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コモンルーム[W]

20191231W_0

SYSTEM
ミレイユが入室しました。
 
冒険者の店《星の標》の2階、宿の一室。一人の少女がベッドに腰掛けて物思いに耽っていた。
一人ではあるが、独りではない。ベッド脇に巨大な狼が蹲るようにして少女に寄り添っている。
ルー
鼻先を小さな妹の膝小僧に擦り付けて、青い瞳を覗き込む。
きょうはおでかけしないの? そとをはしったらたのしいわ、のせてあげるわよ
ミレイユ
「……」巨狼(ダイアウルフ)、ルーの視線と仕草に意図は把握しつつも、耳の後ろを掻いてやるだけで出かけようとは思わなかった。ルーには我慢ばかりさせてしまって悪いと思いつつも、考えるのはもう一人の家族の事…
「……」膝の上に畳んで置いた白いマフラーを手に取る。姉が自分の為に作ってくれたもの。これでもう何本目になるか。いくつかは目を離した隙にルーが自分の寝床に持って行ってしまったが、どれも大事に取ってある。
「……」最初は拙い出来だったが、月日が経つごとに目覚ましく上達していった。努力家の姉らしい。敵わないな、という思いと、自慢に思う気持ち、そして、後ろめたさを抱き続けてきた。
「……」姉は自分にとても優しくしてくれる。物心ついた時から愛情に不足を感じた事は無かった。父や姉が居てくれたから、母親の不在を実感したのは家の外まで交友が広がってからの事だった。
ルー
すん、と鼻を鳴らして首をもたげ、小さな妹の膝上の白い布切れに鼻を近づける。大きな妹の匂いもする。大好きな二人の匂いのする布切れ、欲しい。置いてあったから寝床に持ち帰ったら叱られた事があるので勝手に持ち去ったりはしない。でも、欲しい。くれない?いいでしょ?
「ご……、…ごめんね」ルーがマフラーに興味を示したのを見て、マフラーを抱き締めて、これはあげられないという意思表示をしてみせる。
そう、このマフラーは自分や父、ルー、家族だけのものだった。  これまでは。
「……」父が亡くなり、姉は変わった。自分やルーに向けてくれる愛情に変りはないが、それ以外には昏く冷たい瞳を向け、心を閉ざしているかのようだった。そんな姉を独りにしたくなくて、無理を言って復讐の旅についてきた。
「……」そんな姉が、このマフラーと同じものを家族以外の人に贈ったのだ。それも、復讐の対象だと思っていた彼(ウィンター)に。
ミレイユ
@↑私だわ…
「……」父が亡くなった状況を自分は詳しく知らない。ルーに遺留物の匂いを追わせる形でこのイルスファールで、彼と初めて出会った。https://sw.tale.blue/room/A/logs.cgi
「……」旅の間も姉は父の仇について何も語ってはくれなかったから、どんな相手なのか分からなかった。だから、自分達と似た髪と瞳をしている事には驚いたし、人を突き放すような態度には怖さを感じたが、敵意を抱くには至らなかった。
「……」ただ、姉が抱く敵意は仇に向けるそれで、そんな姉が見ていられなくって、姉に黙って彼にある約束を持ちかけたりもした。https://sw.tale.blue/log/20190914X_0.html
「……」今にして思えば、なんて無礼で不躾な事をしでしまったのだろうと思う。その後、何度か彼と仕事を共にしてその為人を知った今となっては、忘れたくなる一件だ。
彼、ウィンターは厳しい一面もあるが、不器用な優しさや気遣いを向けてくれる人で、父の仇とは思えない人だった。姉もそれを感じ取ったのか当初のような剥き出しの敵意を向けたりはしなくなっていた。
「……」彼は復讐の対象ではなかったのだろう。姉にとっては肩透かしを受けたようなものだろうが、自分にとっては喜ばしいことだ。見知った彼と姉が争う様を見たくは無かったから。
「……」でも、それはそれとして、あれはどうなのだろうか。姉が家族以外の男性に贈り物をしたなんて。一体、あの二人の間に何があったのだろうか。
思えば、そう、予兆はあったのかもしれない。
掴みかかっているところを仲裁に入った事もあったが、それから先も姉と彼が二人で会っているところを見た事がある。
「……」情深く聡明な姉の事だ。彼が仇ではない事に気付いて、関係を改善していったのだろう。
誤解が解ければ、彼の実直で誠実な人柄に触れて好意を抱いたとしても不思議ではない。
「……」最近、姉が錬金術を学んでいる事は知っていた。自分も(イルシオン)から教わった身なので、人に教えるなんてとても出来ないと思い、姉の勉強を手伝おうとは言い出せなかったのだが、習得の速さからして、独学では無かったのでは、と思う。
「……」錬金術と魔動機術の両方を修めた彼ならば、教師役としては最適だ。姉は彼に協力を求めたのかもしれない。そして、同じ時を過ごしているうちに彼に惹かれていったのだとしたら……
ルー
小さな妹が白い布を顔に押し付けて、白い肌を赤く染めて身悶えしている様子に首をグリっと回して見つめた。
なにをかんがえているの? たのしいこと? おなかすいた?
ミレイユ
「……」先生の本にもあったではないか。不器用な二人が知らず知らずに距離が近づいて、ある日それが恋になるのだと。ああ、なんて素敵なことだろう。
「……」姉には幸せになって欲しい。自分の母親の代わりや復讐に費やすのではなく、自分だけの幸せを追求してもらいたい。ずっとそう思っていた。
「に……、…義兄様、かぁ……」この間、期せずしてそう口にした言葉。はじめて口にした言葉だったが、不思議としっくりと来るものを感じた。嫌では無かった。
「……」己惚れではなく、彼は自分の事を気にかけてくれていると思う。彼は自分にとっての姉のような大切な存在がいると言っていた。それはおそらく妹なのではないか。彼は自分を通して残してきた妹を見ているのかもしれない。
「……」嫌では、ない。どんな理由で離ればなれになっているのかは分からないが、自分を通して家族と触れていた時の気持ちを思い起こして貰えるならそれでいい。あんな取引を持ち掛けた自分勝手で薄情な自分が代わりでは申し訳ないとさえ思う。
「……」ああ、でも、姉が想いを成就して彼と添い遂げるようになったなら、その時は誰憚ることなく彼の事を義兄と呼んでも構わなくなる。欠けた家族が増えるのだ。
ルー
一人でいるときは何かと沈みがちな小さな妹の気持ちが上向きになっているのを感じ取って、クルルと喉を鳴らして腿に頬擦りした。
うれしいことがあったのね。わたしもうれしいわ。いっしょよ
ミレイユ
「あ……、…ありがと、ルー」慰撫、あるいは鼓舞するようなルーの仕草に微笑み、ベッドから立ってルーの首に抱き着いて感謝の意を伝える。
「……」立ち上がってベッド脇のテーブルセットについて、紙とペンとインク壺を用意する。手紙を書くのだ。
会話に難のある自分では、伝えるべき事を伝えるのにどれだけ時間がかかるか分からない。それでなくても、内容が内容だ。気持ちがいっぱいいっぱいで冷静に伝えられるとは到底思えない。だから文章にする。
『拝啓 ウィンター様  寒さも厳しくなって参りました。どうぞお体にはお気を付けください。突然のお手紙失礼いたします――
 
