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幕間

20201022_0

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マリーが入室しました
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レイヴンが入室しました
レイヴン
おまたせした
マリー
よろしくお願いいたします。
レイヴン
よろしくおねがいします
 
 
 
その日、星の標の冒険者、レイヴンは商業街を歩いていた。
先日の依頼で色々消耗したこともあり、補充にきたのが理由の半分。もう半分は。
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Pleasant Lesson100%
レイヴン
「──」と消耗品の補充を終え、行く先は書店だ。
商業街のお気に入りの書店がいくつかある。今寄ろうとしているのはその中でも客数が多い場所だ。必然、知り合いに会う可能性もあるだろうが──それは些細なことだろう。
読書は彼の趣味でもある。娯楽からはじまり実用書。あるいは、専門書まで。昔はそのせいで散在していたが、冒険者としての収入が安定した今は、多少大人買いしても生活に困ることはない。
少女
「ん、ぐぐぐぐ………」背伸びをしている少女がいる
レイヴン
「(──武器に関する本があればいいんだがな。そろそろ剣の腕自身も磨かないといけない。だが、そのためには種類についての知識からだな)」と、先日の戦いを思い出しつつおもいっつう
「……」
少女
高いところの本をとるための段差は近くになく
レイヴン
思い出しつつだ
少女
もうちょっと、あとちょっと、と背伸びをしたり、ジャンプをしたり。
少女の目当ての本は本棚の高めの場所。少女の身長では普通なら届かないようである。
レイヴン
「──ふぅ」と一息つく。女性が相手ということ。少し因縁が晴れたとはいえ、やはり人というものは1日やそこらで変わるものではない。だからこそ、自身の心に一度踏ん切りをつけて。少女の視線の先を追い──そして、自分ならば届きそうであることを確認し
「──よっと」と、おそらくは目当てであろう本を取り「すまない。お困りのようだったから」と、少女にその本を見せた。確認の為でもある。
少女
「あ、ありがとうございま……あ」
少女はレイヴンの顔を見ると少し驚いた様子を見せた。
レイヴン
少し手に汗はかいているし、心臓の動きは少し早くなっているものの──。不思議と以前のような意識が遠のいてしまうような感情にはさいなまれない。
花街の少女
「おにーさん…」
レイヴン
「──あ」と、目を丸くして
「君は……あの時の」
と、言ってから
いつぞや会ったときとは違い、化粧も薄く、こうしてみるとまだ本当に幼く見える。
レイヴン
少しほほをかき
「この本──であってるかな」と、もう一度、差し出して
花街の少女
「うん……えっと…あの、その、あ、あのときはごめんなさい」本当はちゃんとあってあやまるべきであったのはわかっていた、が。
勇気が出なかったのは自分である。それはよくわかっている。
レイヴン
「──いや……君が謝ることじゃないが……そのだな」
と、押さえつつ。このままだと、周囲の目が痛い。
「少し待ってくれ」
と、足早に書店の奥へ向かう。ちゃっかりと自分の目当ての本も……とはいえ、吟味せずにいくらか抱えて
「店主、これ全部」
花街の少女
少女は頷いて素直に待つだろう。
レイヴン
といって、購入すればそれを、一旦、拡張袋にしまい
少女の元へ戻る
「……お互いに話すことがあると思う。俺自身も君に謝らなければならないと思っていたところだが……」
「流石にこの書店の前で話す話じゃないとおもうからな……」
「近くに喫茶店がある。お代は気にしなくていい。──そこで話さないか? いや、無理にとは言わないが……」
と、最後には控えめにいっている
花街の少女
「うん、大丈夫。今日お仕事お休みだし…」だから昼間に出かけることができている。
「ありがとう、おにーさん」
レイヴン
自分でも言葉が出てくるのが不思議なくらいだ。平静を装ってはいるが、冷たい汗も出てきているが──それを突き動かす何かが彼の中に今はあるのだろう。
「いや、気にしないでくれ。本当なら気の利いた言葉の一つくらいかけられればよかったんだが──生憎、それにはまだ遠そうだ」
「ああ、さっきの本も、落ち着いてから渡すよ」いこうか、と、彼女を促した。
花街の少女
こくり、と頷いて素直にレイヴンについていくだろう。
さて──レイヴンと花街の少女という不思議な組み合わせが向かうのは、近くの喫茶店だ。
商店街ということもあり、それなりに人気がある店なのだろうが。時間がよかったのだろう。客は少なめだ。レイヴンは「2人、奥の方の席を借りても?」と、言いつつ、店員にこっそりとチップを渡し
案内してもらう
 
レイヴン
「とりあえず座ってもらえれば。──ああ、後、メニューは好きなものを頼んでくれたらいい」と、自分も座り、彼女に座ることも促して
