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BD幕間(ライカ)

20200321_1

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ライカが入室しました
ライカ
ライカ
こうか
でははじめていいきますか
私しかいないのだわ!!
ライカ
これ
 
 

蒼穹の果てに(ブルー・ディスティネイション)

──幕間──
とある女教皇の思考迷宮(メランコリー)

 
 
https://www.youtube.com/watch?v=22yHj8KpksQ&list=PLL5mKr-nFprKMsrDqpwsI1L0FKj4KgouH&index=38
 
鋼都ディニスを覆い尽くす“奈落の魔域”の中には、何処までも澄んだような蒼穹が広がっている。
時間を問わず広がるその奇妙な碧天の下、冒険者たちは決戦を前に、最後の準備に入っていた。
さて、その冒険者の中の1名に神官の少女がいる。もっとも少女という年齢かどうかはさておき。彼女はブリーフィングをいち早く抜け出していた。
理由というのは──何かしら不和があった。というわけではなく、仲間の一人のとある発言から羞恥心が爆発してしまい。恥ずかしさのあまりその場にいられなくなったというものであった。
 
 
ライカ
半ば逃げ出すように出てきたライカは宿舎から抜け出し魔域と化したディニスに出る。周囲には兵士などはいるだろうが、やはり果てしなく広がる蒼穹はどこかしら不気味なものがある。
一心不乱に走ってきたが、外に出てきて空を眺めて。そしてようやく冷静になった。と、同時に自分の軽はずみな行動が馬鹿らしくなってくる。
「(──ああ、何してるのよ。私)」と頭を押さえる。冷静に考えれば状況は状況だ。極度に緊張しすぎるのも良くないが、緊張感がなさすぎるのもよくない。
自分が起こした行動というのは半ば”漫才”のようなものではないか。嫌悪感が襲ってくる。
「(──キリーさんもあんなところで変なこと言わなくてもいいじゃない……。いや、確かにカイさんは流石、シグネのお兄さんだけあって、格好いいし良い人だし声もイケメンだし……確かに気になるけどさ……。でもそういうのじゃないというか……)」
何かしでかした後はやはり思考のループがはじまってしまう。
気合、根性、清楚という2つ名で通っている彼女。常に思考は回転させながらも何かんだ親しみやすく。何を言っても許される雰囲気がある彼女。最終的には”気合と根性”で乗り越えようとする彼女。
しかし、その実。というのは自分に極度に自信がない陰気な性質なのである。
ライカ
「(それにカイさんにはカティヤさんがいるだろうし……いや、そうじゃないって言ってはいたような気がするけれども。でも、そうじゃなくても私はそういうんじゃないというか……)」
「……」
腕を組む。ふと、こんな決戦前にこのような色恋沙汰で思考を巡らしていることが”馬鹿らしく”なってきた。
確かに人とのつながりにおいて”
”愛”や”恋”といったものは絆を深めるのかもしれない。それは親友の2人であるシグネやアネット。そして現状は味方のリコリスと、レイフェルを見ればわかることだ。
だが──それはあくまで彼女たちのケースである。
自分はどうか。
果たして自分は”恋”などをするべきなのか。
”奈落の剣” ”アトランティス” ”アルカナ” ”庭” ”星座””魔神紋”そういった常識を逸した依頼の数々を思い返す。そしてそれらから自分はとうの昔に逃げられないような場所にいるということも。
「──違うわね。やろうと思えば」と、思わず口に出てしまう。
先日。リコリスの魔域で彼女と話したことを思い出す。彼女は言っていたやろうと思えば”その気になればどこにでもに逃げられる”と。
確かにそうなのかもしれない。このリアンの地から逃げることは可能なのであろう。けれども──。それに対する答えは既にリコリスと話している時に出ている。
ライカ
「(──結局。私がやりたいから。したいからここにいるんだから──そもそも、逃げる気なんてないのよね)」と、心の中で反芻する。
それに今回に関しては猶更だ。
宙を仰ぎ見る。周囲を見渡す。
はじめてくることになった。親友の故郷。しかし、そんな故郷が”庭”や”奈落の剣”のために壊されるだなんて到底耐えられる事情ではない。
いや──おそらくは”庭”と”アトランティス時代の負の遺産”が密接に絡んでいるのだろう。ティーヴァという皇女がいればどこまで助かったか。と思うが、実際にその場に彼女がいないのだから仕方がない。
「……」アルカナの魔剣である聡明なる女教皇(プロファウンド・シンカー)を抱きしめ思考する。https://www.youtube.com/watch?v=s0bE4wSOe78
「(──そう別に今回はティーヴァさんがいなくたって関係ない。シグネやアネ助の大切な場所。それを守る。理由はそれだけで十分よ)」と言い聞かせるように再び真鍮で反芻した。
だが、それと同時に再び自覚する。逃げない限り”普通”の日常は戻ってこないのだと。
魔剣の力。己が生命を魔力に変え味方を鼓舞する力。異能の類だ。
奈落の剣。かつては希望の証だったソレ。今では黄昏に侵食され人の負の感情を吸い込み形を変えていくもの。しかしその本質は”人の感情”だ。それに向き合っていかなければならない。
庭。ここまで深く絡むとは思わなかったが──。お互いに因縁なのだろう。それに奈落の剣だけでなく、様々な事象に絡んでくるソレ。”糸”の発言を思い起こせば既にイルスファールもその手中にあるのかもしれない。
アトランティス。星座。それらすべてが常軌を逸した存在だ。そして自分も”普通”というレールから転げ落ちそうなことを自覚している。
「(──やっぱり怖いわよ)」思わず泣きそうになる。けれども、自然と逃げる気持ちは起こらない。
その理由は簡単に説明がつく。それこそ自分がしたいから。本能的なものだ。賢神の信徒としてはなんとも情けない理由だが、それでもそれが本音だ。
そして──何よりも
「(──結局、あいつらといることが楽しいんだろうな)」と空を見上げた。
 
