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ゲームルーム[D]

20200226_0

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フレデリクが入室しました
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レナが入室しました
フレデリク
店でいいよな
レナ
いいわよ
フレデリク
なんだと
レナ
 
 
 
 
 
 
〈星の標〉。王都イルスファールに存在する、冒険者ギルド支店の一つであり
いくつかの魔剣と、それに続く剣を有しているその名は、リアン地方に広く知られている。
 
酒場と宿屋が併設されているその店は、人が全くの無人である事は深夜を除けばそう多くはない。
この日の昼下がりも例に漏れず、それなりに人が入っている。
満席というほどではないが、座る事の出来る席はある程度絞られている形だ。
 
フレデリク
――ああ、確かに。毎度ー」 そんな会話をしながら、裏庭へと続く扉が開き、二人の人間が店内へと入ってくる。
1人は、毛先に向かうにつれ色の抜けていく黒髪を持った青年だ。代金を渡せば、短くなった髪を気にしながら、そのまま店の入り口へと掃けていく。
もう1人は、酷く雑に散切りにされた銀髪に、目付きの悪い黒の瞳の少年だ。手には鋏や櫛などが備えられている小さな鞄、また箒と小さく膨らんだ袋を持っている。
レナ
「…………」
 そんな様子を、もく、もく、と肉を咀嚼しながらテーブル席から眺めている。
 