花街の少女
「じゃあ…」と少女は紅茶を頼むようである。無難な選択肢である。
レイヴン
「……俺もそれをもらおう」と少女とメニューを同じくして
「……まずは……」と、拡張カバンから本を取り出して「……確か、この本だったな」と、字の練習の本を取り出し
花街の少女
「ありがとう。うん、今、勉強中なの」
レイヴン
「渡しておくよ。それと、せかしてすまなかった」
花街の少女
「ううん、平気。特に用事もなかったし、大丈夫だよ」
レイヴン
「そうか……俺も昔は教えてもらったな」と、優しい表情になり
「そういってくれると助かるよ。それと──」
「先に謝っておく。この前の件は、俺もすまなかった」と、頭を下げた
花街の少女
「ううん、私も…っと、きりがなくなっちゃうからアレだけど…」
「私も仕事であそこにいたもの、お客さんの様子も見れないのは…だめだったし…」
レイヴン
「確かにプロとして働くならそういう技術も必要だろう。だけど……あそこにきている以上。男はそういった誘いを期待しているといっても間違いない。そういう意味では──俺は特殊すぎただろうさ」
花街の少女
「まだまだ見抜く目が足りないよ…:
レイヴン
「それにそれを自覚した上で、断り方も知らない方も悪いさ。だが、それ以上に。君の女性としての尊厳……プライドを傷けたかもしれない。だからそれは謝りたかったんだ。……まあ、言いだしたらお互いにキリがないと思うが」と、ふぅとため息をついて
「だから、これでお互いにあと腐れなし。という感じでどうかな」
と、言っている間に紅茶が来るかもしれない
花街の少女
「…確かに、お金貰っちゃったのは驚いちゃったけど、でも、それはマリー姉に頼んだし…」見知った名前が口から出た。
「…うん、ありがとう、おにーさん」
レイヴン
「……姐さんか」目を閉じ考える
「ああ」
「君、君というのも何か嫌だな……。改めて自己紹介くらいしておくか」
「俺はレイヴン。星の標の冒険者だ」
「もし差し支えなければ名前を教えてくれないか?」
マーガレット
「マーガレットよ、よろしく、おに…レイヴン」
レイヴン
「ああ、呼び捨てで構わないよ。その方が気楽だ」
「よろしくマーガレット」
マーガレット
「…………レイヴン!?宝剣クラスの!?」
レイヴン
「……あ、ああ……。そういわれると照れ臭いが……」
卑下の言葉が出ようとしたがつばを呑み
マーガレット
「わぁ……あ、ごめん、びっくりしちゃった…」
レイヴン
「……働きが評価されて今はそういった立場にいる。といってもまだまだ、修行が足りない身だよ」
マーガレット
「……もっと落ち着きを持ちなさいってお姉さん達からも言われるの」
「有名な人も来ることもあるけど…そういうのは詮索しない、夢を与える、のがルールだから…」本当はこういうので動揺しない方がいいんだけど、ね
レイヴン
「……素直な感想を言うが、その俺を誘ってくれた時はそのドキドキするような雰囲気があった。ただ……今のままでも十分可愛いんじゃないか?」と、これは素直に。純粋にいった。
「ああ、そうだな。そういう仕事をする以上は──だな」
と、妖艶や落ち着きはそこに起因するだろう
マーガレット
「…ありがとう、レイヴン」年頃の少女らしく表情をほころばせた
レイヴン
「でもだからこそ、休日くらいは素でもいいんじゃないかとは思うが。それに今は客としての付き合いじゃないしな。個人と個人の付き合いだ」
「ああ」
と、紅茶を一杯飲み「姐さん。……と、マリーには色々と教えてもらっていたりするのか? というか、教えてもらっているみたいだが」と、言葉の端々から読み取って
マーガレット
「うん。マリー姉さんだけじゃないけど、シーンの神官さん達は勉強も教えてくれるの」
「マリー姉は、お化粧の仕方とか、仕事で気を付けないといけない事とか、たまに髪を結ってくれたりもしてくれて優しいよ」
レイヴン
「闇に迷える者に、月の光のごとく手を差し伸べよ、か」
「──そうか」
マーガレット
「確かにおっかない男の人とかも…いるけど、でも、うちのお店の人はみんな優しいよ」
レイヴン
「……俺も、昔世話になってな。恩返しができていない以上、申し訳なくはあるんだが」
その優しいよという言葉に、優しい笑みを見せ
マーガレット
「………出世払いね?」
レイヴン
「ああ、イルスファールは客層もいいからな……。その道を選んだ分、見れるものがあるはずだ……この言葉が正しいかどうかは分からないが。応援するさ。もし自分がなりたいものがあるなら、猶更な」
「……」その言葉を少し考え
「姐さんが言いそうなセリフだな。イントネーションもそっくりだ」
マーガレット
「…って前言われたの」誰にとは言わなくても伝わるだろう
レイヴン
「なるほどな──そうなると、俺は何年滞納しているんだろうな」出世払いに
「ある意味、お互いに境遇は似ているかもしれないな」
マーガレット
「こういうのもなんだけど、マリー姉さんは…全然気にしてないと思う」
「好きでやってるってよく言ってるし…」
レイヴン
