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蕪穢のアルカディア 幕間Ⅱ

20200429_1

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フランシアが入室しました
 
 
 
 
 
 
 
 
イーラの地下。〈天上の剣〉よって、ソールとルーナ、二人の"巫女"と仲間たちと繋がり、〈天上の剣〉のその力の一端に触れたフランシア
その後、村へと戻り それぞれが次の行動に向けて待機している頃
茨が解かれ、美しい長剣となった武器を眺めやりながら フランシアは1人、神殿の聖堂の中に居た
フランシア
ここが、元はライフォスの神殿であるということが 多少なりとも王都を想起させて、落ち着くからかもしれない
今は、誰かと一緒にいると言うよりも、1人になりたかった
より正確に心情を表現するのならば
シリカと、一緒に居たかった
「──、」 武器を眺めやる この力を受け取った時、強く、強くそう思ったのと同時に
「……」 身勝手な感想だろう 許されたと、許してもらえたと、そう思ってしまった
剣を手に取り、鞘から、刃を引き抜く ゆっくりと刃に力を込めれば、普段とは違う感覚に、少し戸惑う
自分は魔法が使えない。祈っても神聖魔法は宿らないところを見ると、そうした才がないのかも知れない
しかし、今は──、どこか、自分の知らない力が身体を巡るように、白色の魔力が刃に流れることが、わかる
 
フランシアの想いに応えるように、刃は白く、白く染まって
フランシア
「──、」 シリカも、この感覚を味わっているのだろうか 彼女もまた、こうして力を振るっているのだろうか
 
薄暗い聖堂の中で、刃が照らす仄かな灯りだけが フランシアを照らして
フランシア
「……シリカ」 会いたい 踏み出す覚悟と進む覚悟、両方できていたはずなのに 今は、ソールの騎士であろうと思っていたのに
揺れているのが分かる もう取り戻せないはずだったものが、目の前にちらつかされた感覚がある
刃を納め、鞘ごと抱きしめて 蹲るようにして 長椅子の一つで小さくなる
「………ごめんなさい」
「………ごめんなさい…ごめんなさい……」
小さく小さく、何度も呟かれるのは謝罪の言葉で
「子供心に本気だったんです……」 誰も聞いては居ない、誰も、答えはしない
「貴女の騎士になると……お守りすると……」
「ずっと、一緒に居ると……」
「ずっと、……一緒に……」
「それを……私は……守ることも出来ず」
「……あろうことか‥…貴女が掴みかけた幸せまで……奪って…」
 
徐々に、嗚咽が声に混ざり始める
フランシア
「貴女の大事な人を……奪って……」
「……貴女自身を……手にかけて……」
心臓を貫く感覚、憤怒に満ちた表情 雪の日の記憶
精一杯の力を込めて首を絞めるようにしてきた 友だった彼女
彼女は全て知っていた
彼女が一番辛い頃、私がディニスいた事も
彼女が、私を、リンザー家を頼ってユディスに来たことも
「……コルネリア…私は……」
「私は……」
「……それでも私は、貴女を取り戻したかった…」
「償いたかった……」
「喪わせた分だけ、取り戻したかった……」
「……今度こそ力になりたかった」
「力になれなかった分だけ……貴女の剣になりたかった」
「貴女を……守りたかった……」
 
誰も聞かない、告解は続く 時折、嗚咽を交えながら
フランシア
「………でも、もう」
「貴女は居ない……何処にも、居ない…」
「……それは、分かってる…分かってるの…」
「それでも夢でまだ見る……貴女の事を…」
「……今日も、見るかも知れない…」
「……」
肩を抱くようにして 自分を自分で抱きしめるようにして 身体を縮める
フランシア
ちょっと19時頃まで離席です
フランシア
「……それでも」
「……前に進む…と、決めたから…」
「……」 救えなかった命を考える "三刃の魔竜(トライ・エッジ)"で喪われた騎士、ハイジア卿 レノア・エマール殿
いつだって、無力感は、手をすり抜けるようにして 素敵な人達を連れ去ってしまう
そうはならない、そうはさせない 口にしてきた、口に出してきた いつだって
出来ることをしてきた。 これが最善だと、これが正しいと
『正しいことを行う事も、正しいことを行えると思う事も、だれにでも出来ることじゃない』
「……」 奪ってしまったからには、手に掛けてしまったからには……もう揺れることなんて許されない
「だから…‥私は…」
「……進めることを示し続けたい」
示し続けたい? 示さなければならない? 自分の歩く道が、どんな道なのかもう分かっているはずだ
「……」 更に縮まり、蹲るようにして マントが擦れる音が 小さく響く
「……シリカ」 名前を呼ぶ
「………」 つよく、つよく思い出す 思い出すと
「……こんな姿、見せられませんね」 徐々に、思考がクリアになっていく
身体を解く ゆっくりと 身体を起こす
「……私はシリカの、鞘なのだから」
「……誓いますコルネリア、貴女の魂に」
立ち上がって剣を佩び ライフォスを象る像の前までやってくる
長剣を引き抜き 騎士の礼を取る
「私フランシア・リンザーは、光の巫女ソールの騎士、そして貴女の騎士として……最愛の人(シリカ)の"鞘"として」
「──、」 様々な思いが巡る 守れなかったこと、守れたこと、
これから先、その葛藤は忘れることは出来ないだろう。でも、それでも
「──、我が剣を捧げ、今ある"希望"を守り抜きます」
ライフォスの神像に剣を掲げて
少女は、そう高らかに宣言をする 光がステンドグラスに差し込み、それを照らした
「……この大地を、必ずや。貴女が眠る大地へと、彼女が住む大地へと」
「帰還させます」
「……だから、また伺います。必ず、シリカと一緒に」
剣を改めて納めて ライフォスの神像に祈りを捧げる
「……」 きっと、届く 許されることはないだろう。許されると思いたかった自分が居るのも事実だ
だけどもう、それを含めて、私は先に進みたい
祈りを捧げ終わると 少女は聖堂を後にする
 
 
 
 
 
 
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フランシアが退室しました
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