手紙は挨拶から始まり、冒険者仲間として日頃お世話になっている事、何かと気にかけてくれている事への感謝を綴る。続いて、仇と決めつけて失礼な振る舞いをした事への謝罪。遺跡の情報を集める取り引きについては、こちら側の条件(この街から退去する)は破棄させてくださいと懇願した上で、情報は探して伝える事を提案する。
そして、紙面の多くを費やして、姉が如何に献身的で、優しく気丈な人であるかを綴った。
今は復讐心に身を委ねて、周囲に壁を作っているけれど、本当はそれだけではないのだと知って欲しいという願いのあらわれだ。
自分という足枷のせいで、姉は本来得られる筈だった幸福を置き去りにしてきたように思っている。
姉には誰よりも幸せになって欲しい、どうか今後とも姉の事をよろしくお願いします。
男性の家族はこれまで父親しか居なかったけれど、あなたと接してきて兄とはこういうものなのかと感じました。
いつかあなたの事を本当の兄様と呼べる日が来たなら、とても嬉しく思います。
気が付けばそんな事を書き綴っていた。
 
「……」少し一方的ではないだろうか、押しつけがましいのでは?
姉の気持ちはともかく、彼の方は姉の事をどう想っているのか分からないではないか、とも思う。
姉を差し置いて勝手にこんな手紙を渡すのもどうか、とも思う。
だが、今のままでは姉は自分の幸福を置き去りに突き進むのではないかという恐れがある。
「……」インクが乾いた事を確認して手紙を折り畳み、しっかりと頷いた。
ミレイユ
ヨシ
ルー
何やらやり遂げた感のある小さな妹の膝に鼻先を擦り付ける。
やったのね、おわったのね? じゃあ、そとにいきましょう。 たのしいことがまっているわ
「……、…ルー…うん、行こっか」手紙をテーブルの上に置いて、ルーを散歩に連れて行くことにした。
なんだか心が浮き立つようで落ち着かない。うっかり、ルーをそのままの姿で外に出しそうになって、慌てて彫像にしてから外へと向かうのだった。
ミレイユ
@↑私…
SYSTEM
ミレイユが退室しました。
ミレイユが入室しました。
SYSTEM
ウィンターが入室しました。
ウィンター
さて
ミレイユ
わたしのにいさまになってくれにきましたか?
ウィンター
…待て
本編より先に刺しに来るんじゃない
開幕はどうしたいか希望はあるか?
ミレイユ
特にありません。ただあんまり遅い時間だと外出を控えなきゃいけないので…
夕方前にルーの散歩から帰って来たあたりでしょうか
ウィンター
分かった
 
ミレイユ
じゃあさっくりと描写を承ろう
 
 
 
ウィンター
任せよう
王都イルスファール。茜差す黄昏時までもう少しという時間帯。本格的な冬の到来を控え、寒さがいや増している。
陽が落ちる速度は目に見えて早いため、街を行き交う人の足も自然と早まっている。
北西の門へ向かう大通りに面した冒険者の店《星の標》へ向かう少女の足取りも常よりも早い。
ミレイユ
「……」流れるような銀の髪に優し気な青い瞳をした少女は、口元を覆ったマフラーの隙間から白い呼気をたなびかせて店の入り口をくぐった。
「……」見た目にはそぐわないが少女もまた冒険者の一人で、この店の二階に宿を取っていた。
つい先ほどまで、門の外に自分の騎獣の運動をさせに行っていたところだ。
 