「……俺も同意するよ。それに変な気を回す方が嫌そうだ」
「──マーガレット。甘いものは、いけるタイプか?」
マーガレット
「だからお仕事来てくれた時に、ちょっとしたお菓子とか茶葉とか…くらいかな…」
「うん、好き」
レイヴン
「オッケー」と、店員を呼んで注文しよう。「少し口元が寂しくなってな。どうせ好きなら二人分食べる方がおいしいはずだ」
「……食事全般そうだからな」皆で食べると
マーガレット
嬉しそうな笑みが浮かぶ。
レイヴン
「それで十分なんだろうさ。──多分としか言えないのが心苦しいが」
マーガレット
「あ、わかる。誰かと一緒に食べたり何かしたりするのって楽しいよね」
レイヴン
「……ああ。任務中に俺が作ることもあるし、そういう時は意外と楽しい。それにマリー姐さん。朝食すっぽかしたり普通にするからな」と、ちょっとため息をついて
「マーガレットは、マリーにあってから結構長いのか?」
マーガレット
「あー…それ聞いたことある。ダイエットとかしてるわけじゃなさそうなんだけど…」
レイヴン
「……オフレコな。ずぼらなんだよ、意外と」
マーガレット
「ん、ここに来たばかりの時変な客に絡まれてたの助けてもらったの」
レイヴン
と、これは嬉しそうにいって
マーガレット
「…ふふ、オッケー。内緒ね?」
レイヴン
「……姐さんらしいな」助けてもらったのはそういいつつ「そうか……。そこまでこの仕事をして長くないんだな」と、息をつき。どうしてわざわざ娼婦をなどはいわない。元は同じ身分であるからこそだ。
マーガレット
「それ以来、勉強教えてもらったり、髪結ってもらったり、あとは…眠れるまで一緒にいてくれたり」
「お話聞いてくれたり、相談乗ってくれたり」
レイヴン
「……ああ」と、自分と重ねつつマリーのしてそうなことだと、頷きながら
「良い出会いができたな。どの方向にせよ、良い先輩だろう。マリーは」
マーガレット
「うん、綺麗だし、優しいし…素敵な女性だなって思う」
レイヴン
「もし困ったら俺も頼ってくれて構わない。姐さんが大切にしている人を無下にするわけにはいかないからな……いや……」と、少し考え「訂正しよう。折角の縁だからな。何かあれば相談や勉強は手伝うよ」
マーガレット
「ありがとう、レイヴン」何かあったら頼るかも?と悪戯っぽく笑って
レイヴン
「ごほん。そ、そういう笑みは魅力的だと思うが」と、赤面して
マーガレット
「笑顔は女の武器、ってね」受け売りだけど
レイヴン
「違いない」
「まったく、良き薫陶を得ているようだな……姐さんの」
やれやれという顔で
マーガレット
「マリー姉も昔は今みたいな風じゃなかったって言ってたけどね」本人は。
レイヴン
「……そうなのか」
マーガレット
「うん。ずっと怖い夢を見てるって言ってたし…今はもう慣れたって笑ってたけど」
レイヴン
「……俺も世話になった彼女の姿しか知らなくてな。ああ。結構、その自分の生活に無頓着なところは知っているんだが……」
「怖い夢……」自分も観ていたことがある。何かあるのだろうか……ひっかかることはないわけではないが。確証はもてない。
「そろそろ俺も彼女に何かしてあげられたらなとは思っているんだが──」
マーガレット
「呪いとかじゃない?ってはたから聞いてて心配になったけど…違うって言ってた」
レイヴン
「そうか……」
マーガレット
「だから昔はひとりで寝るのが怖かったんだって。あんまりよく覚えてないみたいだけど」
レイヴン
「……やっぱり話していて自覚したよ。俺はマリーという人間を全然知らないなって」
「……」
マーガレット
「…手が伸びてきて、連れて行かれちゃう夢って言ってた」
レイヴン
その時、自分がそうされたように。マーガレットがそうされたように、ともに寝てくれる人がいたのだろうか。
少し胸が痛くなり
「……本当に、何も知らないんだな。俺は」と、息を吐いた
そろそろケーキ(シロノワールが届くころだろう)。見目麗しいソレがテーブルに置かれる
マーガレット
「そういうのもあって、ハーブティーとか作り始めたのもあるって…わ」
ケーキには目を輝かせた。やはり甘いものは好きなようである。
レイヴン
「ハーブティか、彼女のそれには世話になったよ」
「……俺も、悪夢にうなされていたことがあってな。何度助けられたか」
マーガレット
「ふふ…じゃあ私達おそろいだね」
レイヴン
「……ああ、似ていると思うよ」
「遠慮せずに食べてくれ」と、促した
マーガレット
「レイヴンはマリー姉のこと知りたいの?」
レイヴン
「もし──お代が気になるなら。そうだな、君から見たマリーという人間のことを話してくれたら……」
「……ごほん。なかなかやるな……図星だよ」
と、先回りされて
マーガレット
「うーん…といっても、さっき話したことかなぁ……綺麗で、そつがなくて、優しくて…あ、でも」
レイヴン
「男性心理の掌握。夜の街を生きる女のテクニック。見事だな──」と大げさにわざといってみて
マーガレット
「…店の姉さんは、危なっかしいって言ってたかも」
レイヴン
「危なっかしい……?」
マーガレット
