- SYSTEM
- クリムヒルトが入室しました。
- SYSTEM
- ユーノスが入室しました。
- クリムヒルト
- うむ
- ユーノス
- お待たせしました。えーっと
- どこからがいいです? 別日でも王都に戻ってからでも。
- クリムヒルト
- 好きなようにしろ。列車の中をイメージはしていたが
- ユーノス
- ふむ。しかし列車の座席ともなれば他の方もいらっしゃいますし、
- いい具合に調整しましょう。
- クリムヒルト
- では任せるぞ
- ユーノス
- はい、お任せを
-
- ――がたん、と列車が揺れる。
- ユーノス
- む。
-
-
-
-
-
- ――がたん、と列車が揺れる。
- 夕空を仰ぎながら進む列車は、途方もない速度で王都へと向かっている。
- この日、この列車は変な"奈落の魔域"に飲み込まれ、
- 列車はおろか、線路諸共呑み込まれてしまっていた。
- しかし、そう被害を大きくする事もない内に、早期の解決を齎され
- 現在は平常通りに運行している。
-
- 快晴の空は既に赤く染まっており、陽もじきに暮れる。
- ユーノス
- 「――……」 そんな空を車窓から眺めながら、少年は物思いに耽る様にぼうっと視線を漂わせている。
- 同僚達――一人は眠っていたが――には、一言告げて席を離れている。息抜きをする時間が欲しかったというのもあるが、少し風に触れたかった事もある。
- 出発地点の都合、他に乗客も多くない。がら、と車窓を開き、入り込んでくる冬の風に眼を瞬かせた。
- ユーノス
- ここからはいつでも。
- クリムヒルト
- 分かった
- ユーノス
- 「……まだ冷えるな」 思い切り開いた窓に苦笑しながらそれを少し戻して、独り言を吐き出す。
-
- かつ、かつ と軽い足音 後部車両へと向かうのだろうか
- 車掌のような律動性もなければ、男性のような力強さもない 少女の足音が、深紅色のマント共にやってきた
- クリムヒルト
- 「──、」 窓が開いている…誰か居そうだ、 先ほどの振動で目を覚ましてから、話の輪から逃れるように槍を片手に後部車両へと向かっていた
- ユーノス
- ぶわ、と窓から吹き込む音と、列車の駆動音によってだろうか。少女の足音には気付かずに、少年は流れて行く風景に視線を向けている。
- クリムヒルト
- 「──、」少年の姿を見つけると、フードの奥から一瞬眺めやる
- 「──」 だが、何か言ってやる必要を感じない。止めた足をそのまま進めて、座席の横を通り過ぎようとする
- ユーノス
- 「……ん」 自身の座る席と同じ地点までやって来た足音に、そこで漸く気が付いた。ゆっくりと振り向くと、歩を進める少女を認めた。
- 「ああ、……クリムヒルトさん。お身体は?
- 」 言葉にしながら、窓も閉めないまま席を立ち 何か言われるよりも早く、既に杖を握っている。
- クリムヒルト
- 「──」 そのまま通り過ぎようとしたが、杖を握る気配を感じた 「…‥大事ない」
- 「奇跡は不要だ。気安く使おうとするな」
- ユーノス
- 「お疲れのようですから。どうぞ、こちらに……」 不要と言われれば、困った様に苦笑して
- 「では、お傍に。王都に戻るまでは同僚、でしょう?」
- 「……ああ、ご安心ください。煩くはしません」 自分は黙れますから。
- クリムヒルト
- 「……」 息をつく気配がして 「1人にしろと言っても付いてくるのだろう。お前は」
- 「……」 フードも上げずに ユーノスの対面の席に着座する
- ユーノス
- 「……」 しつこい、ね。微笑んで、歩を進めるだろうと少女の背後、そこから三歩程の位置に立とうとして、席に着いた少女に眼を向ける。
- 「意外です」 おお、と声には出さないが、それだけは口にした。
- クリムヒルト
- 「手間を1つ省いただけだ。不服か」
- ハスキーな声で、不機嫌そうにそう呟く
- ユーノス
- 「はは、いえ。……」 思い出した様に車窓を閉めようと手を伸ばす。
- クリムヒルト
- 「閉めるな」
- 「風に当たりに行こうとしたのだ‥このままでいい」
- ユーノス
- 「……」 視線だけ向けて、窓を示し 「風、 いで う」 声に対して、風が大きく吹き込んで来る。
- 呆気に取られていた為か、声は酷く小さかった。吹き込む風に小さく身体を揺らし
- クリムヒルト
- 「……」 小さく溜息をついて 閉めろとジェスチャーする
- ユーノス
- 「……」 それを受けて、少しだけ窓を閉めた。 完全には締め切らず、風は先程の様にではないが流れ込んでくる。
- 「すみません。……自分も疲れているのかもしれません、声があまりでなくて」
- クリムヒルト
- 「……休んでいろ。魔法使いが声を張れずにどうする」
- ユーノス
- 背負ったりできますよ。言葉を呑み込んで
- 「……ああ、でも。休む前に、いくつか伺っても?
