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その意味を

20210101_L0

!SYSTEM
ルトヴィークが入室しました
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アウラが入室しました
アウラ
お邪魔致します
ルトヴィーク
いらっしゃい
ちょっと待ってね。
 
 
 
 
 
 
 ――王都イルスファール、〈星の標〉。
日々、多くの依頼が舞い込み、それを請けた冒険者達が発っていくこの宿の一室にて。
 一人の青年が、物件情報が記されているいくつかの紙を机の上に放った。
眼鏡に適うものはなかったのか、小さく漏れた声は不満気だ。
机の上にはいくつも紙が放られており、この所青年が情報を探して回っている事が伺える。
 
 ふと、青年が――最近ようやく仕組みを理解し、愛犬(ローラ)に会いに行く日付を確認できるようになった――カレンダーに視線を向ければ、
ルトヴィーク
――あ」 ぱちり、と一つ瞬きをして。
 
年の瀬が、もうすぐそこまで迫っていた。
 
 
 ――王都イルスファール、アステリア神殿にて。
この日は特に寒い日だった。空には雲がひしめいていて、冬らしい冷たい風が街を吹いていく。
神殿に訪れる者や、その前を過ぎる者達も確りと防寒対策に励んでおり
神殿に努めている者達も、同様に厚着をしている。
ルトヴィーク
 ――ただ、長袖ではあるものの、軽装でやってきていたこの青年を除いて。
 
 周囲の人々や神殿の者達は、彼を一瞥しながら寒そうねえ、などと零している者も居れば、
首輪付きがやってきた、と小さく揶揄する者もいる。
ルトヴィーク
「……」 青年はと言えば、そんな視線にも声にも気にする様子は無い様で
飼い主(アウラ)を探すように、視線を彷徨わせている。
それがまた、一部の者の視線を集めているのだが。
 
そのうちの1人がパタパタと神殿に続く道を走っていって 数分
青い神官服の上にコートを纏った短い金髪の少女と女性の間の風貌の娘が、青年に向かっていく
アウラ
「御機嫌よう、ルトヴィーク」 白い息を交えながら 白い薄い皮手袋の嵌った手が小さく振られる
ルトヴィーク
「……あ」 その声を聴けば、よく彼を見ているものであればわかる程度に喜色を浮かべて そちらへ向き直る。
「ごきげんよう、アウローラ」 鸚鵡返しにしながら、頷いて答えてみせる。
「忙しい?」
アウラ
「まあ、それなりに」 ふふ、と笑って 近くのベンチに誘導する
「ただ休憩する時間はあります。大丈夫です」
ルトヴィーク
「わかった」 頷いて、誘導に続いて歩いていく。
秋物だろう薄手のジャケットを羽織った青年は、ベンチに腰掛けると ゆっくりとアウラの手を引いた。
アウラ
手を引かれるとそのまま隣に座って
「もう少し厚いコートを選んだほうが良いですわ、ルトヴィーク」
ルトヴィーク
「?」 首を傾げながら、ジャケットを引っ張ってみせる。
「何で?」
アウラ
「寒いでしょう?」
「それとも、寒くはありませんか?」
小首をかしげて
ルトヴィーク
「あんまり。動くし」 続いた言葉には、頷いて答えて見せる。
よくよく服を眺めてみれば、
以前に買い物に二人で出かけた時、購入したものの一つである事は間違いないのだが、絶望的に季節感が欠けている。
アウラ
「…‥また今度買いに参りましょう」
ルトヴィーク
「……?」 「家?」
アウラ
「…家、ではなく。服です」
ルトヴィーク
「探してるんだけど、あんまり……あぁ」
アウラ
「…そうですか‥」 探し続けていると聞いて、かすかに困った顔をした
ルトヴィーク
「うん、わかった。……そうだ、アウローラ」 身体ごとアウラへと向くと、眼を覗き込んで。
その表情には、気づいているのかいないのか じっと覗き込んで
アウラ
「はい。なんでしょう?」
ルトヴィーク
「ハツヒノデ、見に行こう。もうそろそろだから」
アウラ
「…ああ、」 表情を綻ばせて 「そうでしたわね。去年も見に行ったのでした」
ルトヴィーク
「うん。……今年も、って思ったんだ」
アウラ
「今年も抜け出す算段をしなくてはいけませんわね」
ルトヴィーク
「……」 は。 「誘拐?」
アウラ
「それはいけません」
嗜めるように指を立てて
「ただ、去年と同じ場所、というのも」
「味気ないですわね」
「今年は、別の場所で見ましょうか」
ルトヴィーク
「別? ……また、あそこじゃなくて?」
「"綺麗"、だったけど」
アウラ
「ええ、ただもう一つ。綺麗な場所があるはずですわ」 ふふ、と笑って
ルトヴィーク
「……? それって?」 首を傾げて、アウラの眼を覗き込む。
アウラ
「……」 はっきりと目を合わせてしまって 少したじろぎながら 「…水上ですわ、ルトヴィーク」
ルトヴィーク
「水上」 「……水の上?」
その様子に気付き、少しだけ距離を取る。
アウラ
「はい。よろしければ、ジョナスへ行きませんか?」
ルトヴィーク
「ジョナス」 「ジョナス……って、どこだっけ」
アウラ
「イルスファールの西にある港町です」
ルトヴィーク
「うん。……じゃあ、そこから船?」
アウラ
「はい。少し出れば、水面から日の出が見られるはずですわ」
ルトヴィーク
「水面、か。……前は、地面から出てきてたね」
「覚えてる?」 
アウラ
「ええ、覚えていますよルトヴィーク」 微笑んで 「今回もあの服装ですわね」
「ではいつもの場所で待っていて下さい。またあの子に頼まなくては」
ルトヴィーク
「うん。いつものアウローラもすきだけど、あのアウローラもすきだよ」
アウラ
「…‥そう、ですか」 ちょっと目が逸らされて
「で、では、また後で」
ルトヴィーク
「ローラにも顔を見せてくる。先にあの場所に行って……」
「アウローラ?」
アウラ
立ち上がると 「あ、ああそうでしたわね。頼んでおきましょう」
ルトヴィーク
「……」 様子の変化に、首を傾げつつ 「何か、怒ってる?」
アウラ
「…怒っていませんわ。大丈夫です」
ルトヴィーク
「なら、良い。……じゃあ、またあとで」
アウラ
「はい。また後で」
 