「まだまだ勉強中でーす」と笑って <テクニック
「…………前その姉さんが変な客に絡まれてた時」
「間に入って、自分の一晩賭けて飲み比べしたり、と、か…」
レイヴン
「の、飲み比べか……漢らしい手段を取ったな……」と、あきれた顔を浮かべるがすぐに考える。
マーガレット
「その方が手っ取り早かったって本人は笑ってたけど…あ、もちろん勝ったし…」
レイヴン
「強いからな……」
「……」
マーガレット
「たまに突拍子もないことをするというか…」
レイヴン
「一緒に仕事をしてるから、分かることもある。マリーは、かなり堅実で慎重な人間ではあるんだが……」
マーガレット
「ある日突然どこかにいっちゃうみたいな…そんな危なっかしさがあるって…」
レイヴン
「どうにも自分のことになると──その堅実さや慎重さの箍が外れることがある感じがしているんだ」
マーガレット
「あ、それ、たぶんお姉さんがいいたかったのソレ」
レイヴン
「……命を懸けている場面だから俺がセンシティヴになっているのもあるかもしれないが……」
「……そうか」
「俺もそういうことがあるから、あまり人のことはいえないんだがな……」苦笑して
マーガレット
「マリー姉の行動力にはびっくりしちゃうよね…私初恋の話聞いたときすごく驚いたもの」紅茶を飲みつつ
レイヴン
「ああ──って、初恋!?」
マーガレット
「?」
レイヴン
と、一瞬驚いた顔を見せたが
「ああいや、すまない。そうか、普通にあり得る話ではあるんだが。その」
「姐さんの性格を考えると──その」
マーガレット
「レイヴン、マリー姉は確かに大人びていて落ち着いてるけど18歳の女性ですよ?ですよ?」
レイヴン
「誰かに縛られるのは嫌な印象があってな」
「この前しって、驚いていたところさ──」
マーガレット
「コイバナのひとつやふたつやみっつ…っていっても私聞いたのひとつでだいぶお酒飲んでたけどその時マリー姉」
「普段あんまり自分の事話さないのに、教えてくれたもの」
レイヴン
「それに──普通に考えれば、あの容姿で、あの性格となれば、引手数多ではあるか……」といってもやっぱり縛られたくない。自由でありたい彼女が想起されて
「……」少し考え
マーガレット
「…それがですね」
レイヴン
「それは俺が聞いてもいい話なのか?」
マーガレット
「え、いいと思うよ?マリー姉、内緒なことは内緒って言うもの」
レイヴン
「そうか……」
ふと、自分がオフレコ~っていったことをおもいだし
妙に納得してしまう
マーガレット
「前にいた街にいた男の…人?数年前だから子?かもしれないけど」
「町の中でよく空を見上げてるのを街中で見かけて…その時のその男の子の目が気になったんだって」
レイヴン
「……ふむ。姐さんの好みのタイプだったのか……あるいは、性格的に気になるところがあったのだろうか」
「ただ、姐さんも恋をするんだな。少し安心した。いや、完璧人間ではないのはもうわかっているんだが」
と、ほっとしたように紅茶を飲み
マーガレット
「最初はたまたま街で見かけるくらいだったんだけど…っていうありがちな話ね、って笑ってた」
「なんでもその男の…子でいっか、よく綺麗な女の人と歩いてたみたいで」
レイヴン
「……姐弟なのか。……ふむ」
マーガレット
「ちょっとやきもちやいちゃったわ、って言ったんだよ?」
レイヴン
「……不覚にも少し可愛いと思ってしまった自分がいるんだが……」
マーガレット
マーガレット
「でも、事情があったのかなあ…その男の子、綺麗な女の人といるのにちっとも、楽しそうじゃなくて」
「……どうしたら笑ってくれたり、休んでくれるんだろう、って考えるようになったんだって」
「…ただ見かけてるだけだけで踏み込みすぎっていっぱい悩んだみたいなんだよね」
レイヴン
「……夜の街にいるなら、そういうこともあるだろうな。どういう関係かは読めないし。もっと単純に、姉に引きずり回される弟とかなら、そういう表情にも悩んでいるケースもあるかもしれないが」
「……そこまでマリー姐さんをやきもきさせる存在か……」
マーガレット
「そう、で、さっき言ってたの、ここからなんだけど…」
レイヴン
「マリーが面倒見がよいのは確かだが──。少し気になってしまうな。それほどの人物とは」
マーガレット
「どうしても諦めきれなくて…たくさん勉強したんだって」
レイヴン
「……そこまで心を動かされたのか」
マーガレット
「勉強もして、化粧の仕方も覚えて、どういう風にしたらいいかなっていっぱい考えて」
レイヴン
ふと、かつての飼い主の言葉が浮かぶ。女の情念ほど熱いものはない。それは、どの女性にも当てはまるものなのだと実感した
マーガレット
「距離の取り方とか、踏み込みすぎないような話し方とか…結局それが今につながるみたいだけど」
レイヴン
「……これが物語だったら、いや物語ではなくてもその一途さに心打たれるところだが……」
「きっかけ。か」
マーガレット
「その恋をしてよかった、って言ってた」
レイヴン
「よかった……か」
マーガレット
「その人を好きになってよかった、って」まるで物語だよね?
