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- フェルが入室しました
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- レナが入室しました
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- ──星の標1階酒場──夜──
- 食事をするには大分遅く、眠りにつくものが増えた頃合い。星の標の酒場は客も大方が帰路につき、静かな時が流れている
- そんな酒場の一角、テーブル一つを占拠しているのは、フードを被った小柄な少女。名をフェルと言う。
- 冒険者としてのランクが高いわけでは無いが、宿の者には実力は知られている。そして実力以外にも知られていることが一つ。
- それは、大食いであること。
- 小柄な身体のどこに入るのかというくらいに良く食べる。
- という訳で、彼女の着くテーブルには所狭しと料理が並べられるのが日常なのだが
- フェル
- 「────」 大量の料理を前にしてぼんやりとしている。どうも最近は食の進みが良くない様で、頼むには頼むのだが残すことが多かったりするのだ。
- ―――からんころん。
鳴ったドアベルは客が帰る音ではなく、新しく踏み込む者が鳴らしたものだ。
- フェル
- 「ううん……」ゆっくりと料理を口に運ぶ。食べられない訳ではない。のだが、どうにも美味しいと感じない
- これまたフードを被った小柄の少女で、身の丈に見合わぬ長大な大斧を担いでいる。
- フェル
- 「ん……」 普段なら食事中に意識を他に向けることは殆どないのだが、気が進まないのもあってか、今日はたまたまそちらを見た 「あれ……」 あの姿には見覚えがある
- レナ
- 「―――」
つかつかと受付カウンターに向かい、何事か話をしている。
どうやら、依頼を終えて今しがた帰ったところらしい。
- フェル
- 「ええと……そう、レナ」暫し考え、思い出した名前を呼ぶ 「レナ、レナ」 いつも通り、感情を感じさせない表情ながら、ひらひらと手を振って、手招きする
- レナ
- 「……はい、じゃあこれでお終いね」
簡単な報告を済ませ、報酬を受け取り。
- 「じゃ、ついでに―――」
何か食ってくから、と言おうとしたら。何か呼びかけられている気がする。
- フェル
- 「こっちです。レナ」 反応を見てもう一度呼びかける
- レナ
- ……名指しで自分を呼ぶなど、店主等以外で何者か。
微妙に眉根を寄せつつ、声の方を向く。
- 「……ああ。あなた」
- フェル
- 「こんばんは」 手招き手招き 料理に占領されたテーブル席である
- 「おなかへってません?」 挨拶もそこそこに
- レナ
- 「………」
手招きされて微妙な顔。あのテーブルではわたしの注文したモノが置かれるスペースがないではないか。
- 「……ちょうど食事するところだったのだけど。それがなに?」
- フェル
- 「片付けるのを手伝ってくれたら、と」 見れば殆ど手つかずだ。まだ湯気が出ているあたり、そう時間は経っていないのだろうが
- レナ
- 「……自分で頼んだなら責任もって自分で食べなさいよ」
微妙に呆れた雰囲気を醸しつつも、対面に座る。
- フェル
- 「ありがとうございます」座ったということは了承したのだろう 「食べられますけど、味が」
- レナ
- ごとっと大斧を適当なところに立て掛けつつ。
「どれ持っていっても文句つけないでよ」
- フェル
- 「良いですよ。助かります」 ほうと一息
- 野菜もあるが全体的には肉が多めである
- レナ
- 「味?」
ここの料理は別に味が悪いなんてことはない筈だが。徐に適当な主食など取って齧り付きつつ。
- フェル
- 別にいつもと変わりはない。美味しいと言える部類だろう
- 「たぶん、問題は私ですね。たまに、味があまり感じられないことがあるんです」 今日はそういう日
- レナ
- 「……ふぅん」
興味薄げに。
「味覚障害ってやつ?」
言いつつ、適当な肉にフォークを突き立てて口へ運ぶ。
- フェル
- 「んー、どうでしょう。たまにそういう事があるくらいで、いつもは美味しいと思っていますよ」
- 「最近は、頼んでみたけれどやっぱり味がしない、ということが多くて」 「流石に、味がしないとあまり食べる気になれないと言いますか」
- 自分はサラダ類にフォークを刺してもしゃもしゃと頬張る。肉を食べて味がしない、よりは違和感が薄い
- レナ
- 「体の調子を崩すとそういう風になるって聞いたことあるわ」
もっもっ。遠慮の欠片も見せず人の頼んだ料理を食い進める。
- フェル
- 「体の調子、ですか」 首を傾げ、目を瞑って考える
- レナ
- 「風邪でも引いたんじゃないの」
知らんけど、と続きそうなくらいの雑な調子で返す。
- フェル
- 特にだるいということもない、痛みもない 「んー……」 額に手を当てる。熱も無い
- 「特に、自覚はないですね」
- 「まあ、そのうち戻るとは思いますけど……つまらないです」