 
ルトヴィーク
アウラと別れた後、ローラと会い 以前ほどではないものの、噛まれ、引っかかれ
それでも手を伸ばしては、不器用ながらに撫でて またな、と声をかけて 
一度宿へと戻って準備を整えると、約束の場所へと向かっていった。
 
 
アウラ
言い訳のための変装をさせた半泣きの神官を見送ると 自分の服をコーディネートする
去年と、今年。なんだか距離感が微妙に違うから、どうにも彼といると自分のペースが乱される感じがある
それでも、こうして出かけられるのは… と考えて 小さく首を振り
去年の服装 
濃い茶色のコートに 黒のニット帽 眼鏡に、白いマフラー 厚い生地の胡桃色でチェック柄シャツに黒いズボン 明るい茶色のショートブーツ
これらを広げると、少し悩んで ブラウスとプリーツスカート、黒いストッキングを選び直す
小さく頷くとしゅるりと着替え始めた
 
 
ルトヴィークが神殿の外で待っていると
参拝客に混ざって、変装したアウラが出てくる
アウラ
「お待たせしました、ルトヴィーク」 会釈して 眼鏡の位置を直す
ルトヴィーク
――、」 会釈を受けるよりも早く、彼女に気付き
声をかけられれば、少しだけ喜色を浮かべて頷いた。
「そんなに、」 言葉をそこで切って。ええと。
「…………」 ああ。 「今来たところ」
アウラ
「……」 目をパチパチとさせて 「何処で覚えましたの?」
ルトヴィーク
「本で読んだ。髪を切った奴から渡されたんだ」 カミユイ、って言うらしいよ
「もう、伸びちゃったけど」 また伸びた髪を、ついっと撫でて。
アウラ
「定期的に切りに行くと良いですわ…私はそろそろ伸ばそうと思っていますが」
ルトヴィーク
「伸ばすの」 言いながら、無遠慮に髪へと手を伸ばす。
アウラ
ルトヴィークの手を手で払うようにして
「駄目です」
ルトヴィーク
「ん、」 払われた自分の手を、じっと見る。
アウラ
「女性の髪に勝手に触ってはいけませんわ」
ルトヴィーク
手の平、手の甲。どちらも汚れてはいない。首を傾げて――
「……」 「なんで?」
アウラ
「髪は女性の命だからです」
ルトヴィーク
「命」
「……いのちを伸ばすの?」 
アウラ
「私も含めて、勝手に触ってはいけないものなのです。分かりましたか?」
ルトヴィーク
「うん。……触らない」
触ったら、アウローラが死ぬ、と。誤った理解をしながら頷いた。
アウラ
「分かったなら良いです」 ふ、と笑って
ルトヴィーク
「うん。……」 答えながら、視線はじっとアウラの髪へと向けられている。
アウラ
「…?ルトヴィーク?」
ルトヴィーク
「ううん。長い髪も、きっと"綺麗"だろうなって思っただけ」
視線を瞳へと戻して 真直ぐに言い切った。
アウラ
「…‥っ」
「…い、行きましょうか」
ルトヴィーク
「……、怒ってる?」
アウラ
「怒っていません」
ルトヴィーク
先程の指摘を受けてか、確りとした厚手のコートを纏いながら 荷物を背負い直した。
アウラ
「…何故怒っていると思ったのですか?」
ルトヴィーク
「話、変えたから」
「いつもなら、ありがとうございます、って 言ってる」
アウラ
「……そう、でしたでしょうか」
ルトヴィーク
「うん。……それだけ。じゃあ、行こうか」
