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"悪魔"と"出来損ない"

20200621_0

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ニオが入室しました
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“華”が入室しました
“華”
お待たせ。
ニオ
ううん。いま来た所、よ
“華”
どういう状況でお話したいの?
ニオ
ちょっと描写していくわ
“華”
ええ。
ニオ
だから少し待っていて ごめんなさい
“華”
待ってるわ。
 
 
 
 
 
 
 
 
──暗い、暗い、場所 永遠に朝が来ない、常世の城
"庭"と呼ばれる組織において同格である、"根"の1人、"匙"からの発注のために、吸血鬼の庭(ノスフェラト・ガーデン)の拠点にその人物は居た
発注というのは、いくつかの薬品と新しい"葉"、"花"の注文。これもまた、以前ニオが注文したのと同じくらいの量で、
質は問わないからとにかく数が欲しい ということだった 理由は勿論言わないし。おそらく聞かなかっただろう
会話がそれほど得意ではない"匙"は、発注を直接終えると、いくつかの会話を吃音を交えながら"華"とした。その中に
"鋏"の話題があり、話を聞いていくと "匙"、彼女の目的の一つが "鋏"を超える作品を作ろうとしている事に気がつくだろう
新作は近いうちに。という結びを入れて 在庫は処分するつもりだと 彼女は語った
もし、興味があって 遊ぶなら遊んで構わない、と手渡されたのは1本の注射器で 
その1本が"在庫"の存在を1ヶ月維持するためのものだと告げた
特に興味がないならそのままにしておくとも
貴女は、何らかの興味が出たのか、それとも気まぐれか、"匙"をからかうためかは分からない、が その注射器を受け取り、在庫(ニオ)が閉じ込められている部屋へと向かうことになる
白い髪に赤い瞳 メイド服を着せられた 夜の眷属(リャナンシー)が案内したのは、部屋の一室
この部屋だけではないが、何処ぞの高級宿も裸足で逃げ出す優美な彫金がドアノブにはなされており 一部屋だけ見れば、ここが特別な部屋だと錯覚するものが居るかも知れない
リャナンシーはノックもせずに扉を開けて
客人を室内へと誘導する 後ほどお声掛けくださいと返して リャナンシーはそこからさっていった
残ったのは──
天蓋のベットに四肢を鎖で結び付けられ、更に胴と首がベッド自体に巻きつけるような鎖で拘束された 黒と銀の髪を持った少女
“華”
短く礼を返し、手を振りながらリャナンシーを見送ると、部屋の中へと向き直って――
「ハロー、ニオちゃん。お久しぶり、ね?」 にこやかな笑みを浮かべて、部屋に残された少女に語りかけた。
誰の目から見ても美人であるのは間違いないが
それが彼女の本当の貌であるのかは、彼女以外誰も知らない。
ニオ
「──…‥」 薄いまぶたをゆっくり開けて 「さ……じ…‥?」 小さい声で誰何を問う
“華”
「こんな豪華な部屋で、洒落たベッドに拘束具。随分といい待遇じゃない?」 彼女の様子を見ても微塵も表情に変化はなく、ベッドの端に腰掛けた。 「残念。あの子じゃないわ?」
ニオ
「……"華"」 顔を思い出すのに声に反応するのに明らかに遅れていて 薬が切れかけていることが伺えた
“華”
「よく思い出せました」 ぱちぱちとわざとらしく小さな拍手を送る。 「酷いわねぇ。私だって、あの子にこんなことしたことはないわ」
ニオ
「ニオは……、負けちゃって……それで……」 華を見つめてたどたどしく呟いて 「………」 虚空に目を向けて一度目をつぶると
わたし
「……ご用件はなんでしょう、か」 口調が変わる ただ、どこかだるそうな様子は変わらない
“華”
「ふぅん? 一度の失敗くらいで、普通はこんな扱いはされないと思うけれど」
「これといった用があったわけじゃないわ。折角此処まで来たのだし、知り合いに挨拶のひとつくらいしておくのは礼儀でしょう?」
わたし
「……この拘束は、」うめくように 「"双子"、"青薔薇の双輪"……吸血鬼によるものです…‥ただ、」
“華”
「それとも、用が無ければ来てはだめだったかしら?」 拘束されたままの彼女に覆いかぶさり、頬を細い指で撫でる。
わたし
「"匙"が、認可していることは…確かでしょう……」
「……」 目を細めるようにして 「‥‥いいえ」
「‥…"華"のお好きなように」
“華”
「吸血鬼、ねぇ。それこそ、ただの一度の失敗くらいでこんなお仕置きをする意味はないし、別の理由があるんでしょうけれど、まあそれは重要じゃあないわね」
わたし
「……意味はないのでしょうね。嬲って、楽しんでいるだけです……」
間近で見れば分かる。首元 4つの小さな貫通痕が首筋にある
“華”
――物分りの良い子で嬉しいわ」 優しげに目を細めて頬にひとつ口付けを落として。 「いい趣味してるわね。私にはとても真似出来そうにないわ」
わたし
「……薬も…もう、随分…与えられていません」
“華”
す、と指先でその痕をなぞる。 「本当、酷いわね。可愛い人形の身体にこんな疵を付けちゃうだなんて」
わたし
「……ん」 くすぐったそうにして言葉を切って
“華”
「どうして薬が貰えてないの? あなたが拒絶しているわけでもないんでしょう?」
わたし
「……"双子"が止めているか……」
「"匙"が……まだ、私達に怒っているか……、」