レイヴン
「ああ──物語みたいだし……過去形か」
「かなわなかったんだな……」
マーガレット
「で、最終的にすごく頑張ったマリー姉は…深呼吸して、さりげなく、その子がひとりでいるときに」
「こう声をかけたんだって」
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マリー
「ねぇ、お兄さん、私と遊ばない?」
マーガレット
「うーん、詳しくは聞いてないんだけど」
「マリー姉がその街を少し離れてる間にどこ探してもいなくなってて」
レイヴン
「……そうか」と、姐さんがよく言う台詞だなと一瞬思ったが
「いや……まさかな。それをつなげるのは偶然が過ぎるだろう……」と、小声でつぶやいた後
「あ、ああ」
と、マーガレットの言葉を待つ
マーガレット
「それでおわり。でもすごいよねえ…だってあのマリー姉が」
マリー
「誰かに縛られるのは好きじゃないのは事実だけど…彼になら悪くないと、そう思ってる自分もいるのよね」
マーガレット
「って言ったんだよ?」
レイヴン
「──そうか」
マーガレット
「あのマリー姉が自分のことを曲げるくらい好きな人いるんだなあって…」
レイヴン
「そこまで姐さんの心を動かせる存在──か。ああ」
「俺も今、驚いてるよ。……適切な言葉ではないかもしれんが、興味深い話だった」
マーガレット
「やっぱり恋ってすごいよね…」
レイヴン
「だが、俺が聞いたことは秘密にしておくよ。本人が触れられたら……さすがに嫌がると思うしな……」
「ああ、恋は盲目という言葉は本当によくできている」
マーガレット
「叶ってほしいなあ…」
レイヴン
「……そうだな」
マーガレット
「……あ、でもマリー姉変な事言ってたんだよね」
レイヴン
「人の優しくできることは、その分──」
「うん?」
マーガレット
「…好きだったから、止めなかった、って」
レイヴン
「……」腕を組み
「やっぱり俺は姐さん、マリーのことを全然知らないな。少しでも知ってると思っていた俺が愚かだったよ」
マーガレット
「ん?それでいいんじゃない?」
レイヴン
「ああ、いや、勘違いでしないでくれ。他人のことを分かるなんて驕り高ぶるつもりではなかったんだ」
マーガレット
「だってこれから知っていく楽しみとかあるんじゃない、って」
レイヴン
「ただ──少しでも理解しているかもしれないと思った俺が、情けなくてな」
「……」
と、マーガレットの言葉に。目を丸くして
マーガレット
「レイヴンの言ってることは正しいよ、他人のことを全部わかるなんてそうあるはなしじゃない、でも」
「…わかろうとはできるんじゃい?って」
レイヴン
「そうだな──完敗だ」
「ああ、それは……マリー相手だけに言えることではないな」
マーガレット
「知りたいならマリー姉、尋ねたら教えてくれるし」
だめなことはだめだけど。
レイヴン
「その人にはなれなくても──わかろうと努力することはできる」
「逆に」
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Trust to Deepen100%
レイヴン
「分かろうと努力しなければ──いつまでたってもわからないんだろうな」
「マリーが……少しも知らない初恋の彼のことを。少しでも分かろうと努力したように。努力ないところに答えはない」
「はは、困ったな……こんな当然なことをここで教えられるなんて……」
「まいりました。凄い女だよ。君は」
マーガレット
「ふふ…誰かさんから教わったんだよ」
レイヴン
「その答えは──聞かなくてもわかる。なら、猶更、俺たちは返さないとな」
マーガレット
「レイヴンになら教えてくれるよ、マリー姉。レイヴンがかっこいいっていうのもあるけど」
「名前、似てるし?」
レイヴン
「出世払いは俺の方が先になるだろうけどな。腐っても俺はぼうけん……」
「かっこいいと言われるのは……やっぱ慣れないけれどもな……」
「ありがとう」
マーガレット
「うーん…初恋の人かあ…」
レイヴン
「だが、そこまで姐さんに思われる初恋の人か……」
「羨ましいな。少し」
マーガレット
「いっそその街いって探すのもありかもしれないけど、うーん…あんまりいい噂聞かないところで…」
レイヴン
「彼はどこかへ行ってしまったんだろう。──どこかわからないが、その街にはもういないんじゃないのか?」
「マリーの手があれば、きっと。既に大空に羽ばたいているだろうさ」
マーガレット
「フォールンって街なんだけどね」
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レイヴン
「フォールンか……」
「……──────」
顔を歪ませて「フォールン……? っていったか?」
マーガレット
「…?そうだよ?」
レイヴン
「…………待て。いや……」
と、マーガレットの言葉を思い出し反芻していく
そして、首を振る。少し表情が硬い。
「……マーガレット。追加で何か頼むか?」
という言葉には先ほどのような余裕はない。
マーガレット
「ん、私は大丈夫」
レイヴン