言いながら、地図を広げて ジョナスを探し始める。
アウラ
「列車でいけますわ」
「ビッグボックスにまずは参りましょう」
ルトヴィーク
「ん」 「解った。……」 駅は えーと あっち。
ゆっくりと、アウラの歩調に合わせて 
以前の様に、小走りにさせる事もなく 既に慣れた歩調に緩めて青年は歩く。
意識するまでもなく、共に歩くときの歩調に定めて ビッグボックスへと辿り付くと、そのまま列車の手続きを済ませ
ジョナス行の列車に乗り込んでいく。
「……向こうについたら、どうするの?」 対面の列車席に座りながら、アウラへと声をかける。
アウラ
「そうですわね。船を掴まえて…掴まらなかったら浜辺で見ましょうか」
ルトヴィーク
[
]
「うん。……アウローラが寒くないように、用意してきた」 鞄を示して 
アウラ
「用意、ですか」
ルトヴィーク
「うん。仕事用の奴だけど」
アウラ
「ありがとうございます、ルトヴィーク」 ふふ、と笑って
ルトヴィーク
「……前、寒がってたから」 うん、と頷いて答えつつ、
じ、っとアウラを見つめる。
アウラ
「……どうされましたか」
ルトヴィーク
「髪、ちょっと伸びた?」
アウラ
「…ええ、少し」 頷いて
ルトヴィーク
頷いて答えると、口を閉ざし
やはり、じっと眺めている。
対面の席である都合、正面に視線を向けていればどうしても互いが見えるが
それでも、真直ぐに じっと 見据えている
アウラ
「……」 視線を窓の外に固定して 「ルトヴィークは空が好きでしたわね」
「季節ごとに、空の色は少しずつ違うと思うのですが」
「私は冬の空が一番好きです」 窓から視線を外さずに そう口にして
ルトヴィーク
「……?」 ずる、と視線がつられて窓の外へと向いて
「季節の、空の色?」
アウラ
「ええ、夏は何処か、空が近く感じます。春は穏やかな色で、秋は雲が高いのもあって、何処か青みが強いですわ」
「そして冬は、空気が澄んでいて、夜空が特に綺麗です」
ルトヴィーク
「……うん。ハツヒノデの前の空も、綺麗だった」
「でも、空の色なら」 視線をアウラへと戻して じっと瞳を見る。
「アウローラの目も、空の色だよ」
アウラ
「…‥ええ、そうですわね」 改めてルトヴィークの目を見て 頷きを返す 「私は私の目の色も好きですわ」
ルトヴィーク
「うん。俺もすきだよ」 視線が合うと、普段の無表情のまま頷いた。
アウラ
「…ありがとうございます、ルトヴィーク」
ルトヴィーク
「……? なんで?」
アウラ
「?」 眼鏡の位置を直しつつ小首をかしげて 「なにかおかしなところがありますか?」
ルトヴィーク
「だって、好きになっただよ」
アウラ
「……、」 困ったように 「そう応えないと、貴方は怒ってる?と次には聞くではありませんか」
「怒ってないのに怒っていると聞くのも、あまり良いことではないのですわ」
ルトヴィーク
「……また、どこか行こうとしたら」
「そう思った、かも」
アウラ
「何処にも行きませんわ」ふふ、と笑って 「此処に居ます」
ルトヴィーク
「うん。一緒が、」 悩む様に、言葉を探すようにして
ああ、と頷いて。 「一緒が、嬉しい」 
アウラ
「……はい」 少し間をおいて頬を染めて頷いた 
 
