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- ブリジットが入室しました
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- リアン地方 イルスファール王国"星の標"
- ここは国内でも有数の冒険者ギルド支店として、その名を輝かしいものにしている
- 数多くの冒険者を取り揃え、高い依頼達成率を誇り、
- 国内外の組織・個人を問わず多くの依頼を引き受けている
- そんな店なのだが
- 朝を超えると、意外と閑散としている
- 駆け込み依頼に待機するより、別のことに時間を費やす者たちも多いためか
- テーブル席、カウンター席共に疎らだ
- テーブル席の一つ、プラチナブロンドの髪をサイドテールにした少女が 赤を基調とした服に身を包み コーヒーカップ一つとノート、羽ペンを伴にしている
- ブリジット
- 「──…」 断じて、寝坊したわけではない。師に置いていかれたわけでもない。断じて
- 「……」 かり、とノートを羽ペンで引っ掻いていく 昔からの習慣だ
- 『まず、文字を覚えるために、1日の間に何があったかを書き出してみよう』 優しくそう語りかける声を思い出しながら
- 《教団》に居た頃、《教団》から連れ出されるまで、師の生徒になるまで、そして今
- 「……」 昔話を振り返る場合じゃない 今の話をしよう
- 「……」 まずここに来てから最初の依頼は と書き出していく 蛮族に襲われるルーンフォークのジェネレータの村を救援するものだった
- 引退した冒険者そして、技能を持ったルーンフォーク達と共同で蛮族迎撃し──
- ──寸でのところで応援を呼びかけた敵将の首を落とした
- 「……あれは心臓に悪かったわ」 呟くようにして書き出していく
- 師は、褒めてくれたけれど
- あの時動けたのは偶然であることは他でもない誰よりも自分が知っている
- 「……」 もっと力になりたいのに、結局いつも助けてもらってる
- 「……」 そう思って、こっそりと1人で依頼を受けに行った ──次の、依頼へと移る
- 村を訪れる行商人が顔を見せなくなり
- そして村では怪しげな集団が見られた その調査のための、依頼
- 1人で、と言ったが、結局仲間は居たし、最初の依頼で知り合ったクレアというルーンフォークの女性も居た
- 村に向かう途中で黒尽くめの男にであい、村に向かうなという情報を言い含められたが私達は進んだ
- 村は、既に滅んでいた 否、滅ぼされていた
- 吸血鬼のなりぞこない。ブラッドサッカー達が闊歩するそこで
- 道中に遭遇した黒尽くめの男に再度あうことになる。
- ブラックという(偽名感がすごい)名前の彼は、彼いわく怪物胎児専門の組織に所属する人物で
- この様ななりぞこないを倒して回っているのだとか
- 私が見たところ、というより種族的な特徴を考えるとラルヴァであり 帰る頃には晴れていたので日傘を使用していたのを覚えている
- 彼の血と、そして持っていた特殊な薬品──割ると太陽光と同等の効果を彼らに与えるということから
- 液体はそれ自体が効果のあるものではなく、太陽光を凝縮するレンズのような効果を持つものではないかと私は疑っている
- 「──…でもこれを詳しく描いたところで誰が読むのかしら…」
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- 少女は一息入れるように、コーヒーを啜った
- ブリジット
- 「…‥」 結局、仲間の力もあって、吸血鬼のなりぞこないは無事に討伐することが出来た。それはめでたい
- だが結局ブラックについてはよく分からなかったし 今後も出会うことがあるのだろうか
- 「……ぁぁ…」 それは、そうと
- シーンの巫女…ユラという女性の格好を、趣味と勘違いしてしまった
- あれはいわゆる聖娼…… とペンを書き付けて 止める
- 「~~っ」
- 単語で動揺してどうするの私
- 「‥…」 2本線で訂正して その格好は彼女の仕事に関係しているため。それだけだ
- 彼女の務めや仕事については触れないでおくが、
- 人として神官は尊敬に値すると思う
- 「……」 神に選ばれているというのに、声は未だに聞こえない
- ヒューレは、きっと 師のような剣士が好きなのだ
- 私も〈剣〉……が
- 「……っ」 思い出したくない記憶が掘り起こされそうだと感じると ペンを止めた
- 「──、」 もう、忘れ……無理、忘れるのだけは無理だった
- 「……」 はやく、師の…いや、私の紋を何とかする方法を探さないといけない
- 「──」 そう焦る矢先の、ノンナの依頼
- ロージアン魔法魔動学校からやってきたノンナ。……彼?でいいのかしら
- 標石というアイテムを探して 逢魔の森へと向かうことになった
- 師にグレース、リュエル……私の先生を気安く先生って呼んだ 師の方もそれを普通に受け入れてるし
- 「‥…」 むむむ、と思う 友達にはなれそうだけど……先生を取られるのは嫌だ
- 違う違う これ見せるかも知れないのに何を書いてるの私
- 二重線を引いて
- 「……」 標石を探して逢魔の森へと入ると、そこは巨大な鳥との戦いの場だった
- 巨大な鳥相手に、調子が良すぎるくらいだった
- やっぱりこれ、妬みとかそういうのが関係してる…?
- 「……」いやいや
- ともあれ、ロージアン魔法魔動学校のノンナからの依頼はこなすことが出来た
- 空に門が開いたのは驚きだったけれど
- 師は、どこか納得した表情で頷いていた あれは満足してる時の師の動きだ
- 「……よし」
- 少女は一通り、依頼についてまとめ終えて
- 頷く
- しかし気になることがあるのか、更に記載を続けていく
- ヴァルキリーであることをよく驚かれる
- それは、たしかに珍しいことではあるが
- こんなにも、少ないものなのだろうか
- たくさんいた環境を覚えているとかえってそれが気になる
- 羽は、隠すべきだろうか……師に相談しないと行けないと思う
- 「……」 師は、私の命だけじゃなくて、その危険まで全部受け持ってくれている
- だから今度は、私が師を助けたい
- そのためにもまた、1人で依頼を受けないといけないだろう
- それがきっと良いものであることを、ブリジットは静かに祈った
- 「──、後は、教練についてと・・それから」
- 少女はぶつぶつと言葉を口にしながら 更に書き連ねていく
- それは彼女の師が店に顔を出すまで続き
- 結局内容を読まれたかは、神だけが知っている
- ブリジット
- ))))