「そ、そうか……」
マーガレット
「…もしかして、何かやばい街…?治安悪いって聞いたことあるけど」
レイヴン
「いや、少し今、魔域に呑まれているんだ。その場所は。つい先日依頼でもいって……質の悪い敵と出会ってな。そのことを思い出していたところだ」
「少し急用を思い出した。そろそろ出ようか。──えっと、商店街とはいえ、途中まで送った方がいいだろう」
マーガレット
「え…じゃあその街だと調べに行けないかあ…」「あ、大丈夫。ひとりで帰れるよ」
レイヴン
「ああ、そうか……」
マーガレット
「…何か気になってるんでしょう?なら、さっさと行く」
レイヴン
「……代金は払っておく。また機会があれば話そう」
「好意に甘えさせてもらうよ」
マーガレット
「うん、いってらっしゃい、レイヴン」
レイヴン
「……ああ、それと。姐さんから昔、字を覚えるために使った本がまだ残ってるんだ」
「次合う時に、渡すよ。助けになるかもしれない」
「じゃあ、行ってくる」
マーガレット
「ありがとう、レイヴン」
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never coming back100%
マーガレットに後押しされるような形で、店を出て、商店街を出て、そして花街へ自然と足が動いていく
レイヴン
「(よもやとは思っていたが──いや、姐さんの自由奔放性を考えれば別の街だとも考えたが……)」と、歩きながら思考をめぐらしつつ
「(いや、それが驕りじゃないか……)」
「(また、理解したつもりでいるんじゃないか。俺は……)」
花街を歩く。まだ明るい時間帯は人はまだ少ない
「(……何が、姐さんだ。何が姉さんだ……。いくら女性が苦手だからって。その好意にすら気づけない俺は……何をやっているんだ)」
「(世話をしてくれた──? それは、表向きのことだろう。ただの一途な思いじゃないか……全く)」
と、空をかつてのように見上げる
「いつまで甘えてるつもりなんだ、俺は。色々な人に、そして彼女に」
ただ、その足がふと立ち止まる
「(だが──俺はこの足で、彼女の場所へ向かって。何を伝えるつもりなんだ)」
「(衝動的に、一途な思いを聞いて。物語のヒロインに感情移入しているような──そんな思いを抱いているだけじゃないのか。仮にあったとして、彼女を安心させられる台詞が……吐けるのか)」
「(それに、今、マリーが、家にいるかもわからない。仕事でどこかに出ているかもしれない……だが……)」
「知ろうとしなければ理解ができない。素直な気持ちでぶつからないと……何も伝えられない。ジャックのあの熱さのように、曲がりなりにも炎をぶつけてきたフランメのように──」
「……だからこそ俺は、口では伝えられないからこそ」と、花街の途中にある。喫茶店に入り──少ししてから彼女が住んでいるその場所に向かった。
 
「──」
と、レイヴンは自宅の前にまでたどり着く。
家に気配はあるかな?
ありますね
レイヴン
「……」と、息を吐き。ノックではなく。郵便受けに手紙を入れて。
「必ず言葉で返すから」
といって、その場を離れた
 
マリー
しばらくして、人の気配を感じた気がするが、外に出ても誰もおらず
ふと珍しく郵便受けに手紙を見つけて
手に取り、家に戻り、丁寧に封を開けて
手紙には親愛なるマリー様と書いており。そして裏には。レイヴンの名前と共に
クロウ・シュヴァルツ
彼の本名が書かれていた
拝啓 マリー様
レイヴン
「こういう形で手紙を出すのは初めてだと思う」
「いや、おそらく報告書以外で手紙を出したのは初めてかもしれない。だから、人に対して送る最初の手紙だと思います」
という言葉から綴られる
マリー
「………」意図が読めない。でも、彼が本当の名前を入れてきたというのは彼にとって大きな意味があることだ
レイヴン
「今日は貴女に感謝の言葉を送りたくてこの手紙を書いています」
「正直、今までのことを覚えば感謝の言葉だけでは足りないと思うし。その恩返しも十分にできていないと思う。だからこそ、今日は。貴女に教えてもらったこの「文字」という知識で今ある気持ちをぶつけたいと思います」
「どうしても素直な感情をまとめることができなかった。だから、俺の浅はかさ、配慮の無さ。勇気の無さをお許しください」
マリー
「………」思い浮かぶのは先日のあの街の事。
あの出来事でひとつの区切りはつけることができていたはずである。
レイヴン
「冒険者になってから俺を支えてくれて。フランメとの因縁を断ち切るために俺を支えてくれてありがとう。こうして冒険者としてのレイヴン。いや、クロウ・シュヴァルツという人間が、人間として地位を得られたのも全部貴女のおかげだと思う」
「そして──過去に傷を抱きながらも。あの4年前の姿から。知識を得て。生活する術も得て。人間として再び自由を得られたのもマリー。貴女という人間のおかげだ。本当にありがとう」
と、ここまでは感謝の言葉がつづられていたが……その手紙はまだ続いている。
マリー
色々思うところがあったのは察することができる。ただ…なぜ、このような形で?
