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- シータが入室しました
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- 錬金術ギルドの隅、人気の少ない通路にある個室。
- そこでは、一人の少女が研究に明け暮れていた。
- 机に散りばめられた本や薬品。コポコポと音を立てるビーカー。
- それらとにらめっこを続けていた少女が口を開いた。
- シータ
- 「──出来た」
- 手元には、完成されたばかりの、液体が詰まった薬瓶。
- そう、彼女が作り上げたのは、未だ中毒症状に悩まされる"葉"達の為の薬──その試作品だ。
- シータ
- 「……随分、掛かっちゃったわね」
- 彼女達を助けたい。そう決意してから半年が過ぎた。
- しかし、どこかの誰かが助言をくれなければ、もっと時間が掛かっていただろうという事に苦笑いを零す。
- 後は、実際に投薬し、その効果を試すといったところだが──
- 彼女は悩ましい顔をしていた。
- シータ
- 「──結局、やっていることはこちらも同じ、ね」
- 何も解らぬ少女に、得も知れない薬を投与する。その点で言ってしまえば、あちらとやっていることは変わらない。
- けれど──
- シータ
- 「ううん、これは私がやろうと決めたこと。誰かと比較される言われはないわ」
- 首を振りながら、そう呟いた。
- 大きく背伸びをする。暫く研究に籠もっていたせいか、少し体が固くなったのを感じた。
- 随分と鈍ったものだ。今度、〈星の標〉に赴いて、適当な依頼でもこなそうかと考える。
- シータ
- 「そう言えば、ミレイユのところにも顔を出さなきゃいけないわね……」
- ふ、と笑みを零しながら、出来上がった試薬品を懐に入れ、席を立つ。
- それから、荒れた部屋を片付けた後、彼女は意気揚々と部屋から飛び出したのだった──。
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- シータが退室しました