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コモンルーム[X]

20200202X_0

SYSTEM
ジャンヌが入室しました。
SYSTEM
ニオが入室しました。
ジャンヌ
はい。
ニオ
ええ
ジャンヌ
どちらにいけばよいのでしょう。ニオさんから来られます?
ニオ
いくわ、ニオから
ジャンヌ
お待ちしています。
ニオ
吸血鬼は、ね
一度招かれれば、その部屋に出入りできるのよ
ジャンヌ
こわい。
ニオ
ジャンヌの部屋でいい?
ジャンヌ
はい、構いませんよ。
ニオ
じゃあ受け持つわね
開幕
ジャンヌ
はい、お願いします。
 
 
 
 
 
 
リアン地方イルスファール王国王都イルスファール
王城から南西方面に位置し、ビッグボックスへの道すがらに存在する イルスファールで最も大きな神殿であるライフォス神殿
ザイアやエルピュセ、その他の第一の剣の神々も合祀されているここには やや大きめの宿舎がある
一般的な神官は、複数人で一部屋なのだが、侍祭以上の者には個室が与えられることも多い
実力でいえば、司祭級であるザイアの信徒である少女 ジャンヌ・ダルクもまた、小さいながらも個室を与えられている一人だった
日が落ちて、参拝者も帰り、神殿も戸締まりをする 今日も遅くまで仕事をしていた君は、自分の部屋に戻ってくる
ジャンヌ
今日もすっかり遅くなってしまった。冒険者の仕事がない時は、ずっと神殿の仕事。合間に以前聞いた〈不死者達の遺産〉とやらについて調べてはいるけれど、太陽神の神殿にはまだまだ顔が売れておらず、有力な情報は得られていない。
もう少し冒険者として大きな仕事をこなして名声を得た方が結果的に早いのかもしれないとは思いつつも、名声を得るために仕事をするというのは、どうもしっくり来ない。それが結果的に人助けになるのならば文句はないのだが、そういう仕事はなかなか舞い込んでは来ない。
つい漏れそうになるため息を飲み込んで、部屋の扉へと手を掛けた。
 
扉の立て付けは悪くないが、通気のための隙間はある
君は、そこからゆるくではあるが外に向かって吹く風を感じた
ジャンヌ
「……」 あれ、と首を傾げる。出ていくときに戸締まりは確認したはずだけど。
少し不思議に思いながら、扉を開いた。
 