「──また来るぞ」 少女が入店したタイミングとほぼ同じくらいだろうか 淡々とした宣言にも聞こえる挨拶の声
人もまばらな店内では、音も混じらず入り口まで声が届いた事だろう
ミレイユ
本当はもっと早くに戻るつもりだったが、喜び走り回るルーの姿につい時間をかけてしまった。日が傾く前に戻れたのは僥倖だ。
ウィンター
黒い旅装に 青いコート 白いマフラーを身に着けた 雪のような銀色の髪、冬の湖を凍らせたような青い瞳を鋭くした青年は、入り口へと足を向けるところだった
ミレイユ
「あ……」声の主に気付いて、呼気と共に声を漏らした。奇しくも銀の髪、青の瞳、白いマフラーという共通した出で立ちの二人が入り口前で向き合う事となる。
ウィンター
「……ああ」 少女の姿を見つけると 表情を少し柔らかいものにして 「今日も冷えるな」 と他愛のない挨拶を少女に向けて
ミレイユ
「こ……っ、…こん、にちは…っ」 出かける前、ずっと姉と彼の事を考えていたので、思いがけない遭遇にいつもより緊張する
ウィンター
「……」 冷笑ではない笑みを向けるのは、もしかしたら彼女だけかも知れない ほんの少し笑みを載せて 「ああ、こんにちは…もう、こんばんはかもしれないが」
ミレイユ
「は…、…は、はい、さ……寒かった、です」自然と視線は姉の贈ったであろうマフラーへと向かう。今日もつけている。つけてくれている。大切に思ってくれていると考えていいのだろうか。
入り口を振り返ってみれば、傾いた日差しによって人や建物が黄金色に染まりつつ、地面に長い影を作り始めていた。
ウィンター
「……暖かいものでも飲むか?」 このまま今日の宿に戻ろうと思っていたが、外から戻った少女を気にかける様に提案する
「勝手にご馳走すると、あいつも煩そうだが……お前さえよければ」
ミレイユ
「……くしゅん」 その魔法のような時間にしばし見入ってしまい、吹き込んできた冷たい風に小さなくしゃみを漏らした
「~~~っ」人前でくしゃみをしてしまった、見られたことに猛烈に恥ずかしい想いに駆られつつ、男の提案に肯き返した。
ウィンター
「……」 小さく苦笑して 「適当な席を取っておいてくれ」 自分のコートを脱いで 少女の防寒着の上から更に被せた
そのままカウンターへと向かい 飲み物を注文するようだ
ミレイユ
「は……、…はい…」背丈に合わないコートを羽織らされると、コートからは父とも姉ともルーとも異なる匂いがした。裾を引き摺らないように気を付けながら空いている席へと向かいながら、部屋に置いてきた手紙をどうしようかと考える。
ウィンター
マグカップを2つ受け取って ミレイユの座っている席を見つけて 「待たせたな」 とマグカップを置く
ミレイユ
「……」先程、彼が見せた笑顔を思い出す。仕事の時よりもずっと柔らかなもの。姉と二人で過ごしている時もあんな風に微笑むのだろうか。
ウィンター
中身はココアで、男の方のカップの中身は香りから推測するならコーヒーだろうと分かる
対面の席に着くと 男も自分のカップを置いて 「今日も一人か」 と話題を切り出す
ミレイユ
「い……、…いえ、ありがとう、ございます」ホッとする香りに自然と表情が綻ぶ。拙い言葉に被せて意識して感謝の意を込めた笑みを向け、カップを受け取った。
「きょ……、…今日は、ルーの、運動に……、壁の、外へ……あ、ライダーギルドの、敷地、です」
ウィンター
受け取ったのを確認すると 自分も一口コーヒーを飲んでから 「そうか。騎手というのも大変だな」
ミレイユ
つっかえつっかえの説明になってしまうのはやはりもどかしい。壁外と告げた事で、心配させてしまうのではと考え、慌てて安全な場所であることをアピールした。やはり、自分はコミュニケーションに難がある。
ウィンター
「……」 少女が言葉に不自由しているのは知っている。知っているからすべて聞いてから答えるようにしている
ミレイユ
「……、…ルーには、窮屈な思いを、させてます、から」ふるふると首を横に振り、大変ではないのだと主張する。
ウィンター
「そうやって気にかけられるのは、いい関係だ」 また小さく笑って 軍団(レギオン)の操者共に聞かせてやりたいセリフだと思う
「だからあの狼は、あんなにも強いのだろうな」
ミレイユ
「……家族、ですから」良好な関係を築けているとは思うが特別な事ではないと思っているので、何が彼の笑いを招いたのか分からず小首を傾げ
ウィンター
「ああ、いや……私の故郷では、お前程騎獣…でいいか。そう言ったものを気にかけるものは少なくてな」
ミレイユ
「……」強い、という誉め言葉にはやや眉尻を下げて困った表情を浮かべてしまった。本当なら戦いの場に出すような事はしたくはなかったから。それも自分の我が儘によるものだ。
ウィンター
「そいつらに聞かせてやりたいと思った、それだけだ」
ミレイユ
「み……、…皆が、皆、ルーみたいに扱う、わけには…いかないって、わかります」
ウィンター
「……」少し困らせてしまったか、と表情を見て そうだな、とミレイユの言葉には頷くことで同意する
ミレイユ
ルーは自分にとって騎獣ではなく家族であり、それは本来の騎手と騎獣の関係からすれば不自然なものであろう。
ウィンター
優しい彼女の事だろう。戦いに関して言及したことは、彼女にとって本意ではない…のかもしれない
「……お前たち姉妹が、早く戦いから離れられる事を祈っている」 本来、それが正しいと、少なくとも自分では思うのだ
ミレイユ
「あ……、あの……、きょ、今日は、姉様とは……?」期せずして、姉の話が彼の口から出て、それが自分たち姉妹を気遣うものであったから、思わず聞かずにはいられなかった。
ウィンター
「…?」 怪訝そうにしつつ 「今日は会っていないな」 と返す
ミレイユ
「……」良かった。これから会うところだったのなら逢瀬を邪魔してしまうところだった。ホッと安堵の息を漏らす。
ウィンター
「……そうだ、聞いておきたいことがあるのだが」
ミレイユ
「な……、…なん、でしょうか…?」姉に関する質問だろうか、どこまで答えていいものか考えて少しだけ身構える。緊張感の種類は全く別物だが
ウィンター
「お前の姉は、お前に対して様々なものを…‥例えばそのマフラーなどを作るが」
「自分に対してそうしたものを自分で用意することはあるのか?」
ミレイユ
「!?」これはどういう意図の質問だろうか、姉に対する返礼の意識調査という事になるのだろうか、そうだろう、きっとそうに違いない
ウィンター
やはり、目当ての人物をよく知る人物に聞くことが大事だ どうなのだろう、と少女の反応を待つようにコーヒーを一口啜った
ミレイユ
「あ……、…あの、じ、自分でも、使って、います……けれど、それしか、使わないってことは……わ、私から、プレゼント、したことも……」
ミレイユ
もったいなくてとても見つけられないといってお蔵入りしてそう…
ウィンター
「……なるほど」 女性だし、複数持つことに対しては抵抗はないか と一人納得して
ウィンター
未使用品になっていそうだな
ミレイユ
「す……、…………、きっと、よ、喜ぶと、思います」 好きな人からの贈り物なら、と言おうとして恥ずかしくて口には出せなかった。
ウィンター
「……感謝する」 小さく頷いて きっと吃音だったのであろう す の音は聞きとがめる事はせずに
「身体は冷やさない様にな。飲み終わったら部屋に戻る事だ」 言ってからコーヒーを一息に飲みほして
ミレイユ
「……」ああ、これは完全にプレゼント交換だ。良かった、彼も姉を憎からず想ってくれているようだ。自分が余計な事をしなくてもいいのかもしれない。だが、自分の存在が二人の足かせになってはいけない。
「あ…、あの……っ」自分にとっての適温になったココアをコクコクと飲み干して、タンとテーブルに置きつつ、席から立ち
ウィンター
「……」 浮かしかけた腰を 再び席に戻して 「どうした」
ミレイユ
