしっかりとあげてイオンを見る。 「何でも、言ってください」 しゃがみ込んで手を伸ばすと、イオンの片手を両手でしっかりと包むように握った。
- イオン
- 「わたしに残された時間は、後2週間程です。それまでに、新しく薬を調達するなり、代替品を探すなりしないといけません」
- 手を握られれば、少し間を開けるようにして 視線を僅かに逸らした
- ジャンヌ
- 「2週間……。その間に、私に何が出来ますか」
- イオン
- 「そして、特別に"匙"が調整した薬の代替品を探すのは、ほぼ不可能です」
- 「つまり、薬のストックを探す必要があります」
- ジャンヌ
- 「出来れば薬に頼りたくはありませんが……あなたたちの身体のことを考えると、今は頼る他ありませんか」
- イオン
- 「はい…後10日もすれば禁断症状で動けなくなり、切れれば、症状で衰弱して死にます」
- ジャンヌ
- 「……分かりました」 決心したように頷いて。 「ストックの在り処には、心当たりは?」
- イオン
- 「かつて、星の標の冒険者達が関わった、"吸血鬼の庭"の屋敷がユスに隠されています」
- 「そこになら、ある程度のストックがあると思います。"匙"の研究所の一つでもありましたから」
- ジャンヌ
- 「ユスの森の中、ですか。……すぐに発たなければ、間に合いませんね」
- イオン
- 「依頼は、既に発行されていると思います。依頼人には、ジャンヌ達を指名するように依頼しておきました」
- ジャンヌ
- 「依頼人……? ソレイさんやマニエさんでしょうか」
- イオン
- 「いいえ、"桜木の斎王"の勢力の者じゃありません」
- ジャンヌ
- 「……その方は、信用出来る人物なんですか?」
- イオン
- 「ヴァンパイア・ハンター達と取引しました」
- ジャンヌ
- 「ヴァンパイアハンター……確かにそれなら」 協力してくれる可能性はあるだろうけど。 「一体、どのような条件で」
- イオン
- 「甘い男ではありますが、少なくとも裏切ったり見捨てたりはしないでしょう。それをするならもっと早く出来ますから」
- 「その屋敷は、"青薔薇の双輪"つまり、あの魔域で実験を手伝っていたヴァンパイア達の持ち物なのです」
- 「彼女たちを売りました」
- 「まあ、結果的に、ギリギリまで追撃をかけられることになったんですが…」
- ジャンヌ
- 「……そうですか」
- イオン
- 「つまり、依頼したいことは」
- 「彼女たちを討滅し、その上で実験室にある薬の回収、になります」
- 「表向きの依頼は、討滅の援護になるでしょうが」
- 「わたしの救援のための依頼を出した所で、払えるものは何もありませんからね」 自嘲的に小さく笑って
- ジャンヌ
- 「……」 握った手を離して両手をイオンの身体に回し、無言のままぎゅっと抱きしめた。
- イオン
- 「……だから、こうして、先回りしたのです」 息をつまらせながら 言葉を結んで
- ジャンヌ
- 「……はい。ありがとうございます、私のことを頼ってくれて」
- イオン
- 「──、」
- 「──ただ、懸念はあります」
- ジャンヌ
- 「懸念、ですか」
- イオン
- されるがままになりながら 提起して見せて
- 「わたし達は、"匙"からすればもう用済みです。ですが、ニオは、そう思っていない」
- 「今は眠っていますが、主導権を握っているのは彼女です──、だから、もし匙がその場に居合わせれば、どうなるかは分かりません」
- ジャンヌ
- 「…………」 抱きしめる身体を緩めて少し身体を離してから、目を閉じる。
- 「……難しい、ところですね。すぐに彼女の意思を変えるのは」
- イオン
- 「──ええ、ですから……、もし彼女が手を伸ばしたら、引いてあげて下さい。その時わたしは、きっと出てこれないので」
- ジャンヌ
- 「……いえ」 口元に微かに笑みを浮かべて首を横に振る。 「ニオが手を伸ばさなくても、無理やり引いて、連れて帰ります」
- イオン
- 「──本当に、あなたは」
- 「強欲ですね、ジャンヌ・ダルク」
- ジャンヌ
- 「……きっと、生まれつき――いえ、生まれ変わる前からそうなのでしょう」
- イオン
- 「上手くやりましょう……わたしは生きるためなら、どんな手段でも取りますから」 だからあなたを頼るのだ、と
- ジャンヌ
- 「はい。必ずあなたたちを助けます」
- 「……あなたは、この後はどうするのですか?」
- イオン
- 「──、」 小さく口の端をあげて その笑い方はニオとも似ている
- 「後1件、回っておく所があります。それに、ユスで先に待機する必要もありますから」
- 「街を出る前に、また一声かけに生きます。眠っていなければ、ですが」
- 「眠っていれば、少しだけ窓を開けますので、それで来たと思って下さい」
