- !SYSTEM
- ルトヴィークが入室しました
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- アウラが入室しました
- アウラ
- お邪魔致します
- ルトヴィーク
- いらっしゃい
- ちょっと待ってね。
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- ――王都イルスファール、〈星の標〉。
日々、多くの依頼が舞い込み、それを請けた冒険者達が発っていくこの宿の一室にて。
- 一人の青年が、物件情報が記されているいくつかの紙を机の上に放った。
眼鏡に適うものはなかったのか、小さく漏れた声は不満気だ。
- 机の上にはいくつも紙が放られており、この所青年が情報を探して回っている事が伺える。
-
- ふと、青年が――最近ようやく仕組みを理解し、愛犬に会いに行く日付を確認できるようになった――カレンダーに視線を向ければ、
- ルトヴィーク
- 「――あ」 ぱちり、と一つ瞬きをして。
-
- 年の瀬が、もうすぐそこまで迫っていた。
-
-
- ――王都イルスファール、アステリア神殿にて。
- この日は特に寒い日だった。空には雲がひしめいていて、冬らしい冷たい風が街を吹いていく。
- 神殿に訪れる者や、その前を過ぎる者達も確りと防寒対策に励んでおり
- 神殿に努めている者達も、同様に厚着をしている。
- ルトヴィーク
- ――ただ、長袖ではあるものの、軽装でやってきていたこの青年を除いて。
-
- 周囲の人々や神殿の者達は、彼を一瞥しながら寒そうねえ、などと零している者も居れば、
- 首輪付きがやってきた、と小さく揶揄する者もいる。
- ルトヴィーク
- 「……」 青年はと言えば、そんな視線にも声にも気にする様子は無い様で
- 飼い主を探すように、視線を彷徨わせている。
それがまた、一部の者の視線を集めているのだが。
-
- そのうちの1人がパタパタと神殿に続く道を走っていって 数分
- 青い神官服の上にコートを纏った短い金髪の少女と女性の間の風貌の娘が、青年に向かっていく
- アウラ
- 「御機嫌よう、ルトヴィーク」 白い息を交えながら 白い薄い皮手袋の嵌った手が小さく振られる
- ルトヴィーク
- 「……あ」 その声を聴けば、よく彼を見ているものであればわかる程度に喜色を浮かべて そちらへ向き直る。
- 「ごきげんよう、アウローラ」 鸚鵡返しにしながら、頷いて答えてみせる。
「忙しい?」
- アウラ
- 「まあ、それなりに」 ふふ、と笑って 近くのベンチに誘導する
- 「ただ休憩する時間はあります。大丈夫です」
- ルトヴィーク
- 「わかった」 頷いて、誘導に続いて歩いていく。
- 秋物だろう薄手のジャケットを羽織った青年は、ベンチに腰掛けると ゆっくりとアウラの手を引いた。
- アウラ
- 手を引かれるとそのまま隣に座って
- 「もう少し厚いコートを選んだほうが良いですわ、ルトヴィーク」
- ルトヴィーク
- 「?」 首を傾げながら、ジャケットを引っ張ってみせる。
「何で?」
- アウラ
- 「寒いでしょう?」
- 「それとも、寒くはありませんか?」
- 小首をかしげて
- ルトヴィーク
- 「あんまり。動くし」 続いた言葉には、頷いて答えて見せる。
よくよく服を眺めてみれば、
- 以前に買い物に二人で出かけた時、購入したものの一つである事は間違いないのだが、絶望的に季節感が欠けている。
- アウラ
- 「…‥また今度買いに参りましょう」
- ルトヴィーク
- 「……?」 「家?」
- アウラ
- 「…家、ではなく。服です」
- ルトヴィーク
- 「探してるんだけど、あんまり……あぁ」
- アウラ
