- SYSTEM
- ジャンヌが入室しました。
- ジャンヌ
- はい。
- SYSTEM
- ニオが入室しました。
- ニオ
- ええ
- ジャンヌ
- どんな所から始めましょうか。
- ほのぼのお話します?
- ニオ
- ほのぼのですむかしら
- いいわ
- ジャンヌ
- ほのぼのですよ。
- ではほのぼのと。
- ジャンヌ
-
-
- イルスファール〈星の標〉、夜も更け、店内には客も少なくなってきた時間帯。
- 大きな荷物を抱えて、金色の髪の娘がやってきた。
- 成人男性であってもなかなか抱えるのに苦労しそうな量の物が詰まった箱を抱え、娘は挨拶もそこそこにカウンターの奥までそれを運んでいく。
- 「――ふぅ、すみません、お待たせしてしまって」
- 明日の仕込みのためにまだ作業を続けている従業員へと頭を下げると、踵を返して店から出ていこうとするが……
- 従業員に呼び止められ、ぱたぱたと手と首を横に振りながら、二、三、言葉を交わす。
- 「……では、1杯だけ、いただきます」 お礼にと飲み物を勧められ、辞そうとしたのだが、いつも悪いからという従業員の押しに負け、頂戴することにしたようだ。
- しばらくして出てきた飲み物を礼と共に受け取ると、閑散とした店内のテーブル席に座った。
-
- すん、と鼻を鳴らすような音がジャンヌの間近で聞こえた
- ジャンヌ
- 店内の客が少ないのが逆に落ち着かないのか、それとも無料で飲み物を受け取ってしまったことに対する申し訳なさか、何とも言えない面持ちで飲み進めていると――
- 「……あら?」
- 微かに聞こえてきた音に、碧色の瞳がそちらへと向けられた。
- ニオ
- 「おさけ?」 ジャンヌの死角になる位置に、最初からそこに居たかのように 黒と銀の髪の少女は小首を傾げていた
- ジャンヌ
- 「ニオさん……い、いつの間に。もしかして、ずっといらしたんですか?」
- 「お酒ではありません。私はアルコールの類は、あまり得意ではなくて……。まったく飲めないというわけではないのですけど」
- ニオ
- 「居たわ。お店には」薄い表情に薄い笑みを載せて 「驚いた?」
- ジャンヌ
- 「……ええ、とても。私がそういう感覚には鈍いのは、よくご存知でしょう?」 困ったように微笑んで。 「こんばんは、ニオさん」
- ニオ
- 「こんばんはジャンヌ」頷いて 「座っていい?」
- ジャンヌ
- 「もちろん。どうぞ」 柔らかな笑みと共に、対面の席を示した。
- ニオ
- 対面の席について ちょこんと腰をかけると 脚をゆっくりとぱたつかせる
- ジャンヌ
- 「ニオさんもなにか飲みますか? 幸い、まだ注文は受け付けてくださるみたいですし」
- ニオ
- 「…‥」んー、と考えて 「お水をちょうだい」
- ジャンヌ
- 「あら……お水でいいんですか?」
- ニオ
- 「それが一番いいわ」頷いて
- 「わからないもの。味」
- ジャンヌ
- 「ふふ、普段の私と同じですね。私もいつもはお水が多いんですよ」
- 「……」 その言葉を聞くと少しだけ表情を曇らせて。 「でも、お水にもちゃんと味はあるんですよ」
- 立ち上がり、カウンターへと歩いていくと、1杯の水を持ってニオの前に置いた。
- ニオ
- 「その顔も素敵だわ」薄く笑んで 「そうね、それは知ってる」
- ジャンヌ
- 「まあ、偉そうな事を言っても、私もちゃんと飲み比べたことはないのですけど……」
- ニオ
- 「花も木も、水のいい悪いで成長が違うし、」
- 「植わっている花壇によっては、染み出る水が甘い事もあったのよ」
- ジャンヌ