扉が開かれると、より明確に風を感じて 閉められていたはずの窓が、開いている
そして、光源がない中で、紅く光る2つの瞳を見ることになる
ジャンヌ
こんなに窓が開いていれば、出かける前に気付かないはずがない。けれどこんな神殿敷地内に空き巣に入るような者が居るとも考えられず、首を捻る。
――と、そこで此方を見る紅い光が目に入って。 「……え、ええっと……」
ニオ
「…‥」 黒い髪に少しの銀髪が見え隠れする 赤い瞳の少女は 「こんばんは」と声を出す その声音は聞き覚えのあるものだ
ジャンヌ
声が聞こえて一呼吸置くと、入り口の傍においてあった明かりに火を灯した。 「……ニオさん?」
ニオ
「そうよ」 窓際に寄りかかっていた少女は、頷いて
ジャンヌ
「良かった。最近お姿を見かけなかったので、少し心配していたんですよ」
微笑むと、寒いですからと断って窓を閉めて。 「こんな時間に……何か困った事でもありましたか?」
ニオ
「……驚かないのね」 声音はどこか、つまらなさそうに
ジャンヌ
「いえ、驚いていますよ、すごく」 壁により掛かるニオへと近付いていって。 「それよりも、安堵が大きかっただけです」
ニオ
「……そう」
ジャンヌ
「そんな所に立っていないで、座りませんか? よろしければ、温かいお茶も用意しますよ」
ニオ
黒いドレス姿で、肌が露出している部分には 赤い筋が幾重にも見て取れた
ジャンヌ
「……?」
「もしかして、怪我を……?」 肌に差す赤色に気付くと、屈み込み、間近でその様子を確認し始める。
ニオ
「……?ああ」
首筋などに触れて 「残ってるのね、まだ」
ジャンヌ
「お仕事の時にですか? ちゃんと手当をされましたか……?」 心配そうに、刺激しないように傷の周りに優しく触れながら具合を確かめて。
ニオ
「使ったの。魔剣を」 
ジャンヌ
「魔剣……」
ニオ
「使うと、こうなっちゃう」
ジャンヌ
「以前お伺いした時は、確か寿命を対価にと仰っていた気がしましたが……それと同じものなんですか?」
ニオ
「そうよ」
ジャンヌ
「味覚に、寿命……。それに、こんな怪我を負ってしまうだなんて……。……出来るだけ、使わないようにはしてくださいね」
ニオ
「難しいわ。それは」
ジャンヌ
「でも、そんな頻繁に使って、その度に傷を負っていては……心配です」 ニオの手を優しく取ると、ベッドの端に座らせる。
ニオ
「……」されるがままにベッドの端に座らせられて
ジャンヌ
「神聖魔法に頼りすぎるのも、あまり良くはないのですが……」 この傷は、しっかりと塞いでおきたい。傷に手を向けると、祈りを捧げて癒やしの奇蹟を行使した。
ニオ
「ありがとう」薄く笑みを浮かべて 肌から赤みが引いていく よく観察すれば、それは鎖が巻き付いた痕だと分かる
ジャンヌ
「鎖……。魔剣も、普段使っているようなのと似た武器なんですね」
肌に傷痕が残らなさそうなのを確認すると、ほっと一息ついて、隣に腰を掛けた。
ニオ
「そうよ。鎖は」
「教えてもらったの、お姉さまから」
ジャンヌ
「お姉さま? ご姉妹(きょうだい)がいらしたんですか?」
ニオ
「ニオが、一番使いやすい武器」
ジャンヌ
「はい。ニオさんのあの武器の扱いの上手さは、隣で見させてもらいましたからよく知っています」
ニオ
「ほんものじゃないわ、お姉さまは」
ジャンヌ
「本物じゃない、というと……一緒に育った幼馴染とか、そんな感じでしょうか」
ニオ
「そうね。ちょっと違うけど、それでいいわ」
「とてもお上手なのよ…」うっとりとした口調で呟いて 「…最近は、変わってしまったって聞いたけれど、ね」
ジャンヌ
「そういう相手が居るのは、良いことですね。私も村には――……」 一瞬顔を歪めて頭を片手でおさえて、横に振る。 「きょうだい同然で育った相手が、いるんですよ」
「……あら、そうなんですか?」
ニオ
「……どうかした?」 ジャンヌの顔を見て
ジャンヌ
「……あ、いえ、少し目眩がして。ちょっと、働きすぎたのかもしれません」 すみません、と苦笑を返した。
ニオ
「よくないわ」
ジャンヌ
「よくない、ですか?」
ニオ
「元気なジャンヌでいてもらわなきゃ」
ジャンヌ
「……ふふ、心配してくださっているんですね。ありがとうございます」
「でも大丈夫ですよ。身体は丈夫な方ですから、一晩休めばすぐに戻ります」
ニオ
「ええ…、そう、ね」 赤い瞳がジャンヌを見て 「ねぇ」
ジャンヌ
「はい?」 ニオとは対象的な碧色の瞳で見つめ返す。
ニオ
「血を、くれる?」
ジャンヌ
「ん……はい、大丈夫ですよ」 微笑んで、神官服の上に羽織っていたケープを脱いで、膝の上で丁寧に畳んで横に置いた。
ニオ