- 「…そうですか‥」 探し続けていると聞いて、かすかに困った顔をした
- ルトヴィーク
- 「うん、わかった。……そうだ、アウローラ」 身体ごとアウラへと向くと、眼を覗き込んで。
- その表情には、気づいているのかいないのか じっと覗き込んで
- アウラ
- 「はい。なんでしょう?」
- ルトヴィーク
- 「ハツヒノデ、見に行こう。もうそろそろだから」
- アウラ
- 「…ああ、」 表情を綻ばせて 「そうでしたわね。去年も見に行ったのでした」
- ルトヴィーク
- 「うん。……今年も、って思ったんだ」
- アウラ
- 「今年も抜け出す算段をしなくてはいけませんわね」
- ルトヴィーク
- 「……」 は。 「誘拐?」
- アウラ
- 「それはいけません」
- 嗜めるように指を立てて
- 「ただ、去年と同じ場所、というのも」
- 「味気ないですわね」
- 「今年は、別の場所で見ましょうか」
- ルトヴィーク
- 「別? ……また、あそこじゃなくて?」
- 「"綺麗"、だったけど」
- アウラ
- 「ええ、ただもう一つ。綺麗な場所があるはずですわ」 ふふ、と笑って
- ルトヴィーク
- 「……? それって?」 首を傾げて、アウラの眼を覗き込む。
- アウラ
- 「……」 はっきりと目を合わせてしまって 少したじろぎながら 「…水上ですわ、ルトヴィーク」
- ルトヴィーク
- 「水上」 「……水の上?」
- その様子に気付き、少しだけ距離を取る。
- アウラ
- 「はい。よろしければ、ジョナスへ行きませんか?」
- ルトヴィーク
- 「ジョナス」 「ジョナス……って、どこだっけ」
- アウラ
- 「イルスファールの西にある港町です」
- ルトヴィーク
- 「うん。……じゃあ、そこから船?」
- アウラ
- 「はい。少し出れば、水面から日の出が見られるはずですわ」
- ルトヴィーク
- 「水面、か。……前は、地面から出てきてたね」
- 「覚えてる?」
- アウラ
- 「ええ、覚えていますよルトヴィーク」 微笑んで 「今回もあの服装ですわね」
- 「ではいつもの場所で待っていて下さい。またあの子に頼まなくては」
- ルトヴィーク
- 「うん。いつものアウローラもすきだけど、あのアウローラもすきだよ」
- アウラ
- 「…‥そう、ですか」 ちょっと目が逸らされて
- 「で、では、また後で」
- ルトヴィーク
- 「ローラにも顔を見せてくる。先にあの場所に行って……」
- 「アウローラ?」
- アウラ
- 立ち上がると 「あ、ああそうでしたわね。頼んでおきましょう」
- ルトヴィーク
- 「……」 様子の変化に、首を傾げつつ 「何か、怒ってる?」
- アウラ
- 「…怒っていませんわ。大丈夫です」
- ルトヴィーク
- 「なら、良い。……じゃあ、またあとで」
- アウラ
- 「はい。また後で」
-
-
- ルトヴィーク
- アウラと別れた後、ローラと会い 以前ほどではないものの、噛まれ、引っかかれ
- それでも手を伸ばしては、不器用ながらに撫でて またな、と声をかけて
- 一度宿へと戻って準備を整えると、約束の場所へと向かっていった。
-
-
- アウラ
- 言い訳のための変装をさせた半泣きの神官を見送ると 自分の服をコーディネートする
- 去年と、今年。なんだか距離感が微妙に違うから、どうにも彼といると自分のペースが乱される感じがある
- それでも、こうして出かけられるのは… と考えて 小さく首を振り
- 去年の服装
濃い茶色のコートに 黒のニット帽 眼鏡に、白いマフラー 厚い生地の胡桃色でチェック柄シャツに黒いズボン 明るい茶色のショートブーツ
- これらを広げると、少し悩んで ブラウスとプリーツスカート、黒いストッキングを選び直す
- 小さく頷くとしゅるりと着替え始めた
-
-
