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幕間

20200506_0

!SYSTEM
ネーベルが入室しました
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メルクが入室しました
メルク
うん
ネーベル
ええ
と。
依頼から帰ってきたタイミング、場所は自室でいいかしら。
メルク
ええ、構いません
ネーベル
じゃあ、少し時間を貰うわね。
メルク
どうぞ。 よろしくお願いします
ネーベル
宜しくお願いします。
 





 
王都イルスファールにある、冒険者ギルド支店〈星の標〉。
多くのそれと同じく、この支店も、冒険者ギルドとしての酒場に加えて、宿泊施設が併設している。
ネーベル
ごめんなさい、ちょっと待ってね。
 
裕福な層が利用する様な豪華な宿ではないものの、冒険者達が利用するには十二分な宿として
メルク
大丈夫です
 
〈星の標〉に登録している者達のいくつかは、この宿を普段から利用している。
そんな一室での話――
 
メルクが依頼から戻り、報告や報酬の受け取りなどを済ませて
店員のキャロラインに、出立前に話をした彼女(びょうにん)についての話を聴くと、こんな返答が帰ってきた。
「ああ、おかえりなさい。……お話、聞いていた通りに見回りはしたんですが――」 
曰く、見回りの際にはやんわりと――そう、やんわりと拒まれたのだとか。
それでも、病人と聞いている以上、また部屋の借主であるメルクに頼まれている以上は、
決まった頻度では見に行っていたのだが、どうにも常に気を張っている為か 威嚇する様な対応をされていた、という。
少し困った表情でキャロラインはメルクに語り、ゆっくりとカウンターに入り、仕事に戻って行った。
ネーベル
ちょっと呼ばれてしまって。もう入って大丈夫。
メルク
分かりました
メルク
「……すみません。ありがとうございました」 キャロラインには戻る際に頭を下げて
「それから、リゾットとサラダ、フルーツの盛り合わせを頼みます」 これで、と受け取ったばかりの報酬から注文をする
 
それらを受け取ると、メルクは階段を登り、自分の部屋へと戻っていく
キャロライン
「はい、お待たせしました!」 笑顔ではきはきと答えて、それらを手渡し 階段を上がるメルクを見送った。
メルク
片手で盆を保持して 自分の部屋の扉をノックする
「──、ネーベル。戻りました」
 
部屋の内から、返答はない。微かに聞こえてきたのは、擦れるような布の音だ。
メルク
「開けますね」 鍵を開けて ドアノブを回して入室する
 
扉を開けば、室内はメルクが出て行った時とまるきり変わっていない。
全く動いていない家具、使用された形跡の無い食器 それでもキャロラインが持ってきてくれたのだろうか、手の付けられていない料理がひとつあり――どうやら、それも手をつけていないようだ。
メルク
「……ネーベル」 もう一度声をかけて 扉を閉める
 