- レナ
- 「ふぅん。じゃ、なんでしょうね」
- 「つまらない、ね。まあ、味がわからなければ、食事なんてつまらないでしょうね」
- フェル
- 「ええ。という訳で、好きなだけ食べて下さい。レナもいっぱい食べますよね」 そうだった筈
- レナ
- 昔のお友達は言いました。作業みたいなものだと。
- レナ
- 「言質はとったから遠慮なんてしないけど」
もぐもぐ。
- 「でも、いいの。腹は」
- フェル
- 「少し食べたら、食欲なくなりました」 少し=一人前 「味がしないのを食べ続けるのは、なんというか、虚無です」ソースの類いを小皿に注いで直接舐めてみた
- 「───」 首を傾げる
- レナ
- 「そ」
ま、そういうなら別にいいか、と、食事を続行する。
- フェル
- 「────」 ふと、目線を上げて、食事中のレナを見た。あれは、美味しいだろうか
- レナ
- 「……なに? 今更やっぱりそれください、なんて言うんじゃないでしょうね」
視線を感じて、怪訝な表情になる。
- 言いつつ手元の料理は口元にどんどん運んで行く。
- フェル
- 「美味しそうだな、と──」 ごくりと喉を鳴らして、目線がレナの口元から喉に向かい 「──いえ、言いませんよ」 そこで、目を閉じてかぶりを振った
- レナ
- 「食欲がなくなったとか言ったさっきの今で、なに?」
なんだこいつ。情緒不安定か?と微妙な顔。
- 「欲しいなら、自分で追加注文しなさいよ」
- フェル
- 「──」 適当に肉の串焼きでも頬張り 「レナが美味しそうにするので。まあ、やっぱりダメですね」
- レナ
- 「難儀なやつね」
ばりばり、と割合的には少ない野菜を食みつつ。
- 「……………」
なんだろう。何か違和感がある気がするが。
- フェル
- 「ええ、気の所為です」 自分に言い聞かせるように呟き
- 「ところで、レナは何が一番好きですか?」 自分の思考を逸らせるためか、話題を振った
- レナ
- 違和感。違和感。
いや、違和感というより既視感、か? 覚えのあるモノを何か感じた気がするが―――
「? 何って」
思考が中断させられる。
- フェル
- 「好きな食べ物」
- レナ
- 「……好きな食べ物、ね」
- 「…………」
やや間があり。
- フェル
- 「そんなに考えることでしたか?」 他愛も無い話なのに
- レナ
- 「…………拘りが無い方なのよ」
少しむっとしつつ。
「……まあ、肉かしら。牛、豚、羊、鶏……なんでもいいけど」
- 「厚切りのステーキで、そうね、レアよりはウェルダンのほうがいいわ」
- フェル
- 「へぇ。私もお肉は好きですが、逆ですね」
- レナ
- 「逆? ……ああ、レアのほうがいいってこと」
- フェル
- 「はい。ステーキなら血が滴るくらいの方が」 こくり。あ、いけない、また思考が戻ってきた気がする
- レナ
- 「……。ステーキの赤い肉汁って血じゃないらしいけど」
- 微妙に神妙な顔でツッコミを入れた。
- フェル
- 「ああ、そうなんですか? 普通の血の味とは違うとは思ってましたけど」
- レナ
- 「だいたい、普通血抜きするでしょ」
- フェル
- 「あ……」 そうだった 「そうでしたね。血抜きしていました」
- レナ
- 「それくらい気づきなさいよ……―――」
ん?
- 「……」
- フェル
- 「抜いた血は集めて、他の部位と一緒に煮込んで、腸詰めに」 ブラッドソーセージ
- レナ
- 「……ああ、そういうのもあったわね」
- フェル
- 「──まあ、血抜きしない生というのも結構」 話していると思い出す
- レナ
- 考えすぎか、と肩を下ろし掛けたが、
「いや食べたことあるのね」
- 「ああ、もう……」
何か、さっき感じた既視感の正体に思い至りそうだ。
- フェル
- 「──ああ、まあ、はい」 ちょっとはっとして、濁した
- レナ
- 「……」
考え込むように、自分の首元を擦る。
- フェル
- 「───」 そういう動作をされると、駄目だと思っても視線が首に誘導されてしまう。綺麗で、柔らかさそうな
- レナ
- 「―――」
じろり、と。強めの視線を投げ返す。
- 「食う気なら、殺される覚悟をすることね」
- フェル
- 「───」 ぴたり、と動きが止まった 「変なことを言いますね。レナは」
- レナ
- ふん、と鼻を鳴らし。
「ごまかす気があるなら、もう少し言動に気を遣いなさい」
- 「気のせい、で済ませるにも済ませられる限度っていうものがあるのよ」
- フェル
- 「………」 少し目線を下げてから、なんだか申し訳無さそうに眉を下げた 「分かっちゃいますか」
- レナ
- 「覚えがあるわ、あなたみたいな振る舞いをするやつ」
- フェル
- 「──そうでしたか。気をつけます」 「大丈夫です。食べませんよ。私は、こっち側ですから」
- どこか自分に自分に言い聞かせるようにして、野菜を口に運んだ
- レナ
- 「今回は気のせいだったことにしてあげるわ。
今後は気をつけて」
- 「……街中で人喰い騒ぎでも起こされちゃ、たまったものじゃないわ」