- 」
- クリムヒルト
- 「聞くのは勝手だ」
- 「だが答えてやる必要はない」
- ユーノス
- 「貴女らしい」 苦笑して
- 「なぜ、冒険者になろうと?」
- クリムヒルト
- 「……」 黙したまま 時間が過ぎる
- ユーノス
- 「……」 柔らかな視線を、じ、っとクリムヒルトへと視線を向けている。
- クリムヒルト
- 「……なんだ」 言っただろうと、という声音で 小さく呟いて
- ユーノス
- 「真面目な方だな、とは思っています」 今は、と続けて
- 「では……貴女は、闘う事が好きですか?」
- クリムヒルト
- 「──好きでも、嫌いでもない」 フードが窓の方へ向く
- 「私にとって必要だから、刃を振るうのだ」
- ユーノス
- 「……」 その様子に、自分も続いて窓へと視線を向ける。
- 「必要。……そうでないと、貴女が貴女でいられないと?」
- クリムヒルト
- 「………」 沈黙を保って
- ユーノス
- 「……冒険者は、貴女にとって必要なものですか?」
- クリムヒルト
- 「………霞や土を食べて生きていける訳ではないからな」
- ユーノス
- 「そうではありません」
- 「……失礼ですが、」
- 「貴女は、酷く――そう、人付き合いが苦手でしょう?」
- クリムヒルト
- 「……何か言ったか小僧」
- ユーノス
- 「ええ。人との付き合いは苦手でしょう、と言いました。……少なくとも、前回も、今回も」
- 「貴女は人を避けた筈だ」 窓の向こうを眺めながら続ける。
- クリムヒルト
- 「………必要以上に関わる価値がないだけだ」 声に淡い怒気を含ませて
- ユーノス
- 「、……。けれど、冒険者は最低限度の関わりではいられない」 怒気には気付き、少し気圧され もう一度口を開く。
- クリムヒルト
- 「説教がしたいのなら、他所でやれ神官」
- ユーノス
- 「説教ではありませんよ。ただ、何故なのだろうと」
- 「何をこうしろと申すつもりはありません。ただ、貴女を知りたいと思った。それだけですから」 窓から少女へと視線を戻す。
- クリムヒルト
- 「お前に喜捨する銀貨は1枚もない」 その言葉に価値はないと 言ってのけて
- 「……余計なことをするな」
- ユーノス
- 「神官としての言葉ではなく、独りの冒険者としての言葉であるとご理解ください」
- 「……」 余計な事をするな、と言われれば小さく頷く。
- クリムヒルト
- 「だった尚更、価値が無い。そうは思わんか」
- 「神官でもないお前に、私を動かす価値があるのか」
- ユーノス
- 「貴女にとっての価値を決めるのは自分ではありません」
- 「ただ、自分にはそうする、」 価値、と続けようとして 眉根を顰め
- 「……そうしたいと思う気持ちがあっただけですから」 これならば気持ち悪くない、と言葉にして
- クリムヒルト
- 「……ふん」
- 「……知ったところで何も変わりはせん」
- ユーノス
- 「何故、その様に?」
- クリムヒルト
- 「事実を口にしただけだ」
- ユーノス
- 「……」 取り付く島もない。困った様に微笑んで
- 「では、教えていただけませんか。"なにか"を約束しましょう」
- クリムヒルト
- 「……しつこい男だ」 不機嫌そうに呟いて
- ユーノス
- 「ご存じでしょう」 「……ネッチョリは嫌ですが」
- クリムヒルト
- 「……」 返す言葉もなく
- ユーノス
- 「……」 眉間に手を当てて
- クリムヒルト
- 「……1つだ」
- 「答えたらもう列車が止まるまで黙れ」
- 「それが嫌なら、お前がここを去れ」
- ユーノス
- その言葉を聞いて、黙れ、と言われた所で
- 「お聞かせください」 躊躇う事も無く、返答をした。
- クリムヒルト
- 「……」 食い気味に言われて フードの中で少し戸惑う気配がした
- 「……ふん」
- 「私にとって必要なものだ。この仕事は」
- ユーノス
- その気配を感じ取ると 少しだけ嬉しそうに頬を緩めたが、続いた言葉にそれを収めた。
- クリムヒルト
- 「──」 答えたぞ、とばかりに 間を置くように言葉を切って
- ユーノス
- 「……」 明らかに続きを待つ様な気配を漂わせながら そうと言われるまでその姿勢を続けている。
-
- がたんと揺れると 列車が緩やかに速度を落とす 伝声管を通じた車内アナウンスで 声が響く
- 『王都到着前に臨時点検を行います。1時間程で点検は終わります。ご了承ください』
- クリムヒルト
- 「…‥」舌打ちが聞こえた
- ユーノス
- 「ん――」 「点検、か」 速度が落ちて行き、流れる速度の遅くなった風景に視線を向けて
- 舌打ちが聞こえれば、少女へと向き直って 「どうかなさいましたか?」
- クリムヒルト
- 「……答えたぞ」 付け加えるようにそう言って
- ユーノス
- 「……」 きょとん、として そんな対応をされるとは思っていなかった様子だ。
