幕間:妖精魔法についての使用検討
20200510_1
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- ウィスタリアが入室しました
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- 星の標、裏庭 昼間であれば、鍛錬をする冒険者やシーツなどの洗濯物
- それらが干してあったり、冒険者たちが語らっていたりするわけだが
- 夜ともなれば、話は別
- たまに酔いを覚ましに人が出てくる程度で、態々暗い夜の庭を眺めやるものは居ない
- 時間帯としても遅く、深夜であるためか 店員も最少人数で回していて、客もそのまま突っ伏して眠るような酔っぱらいばかりだ
- そんな店内をくぐって 金髪の少女が裏庭に出てくる
- 白いシャツ、黄緑色のスカートに革靴という出で立ちで
- 小さな剣を一振り帯剣している他は、一般人と相違ない
- いや、もう一つだけ、異なる点がある
- 耳元に輝く宝石飾り。 妖精使いであることを示すものを身に着けて 少女は裏庭を進んでいく
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- トピックを変更 by ウィスタリア
- 深夜3時 星の標裏庭
- ウィスタリア
- ざっざっざ、と律動的な歩き方で進んでいく と 植わってるイチョウの木の近くまでやって来る
- 「……」 木を背にしてしゃがみ込むようにして座ると 目をつぶる
- 『来たれ』 妖精語の呼びかけ マナを練り、小妖精を呼び出す魔法を行使しようとする
- 先日、もうひとりの指示者がこの店に訪れ、自分が持つ"素養"について説明をしてくれた
- 妖精使い。妖精の声を聞き、妖精と対話する事が出来る者
- 自分がそれに該当するのだという
- 『来たれ』 もう一度呼びかける 反応はない
- 通常の妖精使いであれば、まず呼び出すための"門"を宝石に設定し、そして妖精に契約を持ちかけることで魔法の行使が可能になる
- しかし、門の設定をしていない宝石から、呼び出すということは本来することが出来ない。一部の例外を除いて
- 「……」 どうすればいいか、他の魔法行使者に確認したほうが良いかもしれない
- 少女は無表情なまま一つ頷くと
- 「‥…」 試していない方法があることに気がつく
- 側頭部からしゅるりと 髪を押しのけて、2本の角が伸びる
- 『来い』 魔動機文明語の呼びかけ
- ナイトメアの魔法適性を利用した強引な召喚 それは、マナが結実し始めることで効果が上がったことを示した
- 「…成功しまシた」 ぼんやりとした光に包まれる妖精を見つめて 無表情に少しの驚きを添えて 少女は呟いた
- 妖精
- 『やめて……やめて……』 妖精は苦しそうにそう呟く
- 『どうして無理やり呼んだの?嫌いよ、貴方』
- ウィスタリア
- 『無理やり…?』
- 『否定します。魔法の行使自体に問題は──』
- 妖精
- 『もう知らない』
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- ふ、と妖精は姿を消して
- ウィスタリア
- 「……状況不明です」
- 「……無理やリ…」 言葉を繰り返すように呟いて
- 「状況不明デす……」 魔法の行使は、諦めたほうが良いかもしれない
- 行使は出来ないけれど、使えること それは自分が戦闘員だったことに関係しているのだろうか
- 「……」 目をつぶって 考える 思い出せないか、試してみる
- 記憶は遠く、靄がかかる
- 声が聞こえる、思い出せる、唯一のもの
- ──いきなさい
- 「……」 目を開く、表情は動かない
- その命令を受けて、わたしは、どうしたんだろう
- 「…‥‥」 少しぼーっとするようにして 視線を夜空へと徐々にあげた
- 「……」 輝く星々を見つめて 先程の妖精の光を思い出す
- 「……要検討デすね」
- しゃがんでいる状態から身体を立ち上がらせると 店内に向けて歩き出す
- 試すべきことは試したし、指示者が探しに来てしまうかもしれない
- もう3時間の睡眠を取るべく ウィスタリアは裏庭を後にするのだった