- 「え、えぇ……」 そんなに変な顔をしていただろうか。両手で自分の頬をぺたぺたと触ってみる。 「あ、そうですね。畑の作物も、水の質で全然味が変わりましたから」
- ニオ
- 「ありがとう。ジャンヌ」水が置かれたのを見て
- ジャンヌ
- 「いえ、どういたしまして」 微笑みを返して。
- ニオ
- 「今は分からないから、お花を育てるのは難しいわね」
- ジャンヌ
- 「……味が分からなくなったのは、いつ頃からなんですか?」
- ニオ
- 「最近よ」
- ジャンヌ
- 「確か、呪いと表現していらっしゃいましたね……。なにか明らかな変化をもたらす出来事があったのですか?」
- ニオ
- 「ええ、あったわ」
- ジャンヌ
- 「一体何があったのか、お聞きしても良いことでしょうか」
- ニオ
- 「……」少し考えて 「そうね、」
- 「血をくれるなら、少し教えてあげてもいいわ」
- ジャンヌ
- 「……」 むむむ、と少し悩む様子を見せる。 「血を差し上げることは全然構わないのですが……」
- ニオ
- 「静かで、」 テーブルの上で指を遊ばせて 「二人きりの場所で、」
- 「暗いとよりいいかしら」
- ジャンヌ
- 「……そうですね。人目に付く場所ではよくないでしょうから、それは勿論ですが――……明るい暗いも関係があるんですか?」
- ニオ
- 「大事よ、雰囲気って」
- ジャンヌ
- 「ど、どういう雰囲気でしょう……」
- ニオ
- 「ジャンヌは、」
- 「綺麗に整えられた食卓と、ただ、料理が置かれた食卓だったら、どっちがいい?」
- ジャンヌ
- 「それは勿論、前者ですが……」
- ニオ
- 「それと同じことなのよ」
- 「いただくんだもの。せっかく」
- ジャンヌ
- 「……なるほど」 彼女にとっては、ただ苦しいのを防ぐための手段というだけではないようだと頷く。 「何だか、話に聞く吸血鬼のようですね」
- ニオ
- 「そうね。似たようなものかもしれないわ」
- 薄く笑んで 「──魔剣と、契約したの」
- ジャンヌ
- 「……魔剣と、契約……」 思わず、今は神殿に置いてきている自分の剣を思い出す。 「……対価として、味覚が鈍化してしまったのですか?」
- ニオ
- 「持ち歩いては居ないけど、ね」
- 「それも一つ」
- ジャンヌ
- 「他には、どのような対価が……?」
- ニオ
- 「寿命」さらりと返して
- ジャンヌ
- 「じゅ、寿命……それは、その……いわゆる邪剣に分類されるものなのでは?」
- ニオ
- 「そうね、そうかも」
- ジャンヌ
- 「……私も他の方のことをとやかく言える身ではありませんが、ちゃんとご自分のことは大切になさってくださいね」
- ニオ
- 「いいの。ニオはお人形だから」
- 「この髪も、身体もニオのじゃないもの」
- ジャンヌ
- 「……そういうことではありません」
- ニオ
- 「悪い事ではないのよ?」
- ジャンヌ
- 「良い悪いでもないんです」
- ニオ
- 「髪型も、服装も、アクセサリーも、全部全部、決めて貰える」
- 「なにが、不満なの?」
- ジャンヌ
- 「貴方の深い事情は私はまだ知りませんし、何を言っているのかと思われるのかもしれませんが」
- 「私から見れば、ニオさんは今目の前に居て、私とお話ししてくださっている一人の人なんですから」
- 「誰の人形だとか、身体が誰のものだとか、そういう事に関係なく、私が貴方に、貴方自身を大事にして欲しいと思っているだけです」
- ニオ
- 「……頑固な人、ね」 声には少しの呆れが混じっているようにも思えた
- ジャンヌ
- 「よく言われますが……今のは頑固とはあまり関係ないような……」
- ニオ
- 「強引だわ、それに」薄く笑んで 「お話相手じゃないの?人でないなら」