"髪結い"の名でそこはかとなく知られている少年は、店を出て行った青年を見送って
フレデリク
「……あー?」 視線を感じ取ると視線を投げ返し、見知った顔を見ると顔を歪めた。
レナ
「随分な反応ね」
フレデリク
そのままかつかつと歩を進めて、ガルバに捨てておいてくれ、と袋を渡す。レナの声にはぴくりと反応しながら、猫背を丸めながら眉間に皺を寄せて歩み寄っていく。
「んだよ。お前だって本屋で会った時はこんな面してたじゃねえかよ」 わざとらしく眉間の皺を深める。
レナ
「そうだったかしら。覚えてないわね」
フレデリク
「ハ。小さいのは背だけにしとけよな」 言いながら、その隣の席にひょいと腰を落とす。
レナ
「あなたこそ、そうして猫背にしていると、ただでさえ男のくせに小さい背が余計に小さく見えるわよ」
フレデリク
「…………」
「……腹立つわぁ……」 メニューの内、最も安いものをキャロラインに注文しながら、椅子の横に鞄を置く。
レナ
「気にしてるならもうすこししゃっきりすることね」
 ハッ。鼻で笑ったぞ。
フレデリク
「うぜえ……なんだこの根暗女ァ…………」 机に肘をついて、笑った眼を睨む。……あ、駄目だ余計に苛々してくる。
レナ
「先に煽ってきておいて、被害者面しないでほしいものね」
フレデリク
「してねーよ」 届いた軽食を雑に摘まんで口へと放る。
「で、何か用だったのかよ」
レナ
「……? 別にあなたに用なんてないけど」
フレデリク
「…………」
「テメーがガン飛ばしてきてたのは何だったんだよ」
レナ
「見知った顔が何かやっていたから、なんとはなしに眺めていただけ。人聞きの悪い」
「あなたのほうがよほどガンを飛ばしていると思うけど」
フレデリク
「テメーがいつも当然のように喧嘩を売って来るからだろがよ……」 
「それに何かって、本業だ本業」 机の上には乗せないものの、先程の鞄を少し持ち上げてみせる。
レナ
「どう考えても先に売ってきたのはそっちだと思うけど……」
フレデリク
「…………うっせ」 
レナ
「本業」
「てっきり逆かと思ったわ」
フレデリク
「そうだよ、こっちが本業なんだ元々」
「実入りの差は――まあ、言わずもがなだけどな」
レナ
「でしょうね」
フレデリク
店ン中でもフードしてんのか?
フレデリク
「でもまあ、それなりに冒険者(こっち)でも働いてっからな。かかる声は増えたぞ、うん」
レナ
基本的にしてる
フレデリク
解った。
レナ
「ふうん。拘りでもあるの?」
フレデリク
「コダワリなー……」 んー、と頭を掻く。
「終わった後に喜ばれる様に、っては思っちゃいるけど。それは拘りとは関係ねえしな……」 
レナ
「収入の差を考えたら辞めるでしょう、普通」 髪結いの方を。
フレデリク
「……ああ、続ける事に関してのコダワリか」
「そっちはまあ……錆び付かせたくねえから、かな」
レナ
「……ふうん」
「そう。それは確かに冒険者が副業ね」
フレデリク
「妹がいんだよ。切ってやると喜びやがってさあ」 レナの言葉に頷きながら、嬉しそうに口を開く。 
「やめらんねえんだよな、妹でも、そうでなくても、そういうの見ちまうと」 
レナ
―――
 語るフレデリクの様子に、僅かに目を見開く。
フレデリク
「客にしたってな、まあ全員が全員じゃねえけど……喜んでくれるしよ。金がかかってんだから、喜ばせんのが当然――」 少し語調を早めて、歳相応の幼さを見せながら言葉を続ける。
フレデリク
見えるか?>見開いた眼
レナ
こっちを気にしてれば、かな……
レナ
「……そう」
 視線を目の前の料理に移す。もぐ、と口に肉を押し込む。
フレデリク
――、?」 軽食を摘まみながら語っている内、フードの奥に起きた僅かな変化には少しだけ首を傾げた。
「……んだよ。どうかしたか?」
少しだけ唇を尖らせて、言葉を一度切って問い掛ける。
レナ
「別に、どうも」
「いいことね。生き甲斐というやつでしょう、そういうの」
フレデリク
「あー?」
何だよ、と少し怪訝そうにするがそれ以上は続けない。
「生き甲斐、……ってーと、何かムズムズすんな」
レナ
「……そういう顔をしていたもの」
フレデリク
――……」 逡巡して、んん、と小さく漏らす。
「そう、かもな。それで喜ばれるなら、それが一番だ」
レナ
「…………そ。いいわね、そういうの」
 目は合わせず、食事を口に運びながらそう返す。
フレデリク
「…………」
調子が狂うな。また好きに言われるだろうと思ったんだが。
「……お前もやってみっかよ」
レナ
「…………、は?」
フレデリク
「は、じゃねえよ。一個しかねえだろ?」
レナ
怪訝な表情をフレデリクに向けた。
フレデリク
怪訝そうな表情に、に、っと笑みを浮かべながら、鞄から取り出した鋏を見せる。
レナ
「……いらない」
フレデリク
「一回やってみりゃいいだろよ」
首を傾げながら、笑みは保ったまま。
レナ
「嫌よ」
フレデリク
「……何でだよ」
レナ
「他人に髪とか触らせたくないわ」
フレデリク
「まあ、そりゃそうだろうけどよ」
「けど、まあ」 なんだ、と頭を掻く。
「その気になったら言えよ。騙されたと思ってでもな」
レナ
「……気持ちだけ貰っておくわ。頼むことはないと思うけど」
フレデリク
「気持ちを貰って、それを覚えてんなら十分だ。……切った後は笑わせてやんよ」
普段向けるものとは別種の、少年らしい笑みを浮かべながら鋏を戻す。
レナ
「……………笑える髪型にされるなんてごめんね。禿頭にでもされたら堪らないわ」
 やや間があって、いつものような軽口めいた言葉を叩く。
フレデリク
「……んだよ。腕が信用なんねえってか?」
レナ
「本業で稼げてないようじゃね」
フレデリク
「ああ言えばこういう奴だよお前は、……ったく」
肩を竦めると、思い出した様にフードを軽く覗き込む。
「お前、髪の長さどんなもんだっけ」
レナ
「ちょっと」
 覗き込まれ、軽く仰け反る
フレデリク
「お?」
レナ
「女の子の顔をそう軽率に覗き込むものじゃないわ」
 フードをぐい、と深めに下げつつ。
フレデリク
「……」 
女の子とか言いやがったぞこいつ。
「悪い悪い。話に熱中して、つい気になっちまった」
レナ
「どうせ人に見せたりしないし、整えたって意味がないわ」
フレデリク
「おいおい、そりゃ見せるのも大事だけどなあ」
頬杖をつき、首を横に振る。
「一番大事なのはな、自分が気に入る事だと思う……ぞ、うん」
レナ
「断言しきれてないからダメね」
フレデリク
「これで言って信じてくれんのか?」
苦笑しながら自分の髪を軽く触れる。
レナ
 肩を竦め。
「あなた、ひとの髪を気にするくらいなら、自分のをなんとかしたほうがいいわ」
フレデリク
「そりゃあまあ、そうだな」
「けどよ、お前も忘れんなよ? 初回はタダにしといてやっからさ」
レナ
本業(プロ)のつもりなら、もう少しそういうところにも気を配るのね」
「……はいはい」
フレデリク
――んだよ、まーた流しやがったな」
レナ
「そっちが押し付けてきてるんでしょう」
フレデリク
「でもよ」
首を傾げながら、冷水を煽る。
レナ
「なに」
フレデリク
「多分変わるぜ、それ取ってみりゃ」
フードを示しながら、多分な、ともう一度付け加える。
レナ
「……変わらないわ、なにも」
「変わる必要も、ないし」
フレデリク
「変わる必要がない、なら」
「変える分にゃいいんだよな?」
レナ
「……なんですって?」
フレデリク
「言ったままだ、変わりたくねえ、じゃないんだろ?」
レナ
「……そう言ったつもりよ」
「変わりたくないから、変わる必要がないの
 ……わかったら、馬鹿なお節介はやめなさい」
フレデリク
「"変わらない"と"変わりたくない"、は別物だろうよ――お節介は否定しねえけど」
レナ
「言葉遊びはどうでもいいわ。要らない、と言っているの」
フレデリク
「お前が取り繕ってんじゃねえのかって言ってんだけどな」
肩を竦めて、解ったよ、と続けた。
レナ
「………」
 それ以上は返さない。
フレデリク
「……」
暫く無言でいたが少しずつ唸り始めると、やがて口を開く。
「……悪い、色々言い過ぎたな」
渋々、という様子で口を開いて、食べ終えた皿をキャロラインに手渡した、
レナ
 フレデリクには何も言わず、
「キャロライン。おかわり頂戴」
フレデリク
流したレナに不満を漏らすでもなく、頬杖を突いたまま静かに過ごす。時折冷水の入ったグラスを煽りつつ。
レナ
 おかわりが届けば、黙々と肉を食み、胃の腑に流し込む。
フレデリク
喧騒と、隣から聞こえる食事を行う音に耳を傾けながら、時折もごもごと唸る音は発しているものの、やはり口は開かない。
レナ
―――
 おかわりの最後の一切れを口に運ぶと、徐に立ち上がる。
フレデリク
「……ん、おい」 立ち上がった小さな背に、小さく声をかける。
レナ
 だん、とやや荒く金貨をテーブルに置く。
―――なに」
フレデリク
「言い過ぎた、けどな」
荒く置かれた金貨には、少し怯む様に言葉を止める。
「いつでもいいからな。……そんだけだ、止めて悪かったな」
レナ
「………」
 ふん、と軽く鼻を鳴らし、自分の荷物を引っ掴み、店の外へ出ていく。
フレデリク
「……」
出て行く様子を見送って、頭をがしがしと掻く。
「こえー……」
フレデリク
こっちはこれくらいだな。
レナ
じゃあおしまいかしら
フレデリク
だな。お付き合いサンキューだ
レナ
おつかれさま
フレデリク
おう、お疲れ。
)))
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フレデリクが退室しました










