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彼の願い

20201130_0

!SYSTEM
ウィスタリアが入室しました
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エスメラルダが入室しました
エスメラルダ
待たせた
ウィスタリア
問題ありません
エスメラルダ
描写は受け持とう 少しくれ
ウィスタリア
了解です
 
 
 
 
 
 
 
――王都イルスファール、〈星の標〉。
リアン地方でも名の知れたその冒険者ギルド支店には、多くの冒険者が登録し
また、日夜様々な依頼へと赴いている。
内容は多岐に渡るが――
例えば、陽も落ち、静かになった店内のテーブル席についているこの男女などは、魔神の排除依頼を受けていた。
任地から戻り、報告を済ませ 
即席のパーティが解散した後、少女は青年に名を呼び留められ
こうして、テーブル席に付かされている――
 
机の上には、ひとつだけホットミルクが置かれており
少女の傍へとそれを置いた店員は 向かいに座る青年の様子を気にしながらカウンターへ戻っていった。
エスメラルダ
少女の前に座っている青年は、ホットミルクが運ばれてくるのを見ると、しばらく閉じていた口をゆっくりと開いた。
「……飲みなさい」 普段よりも少し強張った声で言いながら、少女の傍に置かれたカップを手で示した。
ウィスタリア
「──、」 少女の姿は人形めいていて、表情はない様に見える ただ、ごく少女と親しい者には分かるだろう
「──はい」 少女は、少し怯えている、と
カップを手に取り両手で挟むと 一口飲む
エスメラルダ
――やりづらい) 心中で小さく呟いた青年は、少女の様子は僅かながら理解できている。
そうさせているものの正体も、だ。
ウィスタリア
そのままゆっくりとカップを置き いつもならまっすぐ向ける視線を、青年の首元辺りに留めて
エスメラルダ
口をつけた様子を見て、カップを置くまで待ち。
「落ち着いたか」 何とかそれを解そうとするものの、声はやはり強張ったままだ。
ウィスタリア
「──、行動に支障はありません」
「有事の際は、即座に対応できます」
エスメラルダ
「……」 「話があると言ったな」 
ウィスタリア
「──、はい」 視線を鎖骨の辺りにまで下げた
エスメラルダ
「単刀直入に言う」 視線が下げられたのを見て、胸元に違和感を覚えながら言葉を続ける。
「配達業に、専念してはどうなんだ」 
ウィスタリア
「──、それは」
エスメラルダ
「俺は、ウィスタリアに命令をする訳じゃない。それを出来る関係でも、立場でもないからだ」
冷淡に言葉を続けていき、青竹色の目には責める様にも伺えるほど、真剣さのみが宿っている。
(窺える
ウィスタリア
「──私では、戦闘単位として数に含まれないということでしょうか」
エスメラルダ
目を伏せて、息を吐き。もう一度目を開き
「今回の依頼での戦闘においては、少なくとも二度の気絶を確認している」
ウィスタリア
ゆっくりと視線を上げていき、青年の目を窺うようにする
エスメラルダ
「勿論、ほんの数秒のものだ。……だが、その数秒が何を意味するかは、解らない訳ではないだろう」
見知った色の瞳は、じっと少女を見据えている。
ウィスタリア
一瞬怯むような様子を見せて また視線を下ろす
「──魔法に対する脆弱性は、魔符を準備することで対処は可能です」
エスメラルダ
「今回は、」 声量を上げ、眉間に少しだけ皺が寄る。 「運が良かった。……ウィスタリアは、こうして生きている」
魔符(それ)も、持っていなかった訳ではないのだろう」
ウィスタリア
「近接攻撃に対する防御行動は問題なく行え──…」 なおも言い募ろうとして言葉を止める
エスメラルダ
「……ウィスタリア」
ウィスタリア
「──……私は、不要ですか」
エスメラルダ
「……違う。ただ、君はこんな危険な仕事をしなくて良いんだ」 
「配達の仕事も、代筆の仕事も、増えているんだろう」