その後、暫く会話をする内
青年は、珍しく休むと決めていないタイミングで船を漕ぎ始め、無防備な様子で眠りにつく。
安堵し切った大型犬がぐったりと横になって眠る様なその様子は、歳不相応に幼い様子で 静かに眠っている。
アウラ
「……」 対面の席から隣の席に移って 肩を貸す用にして寝かしつける
ルトヴィーク
野営中であれば、その気配も察知したのだろうが ことん、とアウラの肩に頭を預けて
静かに、身を寄せて眠りにつく。
 
 
列車はジョナスへと到着し、ぞろぞろと降車していく人が車内を歩いていく
ルトヴィークを起こすと、アウラも彼を伴って、ジョナスの街へと降り立つ事になる
ルトヴィーク
「……」 起こされた際、寝惚けたままアウラの首元の匂いをすうと嗅いで それを気付けにしたのか、どこか満足気に席を立っていった。
アウラ
「さてと…、船を掴まえられると良いのですが」
アウラ
船は
ルトヴィーク
「うん。……探すんだよね」
アウラ
【✔:掴まらない】 [×:掴まる]
ようです
アウラ
「ええ、探すだけ探してみましょう」
ルトヴィーク
「解った。行ってくるから、アウローラはちょっと待ってて」
アウラ
「え、ええ。分かりました」
ちょっと心配そうな表情をしながらも頷いて 「此処で待っていますわ」
ルトヴィーク
「うん」 す、っと歩き始めて 船を捕まえに歩く。
 

暫くして――
 
ルトヴィーク
どこか浮かない表情で、待ち合わせていた場所へと戻ってくる。
普段から彼を見ているものには、沈んでいる事が理解できるような。そんな表情だ。
「……ごめん。捕まらなかった」 戻ってくるなり、小さく呟いて アウラの様子を伺う。言いつけを守れなかった獣のように。
アウラ
「……」 少し肩を震わせて 「いえ、仕方ありません」
「大丈夫ですルトヴィーク」
ルトヴィーク
「でも、……船から見ようって」
アウラ
「浜辺からでも見れますわ」
「では、来年は船を手配してから来ましょう」
ルトヴィーク
「……」 来年。
アウラ
「私の思いつきで言ったことです、ルトヴィーク」
ルトヴィーク
(あったら、いいな) 幼子のように心中で呟き アウラのフォローには、ぎこちなく頷いた。
アウラ
「では浜辺に行きましょう。温かい飲み物を調達して」
「夜明けを待ちましょう?」
手を差し出して
ルトヴィーク
「……うん」 頷いて、酷く冷えた手が、アウラの手を握り返す。
「一緒に行こう、アウローラ」
そのまま浜辺へと向かい、歩いていく。
 
 
 ――夜。
街から少し離れた浜辺に、ぽつんとひとつ テントが立っている。
二人用のテントは、その近くに火がくべられており
波の音と、風の音。周囲には人がいないその場所は、静かな時間が流れていた。
ルトヴィーク
用意していたサバイバルコートを、アウラの肩にかけて 野営の準備を手早く整え
アウラ
「波の音が、落ち着きますわね」 サバイバルコートを毛布代わりにして テントの入口で座り込む
ルトヴィーク
「うん。……、……昔なら、そうは思わなかったかもしれないけど」
「……」 自分で口に出した言葉に、自分で驚いた様に 口を閉ざし、俯いた。
アウラ
「……今はどうなのですか?」 ルトヴィークを見上げて 問うてみる
ルトヴィーク
「……色んな(こえ)が、聞こえる」
「あいつらの……タール達の声も、最初は聞きたくなかった。だから、アウローラに呼んで貰えて、助かったけど」
アウラ
「…」 相槌を打つように頷いて、続きを促す
ルトヴィーク
「……最後は、そうじゃなかった。……俺、聞いてやらなきゃって、思ったんだ。どうしてかは、解らないけど」
「何も要らなかった。欲しくなかった。物も、人も、……音も、全部」 俯いていた顔を、ゆっくりと持ち上げて アウラと視線を合わせる。
「でも今は、……そうじゃない、俺がいる」 
アウラ
「……良いことだと思います」
「生きていくことは、何かを欲していくことなのですわ」
「食べたい、寝たい、楽しみたい……そういう意味では、正しい傾向なのです」
ルトヴィーク
「うん。……もっと、知りたい。もっと、聞きたい。もっと、見たい」
「……アウローラの事だけじゃなくて、色んな世界(こと)を、……知りたいって、思ってる」」
アウラ
「…ええ」 頷いて
「色んなものを見て、聞いて、感じて……そして考えて下さい」
「それで得たものが、貴方の人生を豊かにしてくれますわ」
ルトヴィーク
「豊か、……うん」
「アウローラと逢って、それからだよ。こういう風に、思ったの」
「ローラと逢って、ハツヒノデを見て」
「角飾りの事も、買い物の事も、……仕事の事も。全部、アウローラのお陰なんだよ」
「こんな風に、思う様になったのは」
アウラ
「……」 目を瞠って それから穏やかに微笑んで
「……これからも、ですわね」
「もっと沢山、知るべきことがあると思います」
「一緒に、学んで行きましょう、ルトヴィーク」
ルトヴィーク
「……うん。一緒に、生きよう」
 
