- SYSTEM
- シアが入室しました。
- SYSTEM
- ニオが入室しました。
- ニオ
- おねえさま
- シア
- うふふ。
- 最近よく行く場所とかはある?
- ニオ
- んー‥
- 特にないわ。星の標くらいかしら
- でもふらふらしているから、どこにでもいるしどこにもいないわ
- シア
- それじゃあ、そうね。いいわ。
- 適当に始めちゃうわね。
- ニオ
- ええ
- シア
-
-
- 王都イルスファール、ある日の夜。
- 〈星の標〉の冒険者としても過ごしているニオは、冒険者として今日も店を訪れ、必要な事を終えた後、店を後にする。
- この後帰るべき場所、あるいは向かうべき場所があるのかどうかは君のみが知る事だが――
- 夜の街に踏み出した瞬間から、君の事を闇の中からじっと見つめている気配がある。
- 殺気のようなものがあるかと言われれば、あるような気もするし、ないような気もする。その視線からは、曖昧で虚ろなものが感じられた。
- シア
- 好きに動いて大丈夫よ。
- ニオ
- 「……」 "わたし"が囁く、ニオも気がつく 赤い靴を軽やかに 黒と銀の髪を靡かせて 相手の出方を待つように人気の少ない方へと移動していく
- シア
- 〈星の標〉を出た所は、夜とはいえ人気のある大通りだ。
- そこを避けるように、狭い路地に入っていき……周囲に感じられる気配が“それ”だけになったとき、気配の主は軽やかにニオの目の前に降り立った。
- ニオ
- 「……」 きょとん、とした表情で その姿を見る
- シア
- 夜の街の景色に溶けるかのように、暗色のローブを身に纏い、フードを目深に被っている。
- その奥に見える顔に、“庭”に属する者であれば見覚えはあるだろう。
- ニオ
- 「…‥おねえさま?」
- シア
- “華”という幹部の子飼いの“鋏”と呼ばれる“葉”。
- “葉”の中でも優れた才能を持っていた彼女は、その領分を越え、様々な役割を果たし、後進の暗殺者たちの育成にも携わっていた。
- 「そうよ」 呼び掛けに返ってくる声は、君の知る彼女の声と似た、感情の薄い抑揚もない声。
- ニオ
- 「……」少女の顔をもまた 一瞬無になって
- 「……お久しぶりです"鋏"。もっとも、そちらはわたしを覚えてはいらっしゃらないでしょうけれど」
- シア
- 「そう。知らないわ、“私”は。初めて会うもの、あなたとは」
- ニオ
- 「改めて、N-20。今は、ニオで通しています」 一礼してみせる
- 「……?」
- シア
- 「意味がないわ。覚えられないもの。必要もない。意味のない事は、しなくていい。そうでしょう? あなたも」
- ニオ
- 「…‥承知しました」 頷いて 「ご用件を伺いましょう」
- シア
- 「――呼んでいるわ、“華”が。あなたを」 ゆっくりと歩み寄り、眉一つ動かさないまま片手をニオの頬へと伸ばす。
- ニオ
- 「──、あの方のことです。"匙"からの了解はもう得られているのでしょう」 触られるままに口を動かして
- 「であれば、応じましょう…──お好きに、どうぞ」
- シア
- 「知らないわ。聞いていない。必要のないことは」
- 「目を閉じて」
- ニオ
- ゆっくりと瞼を閉じて
- シア
- 「――…………」 目を閉じたニオの耳に口を寄せると、小さな声で何かを呟く。
- その瞬間、身体は浮遊感に襲われて――
- 「もういいわ」
- ニオ
- 「‥‥…」目を開く
- シア
- 目を開けば、辺りの景色は――何も変わっていない。夜のイルスファールだ。
- ただ唯一、空に輝く月が異常なまでの紅さを見せていることが、一見しての違いだろうか。
- ニオ
- 「──、なるほど」 一つ、呟いて
- 声