「………」 この先は言いたくなさそうに口をつぐんで
“華”
「うーん……」 わざとらしく悩むような声を出してから、口元に悪戯っぽい笑みを作る。 「残念、不正解」
「分かっているなら、ちゃぁんと答えなきゃだめよ?」
わたし
「……‥」 覆いかぶさる華を見つめて、観念するように目を瞑ってから
 「…‥…もう、私達に興味を持たれていないから、でしょうね」
“華”
「せめて新しい子が出来るまでは、保険として手元に残しておけばいいのに、ねぇ?」
わたし
「……ニオは、それを信じたがらないでしょう」
“華”
「新しいことにしか目を向けられない純粋さ、私は嫌いではないけれど」
「で、それを認めてるあなたは、此処で座して終わりを待っているの?」
わたし
「おそらく、この鎖を渡されてから……そして契約を封じれられている吸血鬼とニオが結んだ時から」 じゃら、と拘束されている鎖とは別の銀鎖が具現化する
「‥…こうなることは、決まっていたのでしょう」
「……私は」
「……此処で終わりたくはありません…、元から、そういうものだったとしても」
「私達、Nシリーズは……"匙"が作っていった作品の中でも、ある意味革新的なものです」
“華”
「でも……」 頬に冷たい掌を当てて、視線を逸らせないようにして。 「もう、あなたたちにその価値はないそうよ?」
わたし
「……」 瞳が大きく揺れる
“華”
「あなたたちにとっては、彼女からの評価が全て。少なくとも、ニオちゃんに関してはそうだと思っていたけれど――それがなくなった今でも、あなたたちは終わりを望まないの?」
ニオ
「……そんな、そんなはずないわ」
「……だって、ニオ達は匙の……大事な‥」
また瞳が揺れて
わたし
「……失礼しました……」
“華”
「大事だったら、他人の手に委ねたり、薬を与えなかったりしないわ。ちゃぁんと手元か、目の届く所に置いておかないと、子供は何をしでかすか分からないもの」
「ふふ、ちゃんとふたりともに聞こえてるみたいで良かったわ。二度も同じことを話すのは手間だもの」
わたし
「……もう、此処で言った所で、結果は変わりませんでしょうから、口にしますが」
「ニオにとってはともかくとしても、私にとっては、"匙"の道具であることが、生存に繋がっていたから、やっていただけのこと……」
「私は……居なくなりたくない。だからそのためなら、何だってする……」
「……それだけのことです」 初めて、慇懃だった私の瞳に、薄く恐怖の色が帯びる
“華”
「当然よねぇ。折角この世に生を受けたのだもの。それなら、満足の行くまで楽しんでからでないと、死んだって死に切れないのは当然だわ」
「んー」 自分の顎に指を当てて考え込む。
「これ、なーんだ?」 懐に手を入れると、指先に1本の注射器を挟み、くるくると回して見せつけた。
わたし
「!」
がしゃ、と鎖が鳴る
“華”
「さっき、“匙”がくれたのよ。在庫(あなた)はもう要らないから、私が玩具にしてもいい、って」 今表に出て来ていないニオにも、聞こえてる?とでも言うように小首を傾げて。
ニオ
「……うそ、うそよ……」 震える声は、慇懃だった彼女のものではなかった
「……"匙"はそんな事しない…‥」
「ね、ねぇ、"華"……」 懇願するように哀願するように
“華”
「信じるのも、信じないのもあなたの自由よ。私にとってはどっちだって構わないもの」
「なぁに?」
ニオ
「ニオはなんでもするわ、お仕事も、"匙"が良いって言う限り、"華"が言うこと全部聞くわ」
「だから、"匙"と、"匙"と会わせて……」
「きっと、そんな事……"匙"は言わない…」
“華”
「うーん……私は別に会わせてあげてもいいけれど、彼女が会ってくれるかは分からないわね。無理やり会わせて、彼女との関係に罅が入るのも今は避けたいし」
「ああ」 ぽん、と手を打った。 「いい方法があったわね」
ニオ
「……なんでもするわ、ニオにできること全部…」
「……」 華に視線を向けて
“華”
「そう。何でもすればいいの――
「あの子――“匙”が求めているのは、最も美しくて、最も強い人形」
「あなたがそうなれば、きっとあなたの処分を考え直してくれるわ。あなたは要らない子から、また必要な子になれる」
ニオ
「………どうしたらいいの?」
「……いっぱい殺せばいい?いっぱい、いっぱい、殺せばいい?」
“華”
「そう、ねぇ……」 自分の頬に手を当てて。 「少なくとも、私の“鋏”は越えなければいけないみたい。何だか随分執着しているみたいだから」
「まあ確かに、あの時点ではあの子は一番良い出来の生モノ(にんげん)だったけれど――
ニオ
「お姉さまを……」
“華”
「そういえば、ひとつ聞きたいのだけど」
「あなたは、どうしてそんなに“匙”に認められることに拘るの?」
ニオ
「……ニオは、"匙"のことが大好きなの」 「貰えるものは、いいものだけじゃなくて、痛いのも苦しいのも、嬉しいの……」
「……だからニオにできること、何でもするのよ‥‥そうしている理由は、忘れちゃったけれど」
「そうしたいって、思うの」
“華”
「そう。それなら、あなたが“匙”に要らないって思われてしまうのも当然ね」
ニオ
「……え」
“華”
「だって、あなたはただ彼女からの愛を求めているだけだもの。『彼女のためなら何でもする』というのは、言われない限り自分からは何もしないと言っているようなものよ」
「本当に彼女が大好きだというのなら、あなたからの愛が伝わるように、もっと自分から動かないとだめよ?」
 
