このログにはBGMが含まれています。
音量設定をONにしますか?
(後からでもメニューから設定変更できます)

コモンルーム[V]

20191215V_0

SYSTEM
セレストが入室しました。
SYSTEM
カイトが入室しました。
セレスト
ではざっくり。
 
 
 
 
 
カイト
ああ
 
王都イルスファール、〈星の標〉。
最早説明も不要だろう、この王都内にて最も名を馳せている冒険者ギルドの支店である。
冬の乾いた風が窓を揺らすこの日は、遥か南方で吹き荒れたという嵐の影響が僅かに届いたのか――
頗る空模様は悪かった。雨こそ降っていないものの、吹き付ける風は強く、冷たい。
 
時刻は夕方、というには聊か遅い。陽が落ち切り、僅かに西の空が紅く染める光が残っている程度の時間だ。
セレスト
「……」 そんな店内の中央、テーブル席に腰かける女性がいる。
酷く細い、針金細工の様な女性だ。机の上に広げられているのは少し草臥れた裁縫道具だ。
手に持っているのは縫いかけのマフラー。机の片隅には、完成品だろうか。数種類の色のマフラーが、サイズごとに分けられている。
女性用だろうか。少し小さめな焦げ茶のマフラーに、白のマフラー。子供用とも取れる濃紺のマフラー。それから、紳士物のマフラーが数点。
 
たん、たん、たん、と 階段を降りる音
セレスト
黙々と作業を続けながら、時折机の上の珈琲に手を伸ばしては、その熱に怯みながらも一口含んでいる。
 
その音が響くほど、店内は閑散としていて その足音の主もまた、夕暮れのような雰囲気を纏う少年だった
セレスト
「ん――」 珈琲を飲もうと手を伸ばした際、上階から降りて来る姿を見かけ
「……やあ、カイト。寝ていたか?」
カイト
「……セレスト」軽く会釈して
「夜明け頃に帰ってきたから」 頷いて
セレスト
会釈を返して 「そうか、お疲れ様。怪我はないか?」
カイト
「ああ」
セレスト
「良かった。……そういえば、出来はどうだ?」
カイト
「……」そうだ、と セレストの顔を見て 「見て、貰えるか」
セレスト
「勿論だ。手先は器用だったものな、巧くできているかな」
カイト
「少し、待って欲しい」
階段を再び上がって
数分
セレスト
ああ、と頷いて 手にしていた分を一先ず切り上げて
戻ってくる間に見る準備を整えておいた。
カイト
白い毛糸玉が収まった籠 そこに長く編まれたマフラーが一本
それを抱えて、カイトが戻ってきた
セレスト
ふむ、と嬉しそうに微笑みながらそれを見て 「自信の程は?」
カイト
「……」 机の上に籠を置いて 「わからない、ただ、」自分の首元に手を当てて そこには自分のマフラーがあって 
「これよりも、上等だと思う」
セレスト
「良い事だ。どんなものであれ、前進している事を実感できているというのは」 白いマフラーを示して 「いいかな」
カイト
「……」頷いて 対面の席に座る
 