- 「……ふふ、嬉しいわ。素直に来てくれて」 呟きと同時に、背後から首筋に回される冷たく、しなやかな手の感触。
- シア
- 「……」 目の前の“鋏”は、やはり表情も、指一本も動かさず、何処かをぼーっと見つめている。
- ニオ
- 「……先日はニオが失礼しました」 振り向くことなく
- 「参上させていただきました。麗しき"華"……もっとも、蔦が伸びすぎているようですが」 回される手にされるがままに
- シア
- 「……麗しき“華”だなんて。いい子ね。調整が行き届いている証拠だわ」 腕を回し、絡みつくようにしながら、耳元で甘ったるい声で囁く。 「……ところで、失礼って、何のこと?」
- ニオ
- 「興味の赴くまま、貴方の領域に踏み込んだ事……もっとも、それもわたしの仕事の1つではありますが」 遺跡での一件を言っているようで
- シア
- おっと、さっきの名前欄がずれてたわ。
- “華”
- 「あれは私が呼んだのよ? だからいいの」
- 「……ふふ、あれを殺すのはどうだった? 気持ち良かったかしら?」
- ニオ
- 「……聞いてみますか?本人に」
- “華”
- 「ええ……あなたでも、あの子からでも、どちらからでもいいわ。聞かせて欲しいの」
- ニオ
- 「結論から申し上げれば、」 絡みつく腕に頬を寄せて 「"わたし"を抑え込んでまで、あれに固執していましたよ」
- 「では…失礼します」 表情が一瞬切り替わって
- “華”
- 「ふぅん……。あの子、そんな風にあなたに逆らったりするのね」 びっくり、と心にもなさそうに言って。 「何か最近気になるものが出来た、というのは知っていたけれど」
- 「……そんなに気になる?」 身体を寄せて、より密着を強めて、切り替わった表情を間近で見つめながら問いかける。
- ニオ
- 「……こんばんは」 少し、声に震えがある
- “華”
- 「ええ、こんばんは。挨拶を忘れないのは、いいことね」
- ニオ
- 「……ニオは、"匙"のお人形……"匙"の目、"匙"の耳…」 どこか言い聞かせるように
- 「だから、……」 気になる、と問われれば言葉に詰まって
- “華”
- 「そうねぇ……。あなたはよく可愛がられていると思うわ。人形なのに、嫉妬を覚えてしまうくらい可愛らしくって……」 つ……と指先で頬をなぞる。 「いいのよ。思う事があるのなら、言っても。ここなら聞こえないし、たとえ聞こえても、少しくらいなら怒られないわ」
- ニオ
- 「‥…‥なったわ。殺したく…とても、とても‥とても」 白状するように
- “華”
- 「殺したいだなんて物騒ね。どうしてそんな風に思ってしまったの?」
- ニオ
- 「もっと気持ちいいと思ったの。本物だったら…」
- “華”
- 「そう。レプリカたちを殺すのも、気持ち良かったのね」
- ニオ
- 「…‥よく、分からないの。気持ちよいのと」
- 「そうじゃないのとが、混ざって」
- 「試したいの。本物を……」
- 「でも……そうしてしまったら。もうそれは、お人形じゃない…"匙"が喜ばない」 声のトーンが低くなっていって
- “華”
- 「うーん……あなたがどのくらいマカブルを使ってるのか知らないから、その影響がどのくらいあるかは分からないけれど……」 一度指を引き、んーとニオの背後で、口元に指を当てて考える。
- 「そうねぇ……。本物――という言い方には笑っちゃうけれど、あれは私にとっても大事なもの。柱になりうるものだわ」
- 「だから、殺されちゃうと、私と“匙”の間で、喧嘩が起きてしまうかもしれない」
- 「まあ、別に一度や二度死んだくらいでどうこうなるわけではないけれど――……ねぇ、ニオ?」
- 「どっち? 殺したいのか、気持ちよくなりたいのか」
- ニオ
- 「……ニオは」
- 「……殺したいわ……戻りたいの。お人形に…」
