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幕間:ツバキとクリム

20200501_0

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クリムヒルトが入室しました
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ツバキが入室しました
ツバキ
うん。
クリムヒルト
うむ
導入は任されよう 星の標、 夜でいいな?
ツバキ
構わないわ。
 
 
 
 
 
 
 
リアン地方イルスファール王国"星の標"
ここは国内でも有数の冒険者ギルド支店としてその名を輝かしいものにしている
この店は朝から昼間は依頼を取る者たちで集中し、午後は比較的空いてくる
そして夜になると、冒険者たちや飲食を目的とした客で再び賑わってくるのだ
カウンター席の一つ。角の席 隣にわざと槍を立てかけることで、席を取っているように見せかけて1人酒盃を傾けるのは
赤いマントとフードを纏った小柄な影 店内だと言うのにフードを取る様子もなく
ただ、これで5つ目となるエールのジョッキを干すように トン、と机に置いた
クリムヒルト
「……うむ」 この店のエールは悪くない 剣なしランクの冒険者クリムヒルトは1人頷いた
ツバキ
そんなフードの人物に近付いてくる人物は殆どいない――が、その日は珍しく、彼女に近付いてくる影があった。
クリムヒルト
「……次だ」 銀貨を弾いてカウンターに乗せると 店員がジョッキを片付けにくる
ツバキ
腰に鞘に収めた太刀を佩いた淡い藤色の髪の小柄な娘は、遠慮することもなく槍が立て掛けてある席までやってきて、クリムヒルトに小首を傾げて見せた。
「こんばんは、クリムヒルトさん。隣、いいかしら」
クリムヒルト
「……」 近づいてくる足音を聞き取って お決まりの文句を言ってのける 「──悪いが」
「……」 そしてその声を聞き、声の主を見て 「……ああ、」
「……構わんぞ」 少し躊躇う様子を見せながら 槍を退かした
ツバキ
「……ふふ、ありがとう」 此方を見てから答えを変えた様子に嬉しそうに微笑むと、空けられた席に腰を掛けた。 「お酒、結構強いのね」
クリムヒルト
「……壮健そうで何よりだ、ツバキ」
ツバキ
「あなたの方こそ。変わりないようで安心したわ」
クリムヒルト
視線は向けずに そう呟いて 「‥…ドワーフだからな」
ツバキ
「あら、ドワーフにだって例外は居るのよ? 身内にも、あまり酒類に強くない人はいたわ」
クリムヒルト
「……私の故郷(くに)では皆強かった」
「……その後、なんだ」
歯切れ悪く 言葉を切り出して
「傷などは残らなかったか、……その様子では、冒険者として活動できない程の状態ではないとは思うが」
ツバキ
「そうね。大半はそうだったわ。私も好んで飲むわけではないけれど――」 ふと気遣うような視線を感じて。 「ああ、大丈夫よ。あのくらい、怪我の内には入らないから」
クリムヒルト
「……そうか」
ツバキ
「それに」 店員を手招いて水を注文しつつ。 「たとえその怪我が原因で剣を取れなくなったとしても、誰かを恨むようなことはないわ」
クリムヒルト
「……恨んでくれた方が良い」
ツバキ
「自分で望んで身を挺して仲間を庇って、他人を恨むなんて格好の悪い真似は出来ないわ」
クリムヒルト
少しの間沈黙して 「…いや、栓のないことを言った」
「…そうだろうな、きっと。皆そうだったのだ…」
ツバキ
「ええ。きっとあなただってそうでしょう?」
 