ウィスタリア
「……はい。仕事が増えていることは事実です」
エスメラルダ
冒険者(このしごと)の報酬も、使い切ってはいないな」
ウィスタリア
「はい」 頷き
「………」
エスメラルダ
「なら、……」 視線を向けて、様子を窺った。
ウィスタリア
「……」 静かに、なにか言葉にしようとしているのだろうが、それが見つからない様子で
静かに視線を下に向けている
エスメラルダ
「……もしも、が起きる前に」 
「退く事も、一つの手だと。……そう、思っている」 下げられた視線に、言い辛そうに言葉を続けては
そこで言葉を切って 彼女の返答を待つように、口を閉ざした。
ウィスタリア
「──、し」
「知りたいことが、あるのです──」
エスメラルダ
「……ああ。何が、知りたい?」
ウィスタリア
「"いきなさい"、と"好き"を、知りたいのです……だから、」
「探すための選択肢を…狭めたくはないのです」
エスメラルダ
「それを、探す内に」
「また同じ様な……、いや」 
「……死んでしまっては。何にもならないだろう」
敢えて言葉にすると、ウィスタリアをじっと見やる。
ウィスタリア
「………」
エスメラルダ
「どうしても、というのなら」
ウィスタリア
「──、」視線を上げて
エスメラルダ
「俺もそれを探して、ウィスタリアに知らせると約束する。……それで、今は受け入れてくれないだろうか」
ウィスタリア
「──…分かりました」
「ただ、シュナさんにもご相談させて下さい」 視線は、ホットミルクのカップに注がれて 
エスメラルダ
「……すまない。こんな話をする立場ではないと、わかっているんだ」
ウィスタリア
「──、お預けします」 冒険者の身分を示すプレートを外すと、エスメラルダの前に置いた
エスメラルダ
「シュナと、相談するのだろう」 置かれたプレートを見ると、視線を合わせて
ウィスタリア
「……こうすることが、お望みではないのですか?」
エスメラルダ
「……そうだな。それは、否定しない。ウィスタリアには、危険な目には遭って欲しくない」
ウィスタリア
「──、配達をする際に交戦をする場合もあります」
「ただ、今は…こうするのが良いのだと、思います」
エスメラルダ
「だが、」 プレートを押して、ウィスタリアの前に寄せた。
「言ったろう。これは、命令ではない」
「傷付いて欲しくも、命を落として欲しくもない。そんな、俺の身勝手な願いから来る、ウィスタリアへの提案……、いや、頼み事だ」
ウィスタリア
「──、」 プレートを拾い上げて 「…了解しました」
「──、」 なにか言いかけて、そして飲み込んで
「…今日は、失礼します」
エスメラルダ
「ああ。……ウィスタリア、最後に一つだけ」
「死ぬな。どこにいても、何の仕事をしていても……必ず、また顔を見せてくれ」
ウィスタリア
「──…」視線を向けて
エスメラルダ
「死んでは、いけない。……何があってもだ」
ウィスタリア
「それも、願いですか?」
エスメラルダ
「ああ。大切な友人なんだ、君は」
ウィスタリア
「鋭意努力します」 今回も同行した少女に教わったのだろうか、見事な一礼を見せて
エスメラルダ
その返答に苦笑して 
「引き留めてすまなかった。……それだけだ」
ウィスタリア
「──失礼します」
静かに、席から離れていく
エスメラルダ
その背をじっと見つめながら、声はかけずに見送る。
ウィスタリア
いつもなら振り向く彼女は、今日は一度も振り返らずに階段の上へと消えていった
エスメラルダ
「……、」 やがて見えなくなった少女から視線を外し、
「……」 瞼を下ろして 小さく額に手を当てて
瞼の裏にこべり付いた、少女を抱きながら叫ぶ兄の姿を思い起して ぐ、と唇を噛み締めた。
エスメラルダ
以上かな
ウィスタリア
了解です。お疲れさまでした
エスメラルダ
お疲れ様。準備から何までありがとう。
では失礼する
ウィスタリア
はい
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エスメラルダが退室しました
背景
BGM