小さく息をついて
わたし
「……そう、調整されているだけです。私達は…そういうバランスで組み上げられているだけのこと」
“華”
「だから、よ。製作者の予想を裏切ってくれない作品なんて、何も面白くないじゃない?」
わたし
「……確かに」"華"の手元に目を向けて 「……では、裏切ってみせましょうか」
“華”
「欲しいの?」 先程の注射器の針をニオの目元まで持っていって。
わたし
「そう行動することの、対価として、それを頂けませんか?麗しい、"華"」 「それをいただければ……後は自分でなんとかします」
“華”
出来損ない(あなたたち)が、最高のショーを見せてくれるなら――ね」
わたし
「──踊ってみせましょう。人形劇の舞台で」
観客(あなた)を楽しませることが、私達が払う対価です……」
“華”
「”鋏”を越えてあなたたちの価値を示して見せるのでも、真実に気付いて道を外れるのも、“匙”をあなたのものにしてしまうのも。どんな結末だって、私は構わないわ」
「足掻いて、足掻いて、足掻いて――」 ニオを上から見つめる瞳の奥に、炎のような熱が灯る。 「――それが燃えていく様を見るのが、私は何よりも愉しみなの」
「そのためなら、私はあなたのどんな夢にも手を貸してあげる」
わたし
「───、」 その瞳に魅入られるように 「……ええ、これが、"契約"です」
“華”
「さあ、見せてみて――」 自らの口でニオの口を塞ぐと共に、その細い首筋に片手で器用に注射針を突き立てた。
わたし
それこそ、この"悪魔"の予想を裏切ることが 私が生きる道ならば──
「──ん…ぅ…」
“華”
すべてを注ぎ込むと、唇を離して、“悪魔は”嫣然と微笑んだ。
わたし
「──は、ぁ……」 薬の影響か、華の口づけのせいか 顔が上気したように頬が染まる
“華”
銀糸のような髪を艶やかにかきあげながら身を起こすと、蠱惑的な芳香が鼻腔を擽って、 「それじゃあ、行きましょうか。連れていってあげるわ、次の人形劇の舞台の傍まで、ね」
わたし
「──、」 1本で1ヶ月。それまでに、生存戦略を打ち立てなければならない 「……随分と、良い待遇です」
“華”
「良い舞台を観たいと思うのは、観客にとって当然のことでしょう?」
わたし
いつの間にか、拘束されている鎖は全て切断されていた 身体を起こす様にして 鎖を外す
「──、納得いきました」
“華”
「この薬は、時間を掛ければ作れなくはないでしょうけれど――残った時間を考えれば、間に合うのは、まあ精々少し時間を延ばすくらいでしょう」
「誰に頼るのかは自由。……ふふ、頑張って、ね?」
わたし
「……、ええ」 頷いて
“華”
「それじゃあ――」 拘束の外れたニオの手を取り、呪文を唱えれば――
二人の身体はその場から溶けるように、跡形もなく消え去った。
“華”
これであなたを好きな所に運んであげて私は終わりでいいわ。
わたし
ええありがとうございました
“華”
どういたしまして。
わたし
私もこれで大丈夫です
“華”
後は自分の力で頑張ってね?
わたし
ええ、それすらできないのであれば、座して死ぬほうがマシです
心当たりがないわけではありません、やらせてもらいます
“華”
ええ。
わたし
では、また会うことがあるかは別として
“華”
それじゃあ、結末を愉しみにしているわ。
またね?
わたし
ええ また
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“華”が退室しました
背景
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