- ルトヴィークが神殿の外で待っていると
- 参拝客に混ざって、変装したアウラが出てくる
- アウラ
- 「お待たせしました、ルトヴィーク」 会釈して 眼鏡の位置を直す
- ルトヴィーク
- 「――、」 会釈を受けるよりも早く、彼女に気付き
- 声をかけられれば、少しだけ喜色を浮かべて頷いた。
「そんなに、」 言葉をそこで切って。ええと。
- 「…………」 ああ。 「今来たところ」
- アウラ
- 「……」 目をパチパチとさせて 「何処で覚えましたの?」
- ルトヴィーク
- 「本で読んだ。髪を切った奴から渡されたんだ」 カミユイ、って言うらしいよ
- 「もう、伸びちゃったけど」 また伸びた髪を、ついっと撫でて。
- アウラ
- 「定期的に切りに行くと良いですわ…私はそろそろ伸ばそうと思っていますが」
- ルトヴィーク
- 「伸ばすの」 言いながら、無遠慮に髪へと手を伸ばす。
- アウラ
- ルトヴィークの手を手で払うようにして
- 「駄目です」
- ルトヴィーク
- 「ん、」 払われた自分の手を、じっと見る。
- アウラ
- 「女性の髪に勝手に触ってはいけませんわ」
- ルトヴィーク
- 手の平、手の甲。どちらも汚れてはいない。首を傾げて――
「……」 「なんで?」
- アウラ
- 「髪は女性の命だからです」
- ルトヴィーク
- 「命」
- 「……いのちを伸ばすの?」
- アウラ
- 「私も含めて、勝手に触ってはいけないものなのです。分かりましたか?」
- ルトヴィーク
- 「うん。……触らない」
- 触ったら、アウローラが死ぬ、と。誤った理解をしながら頷いた。
- アウラ
- 「分かったなら良いです」 ふ、と笑って
- ルトヴィーク
- 「うん。……」 答えながら、視線はじっとアウラの髪へと向けられている。
- アウラ
- 「…?ルトヴィーク?」
- ルトヴィーク
- 「ううん。長い髪も、きっと"綺麗"だろうなって思っただけ」
- 視線を瞳へと戻して 真直ぐに言い切った。
- アウラ
- 「…‥っ」
- 「…い、行きましょうか」
- ルトヴィーク
- 「……、怒ってる?」
- アウラ
- 「怒っていません」
- ルトヴィーク
- 先程の指摘を受けてか、確りとした厚手のコートを纏いながら 荷物を背負い直した。
- アウラ
- 「…何故怒っていると思ったのですか?」
- ルトヴィーク
- 「話、変えたから」
- 「いつもなら、ありがとうございます、って 言ってる」
- アウラ
- 「……そう、でしたでしょうか」
- ルトヴィーク
- 「うん。……それだけ。じゃあ、行こうか」
- 言いながら、地図を広げて ジョナスを探し始める。
- アウラ
- 「列車でいけますわ」
- 「ビッグボックスにまずは参りましょう」
- ルトヴィーク
- 「ん」 「解った。……」 駅は えーと あっち。
- ゆっくりと、アウラの歩調に合わせて
- 以前の様に、小走りにさせる事もなく 既に慣れた歩調に緩めて青年は歩く。
- 意識するまでもなく、共に歩くときの歩調に定めて ビッグボックスへと辿り付くと、そのまま列車の手続きを済ませ
- ジョナス行の列車に乗り込んでいく。
- 「……向こうについたら、どうするの?」 対面の列車席に座りながら、アウラへと声をかける。
- アウラ
- 「そうですわね。船を掴まえて…掴まらなかったら浜辺で見ましょうか」
- ルトヴィーク
- [
- ]
- 「うん。……アウローラが寒くないように、用意してきた」 鞄を示して
- アウラ
- 「用意、ですか」
- ルトヴィーク
- 「うん。仕事用の奴だけど」
- アウラ
- 「ありがとうございます、ルトヴィーク」 ふふ、と笑って
- ルトヴィーク
- 「……前、寒がってたから」 うん、と頷いて答えつつ、