「も、…もう……す、少しだけ、ま、待って、貰っても、いい、ですか…? お、お見せ、したいものが……部屋に」
「す……、…すぐに、取って、来ます、から」
ウィンター
「ああ、構わないが…」 曖昧に頷いて 「ゆっくりでいい」そこだけははっきりと口にして
「お前に転んで怪我をされても困ってしまう」
ミレイユ
「は……、はい…っ」 こんな時でも自分を気遣ってくれる優しさに満面の笑みで返して、小走りになりそうな歩みを意識して遅めつつ階段を上っていく。
しばしして、階下へと戻ってくる。手には封筒を持っている。手紙を書くほどの時間は無かっただろうから、既に用意してあったものかもしれない
ウィンター
少女の笑みを見て 何か預かるような事はしただろうかといぶかしむ心はあったが、その笑顔で 今日の疲れが飛んでいった気がした
コートを回収して自分の席にかけ直して 待つことしばし
ミレイユ
「お……、…お待たせ、しました。あの……こ、これを、う、受け取って、ください……わ、私の、気持ち、です」
はにかみながらそんな言葉と共に封筒が渡される。まるで恋文を渡すような言い方だが、表情は恋慕のそれとは異なる。
ウィンター
「……」 小さく笑みを浮かべて 優しい彼女の事だ、関りのある皆にこうして気持ちを綴った文を渡しているのかもしれない
「…私にか」受け取り どんな内容だろうかと思いつつ 「この場で開けてもいいか?」
ミレイユ
「は……、はい」 恥ずかしいが、言葉の代わりなのだからそうも言っていられない。それに目の前で読まれる事は、先生(イルシオン)へのファンレターで慣れている。
ウィンター
頷いて 封を剥がして
折り畳まれている手紙を広げると、内容を確認していく
ミレイユ
手紙は堅苦しくない程度の時候の挨拶から始まり、仕事仲間として、仕事以外の付き合いでもそれとなく気遣いを向けてくれている事への感謝へと続く。
ウィンター
「…‥」やはり、関りあるものに配っている手紙なようだ 表情を柔らかくしながら 内容を改めて行く
ミレイユ
そして、さしたる確証もなく仇扱いして、失礼な取引を持ち掛けてしまった事への真摯な謝罪と共に、ウィンターの抱える事情への協力の申し入れが記されている。
ウィンター
「……」 小さく頷きながら 読み進め
ミレイユ
そして、その後の紙面は主に、というか完全に姉の事を中心に進んでゆくのだ。
ウィンター
「………」 む、と内心首をかしげる 内容に(レティシア)の記述が増え始め…‥というか内容を確認していくと、彼女が本来はいかな女性であるか等の記載でいっぱいになっていく
「‥…‥」 結びに近づくにつれて 表情を柔らかいものから努めて動かさない努力が始まった
表情とは裏腹に、内心は困惑と焦りでいっぱいになっていく
ミレイユ
自分が生まれた時に亡くなった母の代わりをずっと務めてくれた姉を心から尊敬している。だからどうしても幸せになって欲しい。
ウィンター
目の前の少女は──誤解をしている という結論には至った
ミレイユ
あなたのような男性になら姉を任せる事が出来る、そんな想い(誤解)がひしひしと伝わってくる文章だった。
ウィンター
だが、それを正すには。少女の想い(ねがい)を無にするまでには、この男は血を冷たくできなかったのである
「……。」 自分はいま、完璧に表情を制御できているはずだ 社交界を渡り歩くために身に着けた技術の1つが、こうして役に立つ事もあるのだ 
ミレイユ
「ぶ……、…不躾、なのは、分かって、います……、でも、あの、わ、私の、ことは、気になさらず」
ウィンター
「…ありがとう、ミレイユ」 手紙を──恐らく当人はかなり気を遣って──畳み直すと、封筒にしまう
「お前の気持ちはよく分かった」 嘘は、言っていない
ミレイユ
「……」聡明ではあるが世間知らずな少女は、男の表情を、その内心を正確に読み取る事は出来ず、ただその言葉をそのまま受け止めて安堵の笑みを浮かべた
ウィンター
「手紙の礼もしなくてはな」 そう、内容はともかくとして、贈られたものには返すのが、自分の中で定められたルールだった
ミレイユ
「」
ウィンター
「何か、欲しいものはあるか」 意識を務めて、手紙の内容から離さなければならない そうでないと自制心が限界を迎えそうだ
ミレイユ
「お……、…お礼なんて、わ、私が、勝手に……」手紙は自分の拙い言葉を補うために綴ったもので対価を受け取るようなものではないので慌てて
「あ……」しかし、思いついた。これは良い機会なのでは
「ね……、…姉様を、お、お食事、とかに……その……つ、連れて行って、ください、ませんか……?」
ウィンター
「…それで、いいのか?」
内心の動揺、そしてこの少女の願いを考えればあり得る選択肢であった事を考慮から外した自分の浅慮を呪いつつ
表面的には優しい表情を崩さず、冬の男はなんとか確認するという形で声を形にした
ミレイユ
「そ…、……それが、一番、嬉しい、です」本当に嬉しそうに笑った。姉の幸せに繋がるのだと愚かにも信じているのだろう。
ウィンター
「…分かった、約束しよう」 そう言われてしまえば、もはや回避は出来なかった
「…ただ、お前にも何か用意しても、構わないな?」 努めて意識を、レティシアから外さねばならない
ミレイユ
「? わ……、…私は…、もう、たくさん貰い、過ぎています、から……」」
ウィンター
「……私の我儘だと思って、受け取って貰えると助かるが……まあ、その時に判断してくれ」 手紙を懐に そう、相談相手に見せるまでは保存するためにも大切にしまって
コートを纏って 席を立つ
「…子供の内は、貰い過ぎてるくらいが丁度いいのだから、気にする事はない」
「大人ぶるのは大人になってからにしなさい」
ミレイユ
「そ…、そんな……は、はい」あまり遠慮し過ぎるのも却って失礼だと思い頷いた。
ウィンター
少しためらいがちに少女の頭を撫でると 「ではな」
と言って、出入口へと向かって行った
ミレイユ
「あ」 頭を撫でられ、普段と少し違う、気の抜けたへにゃりとした笑みを浮かべた。
ああ、兄様ってやっぱりこういうものなんだと思いました。
ウィンター
「……」 動揺を最後まで見せないようにしつつ 男はなんとか出入口を越えて 暗くなっていく街へと消えていった
内心の動揺は、道半ばで徐々に湧き出てきて……深酒が必要な日だと判断したのか、宿に戻る前に酒場へと向かうのだった
ウィンター
私はここまでだ
ミレイユ
気の抜けた笑みを浮かべたまま、男の座っていた席の対面に座って頬杖をつく。少し行儀が悪いが気にならない。
元々、誤解はもう解けていたかもしれないが、仇の件をきちんと誤解だったと伝え、謝罪できたことは心理的に大きい。
姉の事もより知ってもらう事が出来たと思う。二人がそのつもりなら祝福したい気持ちがあるとも伝えた。
けれど、これ以上、自分が介入するのは余計なお節介にしかならないだろう。今の時点でも少しやり過ぎかな、と思うくらいだ。
ミレイユ
これからです
姉様との未来は・・・
ウィンター
墓穴を掘るという意味を、改めて今知ったところだ…
ミレイユ
『恵みは望むものにもたらされる』 フェトルの教義の一つだ。
これまで姉は自分の幸せを置き去りにしてきた。どうか、姉に恵みがもたらされますように。それが私の望みだ。
少女は未来の幸福を祈りつつ、笑顔でその日を過ごした。
根本的な大きな思い違いをしている事に気付かないまま……
ミレイユ
終了です
ウィンター
うむ…
……なんとか、せねばな
お付き合い感謝だ
息災でな、ミレイユ
ミレイユ
はい、お付き合いありがとうございます、お義兄様
ウィンター
……
……ああ
)))
SYSTEM
ウィンターが退室しました。
SYSTEM
ミレイユが退室しました。
SYSTEM
レティシアが入室しました。
レティシア
私よ。
SYSTEM
ウィンターが入室しました。
ウィンター
ああ
レティシア
来たわね。
ウィンター
開幕は受け持とう
レティシア
お願いするわ。
 
