- !SYSTEM
- が入室しました
-
-
-
-
- ディニスでの戦いから半年が経とうとする頃。
- 一人の少女は、あの日、自ら立てた約束を果さんと、日夜研究に没頭していた。
- この部屋を借りる際、理由を説明するのに躊躇ったが、今となっては正直に話して正解だった。
- 『──"庭"の手によって穢されてしまった"葉"達の治療』その研究の為の部屋を借りたいと申し出たのだ。
- 当然、始めは怪訝な顔をされた。しかし、冒険者ランクやディニスでの功績などの助けもあり、逆にいくらかの助けを得ることが出来た。
- でも、問題はそれからだ。
- 薬草や薬物に関する書物や、病気の治療・治癒に関しての学術書を読み漁ったが、出た結論は──"葉"達を『薬物』で治すのは不可能、という事だ。
- 当然だ。神の力でも治すことのできないものに、人の手で及ぼうというのが間違いだった。
- けれど、身近に良い例がいる。
- シグネに対するアネット、レイフェルに対するリコリス。この二組だ。
- アネットは、元は"庭"の一員だったと言うが、シグネの前に居た彼女は"葉"とは違い、感情と意思があった。
- リコリスは、彼女自身が特殊とはいえ、自ら断薬したことを聞いた。今はどうしているのか解らないけれど、"華"から離れた今、レイフェルに興味が向いているうちは、再度薬に手を出したりはしないだろう。
- この二組の共通する部分は、どちらも理解者がいること。
- レイフェルの方は──逆に面倒を見られている感じはあるけれど、ここでは置いておこう。
- この事から、相手を理解し寄り添うことで、薬物依存や自我の喪失から脱却出来る可能性は十分にあるといってもいいのかもしれない。
- といっても、救助した"葉"に対し、逐一パートナーをつける訳にもいかない。私個人が取り纏められる数でもない。
- 現在、ディニスにいるだろう"葉"達は、そのまま彼らに任せたほうがいいだろう。
- なら、今の私にやれる事は……この先、救える命を救う事ができるようにする事。
- 彼女から渡されたサンプルがあれば、一回分の薬が作れるはずだ。
- この薬の肝は、痛みを──痛覚を遮断する事にある。
- これを有効的に使えば、瀕死にある者を平時と同様に運ぶこともできるし、あえて自分が飲むことで誰かを庇う事もできるだろう。
- でも、正直に言って、後者の使い方をしたくはない。けれど、そうは言ってられない状況があるかもしれない。
- だから、備える為にも私は作ろう。誰かを救う為の薬を。
-
-
-