寝台の上には、メルクへと気怠そうな視線を向けて丸まった少女の姿が見える。
ネーベル
――、……あら、戻ったのね」 掠れた声で、普段よりも柔らかい――力のない声で、メルクを迎えた。
メルク
「…ただいま戻りました」 手のつけられてない料理の隣に盆を置くと
「具合はいかがですか」 とベッドの近くに椅子を持っていって座り込む
ネーベル
「……良くなったわ」 丸めた身体を更に丸めて 
「少なくとも、あなたが出る前よりは」
メルク
「薬は飲みましたか?……それから、食事を摂っていませんね?」
「カプセル…を、飲んだなら、それでいいのですが」
ネーベル
「……動くのが、面倒だっただけよ」 視線を逸らす。
メルク
「……困った人ですね」
「少し、待っていてください」
寝台同士の敷居を作るカーテンを引いて 装備を外して着替えると
シャツにチェック柄の茶色いズボン姿で リゾットの皿と匙を持って改めてネーベルの寝台近くの椅子に座る
「お待たせしました」
ネーベル
少し弱った表情を向けながらその様子を見やる。
寝台に寝かせたまま、近くに座った少年に、無意識の内に僅かに身体を寄せた。
「……待っていないわ」
メルク
「それなら何よりです」 少し笑って
「面倒、ということであれば、こうすれば食べてくださいますか?」 スプーンでリゾットをすくうと ネーベルの口元に差し出す
ネーベル
口元をへの字にして 恨めしそうに少年を見やる。
メルク
「……体力をつけないと、治るものも治りません…それに」
「僕の看病のときに伝染(うつ)してしまったかもしれないでしょう」
「…だから、今度は貴方の番ですよ、ネーベル」
ネーベル
――あら、それは構う事ではないでしょう」 嘲る様に呟くと、躊躇いがちに小さな口を開いて、差し出されたリゾットを口に含む。
メルク
「……」 小さく頷いて ゆっくりと二口目を用意する
ネーベル
理由までを口にするつもりはない。きっと、理解はされているだろうから。
メルク
「食べられるだけ食べてください。甘いものもあるし、サラダもあります」
「それから、一応、カプセルも飲んでおきましょう」
二口目を差し出しながら
ネーベル
「……」 軽口を返さないのは、食事をしなかったせいで頭が働かないからだ。
差し出された二口目も躊躇いながら口に含む。
これも、食事を欠いていたから、身体が求めているせいだろう。
メルク
「仕事で収入もありましたから、暫くは看病に専念出来るとは思いますが」
ネーベル
「……すぐ、治すわよ」 
メルク
ゆっくりとリゾットを食べさせていって 「はい。元気になってもらわないと困ります」 皿が空になると テーブルに戻してくる
「‥‥何か、欲しいものはありますか?」 
ネーベル
首を横に振って、否定して
「……壊れてしまっても、困るものね」
メルク
「…‥ええ、困ります。死病というわけではありませんが、それでも体調が悪いのは気を揉みますから」
毛布を整えるようにかけてやりながら
ネーベル
毛布をかけられると、ぼんやりとした瞳をメルクへと向けた。
「……ばかね」
メルク
「……どうされました?」 視線に気がついて 労るように優しい微笑みを向けて
「ばか、ですか」 苦笑して 「もう、ご存知のはずでしょう?」
ネーベル
微笑まれると、ずるずると視線を逸らして、部屋の隅に放った。
「拾わなければ、良かったでしょうに」
「……再確認したの」
メルク
「……僕はそうは思っていません」
「君を連れ出さなければ、僕は僕を赦せなかっただろうから」
ネーベル
「そういう所が、ばかだって言っているの」 
メルク
「賢い選択ではないのでしょうが、」
ネーベル
「これからも、きっとあるわ。私みたいな"もの"と会う事は」
メルクの返答に被せる様に、声を大きくさせた。
メルク
「……そうかもしれません」
「その都度、助けるわけには、連れ出す訳には行かないでしょう」
「……僕が守ると、誓ったのは、ネーベル。君だけです」
ネーベル
「……勝手な理屈」 明確な嫌悪感を示しながら、首を横に振った。
メルク
「だから、誰も彼も、という訳ではありません」
「‥ええ、勝手ですよ」 頷いて
「…付き合わせている自覚はあるんです。だから、僕は出来ることはしてあげたい。そう思ってるんです」
ネーベル
「……」 彼の調子に、引っ張られている。
こうなると、どうにも手強いのだ。
メルク
「……元気になったら、また仕事に出ましょう。一緒に」
「イルスファールもまだまだ、見るところがいっぱいありそうです」
「今回の仕事は、ルシェンカという街に仕事で行ってきたんです」
ネーベル
「……、……」 「ルシェンカ?」
メルク
「大きな穴を囲むように作られた街で、その穴が魔法文明時代の遺跡そのものなんだそうです」
ネーベル
「……巨大な遺跡の周囲に、街が形成されている、という事?」
メルク
「ええ。そういう事ですね」
「そこで一週間ほど潜って、探し物をしてきました」
ネーベル
「……」 遅いとは、思ったのだ。
「何か、あった?」
メルク
「異大陸との技術交流の痕跡と…‥大型魔動機を見つけました」
「大型魔動機の方は、戦闘になってしまったのですが」
「人助けが出来たと、思います」 少し笑って
ネーベル
「……」 なんと声を掛けるか、少し迷う。
「人助けと、仕事と、どちらを優先しているの」
メルク
「……今は、仕事です」
「君との生活もありますから」
「ただ、その過程で人助けが出来るなら、それをこなしていきたい。そう思っています」
ネーベル
「……
「いつか、死ぬわよ。貴方みたいな生き方は」
メルク
「…死なない人はいませんよ。ネーベル」
ふと、笑って 「だから、どう生きていくか、それが問題なんです」
ネーベル
[
「……そうじゃないわ。取り零して死ぬって、そう言っているの」
メルク
「……」
ネーベル
「私の時は運が良かっただけ。……ちゃんと、解っている?
その上で……まだ、そんな生き方を続けようと言っているの?」
メルク
「……心配してくださるんですね」 
「運が良かったのは、分かっています」
「……でも出来る限りを、していくと決めています」
「確かに僕の腕は短い、届かない場所もあるでしょう」
「ただ、だからこそ届く範囲は…」
「……届く範囲で諦めたくないんです」
「…‥回答になってないかもしれないですが」 少し、苦笑の雰囲気を声から感じるだろうか
ネーベル
「…………」 静かに肩を竦めて
「その腕の中のものも、零す生き方をしているの」
「…………貴方には解らないでしょうし、やめないんでしょうけれど」
メルク
「……ええ、解りません」 頷いて
「ネーベルは、どうすれば零さなくて済むと思っているか、聞かせて貰ってもいいですか?」
ネーベル
「そんなもの、……私の口から言わせるつもりなの」 溜息を吐いて
メルク
「……」 困った表情になって 「僕では解らない、と仰ったのはネーベルの方ではありませんか」
ネーベル
「そうよ。……ただ、それを私が言う事は、……」 揺れる頭を布団に押し付けた。
それきり押し黙り、静かにメルクの身体に身体を寄せた。
メルク
「……」 座っている自分の方に寄せられた身体を見て 触れてあげたほうがいいのかもしれない、とは思う
「……」 自分の手を眺めて それを自分の膝に載せた
「‥‥少し、まだ熱っぽいのかもしれませんね」
「ゆっくり休んでください。僕は部屋に居るので、いつでも声をかけてください」
椅子を持ち上げて ネーベルのベッドの近くから離れる様にして
敷居のカーテンを引いた
ネーベル
「……そうよ。きっと、そう」 頷いて、離れて行ったメルクが座っていた場所に、静かに触れた。
(……熱のせいね。らしくない事ばかりして)
心中で呟き、けれどまだ温度の残る場所に、そっと触れながら目を伏せた。
メルク
「……」 同じ部屋、というのもよくないのかもしれない でも彼女自身は1人で生きていくには彼女自身に対する執着が薄すぎる
「……」 自分からは触れない それは自分の中で決めた、ルールだ
「…‥」 小さく息をついて 自分のベッドで横になる
眠りはしない、彼女が呼ぶことがあれば、すぐに対応できるように
メルク
こんなところかな
ネーベル
そうね。
メルク
お付き合いありがとう
ネーベル
ええ、こちらこそ。
メルク
それじゃあ、またね
)))
ネーベル
)))
!SYSTEM
メルクが退室しました
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