レイヴン
と、同時に、その手紙が濡れた跡が見つかるかもしれない。
「同時に。俺は貴女の気持ちに応えられていないこともわかった」
「なぜどうして今まで気づけなかったのだろう。ふと思い返せば気づくことはいつでもできたはずだ」
マリー
「…………」目を細めた。
レイヴン
「女性嫌い? それで逃げていたのか。あるいは自己評価の低さ。それで逃げてきたのか。いずれにせよ、それは言い訳にしかすぎないと思うし、俺が今まで隠れ蓑にしてきた、言葉だ」
そしてここで区切るように
「ふと、貴女のことを知る機会ができた」
と、一文が書かれ
そこから、再び文字が連なっている
「……正直なことを言えば、今溢れるこの感情をどう言葉にしていいか分からない。嬉しい気持ちは確かだ。だけれども、今、直接、貴女の顔を見た時にどう言葉にすればいいか分からない自分がいる」
「整理する時間が欲しい。けれども、その時間の間に、貴女はどこかへ消えてしまうかもしれない。伝えられないまま。俺がかつてそうしたように、また離れてしまうかもしれない。だからこそ、不格好な形でも、今の気持ちを伝えられる手紙を送りたいと思いました」
「間違いなくマリーという人間を俺は「大切な存在」だと思っている。けれども、それが「恋」なのか「恩人」としてなのか「家族のようなものなのか」
「ただただ、貴女の心を動かした存在であるということに……自信を持つことができた。それをどう言葉にしていいか分かりません」
「4年越しの答えを。この一途な思いに答えたいという衝動的な答えで返すのは失礼だと思っています。ごめんなさい。そして思ってくれていてありがとう。だから、口で返す答えは──大切にしたい。……思い乱されるというのはこういう感情であることを理解した。もしかしたら貴女もそうだったのかもしれない」
「だから、ほんの少しだけ時間をください。ただ今言えることは」
「本当にありがとう」
敬具 レイヴン 及び、クロウ・シュヴァルツ
マリー
「………」全てを読み終えて
いずれはくると思っていた。なぜなら彼は自分に余裕がなかっただけで、本当はとても頭がよくて、察しも悪くない。思考もできる。
幼い小娘が抱いていた情など、見抜いてしまうだろうとは。
本当は
離れようと思っていた、今のあの魔域の仕事が終わったら。このイルスファールから。そういう意味では彼はよく自分の性質をわかっていると思う。
役目を終えたというのもあるが、なぜならマリーという存在自体があの街を思い出させるものであるから。
ユーリに聞かれれば過保護であると叱られそうである。
「……馬鹿ね」本当に、お互いに。
わかっていなかったのはお互いにである。お互いに臆病で、相手を考えてばかりいて、相手を傷つけている。
「…バチがあたったかしらね」背伸びなどするから。
さてどうしたものかと考え、考え、考え
 
 
 
その数日後。クロウ・シュヴァルツ、もといレイヴンの元に1通の封筒が届けられる。
その宛名の筆跡は君にとっては見覚えあるもので。
レイヴン
数日の間に自分の中で何を言うべきかは整理をつけていた、どう転ぼうが自分の中で納得できる一つの答えを見つけていたが。
「──手紙」
と、筆跡を見ればすぐにそれは彼女からであるとわかった。
丁寧にその中身を開ける
中に入っていたのは手紙……………ではなく、一枚の栞である。
レイヴン
「……いや」
「栞?」
花の押し花がされている栞のようである。その花は…紫のアネモネ。
レイヴン
「──っ」と、急いで自分の書棚に急いだ。
花言葉辞典を開き、そして
アネモネ、その花言葉は決していいとは言えないものもあるが、花は色ごとに違う意味を持つ
レイヴン
「……俺の答えは決まっている」「行こう」
『あなたを信じて待つ』という言葉の意味を信じ──今度こそ、彼女に会いに行く。
再び、彼女が「信じて待っていてくれているであろう」場所へ向かう。今度は立ち止まるのではなく走り、そしてその場所へ
彼女の家の前につく
レイヴン
「──」気配を確かめ
扉をノックした
ノックの音が響いて少しあと、扉が開かれ
マリー
「いらっしゃい、レイヴン」
適当に座って、お茶淹れるわね、と
レイヴン
「……ああ、とても待たせてしまって、ごめん」
「ありがとう」
マリー
「それだけ考えてくれたんでしょう?放っておいてもよかったのに」
レイヴン
「最初から答えは決まってたさ。だけど──」
マリー
「気づかないふりをすることもできたのに、あなたはそれをしなかった」
レイヴン
「マリーがつなぎ留められたとしても……後悔させないような言葉。それをひたすら考えていた」
「ない頭を絞ってな……」と、自嘲気味に笑って
マリー
ハーブティーを淹れた、いつものソレである。
レイヴン
「このハーブティーに何度助けられたか」といって、飲んでから
マリー
「…どうして気づいたのかは聞かないわでも」
「…私は私がそうしたいからそうしたのよ、レイヴン」そこだけは間違えないで、と。
レイヴン
「なら同じことを返すよ。俺も、そうしたいから、今ここにいるんだ」
と、お茶を飲み終え
「少しだけ君の時間を俺にくれないか? ──それにこの言葉は……しかるべき場所で伝えたい」
マリー
「…そう」
「ふふ…いいわよ」
レイヴン
「ちょうど空を見上げるのによい日だからな」
マリー
「私の気持ちは…送った通りだもの」
レイヴン
「ありがとう──なら、ついてきてほしい」
マリー
頷いた
 
マリーを連れ、家から少し離れた場所へ彼女を連れていく。その場所は──ただの空き地ではあるのだが。