ゆっくりとジャンヌに身体を寄せると 両肩を掴んでベッドに押し倒すようにする
ジャンヌ
押し倒されるのにやや驚いた顔を浮かべるも、抵抗はせずに仰向けになって。 「ええっと……首筋が良い、んですよね」 恥ずかしそうに訥々と口にしながら、衣服をずらして、白い首元を晒した。
ニオ
「ねぇ…」 すぐに首筋に牙は落とさず ジャンヌを下に敷いたまま 目線を合わせて 「ジャンヌは欲しいものがあった時、どうする?」
肩から、頬に手を持っていく
ジャンヌ
「?」 以前のようにすぐに歯が突き立てられると思って身構えていたところに質問を投げかけられて、きょとんとする。 「欲しいものがあった時、ですか……。ううん……物によりますけど、お金で買えるものなら頑張ってお金を貯めるでしょうし、手に入れるために何かしらの努力はします」
ニオ
「まじめ、ね」 「ニオはね、見てきたの」
ジャンヌ
「……そうでしょうか? 欲しいものがあったら、多くの人はそうすると思いますが……」
「見てきた?」
ニオ
「何が何でも欲しいから、手段を選ばなかった人を……もう手に入らないものを、もう一度欲しいと思った人を」
ジャンヌ
「…………」 その言葉に、頭に痛みが走ってまた一瞬顔を歪める。 「……そうですか。その人にとっては、それだけ大事なものだったんですね」
ニオ
「それくらい欲しいと思った時……ジャンヌはどうする?」
ジャンヌ
「……分かりません。私は、しがない村娘でしかありませんから……そこまで強く何かを求めたことがありません」
ニオ
「……ニオはね」 
ジャンヌ
頬に触れられたまま、じっとニオを見つめて。
ニオ
「欲しいわ。ジャンヌが」
ジャンヌ
「わ、私が?」 思いもよらない言葉に目を瞬かせる。 「血……というわけではなくて、ですか?」
ニオ
「ジャンヌの全部が欲しい。ジャンヌを、ニオのお人形にしたいの…」
ジャンヌ
「私の、全部……」 言われた言葉をそのまま、呟くように繰り返す。 「……ニオさんのために力を尽くすという意味であれば、勿論私はそうします」
「……でも、人形では、きっとあなたの欲しがる私ではなくなってしまいますよ」
ニオ
「……そういうのじゃ、ないわ」 じゃら、と鎖の音がする 「ニオの言うことを聞いて、ニオの好きに出来て、ニオのことを考えてくれる、ニオだけのお人形‥…」
ジャンヌ
「……ニオさん」 押し倒されたまま、頬に手を伸ばし返して、細い指先で人形のような白皙の肌に触れる。 「あなたは、今の私の事を素敵だと仰ってくださいました」
「あなたの言うことには出来るだけ応えたいと思っていますし、あなたの望みを叶えて、大事にしたいとも思います。……でも、そうできるのは私とあなたがお互いに人間として、此処に居るからなんですよ」
ニオ
「……そう」
ジャンヌ
「きっと、あなたが褒めてくれた私の強引さも、消えてしまうと思います」
ニオ
「……なってくれないのね、あなたも」
「ニオのものに……」
ジャンヌ
「……」 首を横に振って。 「そうやって、すぐに結論を出してしまうのは、良くないですよ」
ニオ
「…お人形がほしいの。ニオは」
「お人形じゃないジャンヌは、だめなの」
「…だから…」
ジャンヌ
「……何故、そんなにお人形に拘るんですか?」
ニオ
「……そうするしか、ないから。そうじゃないと、ニオが‥」
ジャンヌ
「ニオさんが……?」
ニオ
「……待って、邪魔しないで…」
「……」 表情が無になると 口からため息が漏れて
ジャンヌ
「……」 その変化に目を細める。 「……彼女は、待ってと言っていましたが」
ニオ
「必要、ありますか?」
ジャンヌ
「まだ話の途中でした」
ニオ
冷たい表情で身体を起こす
「……仕事が終わった後に何処に向かうと思ったら…」
ジャンヌ
「……てっきり、私の所に来るのもあなたが認めての事だと思っていましたが、違うのですか」
ニオ
「わたしが出ずっぱりでしたから。休んでいたのです」
ジャンヌ
「そう、ですか」 二重人格というものはよく分からないが、身体は共有していても、互いに心を休める時間も必要なのかと、こんな状況でも感心したような息を漏らした。
ニオ
「困ったものです。おちおち、休んでも居られない……上手くいくならまだしも」
ジャンヌ
「……彼女があんなにお人形を欲しがる理由、あなたならご存知ですよね?」
ニオ
「聞いてどうするのです」
ジャンヌ
「分かりません。答え次第です」
「結局、血も差し上げられていませんし……」
ニオ
「……」 少し間を置いて 「血の事なら、会話を優位に持っていくための方便ですから。大丈夫ですよ」 
「…‥そうですね、それでわたし達がどうなるかは別として、ニオについてはお話しておきましょうか」