 
 
 
 
 
年明けも近い寒い日。年内の講義はこれで終わりだ。という宣言があったのにも関わらず、ウィンターはレティシアの部屋を訪ねて、彼女を連れ出した
向かう先は、講義でも使うキルヒア神殿──ではなく、その近くの喫茶店
店内に入るなり、店員の案内を無視して人が少ない場所にウィンターは席を取ると、対面の席をレティシアに勧めた
レティシア
「……」 コートを脱ぎ、ベージュのニットワンピースに黒のタイツ、ショートブーツを着込んだ娘はしぶしぶと言った様子で席についた。
ウィンター
「………」 銀髪の髪、蒼い瞳が鋭い青年は、白いマフラーとコートを脱いで 店員に注文を終えたところだ
レティシア
歩いてくる間、ずっと同行者である男を怪しむような表情で見たままで、会話らしい会話も無かった。
「こんなところに連れ出して、一体どういうつもりなの」
ウィンター
「…‥用件は、二つある」
レティシア
「はあ……」 気の抜けた返事を返した。 「何よ」
ウィンター
「……まず最初に、片付けなければならない用事から処理をしよう」
ようやく、無表情というか険しかった表情に、困惑と苦みを交えた色を載せると、青年は一通の封筒をレティシアに見せた
レティシア
片手で頬杖をついて。 「勿体ぶってないで早く――
「……何よ、これ。手紙?」
ウィンター
「ああ。ミレイユから、私に宛に……先日貰ったものだ」
「‥…内容を、確認してみて欲しい」
レティシア
「ミル……ミレイユから、あなたに……? あの子、いつの間にそんなものを」
「……え、えぇ……? 私が……?」 見ていいの?とでも言いたげに自分を指差した。妹のプライベートは気になるが、わざわざ自分に隠して彼に渡したものを見て良いのだろうか。
ウィンター
「……お前にしか見せられん」
レティシア
「……」 怪訝な表情をしたまま、丁寧に封筒を開け、中の手紙を取り出す。 「いいのね……?」 最後に了承を改めて取ってから、手紙を開いた。
ウィンター
「……」 頷いて 読み終わるのを待つ
ウィンター
現行ログのずっと上の方を参照だ
レティシア
ええ、改めて確認してくるわ。
 