- じ、っとアウラを見つめる。
- アウラ
- 「……どうされましたか」
- ルトヴィーク
- 「髪、ちょっと伸びた?」
- アウラ
- 「…ええ、少し」 頷いて
- ルトヴィーク
- 頷いて答えると、口を閉ざし
- やはり、じっと眺めている。
- 対面の席である都合、正面に視線を向けていればどうしても互いが見えるが
- それでも、真直ぐに じっと 見据えている
- アウラ
- 「……」 視線を窓の外に固定して 「ルトヴィークは空が好きでしたわね」
- 「季節ごとに、空の色は少しずつ違うと思うのですが」
- 「私は冬の空が一番好きです」 窓から視線を外さずに そう口にして
- ルトヴィーク
- 「……?」 ずる、と視線がつられて窓の外へと向いて
- 「季節の、空の色?」
- アウラ
- 「ええ、夏は何処か、空が近く感じます。春は穏やかな色で、秋は雲が高いのもあって、何処か青みが強いですわ」
- 「そして冬は、空気が澄んでいて、夜空が特に綺麗です」
- ルトヴィーク
- 「……うん。ハツヒノデの前の空も、綺麗だった」
- 「でも、空の色なら」 視線をアウラへと戻して じっと瞳を見る。
- 「アウローラの目も、空の色だよ」
- アウラ
- 「…‥ええ、そうですわね」 改めてルトヴィークの目を見て 頷きを返す 「私は私の目の色も好きですわ」
- ルトヴィーク
- 「うん。俺もすきだよ」 視線が合うと、普段の無表情のまま頷いた。
- アウラ
- 「…ありがとうございます、ルトヴィーク」
- ルトヴィーク
- 「……? なんで?」
- アウラ
- 「?」 眼鏡の位置を直しつつ小首をかしげて 「なにかおかしなところがありますか?」
- ルトヴィーク
- 「だって、好きになっただよ」
- アウラ
- 「……、」 困ったように 「そう応えないと、貴方は怒ってる?と次には聞くではありませんか」
- 「怒ってないのに怒っていると聞くのも、あまり良いことではないのですわ」
- ルトヴィーク
- 「……また、どこか行こうとしたら」
- 「そう思った、かも」
- アウラ
- 「何処にも行きませんわ」ふふ、と笑って 「此処に居ます」
- ルトヴィーク
- 「うん。一緒が、」 悩む様に、言葉を探すようにして
- ああ、と頷いて。 「一緒が、嬉しい」
- アウラ
- 「……はい」 少し間をおいて頬を染めて頷いた
-
- その後、暫く会話をする内
- 青年は、珍しく休むと決めていないタイミングで船を漕ぎ始め、無防備な様子で眠りにつく。
- 安堵し切った大型犬がぐったりと横になって眠る様なその様子は、歳不相応に幼い様子で 静かに眠っている。
- アウラ
- 「……」 対面の席から隣の席に移って 肩を貸す用にして寝かしつける
- ルトヴィーク
- 野営中であれば、その気配も察知したのだろうが ことん、とアウラの肩に頭を預けて
- 静かに、身を寄せて眠りにつく。
-
-
- 列車はジョナスへと到着し、ぞろぞろと降車していく人が車内を歩いていく
- ルトヴィークを起こすと、アウラも彼を伴って、ジョナスの街へと降り立つ事になる
- ルトヴィーク
- 「……」 起こされた際、寝惚けたままアウラの首元の匂いをすうと嗅いで それを気付けにしたのか、どこか満足気に席を立っていった。
- アウラ
- 「さてと…、船を掴まえられると良いのですが」
- アウラ
- 船は
- ルトヴィーク
- 「うん。……探すんだよね」
- アウラ
- 【✔:掴まらない】
[×:掴まる]
- ようです
- アウラ
- 「ええ、探すだけ探してみましょう」
- ルトヴィーク
- 「解った。行ってくるから、アウローラはちょっと待ってて」
- アウラ
- 「え、ええ。分かりました」
- ちょっと心配そうな表情をしながらも頷いて 「此処で待っていますわ」