ジャンヌ
「そうなんですか? ううん……あれで優劣が定まるようなことはないと思うのですが」 此方も身を起こして、悩むように頬に手をあてた。
すぐに真剣な表情に戻って。 「……はい。お願いします」
ニオ
「あの子の娼婦としての仕事の手口の1つです」
ジャンヌ
「は、はあ……」 頷いては見るものの、全然想像がつかない。確かに体制的には下に居る方が動きづらいけれど……
ニオ
「あなたには効かなかった様ですが……」と言葉を切って
ジャンヌ
「すみません……そういう経験はないもので……」
ニオ
「あの子は入り知恵をされました。それを実施している訳です……誰から、という質問にはお答えできません」
ジャンヌ
言って、自分の言葉を考えてみる。……経験はないとはいえ、知識としてまったく持っていないわけではない。思ったよりも自分が焦った様子もなかったことに若干の違和感を覚えるも、ニオの言葉が再開されて、そちらに意識を向けた。
「……誰かに、お人形を作ったらいい、なんて言われたんですか?」
ニオ
「自分が人形で居られない、という悩みに対して」
「相手を人形としてしまえば、誰かの人形で在りながら、その人物と関わることも問題ない…言いなりにしてしまえば、全て丸く収まると」
「全部、あなたとの関わりのせいです」
ジャンヌ
「な、なるほど……確かにニオさんなら、そう言われれば忠実にそれを実行しようと考えても、不思議ではありませんね」 呆れたというよりは、心配したような声で。
「……謝罪はしますが、止める気はありませんよ。私にとっては、彼女は人形などではありませんから」
――勿論、あなたも」
目の前のニオの目を真剣な表情で真っ直ぐ見つめると、やがて微笑みを浮かべて、その頭を撫でた。
ニオ
「わたしは自分が道具であることに迷いはありませんから──、なんの真似です?」
ジャンヌ
「いい子だと撫でたくなったから、そうしただけです」
「ありがとうございます、教えてくださって。……ふふ、よくニオさんからはまじめねなんていわれますが、あなたも相当、真摯で真面目だと思いますよ」
ニオ
「どうでしょうか」
「わたしは消えたくありませんから」
「自分が消えない方法を実践しているに過ぎません」
ジャンヌ
「消えることと、私に色々と教えてくれることに関連があるのですか?」
ニオ
「……それも、そのうち話すことがあるかもしれません」
ジャンヌ
「……では、その時をお待ちしています」
「もし――
「もし、あなたが消えないために私の力が必要ならば、教えてくださいね」
ニオ
「ただ、あるとは言っておきます……あの子は危機感が薄いですが、時間はもうそれほど残っていないので」
「欲張りすぎです。そして踏み込みすぎです。ジャンヌ・ダルク」
ジャンヌ
「……私、人には言われても、自分が本当に無欲な人間だとは思ったことはありませんから」
「ちゃんと、教えてくださいね。もし教えてくださらなかったら、もっとしつこく、面倒になるくらい追いかけてしまうかもしれませんよ」
ニオ
「……」ため息を付いて 「あまり情を持たないことです」
ジャンヌ
苦笑を浮かべて。 「……それは、難しいです」
ニオ
「──残りは、2年と4ヶ月」
ジャンヌ
「……一度力を振るえば、どれだけ減ってしまうのですか」
ニオ
「最初の契約は8ヶ月前。つまり3年です」 
「支払いは済んでいます。追加で求められる時は」
「能力を開放した時」
「代償も寿命だけではありません」
ジャンヌ
「……他の感覚も奪われるのですか?」
ニオ
「それも少し違います」
「宿題は、あまり進んでないようですね」
ジャンヌ
「……所詮、私など一介の村娘に過ぎないのだと、帰ってくる前も痛感していたところです」 痛い所を突かれたと、申し訳なさそうに項垂れる。
ニオ
「わたしの考えになりますが、述べましょう」
ジャンヌ
「はい」 姿勢を正し直す。
ニオ
「最初に寿命、続いて味覚。寿命については、タイムリミット」
「そして、味覚。ニオが話したことがあるかもしれませんが、」
「すべて失われている訳ではありませんし、味を感じるものもあります」
「血の味を、美味しいと感じるのです」
ジャンヌ
「そうですね……以前、濃いものなら少しは感じると仰っていましたし――」 それに、血もだ。ニオの言葉に頷く。
ニオ
「血の味をわざわざ覚えさせるのは、身体を馴染ませているのではないか、という考えに至りました」
ジャンヌ
「身体を馴染ませる――」 自分の少ない知識を動員して考えてみる。 「……確か、穢れを得た代償として血を好むようになることも、あるそうですね」
ニオ