- 「ニオはそう、」
- 「吸血鬼かもしれないのに」
- ジャンヌ
- 「……」 首を横に振って。 「言葉が悪かったですね」
- 「私からすれば、貴方が人でも、人形でも、吸血鬼でも構わないのです。勿論、本当に吸血鬼だなんて言われた時には、驚きはしますが」
- 「目の前に居る貴方に、自身を蔑ろにするようなことはしてほしくないと、そういうことです」
- ニオ
- 「……」きょとん、として
- ジャンヌ
- 「え、っと……おかしなことを言いましたか?」
- ニオ
- 「おかしいかは分からないわ」ぱた、ぱた、と足をぱたつかせて コップから水を一口飲む
- コップを置いて 「初めてだもの。そんな事言われたの」
- ジャンヌ
- 「……でしたら、しっかりと覚えておいてください」
- 「こういうことを言うのは少し卑怯で、憚られますが……」
- 「今の言葉を、ちゃんと覚えておいてくださるなら、私も貴方のために血を差し上げます」
- ニオ
- 「……」薄い表情が困ったようにささやかに揺れて
- 「…長いわ」
- 「短くならない?もっと」
- ジャンヌ
- 「むむ……そんなに長かったでしょうか」
- 「ちょっとまってくださいね……」 うーん、と唸り、少し考え込む。
- 「――うん」 ややあって、一人頷く。 「“ニオさんのことを、ちゃんと大事にしてください”。これならどうでしょう?」
- ニオ
- 「ニオをニオが大事にするの?」
- ジャンヌ
- 「ええ、そうです」
- ニオ
- 「…むずかしいわ」 頬杖をついて
- ジャンヌ
- 「でしたら、一緒にそう出来るようにしていきましょう」
- 「まずは、今の言葉を覚えておくことから。それだけなら、今でも出来るでしょう?」
- ニオ
- 「……そうね」
- ジャンヌ
- 「ふふ、いい子です」
- ニオ
- 「いい子じゃないわ」
- ジャンヌ
- 「あら……いい子と言われるのは嫌ですか?」
- ニオ
- 「……ううん。好きよ」
- 余計なことを言った、という思考を飲みこんで 薄く笑って見せる
- ジャンヌ
- 「では、遠慮なく。いい子ですよ」 にっこりと微笑んでもう一度口にして立ち上がった。
- 「ええっと……二人きりになれて、静かで、ちょっと暗い場所、でしたね」
- 「〈星の標〉のお部屋が何処か空いていないか聞いてみましょうか?」
- ニオ
- 「お願い」こちらも立ち上がって
- ジャンヌ
- 頷き返し、ぱたぱたと従業員に尋ねにいく。
- 少しして振り向くと、ニオに指でOKと輪っかを作って、笑顔を向けた。
- ニオ
- 薄く笑って頷いて
- ジャンヌ
- 「それでは、いきましょうか」
- ニオ
- 「ええ」
- ジャンヌに続いて、階段を上っていく
- ジャンヌ
- ニオの腕を取って、優しく引きながら、上階へと向かっていって、
- ニオ
- ジャンヌの腕に自分の腕を絡めて
- ジャンヌ
- その日は結局、その部屋で静かに眠りに就いた。
- ジャンヌ
- 時間的にもこんなところでしょうか。
- ニオ
- そうね
- やっぱり、いい子じゃないわ
- ジャンヌ
- ナチュラルに腕を絡めてくるなんて……恐ろしい子。
- ニオ
- 血の味が分かる事、教えてないもの
- ジャンヌ
- いい子の基準はそこではありませんから大丈夫ですよ。
- それでは次の同席機会を待ちつつ、今日はこの辺りで。
- ニオ
- ええ
- ジャンヌ
- お付き合いありがとうございました。
- ニオ
- またね
- ジャンヌ
- )))
- ニオ
- )))
- SYSTEM
- ジャンヌが退室しました。
- SYSTEM
- ニオが退室しました。