新しいエールジョッキと 水が運ばれてくる
クリムヒルト
「……そうする機会を奪われてしまってな」
「…‥いや、話しすぎても良くない話題だ」
「この再会に盃を」 軽くジョッキを持ち上げて ツバキに向ける
ツバキ
水の入ったグラスを受け取って、手元でゆるく回しながら。 「その機会を奪われたから、今ここにこうして居られるのでしょう?」 悪い事だけじゃないと、微笑んでグラスを掲げて見せた。
クリムヒルト
軽く合わせて 「……前向きだな」
どこか、ほろ苦い笑みを向けて
ジョッキを置くと、フードを降ろした
ツバキ
乾いた音を立ててグラスを合わせてから手元に引き戻すと。 「清濁併せ呑む……とは少し違うかもしれないけれど、ただ後ろ向きで居るだけでは、剣の道を進む事は出来ないもの」
クリムヒルト
「……武の道を歩くのもまた、ドワーフの誉れだ」
ツバキ
――ええ、そう。たとえそれが王道を外れていても、私は武人として、剣士として歩き続け無ければいけない」
クリムヒルト
「勇ましい戦士に出会える事は、嬉しいことだ」 それが、今の自分ではなく昔の自分と出会えてなら、それは幾億倍にもまさる喜びだっただろう
「‥‥ならない、か」
「…‥聞いてもいいか」
ツバキ
他のドワーフ(彼ら)のような戦士でないのは、少し申し訳ないものがないではないけれど」 と苦笑して。
「……うん?」
クリムヒルト
エールを一口口にしてから 
「その戦い方を選んだのは、自分自身でか」
「一撃必殺、豪快さを旨とするドワーフの戦い方と、……もまた、逆行しているのでな」
ツバキ
「…………」 指先でグラスを撫で。 「ええ、そうよ。とある剣鬼に魅入られて、私は自らこれを選んだの」
「私には、そういう豪快な戦い方をする才能――ううん、そもそも戦う才すら、あまり備えてはいなかったから」
クリムヒルト
「……」
「そうか…‥‥妾もまた、そうだった」
ツバキ
「……昔は、私も幼かったのね。何を言われても諦められずに、がむしゃらに剣を取ったわ」
「周りと違う、というのは子供には辛いものよね」 ふ、と困ったような笑みを見せてから、水を一口呷った。
クリムヒルト
「そうだな…」
ほろ苦さをにじませた声音で頷くと またエールに口をつけて
「火浴みも1人で満足にできず、ただ、生まれた家のおかげで、生かされた」
「少しでも自分の価値を示したくて、学び、作り、そして鍛えた」
「…‥鍛えた結果が‥今のこれだ」
ツバキ
「……そう」 話に耳を傾け、目を伏せて頷き、一拍を置いた後、藤色の瞳をゆるく細めてクリムヒルトを見上げた。 「あなたは、今に満足出来ていないの?」
クリムヒルト
「……ああ、不満だ」
「……もう、満足できることはきっと無いのだ」
ツバキ
「事情を詳しく知らない以上、あまり差し出がましい事を言うのは憚られるけれど……」
クリムヒルト
耳飾りに触れながら ややうつむきがちにそう言って
ツバキ
「あなたから先に話した機会を奪った同胞たちのことを、もう少し考えてあげた方がいいと思うわ」
クリムヒルト
「……考えている」
「考え続けている……忘れたこと等、無いくらいに」
声が少し低さを増して
ツバキ
「ううん、少し違うわ」
クリムヒルト
「‥‥彼らの無念を晴らすのが、今の妾が生きる理由だ」
ツバキ
「……その無念は、どうやったら晴れると考えているの?」
クリムヒルト
「……滅ぼす、滅ぼし続ける。この身体が動く限り、何度でも魔神を」
ツバキ
「……やっぱり、あなたの“考えている”は、少し違うわね」
クリムヒルト
「奴らが消えゆくその時が、妾が同胞達に捧げる鎮魂の儀なのだ」
「……ほう?」
赤い瞳がそっと細まる
ツバキ
「確かにそれで多少の無念は晴れるかもしれないけれど、端から見ている限りでは、あなたはあなたの都合や義務感で凝り固まってしまっているように感じるわ」
「その復讐を止めろ、なんてことを言うつもりは微塵もないけれど」
「……もし私があなたの同胞たちだったなら、もう少しだけでもいいから、楽しそうにしてくれた方が無念が晴れそうだわ」
クリムヒルト
「……」 睨みつけるような視線をツバキに向けて 「……年端も行かぬ年頃の娘に、諭されるとは」 視線をジョッキにおろす
ツバキ
「小娘だからと言葉を軽んじるほど愚かな人ではないと思っているから」
睨むような視線に動じた様子もなく、グラスをカウンターに置いた。
クリムヒルト
「……足を止めることは出来ぬ。間違っているとは思わぬ」
ツバキ
「それに」
クリムヒルト
「……」 言葉を切ってツバキに耳を傾ける
ツバキ
「昔のあなたの同胞の立場としてではなく、今の同胞としても、もう少し笑顔で居てくれた方が嬉しいもの」
「ええ。あなたの目的を捨てろとも、間違っているとも言うつもりは決してない。ただ同胞(ドワーフ)として、辛そうな姿ばかりを見るのは嫌だ、というだけよ」
クリムヒルト
「……貴殿は人が良いな」
ツバキ
「……どうかしら。自分の道を往くために、多くの命を斬って捨てているのだもの。人が良いだなんて、口が裂けても言えないわ」
クリムヒルト
「武に生きておるのだ。それは避けて通ることは出来ぬ」
「ただ、……その言葉は、留意しよう。何年ぶりに言われたかは、分からぬが」
ツバキ
「もし人が良い、優しいなんて思って貰えるのなら……そうね、奪っている分の贖罪のようなものなのかも」
「ええ、ありがとう。お酒なら、呼んでくれればいつでも付き合うわ」
クリムヒルト
「……ツバキ、貴殿の心に感謝を」
ツバキ
「ふふ、どういたしまして」
クリムヒルト
「そうだな。今度は水でなどと、釣れないことはするでないぞ」
ツバキ
「……そうね。ドワーフが揃っているというのに飲まないというのは野暮だったかしら」
クリムヒルト
「良い。許す」
「水でも酔える…言葉だったぞ」
言い捨てるように口にすると がた、と席を立って
「……また会おう。仕事でも、酒を共にするでも」
ツバキ
「それは何より。名前に鬼を冠する者として、誰かを技で酔わせられるのは光栄だわ」 小さく首を傾げれば、髪の隙間から隠れた瞳を覗かせてやんわりと微笑む。
「ええ、またいずれ」
クリムヒルト
その笑みに、ほんの少しだけ 口元が緩んだ
すぐにフードをぱさりと被ると
カウンターに代金を乗せると 槍を携えてその場を後にする
ツバキ
緩やかに手を振ってその背中を見送ると、スツールに腰掛けたまま大きく伸びをした。
「……今からでも、まだぎりぎりセーフかしら」 キツめの火酒を注文すると、それを手に空席となった隣へ一人で盃を掲げて、しばらく晩酌を楽しんだ。
ツバキ
私はこれで大丈夫よ。
クリムヒルト
うむ。これでいい
私はこの後別の酒場でエールを1樽空にする
ツバキ
ええ、お付き合いありがとう
強いのね
クリムヒルト
良いドワーフと会えた時の
儀式のようなものだ
ツバキ
光栄だわ
クリムヒルト
その後の二日酔いが 玉に瑕なのだが
ツバキ
勲章のようなものよ
クリムヒルト
ではまたいずれ
お付き合い感謝する
ツバキ
ええ、またね。
クリムヒルト
)))
ツバキ
)))
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ツバキが退室しました
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