「この目の色も、魔剣を使えばしばらく赤いままです……そして、暗い場所でも目が効くようになります」
ジャンヌ
「……不死者に、近付いて行くのですね」 続く言葉に確信を持ったように呟いた。
ニオ
「はい」
ジャンヌ
「……もしそうなった時、あなたと、あの子の意識は?」
ニオ
「わたし達は今、蛹に向かって成長する、青虫のようなもの」
「そして、もし次の開放があった場合」
「何が消えれば都合がいいかを考えると」
「あなたの想像した通りのものが消えると考えています」
ジャンヌ
「……そうですか」
「……私が、それを早めてしまったようなものですね」
ニオ
「どうでしょうか」
「ニオが勝手にしたことです」
ジャンヌ
「……」 首を横に振る。 「事情を知っていれば、もっと上手いやり方もあったかもしれません。迂闊に踏み込んだ責任は、私にもあります」
ニオ
「矛盾ですね。ジャンヌ・ダルク」
「踏み込んで来なかったら、あなたがこれを知ることもなかった」
ジャンヌ
「……矛盾?」
ニオ
「最初から、正しい答えなどありません」
ジャンヌ
「……そうですね。あなたの仰る通りです。私も――私が正しい事をしたとは思っていませんが、間違ったとも思っていません」
「あなたがこうして話してくれているということは、まだ道はあるということなのでしょう」
ニオ
「──、そう願いたいものです」
ジャンヌ
「……安心しました。やっぱり、あなたは真摯で真面目な人です」
ニオ
「……」
「そう思うのはあなたの勝手です」
ジャンヌ
「はい」 嬉しそうに笑って頷く。 「あの子も、あなたも消えてしまわないように力を尽くします。だから、また教えてください、ニオさん」
ニオ
「またしばらく、仕事に出ます。その間に考えを改める事をお勧めします」
ジャンヌ
「……魔剣は、出来るだけ使わないでくださいね」
ニオ
「…人の話を聞かない人ですね」
ジャンヌ
「……失礼ですね。ちゃんと聞いています」
ニオ
「……失礼します」
窓を開くと、するりと抜けて
ジャンヌ
「はい、また――あ」
「待ってください」
ニオ
「…なにか?」
ジャンヌ
手で待つようにお願いしつつ、チェストの一段を開いて、何かを取り出した。
窓際のニオへと近付いて手を取って、その手のひらの上にそれを乗せた。
ニオ
「……?」
手のひらの上に載せられたものを見る
ジャンヌ
「次からは、ちゃんと入ってきてください」 渡したのは、この部屋の鍵だ。
「窓から入ってくる所なんて、誰かに見られたら怪しまれてしまいますから」
ニオ
「人目には気を遣っています。お構いなく」 
「……ただ、預かってはおきましょう」
ジャンヌ
「それでも、です。窓から入られるより、ちゃんと扉から入ってくれた方が、私も安心できますから」
「はい」
ニオ
「では」
するりと、窓から抜けて
ジャンヌ
「ええ、また。お身体には気をつけて」
ニオ
夜の街へと消えていく
ジャンヌ
小さく手を振ってその背中を見送る。
完全に姿が見えなくなると、窓を閉めて。
ニオ
ニオからはここで一旦いいわ
ジャンヌ
「……」 今からでも、出来ることはあるだろうか。太陽神の神殿に話を聞きにいったり、賢神の神殿に文献を漁りに行ったりするには遅すぎる。
しばらく考えても妙案は浮かばなかったが―― 「……分からない時は、とにかく動こう」 いつか友人に言った言葉を自分に言い聞かせて、手早く着替えを済ませて、
部屋を出て、神殿内の通路を街へと向けて足早に駆けていった。
ジャンヌ
私はこれで大丈夫です
 
 
 
 
 
ニオ
イルスファールの路地裏の1つ
少女が箱の上に腰をかける ようやく、目から赤みが引いてきた 灰色と黒の瞳は、闇を見通せない
「扱いは任せますよ、ニオ」
細かな銀鎖の細い紐を鍵に開いた穴に通し
首からさげる
「……邪魔しないでって言ったのに」
「あのままなら、あなたはジャンヌを殺していた。それは、誰にとっても不利益です」
「……ものに出来ないなら‥」
「‥‥殺したらいいのよ」
「ええ…それが早いのは否定しません」
「ただ、"草"としては、それでは失格というだけです」
「……葉でいいわ。ニオは」
「‥やれやれ」
少女は、ぼーっと中空を眺めているだけだった
心のなかで交わされた会話は、誰にも聞こえない
ニオ
こんなところ、ね
お付き合いありがとう
ジャンヌ
はい、お付き合いありがとうございました。
ニオ
次会う時は、セッションよ
ジャンヌ
ええ、その後に他愛のない話を出来るように頑張りましょう。
ニオ
またね
ジャンヌ
ええ、また。
ニオ
)))
SYSTEM
ジャンヌが退室しました。
SYSTEM
ニオが退室しました。
背景
BGM