その間に、店員が暖かいコーヒーと紅茶を置いて 立ち去っていく
レティシア
手紙の最初の方を読んでいる間は、表情は特に変わらない。目の前の相手は自分にとってはいけ好かない相手だが、妹には優しく接してくれている事は自分も認めている。心優しい妹からすれば、こうして感謝を覚えるのは当然のことだろう。とある作家に対してもよく本の感想を綴ったファンレターを送っているようだし、上手く話せない彼女が手紙に気持ちを書いて伝えるのは、手段として納得出来る。
妹の思いが真摯に綴られた手紙を読み進めていく内に、表情は自然と綻ぶ。こんなに優しい妹を持って私は幸せだ。妹のプライベートに踏み込んだ申し訳なさはあるが、これを見せてくれた目の前の男にもちょっとだけ感謝してやってもいい。
しかし、手紙の内容は段々と予想しない方向へと進んでいく。妹からの感謝の言葉ではなく、話題はいつの間にか姉である自分のことばかりになり……
いつかあなたの事を本当の兄様と呼べる日が来たなら、とても嬉しく思います。
その一文を読んだ瞬間、表情が凍りついた。
「何、これ……どういうこと……? あなた、一体ミレイユに何をしたの? ねえ……ちょっと」 手紙に目を落としたまま、怒りとも困惑とも取れる震えた声で呟いた。
ウィンター
「……」 表情を見て取って 「……読み終えたか」
レティシア
「読み終えたけど……」
ウィンター
「私は何もしていない……常日頃の感謝の気持ちが綴られた、年の瀬の手紙だと思っていた」
「実にあの子らしいと思って受け取って読んでみれば……」
「……何故かお前を任されていた」
レティシア
「そう……」 こんな訳のわからない手紙をいたずらで書かせるほど、目の前の男はひねくれてはいない――いや、ひねくれてはいるがベクトルが違う――というのは理解している。
ウィンター
「……片付けなければならない用事というのは」 頭が痛そうな表情をして
レティシア
「あの子、とんでもない勘違いをしているわね……」
ウィンター
「その手紙の事だ……」
「ああ……」
「……まず一つ、共有しておかねばならない情報がある」
レティシア
「……何よ」
ウィンター
「私は、誤解を解いていない‥…」
「いや、解けなかったというべきか…」
「……とても、それは勘違いだと、伝えられる様子ではなかった」
レティシア
「な、何で! 勘違いしているって言えば済む話――」 席を立ちかけて、ウィンターの言葉に上げた腰を止めた。
ウィンター
男はすこぶる困ったような表情をして 「ああ、お前の言い分はもっともだ。理解できる」
レティシア
「…………」 続けて、深刻そうな様子で手で口元を覆う。
ウィンター
「私がお前でもそう思う……。だが店内で、はにかむような、何か決意をするような表情で」
「この手紙を受け取ってみろ…しかも最初の内容だけ見れば、表情が緩んでいたから、そこを取り繕うのに必死だったのだぞ…」
レティシア
「…………」 椅子に座り直して。 「あの子ね……昔から結構思い込みが激しいところがあって」
「私たちのこと、絶対心の底から祝福してるのよね……」
ウィンター
「……あれは確信していた目だった」 テーブルに肘をついて両手を組んで額を載せる
レティシア
「そんなあの子に、それはあなたの勘違いよなんて言ったら、どうなってしまうことやら……」
ウィンター
「……お前の方から、やんわりと伝えられないか」
レティシア
ありありと想像出来る。妹はひどく恥ずかしがり、その場から逃げ出し、部屋に篭もってしまうだろう。それだけならまだいい。下手をすれば彼女を悲しませてしまうかもしれない。
ウィンター
「私が否定するよりかは、幾分かましだと思うのだが‥‥」
レティシア
「ちょっとまって……考えてみる……」
どう伝えれば妹を傷つけることなく、この誤解を解くことが出来るだろうか。やんわりと伝えた程度で、確信を持ってしまっている妹の考えを変えることが出来るだろうか。
思えば、ここ2,3日の間、妙に妹が自分を見る視線がおかしかった気がする。頼りにしてくれているのは変わらないようだったが、何処かそわそわしているというか、期待しているというか。
誤解を解こうと説明したところで、結局その後も私が彼と一緒に(講義のために)出かける事があるのは変わらない。余程はっきり伝えない限りは、彼女の考えは変わらないだろう。
そしてはっきり否定してしまえば、さっきも想像した結果が待っている。
「…………」 手詰まりだ、とでも言いたげに首を横に振ってから、頭を抱えた。
ウィンター
「……」 一縷の望みをかけていたが、どうにもならないらしい
「……」 再び組んだ手に額を載せると 深刻そうに息をついた
レティシア
「あの子を傷付けずに誤解を解くのは無理、ね……」
ウィンター
「そうか……」
レティシア
「どうしよう……」 目の前の男には見せた事のない、真面目に困惑した顔を向けて。 「私のせいよね、これ……」
ウィンター
「……いや、貰った時点で否定しておけば良かったのだ」
「……申し訳ない」
男にしてはしおらしい表情を見せて 謝罪の言葉を口にした
レティシア
「ううん……私が貴方への贈り物をミレイユと同じマフラーにしたからいけないのよ……。横着せずに違うものにしておけばきっとこんな勘違いなんてさせてないわ……」
ウィンター
「……そう言うものでもないだろうが」
レティシア
「…………」 頭を抱えながら考えてみる。一番妹を傷付けないようにするにはどうしたらいいのか。
「昔、ミレイユに言ったことがあるのよ……。『手作りのものを贈るのは、あなたを大事に想っているからだ』って……」
ウィンター
「………」 より沈痛な表情を作って 「となると、手作りのものであれば贈られた場合は誤解を抱きかねなかったのだな…」
「……」 ああ、やはり否定しておけば良かったのだと あの時の自分を絞め殺したくなる
レティシア
「マフラーじゃないものにしておけば、まだ違ったのかもしれないけれど……」 ミレイユと同じものにしてしまったら、すぐに気付かれて当然だ。まさかここまで勘違いされるとは思っていなかったが、ミレイユからしてみれば、普段から講義という建前でデートしているのだと思われても仕方がない。
「……は、そうだわ」
天啓を得た、とでも言いたげに顔をあげた。
ウィンター
「……?」 沈んでた表情を怪訝そうなものに変えて 顔を上げる
レティシア
「私たちから誤解を解こうとするんじゃなくて、自然にあの子の誤解が解けるように仕向ければいいのよ」
ウィンター
「伺おうか…」
レティシア
「正確には、誤解を解くのとはちょっと違うけれど……」
「あの子に、私たちは喧嘩別れ――はダメね……あの子が気にしそうだわ。喧嘩以外の原因で、円満に別れたって思わせればいいの」
ウィンター
「……」 胡乱な表情を見せて
「……前提として、あの子の前では」
「付き合っていると見せかけなければならないという問題が1つ」
「円満に分かれる場合というのは何を想定しているか、という問題が1つだ」
レティシア