最後の一言は、ひとりごちるように言った。
- フェル
- 「ありがとうございます」 一息ついて
- レナ
- 「……ふん」
- フェル
- 「ちなみに──覚えがあるというのは、聞かないほうが良いですか」 勿論効かない方がいいのだろうが、それは気になってしまった
- レナ
- じろ、とまた強めの視線。
「面白い話じゃないわ」
- フェル
- 「──ではやめておきましょう」
- レナ
- 「そうして」
- フェル
- 「──ほんとに、抑えている方なんですけどね。最近なんてむしろ私が喰わ……あ」
- 何かに気付いた様にふと動きを止め
- レナ
- そういう話をやめろと言っているのだが―――
「なに?」
- フェル
- 「ああ、いえ、不調」 長く息を吐き出し 「──精神的に、大分不調だったのだな、と、思い至るところがありまして」
- レナ
- 「……」
だいぶ話題が戻ったな。
- 「精神的不調、ねえ」
- フェル
- 「そういえば、味を感じなくなったのって、毎回、不満とか溜まった頃だったかな、と……」珍しく、ため息をついた
- レナ
- 「ふぅん。適当にストレス解消でもすれば」
- フェル
- 「食べることが解消法でもあるんですが、それがこれだと、酷い有様です」
- レナ
- 「じゃあ、何か別の」
- フェル
- 「食欲がダメなら残すところは2つですが───性欲という気分でもないですし、寝るしか無いですかね」
- レナ
- 「あなた三大欲求しか無いの」
呆れ顔になった。
- フェル
- 「娯楽というものが良く分かりません。カードとかで遊んだり、というのはありましたけど……」
- レナ
- 「気に入らない奴を半殺しにするとか」
- フェル
- 「楽しいですか?それ。私が戦うのは、仕事だからですよ」
- レナ
- 「それなりにストレス解消にはなるわ」
- フェル
- 「レナはそうしてるんですね。バルバロスですか」 他のやつはそういうことしてたなぁ
- レナ
- 「失礼ね。そこまで野蛮じゃないわ」
- フェル
- ちなみにバルバロスの場合、大抵 半 はつかないのである
- 「半がついているだけそうですね」
- レナ
- 「ぶっ飛ばしてもいい相手くらいは選ぶわよ」
- フェル
- 「んー、ぶっ飛ばすのはともかく、身体を動かすのはいいかも知れませんね。イルスファール一周でもしますか……」
- レナ
- 「……まあ好きにしたら」
- 「ところで」
- フェル
- 「はい?」
- レナ
- 「こっち側だって言うなら“蛮族”って言っときなさい」
- フェル
- 「──あ、はい。そうですね」
- レナ
- 「わざわざバルバロスだなんて言うの、あなたみたいなとんちんかんか、博愛主義の聖人サマだもの」
- あなた、どう考えても後者じゃないでしょう? と言いたげ。
- フェル
- 「気をつけます。無意識に言葉が出ちゃったりしてるみたいですしね」
- 「レナは優しいですね」
- レナ
- 「勘違いしないで」
- 「あなたみたいなのがうっかり面倒を起こすと、わたしに迷惑がかかるかもしれないから言ってるの」
- フェル
- 「なるほど?」 わかりました?
- 「さて」 立ち上がり 「会計は私に来るので、気にせず食べてて下さい。ちょっと走ってきます」
- レナ
- 「……」
行動が早いなこいつ。
「そう。いってらっしゃい」
- フェル
- 「はい。あ、ところで」
- レナ
- 「なに」
- フェル
- 「睨むレナって、なんか可愛い感じでしたよ」
- レナ
- 「…………………ぶっ飛ばされたいの?」
- フェル
- 「殴られるよりは優しくされたいですね。では、また味覚が戻った頃に食事でもしましょう」 いつも通りの無表情のまま、いっぱい手を振ってから去っていった
- レナ
- 「あ、ちょっと、この……」
ちっ、もう行ってしまった。
- フェル
- そう、まだ大量の料理を残して……
- レナ
- 「……」
はあ。
- 「……ま、いいわ」
- 奢りみたいなものだし、これでチャラにしておいてやる。
- レナ
- 終わり感。
- レナ
なお、大量の料理は平気で完食されたのであった。恐るべし。
- フェル
- 恐るべし
- ちなみにこの夜以降、イルスファールの一部では、
「夜になると小さな影がすごい勢いで明かりもつけず(猫暗視)走り抜けていくことがある」
「盗賊だ」「いや通り魔らしい」とかゴシップめいた噂が広まったりするのであった。
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- フェル
- という感じでお疲れ様でした
- レナ
- おつかれさまでした。
- フェル
- ありがとー
- では撤退ん
- レナ
- てっしゅー
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- フェルが退室しました
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