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- が入室しました。
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- ――鋼都ディニス。物々しい防壁に囲われた堅牢な大都市の名だ。
- 仲間の頼みで力を貸す為、彼女は現在の拠点としているイルスファールからこのディニスまで訪れていた。
- 暫しの滞在を命じられて以来、仕事以外では単独行動が多い彼女はいつものように一人で放浪していた。
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- アンスレイ
- 都市のリアン地方側を護る防壁、“鋼狼門”。彼女は見張り兵の目を掻い潜り――その壁の最上部で腰掛けていた。
- 「――……」 既に寝静まった街をただ、呆っと見下ろす
- 夜更けの時刻でも、宿へ戻ることは無い。いや、そもそも与えられた宿はほとんど使っていない。
- 特に“庭”という存在が今の仕事に絡んでいることを知ってから、アシがついたり人目に触れる行動は避けていた。
- けれども時々の情報収集は怠らぬまま、静かに時が訪れるのを待っていた。
- 「――……はぁ」 一つ零すのは、溜息
- (……シグネさんが言っていたことが本当なら、そろそろ声が掛かる筈)
- (次もおそらく……いや、間違いなく“庭”と〈奈落の剣〉が関わってくる)
- (特に〈奈落の剣〉について以前よりは情報も増えはしたものの、現状も分からないことが多い) 自分の膝元に肘をつきつつ、頬杖
- (“糸”は言っていた。〈奈落の剣〉で作られた魔域は互いを繋ぐことができて、このディニスにも繋がった魔域が2つある……と)
- 「…………」 そんなことを考えつつ、見下ろした街で目に付いた二点を交互に眺める
- (……どのタイミングになるかはさておき、私たちもその魔域に足を踏み入れることになるのはほぼ確定)
- (すなわち、敵が用意した魔域を通路として通っていかなければならない。しかも相手は“庭”と来た)
- 「……行きたくないですねぇ」 ぽつりと本音が零れる
- (自分に課せられるのは、敵の察知と罠の回避、退路の確保……ま、面子の安全か)
- (……とは言えども、相手が作り出した魔域を通っていくなんてリスクが高過ぎる)
- 「やれやれ……」 なんでそこまで考えなきゃいけないのやら、と更に溜息
- 「…………」 レイフェルの事だってそうだ。他人に干渉し過ぎている。
- (……でもま、他人に頼って下さいって言っちゃったんだから。裏切る訳にもいかないし)
- 「……皆を無事にイルスファールへ帰すまでが仕事、ですかね」 そう割り切るしかない。遠足か?などと自分で苦笑しつつ
- 「――と」 そうこう考えているうちに、少しずつ東から陽が昇ってきていることに気が付く
- 目を盗んでこんなところへ上ってきたなどと知れたら他の面々にも迷惑が掛かる。
- (行きますかね。関わった以上、途中で投げ出すわけにもかない)
- そうして見張りの兵の目を掻い潜り、軽い足取りで降りていく。
- 「面倒事の多い仲間を持ったものですねぇ、全く」
- そうぼやきながらも、その表情は初めて“庭”と関わった時よりも、楽しげだった。
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