冒険者になりたての頃を思い出す。最初は”危険だけれども無理しないでね”と本気で心配されたのは事実だ。
けれども最近は”良かったね”と言ってくれる。”今のライカちゃんは本当に楽しそうだね”とママもパパも言ってくれるのだ。
両親はある程度自分にしたいように生きさせてくれた。だが、肉親だ。自分が学生時代に自分を押し殺して上辺の人間を演じていたこともよく記憶しているだろう。
だけど、今は素の自分でいられる。だから楽しく感じるのかもしれない。死と隣り合わせであっても。
 
ライカ
「(──ふう。こんな変に憂鬱になってる場合じゃないわね)」と、首を振った。
何にせよ。この窮地を脱しなければ始まることも始まらない。
おそらくは更なる絶望が自分を襲うのだろう。そんなこと予測しなくとも分かる。だが、その絶望に抗うために私は、魔術について高みあがるための修行をしているのではないか。
どうせ。1人になれば死んでしまう。不意打ちなどされれば”庭”などの実力を考えればあっという間に死んでしまうのだろう。
それくらい自分が弱いことは知っている。だからこそ──。そうならないように努力を重ねていくしかない。それが計算された知力の果てに生まれる”気合”と”根性”の絶対条件だ。
「(──散々言ったじゃない。イファロスで)」0を1に変える。絶望的な案件はまだまだある。今の状況だって。魔神紋の一件だってそうだ。だけれども、可能性が0じゃない限り歩み続けねばならない。
「(合流までまだ時間はあるわね)」と、思い。自分の所持品を確かめる。魔晶石の追加。カードの追加。後は武装の調整。ゴーレムの点検。
今回の面子は信頼できる面々だ。シグネ、アネット、キリー、アンスレイこの4人は阿吽の呼吸で戦闘を合わせてくると思うし、私も合わせられると思う。
ライナスさんは──まああの器用さならどうとでもサポートしてくれるだろう。
そして、この信頼は当然、彼らからも向けられるものだ。だから、私がしくじるわけにはいかない。
ミカサちゃんを殺した。
レイフェルちゃんを殺した。
まぎれもなくそれらは事実だ。しかし、それを繰り返してはならない。
ぱんぱんと頬を叩き”気合”を入れなおす。
「──よし」と、体に力を籠め歩き出す。
決戦まで時間は少ない。それまでにできることする。それが今の最善だ。
 

蒼穹の果てに(ブルー・ディスティネイション)

──幕間──
とある女教皇の思考迷宮(メランコリー):了

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ライカが退室しました
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