- 「………でも」
- “華”
- 「――…………」 言葉を促すように、冷たい指をニオの肌に走らせ、身を寄せ、口元までをなぞりあげる。
- ニオ
- 「……ん‥」
- “華”
- 「……でも、なぁに?」
- ニオ
- 「……分からないの。どうしたら、いいか」
- 「ジャンヌは……ニオに入ってくるから」
- “華”
- 「……ふふ、戸惑ってるのね。それはそうよね。あなたたちには、ああして深く関わろうとしてくる相手なんて、今までいなかったんだもの」
- 「殺してしまったら、そこで終わり。もう二度と、彼女の声も聞けないし、触れることもできないし、味わうことだって出来ないの」
- 「……あなたは、本当にそうしたい?」
- ニオ
- 「……」それで"匙"が見てくれるなら…ニオで遊んでくれるなら… 華の話によれば、でもそれは叶わない
- 「……ニオは、」
- 「ジャンヌと居ると、気持ちよいの……でも、それは、匙が一番喜ばない…」
- “華”
- 「……そう」 愉しげな声色で頷く。 「だったら、良いやり方があるわ」
- 「彼女と気持ちよく過ごせたままで、“匙”にも怒られなくて、私の役にも立つ方法」
- ニオ
- 「……え」
- “華”
- 「人形にしてしまえばいいのよ。……あなたの望むことをしてくれる、あなたの邪魔をしない、あなたのためだけの人形に」
- ニオ
- 「…ニオの…お人形…?」
- “華”
- 「ええ、そう。あなたを気持ちよくしてくれて、一緒にいてくれて、でも……あなたを変えず、“匙”の人形のままで居させてくれる、都合のいい人形」
- ニオ
- 「…‥でもニオは、……"根"じゃないわ……うまく、できるの?」
- “華”
- 「大丈夫。出来るわ。そうしたいのなら、私が手伝ってあげる」
- ニオ
- 「………」 ニオの、お人形。ニオのもの。ニオのジャンヌ‥
- 気がつけば少女は、薄い表情に笑みを浮かべていて
- 「……素敵、ね」
- “華”
- 「……ふふ、そうでしょう? きっと、彼女も幸せに思ってくれるわ」
- 「そんなに気にかけているあなたのためになるんだもの」
- ニオ
- 「とても、とても素敵だわ……ありがとう、"華"…」 "華"の手に頬ずりして それを胸元へと運ぶ
- “華”
- 「お礼は、彼女をあなたのものに出来てからでいいわ」 腕を引かれるままに顔と顔を寄せ、互いの睫毛が触れそうなくらいに距離を詰めて。
- 「……ふふ、あの子も、あなたと同じくらい素直で可愛ければ良かったのだけど」
- ニオ
- 「……あの子?」
- “華”
- 悪魔のような美貌を持つ顔に、嫣然とした笑みを浮かべて、ねっとりと絡みつくような動作でニオの首筋を撫でてから、手を離す。
- ニオ
- 「……ん……」 その指の動きに翻弄されるように甘い声をあげて
- “華”
- 「そこの子の、本物よ」 目で、傍に佇んだままの“鋏”を示した。
- ニオ
- 「……おねえさま」
- “華”
- 「まあ、そういう自分勝手な所が可愛いんだけど、ね」
- 「ふふ、今のあの子にあったら、きっとあなたは驚くわ。随分人間らしくなっているから」
- ニオ
- 「……そう」
- 「……分かったわ」 虚空に向かって呟いて
- “華”
- 「あの子はどうしようかなぁ……。折角本人が望んでいるんだし、もっと人間らしく成長出来る手伝いでもしてあげようかしら」
- ニオ
- 「ご挨拶したいみたいなの。わたしが」
- “華”
- 「ええ、どうぞ」
- ニオ
- 「……」 表情が切り替わって
- 「……"匙"の了承は得ているものと考えていましたが」 やや冷ややかな視線を"華"へと送って
- 「報告はさせて頂きます…もっとも、それで貴方の意図から外れる訳でもないでしょうが」
- “華”