- ルトヴィーク
- 「うん」 す、っと歩き始めて 船を捕まえに歩く。
-
暫くして――
-
- ルトヴィーク
- どこか浮かない表情で、待ち合わせていた場所へと戻ってくる。
普段から彼を見ているものには、沈んでいる事が理解できるような。そんな表情だ。
- 「……ごめん。捕まらなかった」 戻ってくるなり、小さく呟いて アウラの様子を伺う。言いつけを守れなかった獣のように。
- アウラ
- 「……」 少し肩を震わせて 「いえ、仕方ありません」
- 「大丈夫ですルトヴィーク」
- ルトヴィーク
- 「でも、……船から見ようって」
- アウラ
- 「浜辺からでも見れますわ」
- 「では、来年は船を手配してから来ましょう」
- ルトヴィーク
- 「……」 来年。
- アウラ
- 「私の思いつきで言ったことです、ルトヴィーク」
- ルトヴィーク
- (あったら、いいな) 幼子のように心中で呟き アウラのフォローには、ぎこちなく頷いた。
- アウラ
- 「では浜辺に行きましょう。温かい飲み物を調達して」
- 「夜明けを待ちましょう?」
- 手を差し出して
- ルトヴィーク
- 「……うん」 頷いて、酷く冷えた手が、アウラの手を握り返す。
- 「一緒に行こう、アウローラ」
- そのまま浜辺へと向かい、歩いていく。
-
-
- ――夜。
街から少し離れた浜辺に、ぽつんとひとつ テントが立っている。
- 二人用のテントは、その近くに火がくべられており
- 波の音と、風の音。周囲には人がいないその場所は、静かな時間が流れていた。
- ルトヴィーク
- 用意していたサバイバルコートを、アウラの肩にかけて 野営の準備を手早く整え
- アウラ
- 「波の音が、落ち着きますわね」 サバイバルコートを毛布代わりにして テントの入口で座り込む
- ルトヴィーク
- 「うん。……、……昔なら、そうは思わなかったかもしれないけど」
- 「……」 自分で口に出した言葉に、自分で驚いた様に 口を閉ざし、俯いた。
- アウラ
- 「……今はどうなのですか?」 ルトヴィークを見上げて 問うてみる
- ルトヴィーク
- 「……色んな音が、聞こえる」
- 「あいつらの……タール達の声も、最初は聞きたくなかった。だから、アウローラに呼んで貰えて、助かったけど」
- アウラ
- 「…」 相槌を打つように頷いて、続きを促す
- ルトヴィーク
- 「……最後は、そうじゃなかった。……俺、聞いてやらなきゃって、思ったんだ。どうしてかは、解らないけど」
- 「何も要らなかった。欲しくなかった。物も、人も、……音も、全部」 俯いていた顔を、ゆっくりと持ち上げて アウラと視線を合わせる。
- 「でも今は、……そうじゃない、俺がいる」
- アウラ
- 「……良いことだと思います」
- 「生きていくことは、何かを欲していくことなのですわ」
- 「食べたい、寝たい、楽しみたい……そういう意味では、正しい傾向なのです」
- ルトヴィーク
- 「うん。……もっと、知りたい。もっと、聞きたい。もっと、見たい」
- 「……アウローラの事だけじゃなくて、色んな世界を、……知りたいって、思ってる」」
- アウラ
- 「…ええ」 頷いて
- 「色んなものを見て、聞いて、感じて……そして考えて下さい」
- 「それで得たものが、貴方の人生を豊かにしてくれますわ」
- ルトヴィーク
- 「豊か、……うん」
- 「アウローラと逢って、それからだよ。こういう風に、思ったの」
- 「ローラと逢って、ハツヒノデを見て」
- 「角飾りの事も、買い物の事も、……仕事の事も。全部、アウローラのお陰なんだよ」
- 「こんな風に、思う様になったのは」
- アウラ
- 「……」 目を瞠って それから穏やかに微笑んで