- ジャンヌ
- 「はい。ちゃんとそちらも伺ってあげてください」
- 「分かりました。その時までに美味しいお菓子を用意しておきますから、持っていってください。……味が少しでも伝わるように、頑張って作ります」
- イオン
- 「──、では先に分かる方を頂いていきましょうか」 瞳が僅かに光って
- ジャンヌ
- 「……そちらは、吸血鬼化が進んでしまいそうで心配なのですが……」 困ったような表情を見せて。
- イオン
- 「どちらにしろ、いただける人間というのは限られますから」
- ジャンヌ
- 「……ここで断って、途中で動けなくなって困るのも確かです。他の人には、求めないようにしてくださいね」
- イオン
- 「──、分かりました」
- ジャンヌ
- イオンの横に座ると、衣服を少しはだけさせて白い首筋を露わにした。
- イオン
- 「──、」 ジャンヌにしがみつくようにして かぁ、と口を開くと 長過ぎる犬歯が糸を引いて
- その首筋に、牙が降りる
- ジャンヌ
- 「っ」 牙が刺さると同時にぴくんと身動ぎして、目を閉じてイオンの身体を緩く抱きしめる。
- イオン
- 「──」 じゅるじゅる と啜り、喉を鳴らして 「──、はぁ…」 と声を漏らして更に吸う
- 「──……、」 ごくんと、大きく喉が鳴ると 「──、ふ、ぅ…。十分です」
- ジャンヌ
- 「っく、……ん……っ、っ……」 痛みと血が吸われて力が抜ける感覚に耐えるように、小さく声を漏らす。段々と抱きしめる手に自然と力が篭って。
- 「……っは、あ……」
- イオン
- 「──頂きました」
- ジャンヌ
- 唇が離れると傍にあった布を手に取り傷口に当て、大きく息を吐いた。 「久しぶりだと、なんだか緊張しますね……」
- イオン
- 「わたしが吸うのも久しぶりでした。普段はニオに任せきりなので」
- ジャンヌ
- 「もう1人が吸っただけでは、やはり十分に満足出来ないのでしょうか……」
- イオン
- 「いえ…そういうわけではありません」
- 「身体は一つですから…、それに、吸うのはニオの方が上手いでしょうしね」
- ジャンヌ
- 「どちらが上手いとかは、私にはよく分かりませんが……」
- イオン
- 「お菓子の件、楽しみにしておきます。……試しに砂糖は抜いておいてもいいですよ」
- ジャンヌ
- 「とにかく、これで活動するための力が得られたのなら良かったです」
- 「砂糖を抜きに? 分かりました。控えめにするか、砂糖を使わないものも考えておきますね」
- イオン
- 「はい。……十分ですよ」 間を置いてそう頷いて
- 「──、どうせ味は分かりませんから、という皮肉です、ジャンヌ・ダルク」
- ジャンヌ
- 「……いえ、そうとも限りませんよ」
- 「その身体になった後、世界中のあらゆる食べ物を食べたわけでもないでしょう?」
- 「もしかしたら味が微かにでも分かるものが見つかるかもしれません。試す価値は十分にあると思います」
- イオン
- 「まあ、そうですが‥‥」
- 「……強情ですね、ジャンヌ・ダルク」
- ジャンヌ
- 「ふふ、強引で強欲で強情……酷い評価を受けてしまいました」
- イオン
- 「事実です」
- ジャンヌ
- 「あなたが直せと言うのなら、努力はしてみましょう」
- イオン
- 「──、いいえ」
- 「直さないほうが良いです」
- 「きっと」 と立ち上がって
- ジャンヌ
- 「……はい」 嬉しそうに笑った。
- イオン
- 「それでは、また」
- ジャンヌ
- 「ええ、また、すぐに」
- イオン
- 扉を開けて、そして閉じる
- ジャンヌ
- その背中を見送ると、部屋に置いてある愛用の武具の元に歩いて、手を触れる。 「……さあ、頑張りましょう」
- そう呟いて、休むこともなく準備のために再び外へと出ていった。
- ジャンヌ
- これで大丈夫です
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-
- 翌日、ジャンヌが準備を整えて休んだ後 窓は少し空いていて、机の上に置かれたお菓子の包みは消えていた
- それが、彼女が招く、長い長い夜の始まりを告げるものだった
- ニオ
- これでいいわ
- ジャンヌ
- はい
- ニオ
- お疲れさまでした。ちょっと長めだったわね
- ジャンヌ
- ありがとうございます。会いに来てくれて良かったです
- ニオ
- 本番、よろしくね
- ジャンヌ
- こちらこそよろしくお願いします。
- ニオ
- ううん。出迎えてくれてありがとう
- それじゃあ、ね
- ジャンヌ
- はい、それでは。
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- ジャンヌが退室しました