- 「えぇー……一々話なんて通してたら時間が掛かりすぎるし」
- 「気に入らなければ、あっちが跳ね除けるだけでしょ? だったら、無駄な事をする必要なんてないじゃない」
- ニオ
- 「……」小さく息をついて 「仕事をついでに済ませていきましょう」
- “華”
- 「あら、お仕事があったの?」
- ニオ
- 「"葉"の発注と、会う事があったら届けろと言われていたものがあります」
- “華”
- 「どういう方面に秀でた子が欲しいとか、リストはある?」 ほらほら、と催促するように手を伸ばして。
- ニオ
- 「"葉"の方は質は問わないのでなるべく多く。今回の目的は荷運びだそうですから」
- 「人数分の薬も都合して頂きたいそうです」 胸元から取り出したリストを手渡す
- “華”
- 「そう。じゃあちゃちゃっと用意しておくわ。連絡と受け渡しは、いつもの方法でいいわね」
- ニオ
- 「ええ」
- 「それから」 片手サイズの小さな箱を取り出して 「こちらが届け物です」
- “華”
- 「はいはい、了解。……ふーん、へー」 リストを受け取って眺めながら、気の抜けるような声を出して。
- 「なにこれ」 ニオの手から箱をつまみ上げて、矯めつ眇めつ。
- ニオ
- 「リャナンシーの血漿と、"匙"が作った新薬です」
- 「サンプルとして提供しておく。だそうです」
- “華”
- 「そう。助かるわ。私、そういう方面のコネは持ってないから」
- 「誠意は受け取ったから、安くしておくって伝えておいてもらえる?」
- ニオ
- データ見たければDMに送っておくわ
- シア
- 受け取りましょう。
- ニオ
- 「承知しました」
- “華”
- 「それじゃあ、そろそろ帰るわね、私」
- 「まだやらなきゃいけないお仕事が残ってて、大変なの」
- ニオ
- 「ええ。……お疲れ様です。その麗しさが損なわれない程度に頑張って頂きたい」
- “華”
- 「ふふ、大丈夫よ。私は老いもしなければ、死にもしないもの」
- 「まあ、探し回れば死ぬ方法くらいは見つかるかもしれないけれど」
- 「それじゃあ、帰りはその子の案内に従って――ね?」
- ニオ
- 「疲労はするでしょうから。"葉"の言葉ですが、お労りを」 一礼して
- 「楽しみにしています。またお会いする日を」
- “華”
- 「気遣いが出来るそういうところ、好きよ。らしくないけど」 にっこりと微笑んで、“鋏”に合図を送れば
- シア
- 「……」 すっと近付いてきて、ニオに触れる。 「閉じて」
- ニオ
- 「……」 ゆっくりと目を閉じて
- シア
- どちらが発したのか分からないくらい小さな声が耳元で囁かれて、
- 意識が、現実へと引き戻される。
- 目を開けた時には、既に目の前の“鋏”はその場から立ち去っていて、辺りにはニオ以外誰の姿もない。
- ニオ
- 「……」 表情は、慇懃無礼な女のものではなく、少女のもので
- 「……ああ…」 空を見上げて 恍惚そうな声をあげる
- 「ニオのものだわ…あなたは」
- 「……♪」 ハミングを奏でながら、路地裏から出て行く これで会いに行く事に苦しむこともない、
- 全ては、ニオのお人形のためなのだから
- 黒と銀の髪が、闇へと溶けて行く
- そこには最初から誰も居なかったような静寂だけが残り
- 白い光を湛えた月だけが、目撃者だった
- ニオ
- こんなところ、ね
- シア
- ええ、おつかれさま。
- ニオ
- ありがとう
- これでジャンヌに会いに行けるわ
- シア
- 良い方法を提供出来たのなら何よりだわ。
- ニオ
- ええ
- ではまたね
- シア
- ええ、またね。
- ニオ
- )))
- SYSTEM
- シアが退室しました。
- SYSTEM
- ニオが退室しました。