- 「……酷い方だ」 徐々に速度が落ち やがて止まると、ゆっくりと口を開く。
- クリムヒルト
- 「……1つは1つだ」
- ユーノス
- 「ええ、約束はお守りしました」 微笑んで
- 「クリムヒルトさん」 ひとつ指を立てて
- 「もう一つ、伺っても?」
- クリムヒルト
- 「……」 フードは微動だにせずに 「……」 いや ゆっくりと立ち上がって
- 「…‥時間の無駄だ」
- ユーノス
- 「しかし、列車も止まっています。……もう少しだけ、聴いてくださいませんか」
- クリムヒルト
- 「……聞くのは勝手だ」
- 立ち上がったまま、小さな影が対面のユーノスを見下ろして
- ユーノス
- 「ええ。……貴女の槍を、支えさせて頂けませんか」 見下ろす影を、正面から見上げて
- クリムヒルト
- 「……何故そう口にできる」
- 「お前に利が無かろう」
- ユーノス
- 「利が無ければ、何かを為したいと思う気持ちは抱いてはいけませんか?」
- クリムヒルト
- 「……道連れは必要ない」
- 「……巻き込まれようとするな。早死にしたくなければな」
- ユーノス
- 「逆です、クリムヒルトさん」
- クリムヒルト
- 「‥‥…」
- ユーノス
- 「貴女は、……生き急いでいる様に思えます。必要だからと槍を持ち、冒険者になって」
- 「それでいて、他者との繋がりを最低限にしか持たない。必要なものであると言っているのに、それを盤石にしようとなさらない」
- 「ご存じでしょう。……冒険者が、その時々の仲間に脚を引かれて命を落とす事が少なくない事は」
- 言葉にするとしても選ばなさすぎるか。小さく心中で呟きながら、言葉を吐き切った。
- クリムヒルト
- 「……なら、尚の事」
- 「私に近づくのはやめろ」
- ユーノス
- 「何故ですか」
- クリムヒルト
- 「お前が言ったではないか」
- 「足を引かれて死にたくなければ、近づくなと言っている」
- そのまま身体の向きを変えると 歩き出す
- ユーノス
- 「お断りします」 それを追う様に席を立ち、背に投げる。
- クリムヒルト
- 「……来るなと言っている」 不機嫌な声で
- ユーノス
- 「お断りすると言いました」 背を追って、歩を進め
- 「貴女を死なせはしません。そして、自分も死にはしません。……それに。足を引かれるとも、思っていません」
- クリムヒルト
- 「………しつこい男だ」 少し距離を取ってから、ユーノスの喉元に石突を突き付けて 「…次は穂先だ」
- 「これ以上、踏み込んでくるなら……その口、二度と叩けぬようにしてやる」
- ユーノス
- 「――……」 息を呑み、躊躇うように口を閉じる。
- クリムヒルト
- 「……商人にでもなるのだな」 石突を下ろして 「そのしつこさは賞賛に値する。気の弱いものになら幾らでも物が売れよう」
- 「‥‥…」 背を向けて また歩き出す
- ユーノス
- 「お断りします。……自分には、やる事がありますので」
- 歩き出した背中に答えて、じっとその背中に視線を向ける。
- クリムヒルト
- 「……」せいぜい長生きできるようにするのだな そう口にしようとして呑み込んだ
- 「…‥しつこい男だ」 本当に
- ユーノス
- 少し間を置いて、ゆっくりと口を開く。
- 「いつか、貴女にとって利となると思って頂けたのなら」
- 「先程の言葉も、思い出してください」 その時も、貴女はきっとそうなのだろうから。
- クリムヒルト
- 「……」 がら、と列車の連結部を繋ぐ扉を開いて、車両から出て行く
- ユーノス
- その背を見送って、手近な席に座り込む。
- 「――、……こ」 「怖かった……」 小さく絞り出し、しかし後悔はない様子で呟いた。
- ユーノス
- 自分からはここまでで。
- クリムヒルト
- 車両を1つ超えた後 空いた席に座り 包帯が巻かれた腕で窓ガラスに触れる
- 「‥…これ以上の道連れなど、必要ない…」 失われた場所、喪われた命。奪っていったもの……それらすべてに清算するまでは
- この穂先が幾多の骸を見えようとも 進むしかもう道はない
- 願わくば、その果てにおいて、自らの終わりが来ることを、少女に見える彼女は祈った
- クリムヒルト
- こんなところだろう
- ユーノス
- ええ、今はこんなところでしょう。
- クリムヒルト
- うむ
- もう会う事はないぞ
- 付いてくるなよ
- ユーノス
- そう、ですねえ
- お会いしてしまうかもしれませんが。
- クリムヒルト
- むむ
- では私は去るとしよう
- ユーノス
- 自分も貴女も、追うものは一緒ですからね。お互いに今は知りませんが。
- クリムヒルト
- 感謝しておいてやる
- ユーノス
- ええ、では自分も。
- クリムヒルト
- )))
- ユーノス
- )))
- SYSTEM
- クリムヒルトが退室しました。
- SYSTEM
- ユーノスが退室しました。