静かな浜辺で、会話を続ける内 ゆっくりと、空が白んでいく。
いつか見た初日の出(それ)とは、少しばかり趣は異なるものの じきに夜が明ける事は、青年にも解っていた。
ルトヴィーク
「アウローラ、まだ、起きてる?」 そっと視線を向けて 彼女の様子を覗き込む。
アウラ
「…ええ、大丈夫です」 そう答えるが、目元は少し擦っている
ルトヴィーク
「……」 その様子を見て、ゆっくりと手を伸ばして
「触るよ」 声をかけてから、右手で頬に触れ 親指で、目尻を軽く撫でる。
「もうちょっと、だから。起きれる?」
アウラ
「…‥っ」 驚いて 「…る、…いえ、はい」
ルトヴィーク
満足気に手をゆっくりと放して 東へと、視線を向ける。
 
 ――ゆっくりと、夜の闇を裂いた光の中から 一際強い輝きが昇ってくる。
陽の光が、空を照らし、海を照らし 浜辺を照らしていく。
ルトヴィーク
――……」 その光景を、眼を細めて 刻み込むように、じっと見つめる。
アウラ
「──……こうやって、水面に映る日の出と、空に在る日の出を見るのは」 
「素敵でしょう?」
ルトヴィーク
「……うん。綺麗だ」 じっと、日の出に視線を向けたまま動かさずに答え
薄く微笑みを浮かべながら、焦がれる様に見るその姿は 少なくとも、去年と同じではない。
アウラ
「……」 少し寂しくて、とても嬉しい そう思う
ルトヴィーク
「凄く、綺麗だよ。アウローラ」 嬉しそうに、薄く笑みながら少女に告げる姿は、きっと――
人、なのだろうと。そう思える様子で、少女へと向き直る。
アウラ
「ええ、そうですわね」 穏やかな微笑みを返して 少女もまた、青年を見つめた
「一緒に見られて、良かったです」
ルトヴィーク
「……、……」 言葉を探そうとして すぐにやめる。 「俺も、よかった」
「来年も、……見よう」 「その次も、その次も」 
「ずっと、一緒に生きよう」 
アウラ
「……、」
「……ルトヴィーク」
ルトヴィーク
「……? 何?」
アウラ
「……あのですね」
「……、一緒に生きるっていうのは、その…」
ルトヴィーク
「……?」 じっと見据えながら、小首を傾げて続きを待つ。
アウラ
「……」
「……どういう、いえ」
「‥‥貴方が…本当にそう思うなら…」
「……もう一度、その言葉の意味がわかった時に、言ってくださいませんか」
ルトヴィーク
「言葉の、意味? ……そのままじゃ、ないの」
アウラ
「ええ、意味は一つだけではないんです」
ルトヴィーク
「……教えて?」
アウラ
「……自分で探してみましょうルトヴィーク」
「今の貴方なら、それが出来るはずですわ」
ルトヴィーク
「……」 ゆっくりと、頷いて。
「うん。……解ったら、ちゃんと言う」
「だから、それまで待ってて」
アウラ
「……楽しみにしています」 何処か頬を染めて少女は頷いた
ルトヴィーク
「……、」 初日の出に照らされた、その表情を見て
ほんの僅かばかり、頬を染めて 満足気に視線を外して
「……綺麗だ」 空と海の間を見ながら 小さく呟いた。
アウラ
ではこんなところで
ルトヴィーク
うん
おつかれさまでしたー
アウラ
お疲れ様でしたー
では撤退します。また遊んでね
!SYSTEM
アウラが退室しました
背景
BGM