空がよく見える場所だった。
そして時刻は夜を迎えていた。ちょうど、月が空に輝いている。
上着は既にマリーに貸しているだろう。すこし肌寒い風が吹いている。
レイヴン
「──あの時、あの瞬間に伝えられたらよかったんだが……。でもようやく納得できるような言葉が見つかったんだ」
マリー
どんな言葉でも受け止めようと思った。
レイヴン
と、空を見て、そしてマリーを見る
「この綺麗な月明かりの下でこそ──伝える価値があると思ってる」といって落ち着かせるように息を吐き「都合の良い答えかもしれない、だけど──」
「俺は貴女を愛したい」と、愛しているではなくて『愛したい』と答えた。そして続く
「マリー。貴女は俺にとって大切な存在だ。でもその大切は『恋』でもあり『恩人でもあり』そして『家族』のような存在であり、そのどれもが本物だ」
「それに知らないことも多すぎる。だからこそ、愛したい。そして貴女のことを俺は、もっと知りたい」
「──……そして、本当に貴女のことが分かった時。愛してる。といえるようになりたい」
「だから、貴女の時間を俺にください」
と、言い切った。
マリー
「………知って後悔するかもしれないわよ?」
「貴方と出会った私はどれも本当、でも」
「そうじゃない部分もあるわ」たとえば
あの炎のような女性を、少しだけ、羨ましいと思ったりもした。誰にも言っていないが。
「私の性質が貴方を傷つけることもあると思うわ」
レイヴン
「確かに──何か大切なことを俺は知らないんだと思う。だから、下手に後悔しないなんかは言えないさ」
性質についても頷いた
マリー
「今だって、貴方にばかり考えさせて、貴方に言葉を言わせて、貴方をふりまわしているわ」
レイヴン
「そうかもしれない。けれど」
マリー
「方法が違っただけで、あの人の事を言えないわ」
レイヴン
「マリーが消えてしまう以上の後悔なんてない。貴女がどこかへ行ってしまう以上の後悔なんてない。根拠もない。確信もない。だけど──俺の中のクロウが。俺の中のレイヴンが、そう告げているんだ」
マリー
「私だって結局貴方と一緒にいたくて、貴方をあの時買ったのだから」
常の彼女を知っている者ならば、首をかしげるだろう、その言葉である。
レイヴン
「ははっ──……だめだな。言葉だけじゃ、やっぱり叶うはずもない」
「自分なりに考えたつもり──だったんだけどな。貴女の方が遥かに上だ」
マリー
「…人の気持ちに上も下もないわよ」
「私だって聖人君子じゃないもの」
レイヴン
「……今から俺がすることは人間としての最低の行為だ。言葉も捨てて。理性も捨てて──それこそ、後がなくなった獣がやる。本当に自分でも嫌になるくらいの……最悪の行動だ。だから」
「……嫌ならこの月の下の神に誓って、殺してくれ」
と、いって。マリーを抱きしめた
「君のこれからの時間が欲しい」と、告げた
マリー
ぴく…と少し反応するが、嫌がる様子はない。
どちらかというと
レイヴンが震えていないかを確かめている様子もある。
女性が苦手なのは知っていた。だから自分も接触には慎重になってきた、一応。
レイヴン
震える様子はないが。心臓の高鳴りは聞こえてくるだろう。
その心臓の高鳴りはきっとどちらの意味でもあるのだろう。
無理しているのもあるのかもしれないが、文字通りの恋としての高鳴り。その両方が混じったものだ。
マリー
「…もう、触れて大丈夫なの?」
レイヴン
「──今でも女性を相手にするときは、緊張するし、冷や汗も出る」
「だけど……」
「不思議と意識が遠のく感じはなくなったんだ」
「それに、そのはもう良い加減に卒業しないといけない」
「大切な人のこともしれないくらいなら──」と、声色に嗚咽が混じり
「俺は今まで生きてきた意味がない」
マリー
レイヴンの腕の中、顔を少し上げて
手を少し伸ばして、彼の頬へ。
レイヴン
「……ぁ」
マリー
「…つらかったらいってね?」と
レイヴンの背中に手を回し、同じように彼を抱きしめた
レイヴン
「……ぁ、ああ……」と、答えが聞けて
マリー
昔は彼女の方が背が高かった、が。今は逆になっていて。
そしてより密着してることでわかるだろう、心音の速さは
ほとんど同じである。
「もう、お姉さんなんて言えないわね?」
レイヴン
「……お互いに素直じゃないよな……それだけは今でも分かるさ」と、涙声で述べて
マリー
私も、貴方も。
レイヴン
「姐さんは今日は捨てるよ……マリー。愛してるはまだ言えなくても……」
「好きだ」
「……こんなにも月が綺麗なんだからな」
今日で捨てる
マリー
「…ふふ、そうね」少し背伸びをしてギュッと彼の耳元で
「…しんでもいいわ?」
 
 
こうして4年越しの時を経て素直になれない二人の男女の恋が実った。
しかし、それはまた新しい一歩も出もあり
でもあり
胴慾をめぐる螺旋へのいざないなのかもしれない
はたまた
災厄をめぐる獣達を呼び起こす火蓋なのかもしれない
だが──それでも、彼らは答えを求め、探し続けるのであろう。
何故なら彼らは星の標冒険者である。過去の災厄である奈落の剣とも戦い、今をつなげようとする冒険者であり、彼らも星々の輝きの一つなのであるから
嬉しい恋が積もれば、恋をせぬ昔がかえって恋しかろ。

- 夏目漱石 -
 
マリー
お疲れさまでした
レイヴン
お疲れさまでした
カロリーオーバーだ…
20201022_0
マリー
おつかれさまでした、おつきあいかんしゃ
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