「そんなの、すぐに別れたって言えば――」 あ、ダメだ。手紙が原因でこじれたのかもしれないみたいに思われてしまったらそれこそあの子が悲しんでしまう。
「……食の好みの違い、とか……」
ウィンター
「……」 深いため息をついて
「……私は贈り物をされたら、何かしらの形で返すのを信条としているが」
「……その手紙の礼に、ミレイユは何を頼んだと思う」
レティシア
「知らないわよ……何を頼まれたの?」
ウィンター
「お前を食事に誘う事だ」
「それでもし、食の好みで別れたと言って見ろ」
レティシア
「…………」
「……じゃ、じゃあほら、しばらくそれっぽく見せておいて、自然消滅でいいじゃない? あるんでしょ、そういうの?」 私はそんなの全然知らないけど。
ウィンター
「まず講義を打ち切り、会う回数を減らし、その上で別れた事にするというのであれば、可能だろうな」
「だがすぐには無理だぞ」
「それこそ手紙の後なのだからな…」
「結局、その手法を用いるには、見せかける期間が必要になる」
レティシア
「分かってるわよ。しばらく時間を置かないと、絶対あの子は自分が原因だと思ってしまうわ」
「……別に、見せかけるといっても現状で勘違いしているんだから、特別なことをする必要はないでしょう?」
ウィンター
「……だと良いのだが」
レティシア
「あなたと……こ、恋人同士、と、思われるのは、とてつもなく腹立たしいけれど」
ウィンター
「あの子が自分のせいで、仲が進まないと思うのではないかと……思ってな」
「ただでさえ、あの子はお前の枷だと自分の事を認識している」
レティシア
「それは――……確かに、そうかも」
ウィンター
「……」 どうしてこうなってしまったのだろうか…
レティシア
「程々に仲が進んでいると思わせながら、しばらく時間を置いて、ほとぼりが冷めたところで自然と別れたと思わせればいいのね」
ウィンター
「そうなる」
レティシア
「……それくらいなら、多分、どうにかなるでしょ。講義の前後にお茶をしに行ったり、仕事道具の買い物に出たり、今まで部屋にあげていなかったけど、入らせてあげれば、ミレイユも仲が進んでいるのだと納得するわ」
ウィンター
「……そうか」
「……ミレイユの興味が薄れたタイミングを図るのは、お前の方が確実そうだから、任せる」
「解消はいつでも申し出てくれ……私は、その間、」
レティシア
「後は、あの子にそれとなく、男女が円満に分かれることもあるのだという小説でも読ませておけば、うん……」
ウィンター
「お前を恋人として扱わせて貰う」
「演技というよりはそう言う扱いをすると考えた方が、やりやすいのでな」
レティシア
「……」 恋人、という単語にびくっと反応を示して、白皙の顔を朱に染めながら顔を逸らした。
「……わ、私、異性と付き合った事とか、ない、から……どうすればいいのかとか、全然分からないわよ」
ウィンター
「…そうか。そう言って貰えれば、こちらで対応できる」
「いつも通りでいい。私の方から、お前に積極的になっていると思わせた方が」
「ミレイユも喜ぶだろうしな」
レティシア
「……わ、分かったわ。じゃあ、任せるから……」
ウィンター
「……いやかもしれないが、不快にはさせない」
「それは誓おう。振りとはいえ、そうした対象に暫く置くのだからな」
レティシア
「……いいわ、あの子のためだもの。そのくらい、我慢出来るわ」
「……あ」 そう言いつつ、顔を背けたまま目だけちらりとそちらを向けた。
ウィンター
「…どうした」 もう、始まっているのだろうか 恐らくミレイユを見るときと似た柔らかな表情を浮かべて 視線を受けて小さく笑った
レティシア
「…………」 今までは、意図的に名前を呼ぶのは避けて来た。最初は復讐対象だと思っていたから呼びたくもなかったからだが、彼はそうではないかもしれないと考え始めてからは、気恥ずかしさと申し訳なさがあって、結局あなたとかあいつとかで、可能な限り名を口にしないように努めてきたのだ。
向けられた微笑みを見て、また目を逸らし、俯いたまま呟く。 「……名前、なんて呼べばいいの」
ウィンター
「……ウィンターのままでいい。だがそうだな」
「お前には、明かしておいても良いかもしれないな」
レティシア
「……別に、偽名のままでいいっていうならそれで呼ぶけど」
ウィンター
「ミレイユがいるか、二人きりの時にしてくれ」
「ヴィンセントだ」
レティシア
「……見せかけるのが目的なのに、二人きりの時に呼んでも、意味がないじゃない」 思わず苦笑をこぼして、顔をようやく目の前の男へと向け直し
「……分かったわ。よろしくお願いするわね、ヴィ……ヴィンセント」 顔を紅く染めたまま、うつむきがちに小さく名を呼んだ。
ウィンター
「恋人に名前を教えないのは、私としても気分が良くない」
「ああ、こちらこそ。レティシア」
レティシア
「っ~~~~~~~~」 恋人扱いされ、名を呼ばれると耳まで真っ赤に染まっていき、身を縮こまらせる。この演技は、心臓に悪すぎる。
ウィンター
「……」 演技としたら大したものだが、それ程異性に慣れてもいないのだろう。
小さく苦笑すると 「さて、一つ目の用事がこれで片付いた」
「もう一つの用事にこれから付き合って貰おう」
伝票を持って 立ち上がる
レティシア
「……さっき言ってた、食事のこと?」
ウィンター
「いや」
「出かける口実は分ける主義だ。一度にこなすと、会う頻度が減ってしまうからな」
レティシア
「そ、そういうもの……? だったら、何があるのよ」
ウィンター
コートを身に着けて マフラーを首にまき 対面の席のレティシアに手を差し出して
「返礼の品を見繕おうと思ってな」
「店の当てはつけているのだが、サイズは合わせた方がいい」
レティシア
「……え、ええ、っと……」 差し出された手とウィンターの顔を交互に見た。 「……つ、繋ぐの……?」
ウィンター
「……腕を絡ませても良いのだが、それよりはと思ったのだ」 少し笑って見せて
「慣れていけば良い。私を練習台代わりにすれば、レティシアにもメリットはあるだろう」
レティシア
「う、腕っ……!? 無理! 無理よそんなの!」
ウィンター
「……だから、手なのだよ」 諭すように呟いて
レティシア
「う、ぐ…………」 ミレイユの前でもないのに、此処までする必要はあるのだろうか。でも、実際にミレイユの前に出た時にそれらしく見せかけられないのはダメだ。
しばらく唸って、立ち上がり、コートを気直して、
「…………」 逡巡しながらも、俯いたままおずおずとウィンターの手に自分の手を重ねた。 「……し、しっかりエスコートしなさいよ、ヴィンセント」
ウィンター
「ああ、マイ・レディ。分かっているとも」 その手を引いて 会計まで進む
レティシア
「……ふ、普通に呼んでよ」 意識してしまうような呼び方は心臓に悪い。ぶつぶつと文句をこぼしながら、それに続く。
ウィンター
「レティシアは私にとって今は普通ではないのだから、これで良いのだよ」
レティシア
「……名前で呼んでくれた方が、その……嬉しいから……」
 