 ―――あいつ。あんな顔が出来たなんて。

 あの妹を語る少年の表情。
 ああ、何を期待していたのだろう。なんて愚か。
 同類とまで思っていた程ではない。ただ、少し擦れたふうではあったから。
 ……それが、あんな。
 まっとうな、夢や希望のある人間の顔をするなんて。
レナ
「なんて―――妬ましい」

 勝手に期待して、勝手に失望しただけだ。
 それでも。あいつも不幸になればいい、などと。本気で思っている自分にもうんざりする。

 ……(はら)が疼く。
 あんなに食べたのに、餓えている気がする。
 あまり、良くない傾向だ。……万一、食い散らかす前に、何か、発散しなければいけない。

 ―――と。
「……おい、ガキ。人にぶつかっといて謝りもしねえのか?」
レナ
―――?」
 どうやら、ぼんやりしている間に、男にぶつかっていたらしい。
 ……とはいえ、骨が折れた訳でもあるまいに、大袈裟な男だ。
 面倒だ、無視しよう、と思ったが、どうも男は引き下がるつもりがないらしい。
レナ
―――はあ。まあ、丁度いいか」
 こいつで、鬱憤を晴らさせてもらおう。
 そう決めると、折よく男が掴みかかってくる。
レナ
「……じゃあ、正当防衛ね」

 ―――その後、男の悲鳴が数回に渡って響き渡ることになった。




 不幸な人を見ると、安心する。
 好きなのではない。ただ、安心するのだ。自分以外にも不幸な奴はいるのだ、と。その存在を確認して安心する。
 低俗な、暗い喜びだ。でも、別にそれでいい。
 どうせ自分はまともにはなれない。
 真っ当な幸せを手に入れようとしても、手に入れた端から自分で台無しにするだけだ。
 だったら、これでいい。
 人並みの幸せなど諦めて、俗な悦で腹を満たしていれば、それでいいんだ―――




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レナが退室しました
背景
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