最初に編まれたものよりも、だいぶ上達したのが見て取れるもので、あの後また作り直したのだろう、目印に付けていた編み込みなども消えている
本当に1から形を作って、そして今の形になったマフラーだとわかる
セレスト
ふんふん、と頷きながらそのマフラーを眺める。教え始めた時とは見違えた出来栄えに、満足そうに頷いて見せて
――カイト」 ふと一点を見つめて、笑みを消して一言呟く。
そのまますっと視線をマフラーからカイトへ移す。
カイト
「……」どうなんだろうとセレストとマフラーの様子を見ていたが 声をかけられて視線を上げる
セレスト
じっとカイトの眼を見て
暫くして、嬉しそうに笑顔を浮かべる。 「――良い出来だよ。失礼だが、思っていたよりもずっと綺麗だ」
カイト
「──、なら、良かった」
セレスト
「呑み込みが早いというのもあるが、手先が器用なのかもしれないな」 繰り返して上達したというのもあるのだろうけれど。
カイト
「……どうだろうな」それはよくわからない、と 小首をかしげて
「ただ、……これも楽しかった」
セレスト
「丁度冷える時期にもなってきたからな……防寒具としても、贈り物としてもしっかり喜んで貰えると思うよ」 言って、楽しかったと続けたカイトには、
カイト
「なら、いい」 小さく頷いて
セレスト
普段は見せない程度に緩んだ笑みを浮かべて、その頭を撫でた。 「そういった事を見つけるというのは良い事だ。……成長だな!」
カイト
「……どうしたんだ」 戸惑う様な声が出て
セレスト
「ん、ああ」 はっとして手を戻し
「少し懐かしかったというか。昔はよくしていたんだよ、こうして人に物を教える事を」
カイト
「……そうか」
「あんたも、楽しかったのか」
セレスト
「……」 楽しかったか、と問われて少し考えて
一瞬だけ、苦しそうに眉を顰めてそれを消し、払う様に首を横に振り 「ああ、そうだな。楽しかったよ、カイト」
カイト
「……なら、良かった」
「そうだと良いなと、思ったから」
「……楽しいことは、探すようにしているんだ」
セレスト
「ああ。……」 言葉を選んでいる様にも見えるカイトの様子に少し笑みを浮かべて 「良い事だ。……どうしてか聞いても?」
カイト
「アンジェと居ると、すぐに次にやることが、なくなってしまうから」
セレスト
「……」 首を傾げて 「というのは?」
カイト
「楽しいことを探して、試して、いつもアンジェに頼りっぱなしだ」
「だから、俺の方でも、探したいと思ってる」
「教えることが楽しいのは、アンジェもそうみたいだ。俺には、できないけど」
セレスト
カイトの言葉には、一つずつ丁寧に相槌を打ってみせて
カイト
「編み物は今度、やろうって言ってみる」 「渡した後が、良いかもしれないけど」
セレスト
「ふふ。一緒にやろう、と言ってもいいかもしれないな。互いのものを作り合って贈り合う、というのもいいものだ」
カイト
「‥…それは、いいな」
セレスト
「だが――少しズレてしまうけれど」 首を傾げて
「何かをしようと思わなくとも、共に居ればそれだけで楽しく思えるものさ」
「茶をするでも、食事を摂るでも。空を見るでも、景色を眺めるでも」
「勿論、在るに越した事はないが。……特別な事は、案外必ずしも必要ではない、……事もまあ、ある」
カイト
「……」少し考えて 「難しいな」
セレスト
「難しいさ。自分と向き合う事だって難しいのに、まして他人と向き合おうとするんだもの」
カイト
「……自分と、向き合う…」
セレスト
「……?」 反芻するように口に出したカイトに首を傾げて
カイト
「……」かぶりを振って 「いや、なんでもない」
「ただ・・・少し、思い出したくないものが、浮かんできただけだ」
セレスト
「……」 その言葉には目を伏せて 「そんなときはね」
「ひとつ良いおまじないがある」 「聴くか?」
カイト
「…おまじない?」
セレスト
「そう。簡単な事だけれど、中々効くんだ」
カイト
「……」視線をセレストの瞳に向けて 聞きの姿勢に入る
セレスト
「カイト。今すきなものはあるか?」
カイト
「すき…」
セレスト
頷いて、柔らかな視線を向けて
カイト
「……嫌いじゃないと、どう違うんだ」
セレスト
「んー……難しい質問だけれど」
「私なら、そうだな」
「"ずっとここにいて欲しいもの"、かな」 カイトの左胸を指して
カイト
「……」
セレスト
[
]
「失くしたくないものや、忘れたくないもの」
「……それから、忘れられたくないもの」 こちらは囁くように小さく言って
「私にとっては、それが"すき"、かな」
カイト
「……俺は、」まず思い出されるのは、冬の日、路地裏。皆のたまり場所 かつての仲間たち
「……俺は、」 星の標での生活、幾つも浮かぶ顔、その中には目の前の女性も、含まれている
「……俺が、"すき"、なのは」そしてもっとも強く想うのは、白い髪赤い瞳、朗らかな笑顔
セレスト
――そこまで」
続けようとしたカイトに、手を打って
カイト
「‥…」
セレスト
「浮かんだな?」 意地の悪いものではなく 純粋に嬉しそうに続けて
カイト
「………浮かんだ」 
セレスト
「知らなかったくらいだ。きっと、はじめてなんだろう。そう想ったのは」
カイト
「‥……」小さく、頷いて
セレスト
「だから、な。それを伝えるなら、私じゃない」
「それと一緒に贈るといい。……と、思うよ」
カイト
「……うまく言葉にできるか、わからない」
「ただ、それで伝わる…か?」
セレスト
「大丈夫、伝わるさ。不安なら、納得いくまで悩むと良い」
カイト
「……わからない事、だらけだ」
セレスト
だからこそ、踏み出してみるべき。……ではないか?」
カイト
「………」
「……そう、なのか」
「……そういう、ものか」 どこか、途方に暮れた様子で
セレスト
その様子を見て、一度口を開きかけて
それを閉じると、白のマフラーを示した。
「カイト。仕上げにひとつ、やっていかないか」
カイト
「……仕上げ?」
セレスト
「ああ。……ええと、アンジェ、だったか」 ふむ、とメモをひとつ取り出し、さらっとそれに名を記し 「綴りはあっているか? ……知っていれば、だが」
カイト
「…合っていると思う……ただ、」
「共通語じゃなくて、魔動機文明語に…したい」
意図を察して そう呟いた
「魔動機文明人だと、…言っていたから」
セレスト
「……魔動機文明語?」 首を傾げて、どうして……とは、聴かなかった。共通語で記した下に、そっと魔動機文明語でも綴ってみせる。
「……では、こうだな」
カイト
「……細かいのは初めてだ」 ここまではなんとかできたけど
セレスト
「他のもので試してみてからだな。慣れてからやってみるといいさ」 幸い、試しに使えるものならここにあるから、と続けて
カイト
「……いいのか」
「これも、……誰かのじゃないのか」
セレスト
「無為に遣われる訳ではないし、」
「……ああ、こいつのなら好きに遣え」 いくつもあるマフラーの内から、成人男性向けの物を一つ取り出して
カイト
「……」
「分かった……ありがとう、セレスト」
セレスト
嬉しそうに笑って、
――では、そうだな。やり方だが」 この日もまた、講義はつづいていく。
セレスト
なにかあればさっと挟んでいただいて
こちらはこれにて
カイト
「ん」 頷いて セレストの説明を確認していく
結局、作ったマフラーの名前の縫込みは 白地に黒い毛糸を使って 魔動機文明語で縫われたそうな
カイト
こんなところだ
セレスト
ふふ 良い出来じゃないか
カイト
頑張って贈ってみる
ありがとう、セレスト
セレスト
ああ、しっかりな。
カイト
)))
セレスト
)))
SYSTEM
カイトが退室しました。
SYSTEM
セレストが退室しました。
背景
BGM