「…分かった。そうしよう」 頷いて
ウィンター
「分かった。そうしよう」頷いて
 
会計を済ませると店を出て 手を引いたまま 商業街にあるブティックの1つへと移動する
店内に入れば、綺麗な品の良い店で マネキンには冬物の服が着せられ、布からのオーダーも出来るのか巻かれた上等な布もラックにかけられている
レティシア
「……」 手を引かれたまま、店内の様子を見回す。自分が普段利用している店ではないが、傾向や好みはよく似ている。
 
規模としては中型程の建物は、客入りもあり 
店員も品の良いかっちりとした制服を身に着けて それぞれ客については服を勧めたり説明したりしていた
ウィンター
店員の1人を呼びつけると、 「寸法の確認を頼む」と依頼して 「行ってくると良い」とレティシアを店員に差し出した
レティシア
「……え、ええ」 彼は普段からこういうところを利用するのか、それとも今回のためにわざわざ探しだしたのだろうか。そんなことを考えるも、促されるままに店員に連れられていく。
しばらくして、採寸を終えて戻って来て。 「……ねえ、何をくれるつもりなのよ。結構高そうなところだけど……」
ウィンター
「……コートだ」 会計は済ませてあるのだろう 腕を組んで待っていた彼は、手に小さな袋を1つ持っていた
「レティシアは、妹に対して様々なものを作って贈るが、自分がおざなりになっているのではないかと思ってな」
「これは今日の決め事が無くても、そうしようと決めていた」
「普段使いの一着にでもしてくれ…完成はだいたい10日程だそうだ」
レティシア
「別にそんなことは……」 無いとは言い切れない。それなりに質のいい衣服を着てはいるが、基本的には妹を優先するし、手作りのものも自分のためには作らない。
「……そ、そう。何だか悪いわね……私のは材料費くらいしか掛かっていないのに」
ウィンター
「それからこれは」 持っている包みを手渡して 「今からでも使えるものだ」
「店を出てから開けるとしよう。何か他に見たいものがあれば、一緒に回るが」
レティシア
「……」 素人の手作りマフラーのお礼に、こんなに貰っていいのだろうか。ためらいつつもそれを受け取って。 「……う、ううん、大丈夫よ。これ以上贈ってもらったら、逆に申し訳なくなっちゃうし。……ああ、でも、しばらく散歩くらいは、してみたいかも」
ウィンター
「分かった。ではアステリア神殿の方まで回って、星の標に戻るとしよう」
レティシア
「……」 頷いて、ゆっくりとウィンターの服の袖を指で掴んだ。 「……ほら、早く」
ウィンター
摘ままれた袖を軽く引っ張り 外すと その手を改めて握って
店を出る
「落ち着いたところで、開けてみてくれると嬉しい」
レティシア
それに続いて外に出ると、片手に持った袋を少し持ち上げて。 「じゃあ……そこのベンチで」
ウィンター
「ああ」 頷いて レティシアを先に座らせてから自分も座る
レティシア
ベンチに座ると、膝の上に置いた袋を開けて、中身を取り出す。
ウィンター
中身は、白い色合いの質のいい手袋で 手にフィットするように作られたものだ 内張りは毛皮で、薄くても暖かい
「指を大事に、そして体を大事にと思ってな……だから、コートとそれを贈らせて貰おう」 
レティシア
「……」 取り出した手袋を矯めつ眇めつ。しばらくして、ウィンターを見た。 「……意外とよく見てるのね、あなた」 丁度使っていた手袋が古くなってきて、買い換えようと思っていたところだったのだが、ゆっくりと買い物に行く機会がなかなかなく、買わずにしばらく過ごしていたのだ。
ウィンター
「サイズは先ほど握って計らせて貰った。合っていると思う」
「赤…と悩んだのだが」
「レティシアの手は、赤く染めたくなくてな。その色にした」
レティシア
――っ……」 手を繋いだ事を意識させられると、折角引いた顔の赤がまた上っていく。 「……そ、そう」 
「…………」 手袋を少しの間胸に抱えて、目を瞑る。 「赤いのは鎧くらいでね。普段身につけるものは、あまり派手じゃない方が好みなの」
ウィンター
「それなら良かった」 頷いて 
レティシア
「……ええっと、その……」 手袋を抱えたまま、目を泳がせて。 「……あ、ありがとう。……嬉しいわ」
ウィンター
「満足して貰えたなら幸いだ」少し微笑んで
レティシア
「……着けてみていいかしら」
ウィンター
「勿論」
レティシア
手袋を身につけると、両手を胸の前に伸ばし、指を立てて具合を確かめるように手の甲と掌を見る。
「……うん、温かいわ」
ウィンター
「姉妹なら、身体を冷やしやすいのも同じだろう。自分をもっと、大切にな」
レティシア
「……」 頷いて立ち上がると、白い手袋に包まれた手を差し出した。 「行きたいところが出来たわ」
ウィンター
「…‥付き合おう」 頷いて 立ち上がってその手を取る 「どこに行きたい」
レティシア
「夕食の買い出し。……あなた、普段から食事の栄養バランスとか気にしてなさそうだし、美味しくて身体にも良いものを作ってあげる」
「人に自分を大切にしろっていうなら、自分だってちゃんとしないと、筋が通らないでしょ」
ウィンター
「……」 虚を突かれた表情になって 「……そう、だな」
視線を逸らして 「……何年ぶりだろうか。そんな事を言われたのは」
呟いてから 視線をレティシアに戻して 「……ありがとう、レティシア。その提案は、とても助かる」
レティシア
「飽きるくらい言ってやるわ。恋人である間は――ね」 下から覗き込むように見上げて、柔らかく微笑む。
しかし、微笑みを見せたのも束の間、すぐに顔を背けて、恥ずかしさに悶え始めた。
ウィンター
笑みを返すと 「その辺りは案内を任せた方が良さそうだ。覚えるから、道を指示して欲しい」
レティシア
「……え、ええ。じゃあ、帰りがてらいくつかの店に寄っていきましょう」
そうして、道を指示して、ウィンターに手を引かれつつ、日の傾き始めたイルスファールを歩いていくのだった。
レティシア
こんなところかしら。
ウィンター
そうだな
これを見ればミレイユも安心するだろう
レティシア
お付き合い感謝だけどお付き合いはこれからなのよ……
そうね……。
ウィンター
ああ
練習だと思って
付き合ってくれればいい
では、またな
レティシア
そんな練習はいらないわ……
ええ、またね。
ウィンター
)))
レティシア
)))
SYSTEM
レティシアが退室しました。
SYSTEM
ウィンターが退室しました。
SYSTEM
イルシオンが入室しました。
イルシオン
―――おやおや、これはこれは」 遠巻きではあったのだが。会えば皮肉の言い合いをしていたあの二人が、仲睦まじくなっているとは。
「いやはや、心境の変化というヤツでしょうか?或いは――ミレイユさんが架け橋になったか。いずれにせよ、ふふふ。とても興味深いですねぇ」
「これは、レティシアさんの登場の交渉も本腰を入れねばなりませんかね」 独り言ち、作家はいつも通りの気色悪い笑みを浮かべて二人とは反対方向へと歩いていった。
イルシオン
ニチャァ…
SYSTEM
イルシオンが退室しました。
背景
BGM