- 「……これからも、ですわね」
- 「もっと沢山、知るべきことがあると思います」
- 「一緒に、学んで行きましょう、ルトヴィーク」
- ルトヴィーク
- 「……うん。一緒に、生きよう」
-
- 静かな浜辺で、会話を続ける内 ゆっくりと、空が白んでいく。
- いつか見た初日の出とは、少しばかり趣は異なるものの じきに夜が明ける事は、青年にも解っていた。
- ルトヴィーク
- 「アウローラ、まだ、起きてる?」 そっと視線を向けて 彼女の様子を覗き込む。
- アウラ
- 「…ええ、大丈夫です」 そう答えるが、目元は少し擦っている
- ルトヴィーク
- 「……」 その様子を見て、ゆっくりと手を伸ばして
- 「触るよ」 声をかけてから、右手で頬に触れ 親指で、目尻を軽く撫でる。
- 「もうちょっと、だから。起きれる?」
- アウラ
- 「…‥っ」 驚いて 「…る、…いえ、はい」
- ルトヴィーク
- 満足気に手をゆっくりと放して 東へと、視線を向ける。
-
- ――ゆっくりと、夜の闇を裂いた光の中から 一際強い輝きが昇ってくる。
- 陽の光が、空を照らし、海を照らし 浜辺を照らしていく。
- ルトヴィーク
- 「――……」 その光景を、眼を細めて 刻み込むように、じっと見つめる。
- アウラ
- 「──……こうやって、水面に映る日の出と、空に在る日の出を見るのは」
- 「素敵でしょう?」
- ルトヴィーク
- 「……うん。綺麗だ」 じっと、日の出に視線を向けたまま動かさずに答え
- 薄く微笑みを浮かべながら、焦がれる様に見るその姿は 少なくとも、去年と同じ獣ではない。
- アウラ
- 「……」 少し寂しくて、とても嬉しい そう思う
- ルトヴィーク
- 「凄く、綺麗だよ。アウローラ」 嬉しそうに、薄く笑みながら少女に告げる姿は、きっと――
- 人、なのだろうと。そう思える様子で、少女へと向き直る。
- アウラ
- 「ええ、そうですわね」 穏やかな微笑みを返して 少女もまた、青年を見つめた
- 「一緒に見られて、良かったです」
- ルトヴィーク
- 「……、……」 言葉を探そうとして すぐにやめる。 「俺も、よかった」
- 「来年も、……見よう」 「その次も、その次も」
- 「ずっと、一緒に生きよう」
- アウラ
- 「……、」
- 「……ルトヴィーク」
- ルトヴィーク
- 「……? 何?」
- アウラ
- 「……あのですね」
- 「……、一緒に生きるっていうのは、その…」
- ルトヴィーク
- 「……?」 じっと見据えながら、小首を傾げて続きを待つ。
- アウラ
- 「……」
- 「……どういう、いえ」
- 「‥‥貴方が…本当にそう思うなら…」
- 「……もう一度、その言葉の意味がわかった時に、言ってくださいませんか」
- ルトヴィーク
- 「言葉の、意味? ……そのままじゃ、ないの」
- アウラ
- 「ええ、意味は一つだけではないんです」
- ルトヴィーク
- 「……教えて?」
- アウラ
- 「……自分で探してみましょうルトヴィーク」
- 「今の貴方なら、それが出来るはずですわ」
- ルトヴィーク
- 「……」 ゆっくりと、頷いて。
- 「うん。……解ったら、ちゃんと言う」
- 「だから、それまで待ってて」
- アウラ
- 「……楽しみにしています」 何処か頬を染めて少女は頷いた
- ルトヴィーク
- 「……、」 初日の出に照らされた、その表情を見て
- ほんの僅かばかり、頬を染めて 満足気に視線を外して
- 「……綺麗だ」 空と海の間を見ながら 小さく呟いた。
- アウラ
- ではこんなところで
- ルトヴィーク
- うん
- おつかれさまでしたー
- アウラ
- お疲れ様でしたー
- では撤退します。また遊んでね
- !SYSTEM
- アウラが退室しました